目覚めたら某有名ゲームの悪役だったけど、正直言って困るんだが   作:プルスサウンド

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バイオのRE3は最初っからホント良い人いっぱいおるけど容赦なく死んでくから…涙がで、出ますよ。
RE2もレオンの先輩方がさぁ(クソデカ溜め息)


今回のMVPはタイレル・パトリックの回

※最後辺りのセリフの発言者が分かりにくい様子だったので、訂正。



バイオの研究者、情報セキュリティがガバ

 

 

 

 室内に入ってくるなと無言のまま手で制され、タイレル氏と共にオフィスの入り口で待つ。

 

 やがて病院から通信を繋げていたバード氏は、言いたいことを言い散らかすと連絡を切ってしまった。しかし英語で遠慮なく叫ばれた内容を自分が聞いていたのは明白だ。嫌な沈黙が部屋に満ちる。

 だが、ここで黙って時間を浪費していては、命綱たるバード氏が消される可能性を上げるだけだ。

 

「時間が無いのは把握した。聞いてはいけないことを聞いたのも把握した。速やかに彼の身柄を確保したいのは私も同じだから邪魔はしない。私の身柄をどうするかは任せるが、この子だけは脱出を希望する。切実に」

「……アルフ達の同行は隊長に認められていた。今回は俺のミスだ」

「あー、そう……アンタは錯乱して、この街で流れる『アンブレラのダークな都市伝説』を信じてしまっただけだ。外で言いふらしても、他の錯乱した連中と同じ扱いを受けるだろうから気をつけろよ」

「…ありがとう」

「とりあえず俺はここのパソコンで情報収集する」

 

 そこに飛び込んでくる無線連絡。

 対応したのはカルロス氏だが、何やらただ事ではない様子だ。

 

「は?脱線した?」

 

 脱線した。生存者は私だけ。みんな死んだ。

 化け物が。アイツは死んでない。

 ニコライが裏切ったのよ。

 

 漏れ聞こえるのは絶望な状況。

 シナリオはまだ終わっていなかったのだ。

 

 民間人も全員が亡くなったそうだが、顔も知らぬ彼らよりも、お世話になったミハエル隊長が亡くなっていることが肩を重くした。

 

 しかし傭兵の二人は慣れているのか、慣れざるを得なかったのか、やるせなさを短い言葉で吐き出してすぐに精神を切り替えている。

 

「おい!ジル!!おい!!!」

 

 切れた無線に向かって叫んでいたカルロス氏は、ジルさんを助けるために部屋を飛び出した。

 

「俺たちは病院へ向かうからな!」

「分かった!」

「気をつけて!」

「アルフもな!」

 

 その背中を見送ると、こんなにもどうしようもない状況なのに、何故か「彼らは大丈夫だ」と思えてしまったのだから不思議だ。

 

 

 

 

 

 

 

 最低限の情報収集を済ませたタイレル氏と共に、必死こいて病院に辿り着いたものの、発見したナサニエル・バードはとっくに撃ち殺されていた。

 

 院内に居たゾンビだのリッカーだのハンターだのを、せっせと叩き殺してコレだ。というかリッカーはともかく、自然発生しないハンターが居る時点でアレだったのだろうが。

 それでも間に合わなかった事には変わりない。

 クソが。

 

 先に殺されやがって。ふざけるなぶっ殺すぞ。

 

「おい!まだ諦めるな!何か手掛かりがないか調べるぞ!」

 

 タイレル氏に肩を揺すられて、自分がようやくその死体へ斧の刃先を向けていたことに気付いた。

 無意味なことを。我ながら嫌になる。彼の言う通り、恨み言など口にしている暇はないのだ。

 

 やがてパソコンからアンブレラのやらかしに対する証言を含む、バードが保身に奔走した記録が発見された。同時に、一人分のワクチンが残されている可能性が示される。

 そしてとうとう保管庫から、特徴が合致する液体が発見された。

 ラベルにはワクチンの文字がハッキリと書かれている。

 

「あった!!あったぞアルフレッド!!!」

「あっ……あっ……」

「ほら!しっかりしろおじさんだろ!嬢ちゃんに早く打ってやれ!」

 

 こわばる手でタイレル氏からワクチンを受け取った。

 液体が紫の光を仄かに放っている。

 それは奇跡のように目を焼いた。

 

 おろしたリュックから眠るアリエルを抱き上げ、カバーを外した注射針を近付ける。

 

「少し痛いが我慢してくれ…」

 

 ワクチンはつつがなく針の向こう側に吸い込まれていった。何の抵抗もなく。

 心なしか、アリエルの寝顔が穏やかになった気がする。

 

 これでもう大丈夫だ。これで、もう

 

 

 

 嗚呼、

 

「よ、かった…ありえる………ありが、とう…」

 

 

 

 全身にのし掛かっていた重りのようなものが霧散する。今までこんなにも呼吸しづらかったのかと驚きが隠せない。目頭が痛む。肺が痛い。

 しかしそれよりも、ただただ感謝があった。

 視界が歪むのを止められない。

 

 何に感謝して良いのか分からない感覚だ。もちろんワクチンを見付けてくれたタイレル氏だけでなく、そこに至るまで協力してくれたカルロス氏やジルさんや、他の人にも会って手を握って全力でありがとうを言いたくなる。そんな柄じゃないのに。

 それだけでなく、この万感の思いを何かにぶつけたい衝動のようなものを感じている。

 

 ざっくり言うと「森羅万象ありがとう状態」というやつだった。

 脳味噌が感謝に支配されている。

 具体的には、分泌された感謝の脳内物質(エンドルフィンやオキシトシン)でキマッてる感覚がする。

 しかしそんな理屈など、今はどうでも良いのだ。

 

「おいおいおい、まだ終わりじゃないぜアルフ。お嬢ちゃんと共に、この地獄から脱出するまでがアンタのやる事だろ?」

「あ、ああ…そうだな……ありがとう、ありがとう……」

「バード確保は失敗したんだ。民間人の保護任務くらいは達成しないとな。これで俺たちの面目も立つってもんさ」

 

 すよすよと寝息を立てるアリエルを抱き締めたまま、タイレル氏に背中をバシバシと叩かれる。

 アリエルの服を塩辛い水分でずいぶんと湿らせてしまったから、後で謝らなければ。

 

 無線が鳴る。

 

 

 

 

 

 それは、この事態が全て解決したわけでなく、我々がいまだ地獄のただ中に居ると告げるためのものだった。

 

「タイレル!タイレル聞こえるか!ジルが!」

 

 感染した。病院へ連れていく。

 

「何っ!?分かった早く来い!バードのオフィスにいる!」

 

 一人分しかなかったワクチンを使い果たした直後に、なんで、こんな。

 

 いや、ジル・バレンタインという人物は主人公だ。だから抗体を持ってるし、感染しないはずで、でも感染した。どうしてだ。設定では。

 そうだ確か、いくら抗体がある体質でも体内に入ったウイルスの量が多ければ……そういうことか。

 

 ネメシスが蜂みたいな真似をして自分に針を刺した、あの攻撃の意図はこれだったのか。自分は体質的にスルーできた。しかしそれをジルさんが受けた場合、そうはいかなかった可能性が高い。あのクソ野郎。

 

「タイレルさん、ここがワクチン開発者のオフィスってことは、完成品が無くても作り方や材料ならあったりしないか?ここじゃなくても院内のどこかに…」

「もちろん今調べてるところだ。アンブレラめ、とんだ雇い主様だよまったく」

「…机と書類棚を見てくる。急ぎなら処分し損ねた資料があるかもしれない」

「ああ頼む。アナログもバカにならんからな。俺は病院のシステムに侵入するので忙しくなる」

 

 かつてのように「アリエルが助かったら、もう他の人なんてどうでも良い」などと、口が裂けても言えないし思えなかった。

 別に改心いたしましたってわけじゃない。

 

 自分の人間性がどうしようもないことなんて自覚している。今ですらたぶん、ジルさんやカルロス氏、タイレル氏みたいな恩人ではなく、名も知らぬ誰かの命のために何かしろと言われても、ただ面倒だと思うだけだろう。

 他人の苦しみを前にしても「へぇ、可哀想だな」と口にして、目を離した翌日には忘れてしまうような人間だ。善性は期待できない。

 

 だが、ジルさんは他人じゃなくて恩人だ。

 あの人が感染して「もうワクチンは無いから仕方ない」なんて、認められない。

 

「アンブレラ社員用の緊急時マニュアルが出てきた!地下施設があるみたいだぞ見てくれ!」

「やけに硬い部分があると思ったらそれかよ!俺も一応社員なのに、権限が足りねぇとか言われたから裏から殴ってたんだ!」

 

 文字通り人間離れした動体視力でゴリ押しし、単語拾いと文脈読みで内容をざっくり把握して、必要そうな部分をガン見で精読すること数分。

 なんとマニュアルだけでなく、机の引き出しからパスワードやら何やらを書き記した紙が出てきた。

 

 バードおじいちゃんだったから仕方ないのかもしれないが、これは酷すぎる。いや、パソコンに付箋紙でパスワードを張り付けるよりマシか?

 何はともあれ、ありがたく頂こう。

 

 しかし、いくら優れたセキュリティシステムがあったとしても、使う人間がアレだとダメだという典型的な実例だったな。

 いや、なんとなく電子機器類が、1998年にしてはちょっと発達し過ぎてる気はするけども。

 

 

 

 やがてタイレル氏が「ワクチンは街を救えるだけの備蓄が地下施設にある」という情報を発掘した。

 

 ほぼ同時にジルさんを背負ったカルロス氏が到着。タイレル氏が侵入しておいた病院の警備システムを操作し、必要な場所のシャッターを下ろす。

 損壊で閉じるのが無理な場所は、力に任せて運んだ棚やら何やらをバリケードにして塞いだ。

 

 なおその間に、タイレル氏がカルロス氏に事態を説明している。

 

 

「そうか、病院のワクチンはアリエルの分で…」

「だがカルロス、ジルは幼い少女にも必要なワクチンを、自分の方が危ないから先に打て、なんて言う女か?」

「彼女はそんなんじゃない!分かってるだろタイレル!」

「だろうな。それにだな…ジルだけでなく街の連中まで救えるだけのワクチンが、地下施設にはあるんだぜ」

 

 

 

 

 

 引き続き情報収集を行うタイレル氏にアリエルとジルさんを任せ、自分とカルロス氏はアンブレラの地下施設に向かうことになった。

 

 

 

 

 

 

 




 
・おじさん(38歳)
陰キャを全方向から強い光で照らすとね、眩しくて顔をそらそうとして、下を向くよね。
すると自分の真下に濃い影ができているのが見えるんやで!HAHAHA!

厳正な抽選の結果ワクチンがご用意されていた勢。
チケットヤッター!!!!!って言ってたら、一緒にライブに行こう(この人は助かるだろう)と思っていた恩人(ジル)が落選していた人。
瞬間移動より速読術の方が人生の役に立つと思っているくらいには活字が好き。

なお前回スターズオフィスに侵入したが、ウェスカー氏の机をたくさん調べるどころではなかった人。
残念!



・カルロス氏(21歳)
画面外で立派にヒーローしていた原作主人公の片割れ。
おじさんとコンビ組むことになった。
四人の中で最年少やぞ。ピチピチやぞ。

抽選の結果ワクチンがご用意できませんでしたって言われたから、おじさんと共に主催者枠(アンブレラ)のワクチンを狙っている。

ガワだけとは言え、ウェスカーとカルロスのコンビ結成した二次創作って、なかなか珍しいのでは?



・アリエル(12歳)
リュックの中で頑張ったで賞!
今のところ、すやすやしている。



・タイレル氏(32歳)

斧だけで 生物兵器 叩き切る
       お前もたぶん ご同類だぞ
(タイレル 心の俳句)

おじさんのことを同年代だと思っているが、ソイツは6つ歳上だぞ。ウイルスで少しアンチエイジングされてるだけだぞ。

・タイレルさん色々と頑張ってたけど、病院や研究所のシステムに鉄壁ディフェンスのレッドクイーンさんはおらんかったの?
→大佐と共に避難準備してるから不在ってことで。



・ジルさん(23歳)
原作より活躍の場が減ってしまったすまぬ。
お留守番するやで。
新鮮な23歳。



・ミハエル隊長
ネメシスを電車から強制退去させるために尽力し、爆炎の中で殉職された。



・ニコライ某さんじゅうごさい
いっぱい暗躍して、いっぱい監視して、いっぱい報告した。

ドル札風呂とか入ってたりするんかな。
口座の桁の数を肴に酒飲んでそう(偏見)




ニコライ某のことを、家族が「今時ならライブチケットやグッズとか高額転売してそうな邪悪」って表現したので、しこたま笑いました(日記)


……次回もほぼ野郎しか出ないバイオ二次創作をよろしくな!!!



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