目覚めたら某有名ゲームの悪役だったけど、正直言って困るんだが 作:プルスサウンド
バイオほんと外伝も多いな!!!履修楽しい!!!
味方サイドが原作より強めなら、ネメシスくんも強化しとこ!って回
タイレル氏いわく、滅菌作戦は明日の早朝らしい。
今から十数時間後の話だ。物資と体力さえある人ならば、今から脱出できないことも無いだろう。しかし物資と体力がある時点で勝ち組で、そういう人々はとっくに逃げ出しているか、肝心の運がなければゾンビの仲間入りをしているに違いない。
「街にはまだ生存者が居るはずだろう!?」
カルロス氏が信じられない、と声を上げる。
もはや外を見ればフラフラ歩くゾンビ連中しか見えないだろう。しかし扉に鍵を掛けて震えながら助けを待つ人々は、外から見れば目立たないだけで確かに存在していた。
つまり現時点で立てこもっている人々に必要なのは時間ではなく救助だが、軍はやって来ない様子。
まあ滅菌作戦なんて、つまるところアンブレラによる証拠隠滅作業だし、軍なんて立ち入らせないのは当然か、とは思う。
しかしそこで黙っていないのがタイレル氏だった。
「それは本当かタイレル!?」
「カルロス覚えておけよ。こんな業界を上手く渡るためにはな、何かに偏っちゃいかんのさ。お友達は広く薄く持つのがコツだぜ」
「だからって政府でも巡航ミサイルのボタンに近いような人の連絡先を知ってるタイレルさんはおかしいと思うぞ」
「アルフ、それは誉め言葉か?」
「そりゃあもちろん」
なんと彼は爆破予告を受けてすぐに、政府を相手に交渉を始めていたらしい。
政府が一枚岩ではないのは当然で、もちろん親アンブレラ派閥もあればそうではない派閥もある。
彼は社員でありながら、アンブレラと距離のある連中と交渉を始めていた。U.B.C.S.に入るより前の伝手とのことだが、そういう古い人脈が死なないように手入れを怠らないスキルは凄まじいの一言に尽きる。
コミュ障の自覚がある自分には、こうして「なぜそれができるのか」は理解できても、実際にやるのは無理が過ぎるので、余計にそう感じるのかもしれない。
例えるなら自分にとっては「美しい飴細工の作り方はこうやで!」と職人に説明されても「はいできましたー!」と簡単にやれないようなものだ。
「そうか現物が有れば」
「ああ、今はとりあえずワクチンの資料で何とか交渉の席についてる状態だ。現物が無いとどうしてもな…」
「じゃあ朗報だ。こちらはもう材料が手元にあって、今からワクチンを生成するんだ。ジルさんの事もあるし、出来上がり次第すぐに帰るよ」
無線越しに、椅子を勢い良く蹴り倒す音がした。
「でかした!!!最高だ!!!」
大音量の歓声だ。音割れが酷い。
しかし笑い声として垂れ流しにされる喜びに、こちらもつられて気分が明るくなるのはありがたかった。
「俺は交渉に戻る!気を付けて帰って来いよ!」
「ああ!」
無線を聞いている間に組み合わせておいた材料を機械にセットして、説明書通りに設定を弄る。
機械はすんなりと動き出し、そう待つこともなくワクチンが生成された。効果を誇示するように強い光を発する液体は、紫というよりピンクに近い。
なんだか凄く身体に悪そうな色である。
「おお…」
「これがワクチン…」
専用シリンダーに封入されたワクチンを、やはりカルロス氏のベストに捩じ込んでおく。
彼が落とさないように確認し、さあ帰ろうと出口を向いた瞬間、
「グェッ!?」
「またお前か!」
見覚えのある汚い触手が空調の吹き出し口から伸びて、カルロス氏の首に巻き付いた。とっさに斧で叩き潰すように切りつけ、咳き込む彼を引き摺って出口に向かう。
しかし電気系統を壊されたのか、扉が全く開かない。
何度か斧で殴り付けたが、施設全体が頑丈に作られているため、扉からは金属音が鳴るばかり。
背後の気配が濃くなる。仕方なくカルロス氏を抱え、吹き抜け部分から下の階に飛び降りた。
「おぇっ…助かったぜ」
「災難だったな。ワクチンは大丈夫か?」
「ああ。けっこう頑丈で、落としたくらいじゃ大丈夫みたいだ」
とりあえずアレから距離を取るのが優先だ、ということで壁に開いた施設の点検口らしき場所に潜り込む。
「ッア"ア"ア"ア"ア"~!?!??」
「アルフ!!!」
で、点検口の向こうには我々を待ち構えていたネメシスさんが息を潜めて待機されてまして。
ジルさんと下水道から脱出した時もこんな感じだったよな、と思いながら汚い触手に捕まりましたとさ。
「クソっ!今助ける!」
「ふんぬっ!」
「って自力で外すのかよ!」
バラバラと弾を撒き散らす音を聞きながら、金網の床に指を引っ掛ける。そのまま脚に巻き付いた触手を蹴り剥がし、斧が深く刺さるように投げ付けて動きを止めてやった。
さらば初代マスターキー。
「燃料タンク撃つからこっち来い!」
「後ろに昇降機がある!」
「よっしゃ後ろに向かって前進だ!」
ここは燃料タンクが並んでいる保管スペースだ。一つが燃え上がれば他のタンクに引火して、大変なことになるに違いない。
昇降機が動き出したタイミングでカルロス氏が撃ち込んだ弾丸が狙い通り、燃料に着火する。爆発音と熱を下に感じながら、作業員の控え室らしき部屋に転がり込んだ。
「クッソ…帰り道がダメになった……」
「それより問題なのは、アレがまだ死んでるとは思えない事なんだよな…」
「最悪だが否定できない。それに、帰りが遅くなるってタイレルに連絡しないと」
施設の作業員たちも事故の対処に追われていたようで、この控え室にも弾やスプレーが僅かに残っていた。
それでも我々にとっては貴重な物資だ。使えそうな物を回収していると、無線連絡を終えたカルロス氏がヨレヨレの紙を持ってくる。
「コレを見てくれ」
「えーと、処理施設?」
「この隣にあるんだとよ」
それは生物兵器や実験体を溶解液で溶かして処分するための、処理施設に関する説明書きだった。
「コイツでじっくりコトコト溶かしちまえば、あのしぶといストーカーも何とかなるんじゃないか?」
「おお!天才か!」
「だろ?」
階下からの爆発音はもう止んでいる。
アレが生きているならば、少し休むだけで再び動き出すだろう。ならば処理施設で待機し、確実に殺し尽くす方が安全だ。
「よし、行くか」
控え室から出て通路を行く。
溶解液が蓄えられているであろう複数のタンクと、それに囲まれた空っぽのプールが処理施設の全体像だった。あのクレーンは右手に見えるコントロールルームで操作するのだろう。
突貫工事で発案された作戦としては、遠距離攻撃でネメシスをプールへ落とし、クレーンで押さえつけながら溶解液を注いで漬けるという単純なもの。
細かい部分は高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変にってヤツだな。
「最終確認だ」
「クレーン操作はそっち、メイン陽動はこっち」
「OK。弾薬は足りてるか?」
「ああ、拾っといて良かった」
「使うだろうし手榴弾は渡しておく」
「ありが…来た!!行け!!!」
「G Y A AA A A AAA!!!!!!」
先ほどまで我々が居た控え室をめちゃくちゃに破壊して、四足歩行の獣が現れた。一度は頭を落とされたと聞いているが、歪な頭を振り回して衝撃波を伴う雄叫びを上げる様は、負傷を感じさせない迫力がある。
「お"っまえ!!!」
「GRRR R R…」
跳躍した獣は簡単に通路を破壊し、自らの重さで空のプールに転がり落ちる。しかし足に絡み付いた触手のせいで、こちらも踏ん張る間もなく引き摺り落とされた。
だが、幸いにもカルロス氏はコントロールルームに辿り着けたようで、スピーカーから声が響く。
「アルフ!ソイツを動けなくしてくれ!そしたらクレーンの爪で潰せる!」
「おっとそこまでだカルロス。ワクチンを渡せ」
は?スピーカーから別の声がするんだが?
角度の問題でここからは見えにくいが、コントロールルームには人影が二人分あった。
「ここに隠れてやがったのかクソ野郎が!」
そういえば見かけないと思ったら、そうかお前そこに居たんかニコライ某。
「生意気な口を叩くのは止めた方が良い。ネメシスは俺が操っているんだからな。あの男を襲わせるも良し、病院を襲撃させるも良し。まったく最高の兵器だよアレは」
「ッ!?」
マジであの獣じみたヤツを操れるのか?
と思っていたが、落ちてからピタリと静止して呼吸以外は動かないネメシスを見れば、それが事実だと分かる。
歪な肉塊にしか見えない頭部の、肉と肉の隙間からはチカチカと、赤い光が点灯しているのが見えた。どうやらニコライ某は、あの機械と思わしき物でネメシスを操作しているようだ。
「カルロスさん!ワクチンは渡さなくて良い!!アレを操ってる機械を壊せば、病院に行くのは止められるはずだ!!!」
「だがその前に俺がコイツを撃ち殺し、ワクチンを奪う方が早いだろうよ!!!」
もしやカルロス氏、銃を突き付けられてるのだろうか。
ネメシスは止まってるし、コントロールルームまでよじ登って助けに行けば。そう思い足を踏み出すと、遮るように触手が飛んできた。
止まれ、ではなく牽制しろ、と命令されているらしい。思っていたよりも頭が良いのか。最悪だ。
「銃口が向けられているのはお前も同じなんだ。俺がそう簡単に殺されると思うなよ…」
「ハハハ…だがな、俺が死ねばネメシスの首輪は外れて、最初に刷り込んだ命令に従い病院にまっしぐらだ。だからお前はどっちみち俺を撃てない」
「それでもお前にワクチンを渡すわけにはいかない。ジルや市民を助けるにはこれしかないんだ!」
そうだ良いぞ。言ってやれ。
ネメシス襲撃よりウイルス感染の方がワクチン以外に手の打ちようが無いんだから、そのワクチンを渡すわけが無いのは当然だろう。
「ふむ、ならばこうしよう…取引だ。ワクチンは渡さなくて良いぞ。代わりに溶解液を入れず、あの男をネメシスと最後まで戦わせろ」
「お前、何のつもりだ」
「俺は金が欲しいだけなんだよカルロス。ささやかな願いさ!お前はネメシスに悩まされずにワクチンを持って帰る。俺はネメシスとあの男の戦闘データを売って稼げるんだから、お互いに損が無いどころか得にしかならないだろう?」
いや、それお前しか得してないやんけ。
「…取引はしない。どうせお前はアルフを殺したら、次は俺にネメシスをけしかける気だろう?なら、いっそここでお前を」
「いいや、お前は取引する。そして俺は戦闘データでたっぷりと稼ぎ、お前はワクチンであの女を助ける事を選ぶだろう。
お前があの男を庇う理由なんぞ存在しないんだからな!」
なんせアイツはアンブレラ社に居たアルバート・ウェスカーだ!
B.O.WとS.T.A.R.S.の戦闘データを得るために自分の部下を死地に追いやり、隊を壊滅させ、お前がご執心のジル・バレンタインを死なせかけた男だぞ!
「…冗談が下手だな。ウェスカーとやらは死んでるし、ジル本人が別人だと否定した。終わった話をほじくり返して動揺させるつもりか?」
「証拠なら有るさ。ソイツの耳の形をアンブレラに残されている個人認証データで照会したらな、見事に一致したんだよ。指紋だって取れたら同じだろうよ」
「耳の形だけで同じヤツ扱いとは笑えるぜ」
あー耳紋か、うん、どうするか……。
ああ、そうだ。良いことを思いついたぞ。
今日の自分は冴えてるな。
よし。
「ハハハ!本当に笑えるな!カルロス」
「…アルフ?」
「ご名答だよニコライ・ジノビエフ。いやはや耳の形のことを忘れていた。私としたことが迂闊だったが、もはや誤魔化す意味はないから良しとしよう」
「お前」
「ジルやお前の間抜け面を眺めるのは楽しかったよ。礼としてしっかり言っておいてやる」
自信と度胸はたっぷりと。
大切な隠し味には真実をひと匙くわえ。
疑う隙を許さぬ勢いで。
「私がアルバート・ウェスカーだ」
※頭が冴えているのは気のせい。
・カルロスのベストくん
しっかりとワクチンを守ってたから、原作のジルみたいに攻撃でワクチン落とす→ニコライがにこにこでワクチン奪う、のコンボが発生しなかった。
・おじさん
まだスコップあるから斧をリストラしても大丈夫大丈夫()
嘘をつくときは真実()を混ぜると良いって有名な話だよな!!!
うろ覚えの記憶と勢いだけでやっている人。
アルバート・ウェスカーを降ろすためにイタコの才能が欲しい。急募。
・カルロス氏
???!?…!!??????……?
(本物と面識が無いから比較ができない人)
・タイレル氏
ワクチン備蓄の存在を先に知っていれば、カルロスに言われるまでもなく、自分たちの安全のためにも交渉してるだろうと思ってこうなりました。
原作ムービーで目覚めたジルに政府と交渉してるからカルロスを待て、なんてサラッと言ってましたが、事態の原因でもあるアンブレラ社員かつ、メイン部署の人間でも幹部でも無い傭兵が、緊急時とはいえ単独で交渉の席に座れるって地味に凄いと思いますわ。
というわけでベテラン傭兵ならではの経歴の不透明さを活かして、それっぽい理由で強化してます。
・ニコライ某
闇のワクワクさん仲間からもらった素敵な寄生生物くんとガジェットで、ネメシスくんを操る銭闘士。
動揺を誘うために話をふっかけたが、おじさんがノって来たから内心ちょっとビビってる。
・ネメシスくん
原作でジルに落とされたのは手。
こちらでは首を落とされたが、マジ死にする前に追加の寄生生物くんでリペアしてもらった。
とても頭が良いので、カルロス・オリヴェイラと斎○工の見分けをつけられる。