目覚めたら某有名ゲームの悪役だったけど、正直言って困るんだが 作:プルスサウンド
見切り発車でやってるので、ウェスカーさんの能力ってこんなんだよ~!バイオの設定そこ間違ってるよ~!みたいなものがあればどうぞご教授いただければ。
まだウイルス馴染んでないのに頭を撃ち抜いて生きていたのは、脳挫傷を治したときに「ただしい脳細胞のなおしかた」をある程度は身体が覚えてしまったから、ということでひとつお願いします。
ロードローラで頭を潰せばきちんと逝けるけど、穴が開いたくらいはセーフみたいな。
ラクーンシティに着いたけど、自宅もといウェスカーさん家が何処にあるか分からない件について。
うん、そうなんだ。めっちゃ迷子。
山をさまよい、たまに遭遇するゾンビ犬を蹴散らしながら、3日かけてラクーンシティのはしっこに出たけれど、記憶がないから自分の家に帰れない痴呆老人みたいなことになっている。
超人の癖に山を降りるのにも3日かかったあたり、認めたくはないが自分は方向音痴らしい。
それに、財布や携帯や身分証みたいなやつはみーんな洋館か研究所に落としてきたようで、ポケットの中には高そうなライターとコーヒーショップのレシートとタバコの空箱だけ。
拳銃や銃弾、ナイフなんかは装備したままだけど、それに住所が書いてあるわけもなし。
「このコーヒーショップ、レシートに住所が書いてないやん。はーつっかえ」
行きつけの店だったら上手く聞き出してウェスカーさん家の場所を把握できたかもしれないのに。
と、そこまで考えてふと思い付いた。
「電話帳!」
そうそう電話帳。あれにウェスカーさん家の住所とか書いてあるかもしれない。そう思ってしばらく人目を避けながら公衆電話を探してみたけれど、住宅ばかりの場所にそんなものは見当たらなかった。
「……つっら」
もう3日も犬対策に木の上で寝てたし、川の水飲んで水浴びしてたし、食べ物は川の焼き魚だけだし、疲労感で死にそう。
風呂入ってまともな物を食べて屋根のある場所で寝たい。
まともな服も欲しい。こんなボドボドだとおまわりさんの服なのに通報されてしまう。そんで捕まったら「ウェスカーやんけ!どのツラ下げて生きてたんじゃワレェ!」って感じになってしまう。嫌だ。
「もうダメだ。空き巣しよ」
人間、凄く疲れて追い詰められるとモラルが壊れるものだ。
それにどうせ、バイオハザードが起きればラクーン市民はだいたい死ぬし、最終的に街は滅菌作戦で消えてしまうだろう。今、自分が空き巣したとしても大した問題にはなるまい。
だいたい、もしウェスカーさん家の住所が分かっても、そこは「死んだはずの人間の家」だ。おそらく捜査が入るだろうと考えれば、帰っても荷物を回収できるだけで住めるわけじゃないから、どのみちどっかの空き家に住み着いたり空き巣するしかないと思ってはいた。
「つーか殺人してるし、今さら罪状に窃盗が入るくらいどうってことない…」
研究所や洋館からおさらばする時に、実験の被害者の方々を容赦なくヤってしまったし。
開き直って住宅を見て回ること数分。
良い感じに荒れてるお宅を発見した。
何で荒れてる家にしたかって?
そりゃあ家が荒れてるってことは家庭が荒れてるってことだ。そういうお宅はご近所と疎遠な場合が多い。上手くいけば犯罪者のお宅だったりする。
んで犯罪者のお宅なら、空き巣しても通報されない可能性は高いってわけ。犯罪者じゃなくてもご近所と疎遠なら、ご近所さんは見知らぬ人物が出入りしても気にもとめないだろう?
「というわけでお邪魔しまーす」
外から見た感じ動いてる人が居ないから、仕事にでも行っているのだろうと判断し、裏口の鍵をドアノブごと破壊して侵入した。超人パワーのおかげじゃなくて、ドアがぼろっちいだけだから普通に筋力ある人ならイケるやつ。
壊したドアはもっと壊して開かないようにしとこ。そいっ!
念のためにナイフを構えて室内に入ったが、身体に染み付いたクリアリングの動作が自然と発動したことにビビった。さすが腐っても警察官だな。
で、二階までしっかりクリアリングした結果、このお宅は無人だった。そしたらもう服とご飯とお金を頂戴して、シャワー浴びるしかあるめぇ。
「わぁい冷凍食品ばっかやんけ」
で、腹の減りが凄いので冷蔵庫を開けたら水と炭酸飲料と酒とツマミのみ。だもんだから冷凍庫を開けたら、こっちは冷凍食品ばっかりだったんだなぁ。
まあダイニングテーブルがジャンクフードのゴミと冷凍食品の容器、酒瓶と吸い殻が山盛りの灰皿でとっちらかってるのを見て覚悟はしてましたがね。
男の独り暮らしなんだろうな。
好都合だから文句言いませんが。
そんな感じでカルボナーラをチンしながら、ボトルの水を2本も飲んでしまった。安心して飲める水は最高。
……あれ?もしかしてウェスカーボディなら泥水を飲んでも大丈夫だったりするか?
いや、飲みたくないから考えないようにしよう。
結局、カルボナーラだけじゃ足りなくてハンバーグとマッシュポテトのセットだとか、マカロニグラタンだとかを解凍してしまった。塩すらない3日間を過ごせば誰だって文明の味に涙が出るほど感謝するものだ。仕方ない仕方ない。
腹がくちくなったのでクローゼットを開けると、縦はともかく横幅がオーバーサイズな服がもりもり出てきた。アメリカの社会問題である肥満のせいだな。
「は?これ女児の服だろ」
んで、タンス貯金とかは無いのかとクローゼットひっくり返してたら、明らかに女児の服が出てきた。女の子用のワンピースとか、パンツとか。
でもクリアリングした時に「娘さんの部屋」とか見当たらなかったし、埃の積もった写真立てに飾られた写真には女の子なんて全く写ってなくて、老夫婦と息子らしき男の姿しかなかった。
で、部屋の匂いの感じから考えるに、老夫婦の寝室っぽい部屋は長く無人の様子。たぶんもう引っ越したか死んでいるだろう。息子らしき男の部屋だけは生きた臭いがしていた。
だから男の独り暮らしだと思っていたのだが。
「……親戚の子の服?離婚したから妻子が出てって、写真も持ってかれたから服だけ残してあるとか?…もうお腹いっぱいで眠くて頭が回らなくなってきた…わからん」
とりあえず食ったもんとか荒らしたクローゼットとか証拠隠滅して、シャワーを浴びてどっかで寝よう。
今まで着ていた服は装備ごと、綺麗なゴミ袋を開封して突っ込んだ。破れてるシャツやベストはともかく、戦闘を想定した丈夫なズボンだとか装備用のベルトなんかは洗濯して使いたい。
明らかに掃除の足りていない水垢だらけの風呂を借りてさっぱりし、横幅が足りすぎな服を借りる。
新しい歯ブラシも借りておこうと洗面台の前に立ったら、あまりの服装に絶句した。
「うわダサ過ぎて……これはダメだろう」
もう良い歳したおじさんにも関わらずこの服装はまずい。メンズのゆるコーデを通り越してだらしなさしか感じられない。袖とかウエストとかだるんだるん。酷すぎる。
うろ覚えだけどウェスカー氏って、バイオ5で2010年くらいに50歳近いはずだから、えーと、カレンダーカレンダー…あった。
今は1998年か。じゃあもうアラフォーじゃん。
どっかでまともな服を買わないとなぁ。
で、寝床を老夫婦の寝室に定め、クローゼットの中に毛布などを持ち込んでおやすみなさい。
ベッドとか、寝てる間に家主が帰宅したら怖いからな。
目が覚めたのは翌朝だった。
腕時計のおかげで時間が分かるのは幸いだ。
なんと16時間も寝ていたらしい。おかげで身体はバキバキだが頭がすっきりしている。
家の中に人の気配がしたから、出掛けた音がしても昼過ぎまで待機して、ようやくクローゼットから抜け出した。
「じゃあ適当に何か食べたら、本格的に家捜ししますか」
金目の物、金目の物…。
やはり貧困でもあるのか、家の中にあまり現金が無い。
あ、社会保障番号のカードだ。絶対に持ち歩くなって本当に書いてあるんだな。
えーと、家主はアルフレッド・スミスさんか。何かに使えるかもしれないし覚えておこう。
で、そんなこんなで集めたお金は250ドルちょい。
ウェスカー氏の持っている物より明らかに安そうな拳銃とマガジンがちょいちょい。
大麻にしか見えない乾燥した葉っぱがちょいちょいちょい。ラクーンシティってどこの州かは知らないけど大麻は合法だっけ?わからん。
そんで、食品庫の床にある鍵のかかった扉を発見した。
もしかしたら大金とか仕舞ってあるかもしれないので、確認させていただこう。資金が豊富なら滅菌作戦までのんびりホテル暮らしも良いかもしれない。
ではこのマスターキー(暴力)をくらえ!
「おじさん、だぁれ?」
地下室を開けたら明らかに監禁されてる様子の少女が居た件について。
「ホンマもんの犯罪者の家やんけ」
・アホなのか頭が良いのかどっち?
→アルバート・ウェスカーの脳味噌は優秀。でも思考してるヤツがちょっとアホ。
・新世界の神について、中身の見解。
→ケツ拭く紙すら事欠きそうな新世界とか嫌だ。社会って大多数の代替可能な凡人で維持するシステムだし、そういう安定した社会だからこそ現代的な生活ができるってもんだろうに。
中世の貴族より現代人の生活ってヤツ。
この話を書くためにバイオハザードの資料よりアメリカの電話帳だとか冷凍食品の歴史だとか、携帯電話普及率の推移だとかを調べ回るはめになりもうした。わはは。