目覚めたら某有名ゲームの悪役だったけど、正直言って困るんだが   作:プルスサウンド

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カプコンさんのヘリだからって全てが落ちるわけじゃないだろ!いい加減にしろ(棒読み)

ネメシスくんの最期に関しては、正直に言えば食ったのが毒入りリンゴだったのが悪かったのですよ。もっと楽観的で、生物系の知識なんてない人から盗めば、もしかしたら幸せになれたかもしれませんね。

RE:3を履修してる方なら分かるかもしれませんが、今回は鬱々しい表現がいっぱいです。でも大丈夫。
履修してない方はタイトルをしっかり見てから本文を読んでください。





『あれは誰の悪夢だったのか』

 

 

 

「知らない天井だわ」

 

 一部の人間に聞かせれば過剰反応しそうなセリフを口にして、ジル・バレンタインはベッドから身を起こした。周りを見ればそこは病院の処置室みたいな内装で、いや、まさに病院の処置室そのままの部屋に居る。

 

「あれ…?」

 

 体はだるいが、普段の寝起きとそう変わらない感覚に戸惑いを感じた。確か自分は駅前で、怪物の最期の足掻きにやられて…

 

 ジルは己の手をまじまじと見つめる。そこにはゾンビ化する気配など微塵(みじん)も感じさせぬ、健康的な肌色があるばかり。

 ベッドから降りて周囲を見ても、自分以外は誰も居ない。

 そもそもなぜ自分は病院らしき場所にいるのか。

 

「ジル!」

「カルロス?」

「良かった…無事だったんだな…」

 

 勢い良く両開きのドアが開き、草臥れた様子のカルロスが飛び込んでくる。彼はジルの手を握ると、疲れを強く滲ませた笑顔で口を開いた。

 

「良い知らせがある」

 

 全て終わった。街は安全になったんだ。

 

「良かった…!」

 

 ジルはカルロスの手を握り返し、

 そして突き飛ばされた。

 

「オ"ェ"ッ」

「カルロス!?」

 

 大量の血を吐き出したカルロスが床に倒れ込んだ。

 吐血は止まらず、体を震わせる彼の肌はどんどん血の気を失い、やがて見覚えのある薄気味悪い色に変わる。

 

「うそ、いやよ!カルロスそんな…」

「う"って、く"れ!」

 

 這い寄ろうとするジルを制止して、カルロスは言葉を絞り出した。

 

「ほか"に…ほうほ、う"は……」

 

 呻きながらにじり寄るカルロスから距離を取る。

 銃を構えた。腕が震えて、それでも至近距離ゆえに外すことはないと、ジルの内側で経験が囁く。

 引き金が硬い。まるで溶接されたように、指を引くことができない。嫌だ。カルロスを撃ちたくない。嫌、いや

 

「た"のむ"……じ、る…」

 

 濁り始めたカルロスの瞳が、わずかに残る理性を見せてしまったから。

 

 

 

 

 

 響く銃声

 

 

 

 

 

 いつの間にか部屋の入り口に立っていた男が、沈痛な面持ちで銃を構えていた。

 カルロスはもう、動かない。

 

「カルロス、すまない……すまなかった……」

「タイレル?」

「ジル…」

 

 泣きそうな顔のタイレルに引き起こされ、逃げるように処置室から出た。混乱したままのジルを、彼は受付に置かれていた事務椅子に座らせる。

 

「聞いてくれ。カルロスがアンタを助けた」

「…」

「街は安全になった。ゾンビは食う物が無くなって、ほとんど動かなくなったんだ。引きこもって無事だった生存者なら、もう逃げられるようになってるはずだ」

「……」

「でもな、俺たちの中で無事なのは…」

「ウソでしょう?」

 

 自分が呑気に寝ている間にいったい何が

 そうだ

 

「二人は?アルフレッドは?アリエルはどこ!?」

「……アリエルは、間に合わなかった」

 

 アルフレッドは感染していなかったんだが。

 

「でも、アイツは耐えられなかった。自分であの子を寝かせたのも良くなかったんだろう。その後、遺体を抱えたまま一人にしてくれと言って……銃声しか聞いちゃいないが、もう」

 

 あの時、引き留めていれば。

 

 うつむいていたタイレルが、廊下に繋がるドアの向こうに視線を向ける。

 曇りガラスの向こうは真っ暗で何も見えなかった。

 

「俺も、もうダメだ」

「そんな」

「自分の状態くらい分かるさ。ワクチンは無い。どうしようもないんだ。自分の後始末くらいはできるから、安心してくれ」

 

 彼のベストの脇腹部分は何かに引き裂かれたように破れていた。足元には赤黒い水溜まりができ始めている。

 良く見れば顔色はかなり悪い。まるでさっき見たような。

 

「逃げろジル。アンタだけでも」

 

 屋上に病院のヘリが残ってる。念のため、それに乗るんだ。乗って、この地獄から確実に助かってくれ。

 みんな死んじまったら、俺たちが何のためにここに来たのか分かんなくなっちまうだろ?

 頼む、ジル。

 たのむ。

 

 

 

 汗が滲む手にヘリの鍵を握らされる。

 廊下に出た直後、ドア越しに銃声を聞いた。

 

 

 

 渡された鍵の冷たさを感じながら、おぼつかない足取りで屋上を目指した。

 

 血塗れの院内は静かで、夏なのに空気はやけに肌寒くて、まるで地獄の最下層のようだった。点々とゾンビだった誰かが転がり、時おりバリケードが道を塞いでいる。

 診察台や椅子、棚は倒されていた。廊下の脇には感染していなかったものの大怪我をして、治療の甲斐なく息を引き取った誰かが眠っている。

 散乱するガラスが靴の裏で涼やかな音を立てていた。消毒薬の空ボトルを蹴飛ばした音が響いても、何にも襲って来ない。

 虚しい安全が、止まった空気が、静かな夜がそこにあるばかり。

 

 不意に、自分以外の足音を聞く。 

 

「誰!」

 

 ジルの訓練された肉体は、反射的に音のした方へ銃口を向けた。誰かであって欲しかった。生きた誰かなら。

 

「……ジルさん、か」

「アルフ?」

 

 薄暗い院内でも分かるほど、真っ暗な人影が立っていた。何故か目の部分だけが赤く光るそれはゆっくりとジルに近付き、やがて窓から射し込む月光に照らされる。

 小さな体を抱きかかえた男の表情は血で汚れている事もあり、恐ろしいほどゾンビに良く似ていた。彼が口を開かなければ、もはや生きていないと判断してしまっただろう。

 

「貴方、生きてたのね!」

「……」

「ヘリが屋上にあるの。一緒に行きましょう?」

 

 あまりにも酷い状況だ。

 仲間になった者のほとんどが亡くなり、洋館事件を繰り返したかのような喪失感と疲労感がジルを包んでいた。

 それでも死んだと、自ら命を絶ってしまったと思っていた男が生きていたのだから、せめて彼だけでも連れて行かねばと、ジルは手を伸ばす。

 

「死ねないんだ」

 

 掴んだ腕は血で湿っていた。

 最後に見た時は薄い水色だったワイシャツの全面が、赤黒く濡れそぼっている。やけに耳につく足音は濡れていたからだ。その足跡は黒い。

 抱えられた小さな体も、良く見れば彼に触れた部分が赤黒く汚れている。

 

「どうしたら良いんだろうか」

 

 亡霊が何かを喋るとしたら、きっとこんな声なのかもしれない。

 ほのぐらい水底から立ち上る泡のような声が、ジルの背を撫で上げた。

 

「ダメだったんだ」

 

 銃を咥えて頭を撃った。心臓も。

 それでも死ななくて、内臓逆位で心臓が右側にあるかもしれないと思ったから、反対側も撃ったんだけど、やっぱりダメで。

 何回もやってたら、弾切れになってしまって。

 

「ひっ」

 

 血の色をした瞳が迫り、思わず後ずさる。

 

「だから、お願いだ」

 

 男がまた一歩、ジルに近付いた。

 

「殺してくれ」

 

 きっとゲームだから主人公じゃなければ敵は殺せないんだろう。システムなら仕方ない。敵が勝手に自殺したら困るもんな。死ねなかったのはそのせいだ。絶対そう。だからジルさんならできるはずなんだ。私を殺せる。

 今ここで、君だけがこの肉体を終わらせる権限を持っているんだ。

 

「頼むよ」

 

 吐息からは、新鮮な血の臭いがした。

 

「もう、つかれたんだ」

 

 血の色みたいな目が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めた。

 心臓が早鐘を打っている。転げ落ちるようにベッドを降りて、

 

「っ!」

 

 近くのベッドで安らかに眠る少女と、いびきを立てて動かぬ男たちに、とりあえず安堵の息を漏らした。

 

「良かった……タイレルはどこかしら?」

 

 腕は痛むが治療の痕があるし、疲れているものの体調は悪くない自分の体。

 すやすやと愛らしい寝息をたてる少女の顔色も明るい。

 床に仰向けで落ちているカルロスはかなり疲れた顔をしている。しかし血の気は普通で大きな外傷も見られない。小さないびきを漏らす口がむにゃむにゃと動いていた。

 その近く、椅子に浅く腰掛けて、腕を組んでうつむくアルフレッドからは、地響きのような音が漏れていた。

 

 そしてジルの目の前で、彼はお手本のように椅子から滑り落ちる。わざとか疑いたくなるほどのタイミングの良さに思わず吹き出してしまった。

 尻をしこたま打ちつけて、彼は呻きながら身を起こす。

 

「う"お"ぉ"……あれ?じるさん?」

「ええ。貴方たちが無事で良かったわ」

「そちらこそ、本当に良かったよ。あ、タイレルさーん!ジルさん起きたぞ!」

「おー!最高の知らせだな!」

 

 ドアの向こうからはタイレルの元気な返事が飛び込んでくる。

 彼も無事みたいだ。肩の力が抜ける。

 

「カルロス起きろ。ジルさんが起きたぞ」

「いっで!…おい、お前の馬鹿力で叩くなよ」

「あら、二人ともすっかり仲良くなったのね。妬けちゃうわ」

「あー、うん。色々あったからなぁ」

「二人が助けてくれたの?」

「うんにゃ、カルロスがMVPだよ」

「お前もだろうが」

 

 疲れた顔でそれでも笑いながら、背中をバシバシ叩き合う二人に思わず笑みがこぼれる。

 

 カルロスは感染していないし。

 タイレルもすっかり無事。

 アリエルだってワクチンが間に合った様子で。

 アルフレッドは正気のままだ。

 

 きっとまだ全てが終わったわけじゃないけれど。

 

「そうだわ。今、どうなって…あら?」

「どうした?」

「落とし物よ、これ…」

 

 状況を聞こうと身を乗り出して、何か黒い物が床に落ちているのが目に入った。椅子の下にあるのだから、さっき床に転げ落ちたアルフレッドの物だろうか。

 拾い上げると、それはやけにジルの手に馴染んだ。

 

 

 

 アルバートモデルのサムライエッジだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 
・ジルさん(原作主人公)
酷すぎる悪夢を見た。原作の悪夢より長いのは書き手の趣味のせい。すまんの。

やべーもんひろった。


 
・おじさん(今作主人公)
ここ数話まともに活躍してないが、これでも主人公なのだ。
サムライエッジが個人レベルでカスタムされた銃だと知らなくても、主人公なのだ。

あ、拾ってくれてありがとう~!と能天気にお礼を言ったとしても。



・幼女さん
まだ寝ているが、帰ってきたおじさんにぎゅむっと抱き締められて寝苦しくなり、3発くらいおじさんを蹴って殴った。とても元気。



・カルロス氏(原作主人公)
カプコンのヘリを落とさずに運転できる腕と運の持ち主。
傭兵だから床で寝るのもへっちゃら。
サムライエッジ?なにそれ。



・タイレル氏
政府と交渉しながら二人の様子に注意し、カルロスから連絡を受けて頼まれた、効果が濃縮され過ぎてるワクチンを打ちやすい量に希釈する方法を探し、必要な物を準備し、ジルの治療が終わったら再び交渉に戻った人。



あの千倍ワクチン、市民全員ってことは最大で10万人分くらいあったりするんか?
希釈レベル農薬かよ!
ワクチンの希釈液とかどうすんのやろ。生理食塩水で代用しちゃダメ?どっちも筋肉注射できる液体やし。
医療系じゃないから良くわ"か"ん"に"ゃ"い"!


そして、やはりたかし君はクラスの人気者。はっきりわかんだね。感想欄の方が作品より面白いってそれ誇らしくないの?
皆さん素晴らしい解答をありがとうございました!
グリフィンドールに50点!!!



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