目覚めたら某有名ゲームの悪役だったけど、正直言って困るんだが   作:プルスサウンド

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オールバックじゃないおじさんの髪型?
普通に下ろしてるんじゃないかな(なにもかんがえていない)

少女さんのご活躍はしばしお待ち頂ければ。
普通に政府施設でお留守番してます。
あと、おじさんの出張頻度はそんなに高くないです。

首輪さんの無能ぶりに失望された方が多いようなので、チート強化しないと…!という使命感を感じてしまう。





シベリアで生物兵器を数える簡単なお仕事 ②

 

 

 

「何だってこんな事になってるんだ…」

「……そうですね」

 

 空調が死んで冷ややかな空気に満たされた研究所内の部屋にて、自分とクリス氏は微妙な空間を開けた状態で突っ立っていた。自分と彼以外、この場には誰もいない。

 双方共に目は死んでいた。原因は明白だ。

 

 さっきまで居た広い部屋からは、大型ガスタンクの爆発がどんどん他の燃料に引火しているのか、扉越しに爆発音が聞こえている。

 

 つまり簡単に言えば、自分とクリス氏は後戻りできない状態で、お互いのパートナーとはぐれてしまったのだった。幸いにも無線は通じているし二人の無事も確認できたが、事前に準備していたマップが正しければ、ここから中枢部まで合流できる地点がない。

 ゆえにパートナー変更を余儀なくされた我々は、それでも目標が居るらしき研究所の中枢部へと向かう必要があった。

 

 すいません。チェンジお願いします(ジルさんが良いです)

 

 

 

 

 

 

 

 (さかのぼ)ること数時間前。

 

 雪原を二つの影が走り抜けていた。軽く吹雪いているために良く見えないが、体格も走り方も、明らかに人間のそれではない。

 彼らはハンターと呼称される生物で、つまりモンスターだった。

 

 それを確認してしまえば話は早い。彼らの上空を飛行する大型ヘリから正確な銃撃が降り注ぎ、体に孔を開けられたハンターはその身を伏せた。

 止めとばかりに、もはや死体となった爬虫類の肌に発信器が突き刺さる。

 やがて除染部隊が到着する頃には、その身が白雪の下に飲まれているだろうから。

 

 ロシアの白き大地は、あらゆるものを静かな眠りに誘う。

 美しい彼女は何も区別する事なく、けぶる雪のヴェールで全てを覆い隠してしまうのだ。

 

『北東から高速で接近する二つの飛行物体を確認。速度から軍用ヘリと推測します』

 

 地下深くに位置するコンピュータールームにて、警報の音と赤后(R Q)のアナウンスに耳を傾けながら、セルゲイ・ウラジミールは愉しげに笑っていた。

 

「政府に介入されては厄介だ。テイロスの起動を急げ」

『了解しました。起動プログラムの開始時刻を再設定します』

「これしきの痛み、前座にもならんよ」

 

 完全に吹雪が止んだ研究所に、侵入者たちが降り立った。彼らが次々と生物兵器を駆逐し、異形の体に痛みが走るたびに、ウイルスの機能を駆使して同調するセルゲイの神経にも同じものが再現される。

 

「は、ハハハハハハ!!!これは傑作だな同志よ……前の貴様も度しがたい愚か者だったが、今の貴様はもはや道化だ」

 

 やがてセルゲイは生物兵器の視界を介して侵入者の様子を知覚し、見覚えのある男の姿を確認すると、盛大に嗤い始める。

 

「ハハハハハハッ…ゲッホ!ゴホッ……」

 

 そして笑いすぎでちょっとむせた。

 

 

 

 

 

 

 

 研究所でバイオハザードが起きている可能性がある。

 

 先ほどのハンターが脱走した個体だと仮定したクリス氏は、険しい顔でそう意見した。

 

 生きた人間がいる拠点を制圧するのと、感染者や生物兵器しかいない拠点を制圧するのとではやり方が多少異なる。研究所に生きた人間がいない可能性があると先んじて予測しておく事は、決して無駄ではなかった。

 並走するブラボー隊のヘリまで、通信で情報が伝えられる。心構えで命が助かるなら安いものなのだ。

 

 やがて吹雪が止んで見通しが良くなると、工場部分の所々に感染者の姿が確認された。それどころか生物兵器が脱走し、自由気ままにうろついている姿すら確認できる。

 隊長さんが後続の除染部隊に連絡を飛ばしていた。

 

 

 

 ヘリから降下して隊列を組み、速やかに準備を終えたら出発である。

 

「盛大なパーティーの真っ最中ってわけか」

「感染者だけじゃなくて、生物兵器までいるなんて豪勢ね」

「せっかくの奢りだ。礼をしないとな」

 

 主人公三人がとてもイカしたセリフを口にしているが、自分は月並みな事しか言えそうにないので勘弁して欲しい。何て言うべきなんだこういう時。

 ゾンビと生物兵器が山ほどいるなぁ…としか思わないんだが。

 もしや自分は感性が死んでいるのか?

 

 先んじて制圧を担当するアルファ隊と共に、工場部分を進む。生きた人間(知能ある存在)が居ない前提で行われるクリアリングはほとんど問題なく進み、数分に一度は部屋に投げ込まれた手榴弾の爆発音が鳴るような作業と化していた。

 しかし存在するものを有無を言わさず殲滅する必要があるため、その進行速度はじわりじわりと低下していく。

 後続部隊はまだ到着していない。

 

「あーあ、これ内部のバイオハザード処理部隊だろ。ゾンビになっちゃってるって事は、ここのバイオハザードはやっぱり事故なのかねぇ」

「事故じゃない場合……ああそういう事か」

「そう。セルゲイ氏が我々から逃げる算段を立てるとしたら、時間稼ぎと情報源の処分を兼ねて、要らないと判断した職員をゾンビ化するか生物兵器に殺させるのが手っ取り早い」

「それを制御するために生かしておいた戦闘要員も、こうして巻き込まれているって場合もあるぞ」

「もしくは自分以外は要らないと、初めから全職員に感染させた場合も」

「まあ本人に聞くのが一番早いだろう…生きてるならな」

「せやな」

 

 生物兵器と共に徘徊する感染者の姿は、一般的な作業員や警備員のものだけでなく、明らかに装備の良い戦闘要員も含まれていた。

 どうしてこうもタイミング良くバイオハザードが起きているのか考えると、なんとも言えぬものを感じてしまう。

 

 たしか原作では「ロシア支部はアルバート・ウェスカーが黒幕めいた何かをやったせいでバイオハザードが発生した」はずだ。何をどうしたのかは忘れたが、エンディングのムービーでは「私のおかげで制圧できたのだクリィィス」みたいなセリフがあったような気がする。たぶん。きっとそう。

 

 でもご覧の通り、自分はそんなことしちゃいない。なのにこの有り様だ。

 ならばこれはセルゲイ氏ご本人の手によるものか、奇跡のような偶然か、はたまた見知らぬ誰かが何かを企んだ結果なのか。

 全く分からないのが現状だった。

 

「俺たちはこのルートから先行する」

「分かった。もし目標(セルゲイ)が死んでいなければ、生け捕りと身柄の引き渡しを要求する」

「証拠品の取り分は後ほど話し合うという事で」

「急ぎましょう。逃げられたら元も子もないわ」

 

 さて、このバイオハザードが足止めで、セルゲイ氏が逃亡する可能性が高まっているため、我々は制圧スケジュールに遅れが生じている本隊から離脱して、中心部へ先行する事になった。

 元々この部隊に所属していなかった我々が離脱したところで、隊の運用に問題は出ない。獲物の分け前に関しては、国籍が違うのが懸念材料ではあるが、先行のリスクを部外者に負わせられる。

 そういう面から離脱の許可が出たのだ。

 

「また吹雪いてきたみたいね」

「天候が荒れてきたとなると、後続の到着は遅れそうだな」

 

 無線に耳を傾けつつ、四人で前後左右を警戒しながら進む。生物兵器はどこからやってくるか分からないため、僅かな隙間も警戒対象だった。

 こうして仕事となると流石プロというべきか、クリス氏も無愛想ながら必要なやり取りは厭わないため、問題は無い。

 いや、今や自分もきちんと訓練を受けてるプロなんだけどもね。

 

「進めば進むほど出てくる量が増えている気がする」

「気のせいじゃないと思うぞ」

 

 ダクトから意気揚々と這い出てきた、ハエと人間のハーフ(しかも体に蛆を飼育している)とかいう狂気の産物をスコップで強打して黙らせる。コイツらは動きが早いから、弾を避けて接近してくる筆頭だ。

 他にも猿っぽいのやハンターや、犬やらリッカーやらデカい蜘蛛など、見慣れた連中が勢揃い。

 オフ会じゃねーんだぞ。解散だ帰れバカ者。

 

「……なあ、レオン」

「どうした?」

「何でコイツはさっきからスコップで戦ってるんだ?部隊に随伴してた時は普通に銃を使っていただろ」

「弾が補給できる保障が無くなると、ケチるのが癖になってるらしい。あと彼からすれば大抵の敵は叩いた方が早くて確実なんだそうだ」

 

 流石にハンターみたいな打撃に強めのヤツは、銃を使った方が楽だし早いけどね。

 でもクリス氏ぶっちゃけTASさんみたいな頭おかしいエイム(ぢから)の持ち主だし、遠距離の敵は全てお任せしたいです。

 ゲロ飛ばしゾンビをゆるすな。

 

 

 

 そうしてしばらくすると広い部屋に出た。大型のガスタンクや正方形のコンテナ、段ボール箱などが整理されて積まれている。燃料保管が目的なのだろうか、金属壁の雰囲気が今までとは異なっていた。

 ルートによると、この部屋の階段を上がって上階にある区画に入れば、ここのシステムを担うコンピュータールームに最短で辿り着けるはずだった。

 

「……あからさまに罠では?」

「素早く走り抜ければ良いだろ」

 

 目的の階段の先には金網の通路が繋がっている。

 しかしその通路の上には、大型ガスタンク3本セットが天井からのフックで吊るされていた。

 絶対に頭上から落ちてくるヤツだ…ゲームだったらボタン操作で避けないと即死するヤツ。

 

 通りたくないなぁ…と思ってしまうが、自分以外の三人は通る気しか無いようだ。

 まあモタモタしていれば、それだけセルゲイ氏が逃げる時間を提供する事になるのは確かである。ここは行くのが正解なのだろう。

 

「うわっ!!!」

「そういう罠か!」

「きゃっ!」

「あちゃー…」

 

 と思っていた事もありました。

 普通に少し早めで落としてくるの止めろ。走り抜けようとするタイミングで当たるだろうが。

 

 位置の関係で素早く走り抜けてどうにかなったのは自分とクリス氏だけ。レオン氏とジルさんは咄嗟に通路から飛び降りる形で回避するしかなかった。

 ガスタンクは通路を破壊して燃え上がる。

 それが他のガスタンクの山に引火するのは何もおかしな事ではなく。

 

「逃げろ!!」

「君たちも早く扉へ!」

 

 後はもう何も考えずに扉の向こうへ駆け込む他なかった。

 

 

 そして場面は冒頭に戻るというわけだ。

 

 

 

 

 

 




 
小説版レッドクイーンさんの赤后って呼称が好き。


・おじさん
スコップは文字通り相棒。
そこらの鉄パイプや建材とかだと、すぐに曲がったり折れるから役立たずだと思っている。最低でもマスターキーくらい頑丈じゃないと困る。

色々と軽く見えるのは、常人より死ににくいゆえにどうしても拭えない感覚の差異が原因だったりする。
怪我してもハーブいらずで治るし。
(ハーブやカロリーがある方が良い)



・レオン氏
ハーブさえ食べれば大抵の怪我はどうにかなるから、おじさんほどじゃないが感覚が常人よりおバグりあそばしている。
新米警官(になりそこねた)→エージェントゆえに単独または少人数での任務遂行には馴れているが、部隊単位での活動には慣れていなかったので少し新鮮な気分だった。



・ジルさん
ハーブさえ食べれば以下略。

スターズ所属以前はデルタフォース訓練過程をクリアした経歴の持ち主らしいですよ。やべぇ。
部隊単位での活動はお手の物。



・クリス氏
ハーブさえ以下略。

元空軍パイロット。スターズに所属する25歳より前にこの経歴。やべぇ。
やはり部隊単位での活動はお手の物。
おじさんからは「イン○ル入ってる」ならぬ、TASが入っていると思われている。

運命のイタズラでおじさんと組まされてしまった。
どんまいw




UCの最後にウェスカー氏が座って操作しているカッコイイあのガジェットを見ると、架空のソプラノを思い出してニッコリしてしまう骨ですごきげんよう。
一生に一度はインタラに行きてぇなぁ。



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