目覚めたら某有名ゲームの悪役だったけど、正直言って困るんだが 作:プルスサウンド
ジャンルのパワーってすげー……
評価、誠にありがとうございます。
まだ助走の勢いがあるので短期間で更新してます。
ウェスカーおじさんの身長って183から190に伸びてるんですね。ウイルスのちからってすげー!
地下室を開けたら少女が居た。
それも、足が鎖に繋がれているような本格的な監禁被害者。
バイオハザードがまだ起こってもいないのに、治安がアメリカン過ぎでは?
そりゃあアメリカの犯罪で少女の拉致監禁ネタは仰天ニ○ースとかの鉄板だけど、実物を見るとドン引くしかない。
地下室の内装は少女らしく可愛いものだが、だからこそ部屋の片隅に置かれたおまるや、少女の足に繋がれた鎖が際立って異様に見えた。
「おじさん、だぁれ?」
「…お、おじさんは……ちょっとこの家に遊びにきた普通のおじさんだよ!」
「お父さんのお友達?」
「そうだよ!お嬢ちゃんはどうしてここに居るのかな?」
「お父さんがここに隠れてないと危ないって言うからだよ」
そっかー……
自分の娘を監禁……やべぇ…やべぇよ…
え、これどうしたら良いんだ?え?
とりあえず地下室の中にお邪魔して、この子の話を聞いてみようか。
「お嬢ちゃんの名前は?」
「アリエル!…でも、お父さんはリジーって呼ぶの。私はエリザベスじゃないのに」
また謎が増えてしまった。エリザベスの愛称がリジーなのは分かる。でもこの子はリジーじゃなくてアリエルって名前らしい。
この子のお父さんは、お酒で頭がおかしくなっているのか?いや、監禁してる時点でおかしいが。
「アリエルのお父さんは何してる人なんだい?」
「わかんない。でも、夜になったら一緒にご飯を食べるの。終わったら一緒にお風呂に入って遊ぶんだよ」
コレはアカンかもしれん。
日本じゃ小学生低学年くらいまでなら女の子がお父さんと風呂に入るけどな、アメリカはそれだと性的虐待になるんだよ。男女逆でもそうなる。
これ豆知識な。
「そっかー…お父さんのことどう思う?好きかい?嫌いかい?」
「もちろん好き!でも、お外に出してくれないのは嫌い。すごく危ないって言われたけど、何で危ないのか教えてくれないもん」
警戒心が死んでるんか?
知らんおじさんにここまで話すとかやべぇな。
「お父さんとは何して遊んでるの?」
「プロレス!おじさんも遊ぶ?」
アウト。
「服を脱ぐプロレスはちょっとやりたくないかな。ほら、裸だと風邪引くからちゃんと着なさい」
「はーい」
あーあ、どうしようか。
正直、この子…アリエルが居るならこの家を荒らして逃げても通報はされないだろう。でも、彼女を放置するのもなぁ。
ウェスカー氏ご本人なら…たぶん見捨てるか、気紛れに連れてくけど被検体にしそうだ。
じゃあ「自分」はどうしたいのかって考えると、やっぱり放置するのは気持ちが悪い。今さら良い人面をするつもりはないけれど、この地下室でミサイルが降る日まで何にも知らないで父親に██されているだけだとか、地下室がシェルターになった結果として閉じ込められたまま餓えて死ぬのは…辛いだろうな。
特に餓死なんて自分でも嫌だと思う死に方だ。
それに、どうせなら心残りなく滅菌作戦を浴びたい。
「……もしもお外で暮らせるって言ったら、出たい?」
「ほんと!?お父さん許してくれるかな?」
「説得してきてあげよう。だっておじさんはお父さんの友達だからね」
「楽しみにしてるね!」
「任せなさい。だからちょっとだけ待っててね」
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アルフレッド・スミスはその日も、ホームセンターの店員という大層なお役目を果たし、行き付けのバーガーショップで購入したセットメニューを抱えて帰宅した。
うるさい客、ムカつく客、気にくわない同僚、バカにしてくる上司。毎日うんざりするような日常ばかりだが、アルフレッドには可愛い妻がいる。
三年前にちょっと強引な手段で結ばれた相手だが、やがて妻は彼を受け入れて、今では仲睦まじく暮らしていた。結婚しろとせっついていた両親も、あの世で安心しているに違いない。
「ただいまリジー」
太鼓腹を揺らしながら、妻の好きなチーズバーガーのセットと、日差しをほぼ浴びない生活を支えるビタミンDを初めとしたサプリメントを抱えて扉を開けると、濁った空気が鼻につく。明日は休みだから掃除をした方が良いだろうと思いながら、アルフレッドはダイニングテーブルの上に散らばるゴミを退かして荷物を置いた。
「おかえりアルフレッド」
明らかに男の声だった。アルフレッドの背中に固いものが当たる。誰だ?
「ひっ」
振り返ると銃を構えた男が真後ろに立っていた。190センチあるアルフレッドより少し背は低いが、威圧感を発しながらこちらを凝視している。
クローゼットを漁ったのか、見覚えのある猫がプリントされたパーカーを着ている男は、まるでここが自分の家だと言わんばかりの図々しさで、アルフレッドに着席を促した。
「まあ座れ。何か飲むか?」
「い、いらないっ!」
「そうか。私はマダオだ。ここには空き巣に入った」
マダオと名乗った金髪碧眼の男は堂々と自分が空き巣であることを宣言すると、アルフレッドに笑いかけた。
その獰猛な笑みがより強い恐怖をもたらし、彼のニキビだらけの背に冷や汗が浮かぶ。
「…か、金が欲しいのか?」
「その通りだ。しかし私は欲張りでね」
君は小児性愛の犯罪者が刑務所でどんな仕打ちを受けるか知っているかな?
ATMの監視カメラに金を引き出す姿が映って以降、アルフレッド・スミスの姿を見た者は居ない。
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念のために偽名を名乗って家主を脅してみた。
囚人のヒエラルキーにおいて、性犯罪者…特に子どもに手を出したヤツは最底辺だ。だから収監されるとかなり悲惨な目にあう。
そこを突いて、家主から家と貯金を巻き上げることにした。彼のご両親が亡くなっているのは確認済みだ。その遺産があるなら滅菌作戦まで何不自由なく暮らせるだろう。
家はアレだ。アリエルを連れ歩いてホテル暮らししたら、自分が誘拐犯だと思われるから欲しいってだけ。
「分かった…金と、プリペイド携帯だな」
「君がおごってくれるなら、もうこの街に用はないからな。私は明日にでも居なくなる。君はこれからも地下室の彼女と仲良く暮らせば良い」
そんな嘘を信じた家主が要求された5000ドルと携帯を持ってきた後、職場に「良い転職先が見つかったから辞める」と電話させてから殺した。引き金は不思議と軽かった。
ゾンビになるよりマシだし、そのうち自分を含めてみんな死ぬから、まあ許して欲しい。
「で、殺したは良いけどどうするか」
滅菌作戦がいつなのかは分からないが、まあ一週間後にはバイオハザードが起きて、二週間もすればミサイルが飛んでくるだろう。それまで騒ぎにならないようにしておきたい。
「……石灰と一緒に埋めるか」
また遭難したくないから、車で山に戻って道の脇にでも埋めよう。ゾンビ犬に掘り返されて騒ぎになると困るから、墓穴は深めにして石灰と共に埋めれば良い。
完全に隠蔽するならグロテスクな死体処理が必要になるが、それをやるには家主の身体がデカ過ぎた。自分より背が高い脂肪たっぷりボディとか、筋力がなかったらそもそも運ぶことすらできないだろう。
まあ家主には車庫で死んでもらったので問題は無い。
「アリエル。お父さんとお話してきたから出ておいで。夕飯を食べよう」
「はぁーい!」
家主のおごりの冷めたチーズバーガーと、しなしなのポテトを温め直して夕飯にする。青い野菜が欲しくなるメニューだ。
明日は服屋とスーパーとホームセンターだな。家主の職場じゃない店舗に行かないと。
「ねぇおじさん。お父さんは?」
「あー、実はな…お父さんは急な出張でしばらく会えないんだ。代わりに私が君を預かることになった。だから君を外に連れて行けるように説得したんだ」
出張について知らないアリエルに説明すると、彼女はしばらくグズっていたが、お出掛けで釣ってなんとか機嫌を取ることに成功した。
「おじさんってなんて名前なの?」
「うーん………強いて言うならマダオだな」
「すっごく変な名前!」
まるでラクーンシティから脱出する気が無いオッサン。略してマダオです。
マトモに名乗るときはアルにしよう。アルバートの名前と、家主のアルフレッドの名前が似てるから、何かを誤魔化す時に楽だろうし。
この後、一緒に風呂に入ろうとするアリエルを説得するのにめちゃくちゃ苦労した。
・アリエルちゃんってどんなこ?
→拉致監禁洗脳で誘拐犯をお父さんだと思ってる。
おじさんと幼女の組み合わせが好きだけど、原作幼女のシェリーちゃんはきちんと保護者が居るから、無から生やした。作者の趣味やね。
・モラルがどうこう言いながら人殺してるじゃん
→マジの真人間ならバイオハザードを防ごうとするけど、滅菌作戦までのんびり暮らしたい系クズだからこうなった。
ウェスカー氏が自分の糧になれと笑いながら殺すタイプだとしたら、中身は自分のためだもの仕方ないって言いながら殺すタイプ。単に態度が違うだけ。
・バイオハザードからドンドコ脱線しとるやんけ
→タイムスケジュール的に、来月にはバイオハザード2が始まるんで大丈夫です。