swordian saga second   作:佐谷莢

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 地上軍基地周辺。
 とうとうパーティ面子が出揃いました。
 この作品どころかシリーズ屈指の「天才(天災)」を加えて、一同は十八年後のダイクロフトへ。
 


第六十二戦——天地戦争の終結~「さようなら」はもうしばらく先に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「栄えある地上軍の兵士諸君! 永きに渡って繰り広げられた戦いに今日、ついに終止符が打たれた」

 

 リトラーの朗々とした声が、拠点内に響き渡る。

 

「非情なる暴君、ミクトランは死んだ。恐怖と憎悪の象徴だったダイクロフトも、彼の死と共に永遠に消滅したのだ。我々は決して忘れてはならない。カーレル・ベルセリオスを始めとする数多の英霊の命の輝きを。そして心に刻まねばならない。この勝利こそが、新たな明日をひらく最初の一歩であるということを」

 

 後の世に稀代の名演説と謳われたメルクリウス・リトラーの終戦宣言を、一同は少し離れた場所で聞いていた。

 拠点の広場には、ソーディアンマスター達を始めとする兵士達が整列し、総司令の言葉を神妙な顔で清聴している。

 本来、バルバトスのことで片がついた後は、余計な干渉をしないようどさくさに紛れて神の眼の力を使い、時空転移を試みようと伝達はしてあった。しかし、カーレルの死後、粛々と撤収作業に準じたハロルドにそれを言い出すことができず、また彼女を放っていくこともためらわれて、現在に至る。

 今後の予定を告げることができなかったのは誰もが同じ。故に、誰もそのことに文句はなかった。

 ただ、未だにもやもやしている人が一人。

 

「なあ、ロニ……あれで、本当によかったのかな?」

 

 今に至っても割り切ることのできないらしいカイルが、兄貴分を相手に思いの丈を吐露する。

 そこへ、終戦宣言が終わったのに姿を消していたハロルドが、何やら大荷物を担いでやってきた。

 

「バルバトスの言ったように、すぐにミクトランのところに向かっていれば、もしかしたら……」

「あんた、アホね。あのサルの言う通りなんて、どうかしてるわ」

 

 神妙な顔で語る「もしもの話」を聞きつけたらしく、彼女は一言のもとに彼をこき下ろしている。

 足元の雪を必要以上に踏みしめてやってきたハロルドは、すっかり元通りに見えた。

 担いでいた袋を無造作に置いて、人差し指を左右に振って見せる。

 

「言ったでしょ? 未来を知る者が、自分の都合だけで歴史を変えちゃいけないって」

「それはわかってるよ。でも……」

 

 頭ではわかっていても、心が納得しない。本来他人であるカイルではなく、ハロルドがそう感じて然るべきなのだが、カイルがそうしているせいか、ハロルドは冷静だった。

 否、すでに受け入れた後なのかもしれない。

 

「兄貴は兄貴なりに一生懸命生きてきた。その結果だもの。だから悔いの残らない、幸せな人生だったと思うわ」

「たとえ死が決まっていたとしても、精いっぱい生きて、幸せを掴む……」

 

 言い募ろうとするカイルに対して、ハロルドはひょいと視線をそらしている。

 そのカイルの横ではリアラがひどく真剣にそれを呟いており、なんとなしに沈黙が漂った。

 

「……な~んか、しんみりしちゃったわね。というわけで、この話はここまで!」

 

 その空気を嫌って、ハロルドが殊更明るく話題転換を提唱する。そして好奇心によるものか、一同の今後を尋ねてきた。

 

「で、あんたたちこれからどうすんの?」

「え? えっと──」

「バルバトスを追います。個人的にはもう関わりたくありませんが、放っておいても害にしかなりません」

 

 神の眼の前、というのは十中八九、現代より十八年前──争乱中のダイクロフトのことだろう。神の眼が歴史の表舞台に立ったのは、この時代を除いて他にない。

 

「世界の命運を決する場で、自らの命運をも決する……奴の考えそうなことだ」

 

 うんざりした顔でぼやくジューダスの言葉を聞いて、リアラがあ、と口元に手をやった。

 

「でもレンズが……時間移動をするには、レンズが足りないわ」

「そんなわけです。ハロルド、こっそり神の眼の管理場所を教えていただきたいのですが」

 

 大真面目に尋ねるフィオレを見て、本気だということがわかったのだろうか。ハロルドは半眼で肩をすくめると、足元の袋を持ち上げた。

 

「あんた、営倉にブチこまれたいの? そんなことだろうと思ってね」

 

 よいしょ、と取り出されたのは、つい先日獅子奮迅の大活躍を見せた六振りのソーディアンだった。

 フィオレは、これまで一度たりともまじまじ見たことがないソーディアン、ベルセリオスに眼を吸い寄せられている。

 

「ハロルド、これって……!」

「ソーディアンはレンズ技術の粋を集めたものなのよ。エネルギーだってハンパじゃないわ」

 

 流石にひとつだけでは難しかろうが、それが六つもあれば十分だろうと。

 捕まる覚悟で神の眼を探さなければならないか、と不安げだったナナリーが顔を輝かせた。

 

「なるほどね! よかったじゃんか、レンズを探す手間が省けて」

「それじゃハロルド、いろいろありが……」

 

 そうと決まれば早速行こうと、カイルがハロルドに別れを告げようとした、その時のこと。

 それまで地面に広げていたソーディアンをまとめて持ち上げた彼女は、満面の笑みを浮かべてこう言った。

 

「さあ、未来に向かってレッツゴー!」

 

 ──よくよく見れば彼女は簡単な旅装に身をまとっており、傍らには荷袋らしきものがある。解散して、すぐに姿を現さなかった理由はこれか。

 

「……おい、何してんだ?」

「前にも言ったはずよ? 私の頭脳が神をも超えること、証明してみせるって」

 

 ロニの質問に、ハロルドは忘れちゃったの? と言わんばかりに首を傾げている。フィオレにとっては初耳だが、誰も何も言わない辺り覚えがあるようだ。

 

「まさか……ついてくるつもりか?」

「いやなら、ソーディアンは使わせないわよ」

 

 ジューダスにすら、いやジューダスだからなのか。ふふん、と笑ってこれ見よがしにソーディアンを見せびらかすハロルドを説得する猛者はいない。あきらめたように、ロニはカイルへ話を振った。

 長年の付き合いにこれまでのことから、答えはわかりきっていたようだが。

 

「……はあ、どうする? カイル」

「いいじゃん! ハロルドがいっしょのほうが、もっと楽しいだろうしさ!」

 

 楽しいというか、エキサイティングというかスリリングというか。

 まあ、何かあったら同道を許可した彼の責任ということで落ち着くだろう。それに。

 

「そういうわけだから、よろしく!」

 

 案外、兄を亡くした寂しさから、彼を思い出させる環境から身を遠ざけたかったのかもしれない。

 新たな、というには実に気心知れた彼女の参戦を受け入れて、リアラによる時代転移は敢行された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 どうでもいい話ですが、この辺よくわからないですよねー。
 レンズは使用したら消費される=消える。ソーディアンのコアクリスタル消えちゃうかもだけど大丈夫なんかいな? と。
 まあハロルドが何とかしてくれるでしょう。きっと。
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