swordian saga second   作:佐谷莢

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 時間軸は少し巻き戻り、バチカル。
 フィオレがそそくさと闘技場から出て行き、困惑しているところから、ですね。


第八十五戦——……こんにちわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バチカル、闘技場内施設にて。

 支配人から呼び出しを受けたカイルらは、用事を聞いて仰天していた。

 

「王女様が話を聞きたいって……どういうこと?」

「少し前、元大詠師逃亡事件があっただろう? あの事件の関係者について君達に聞きたいことがあると、ナタリア殿下がね。心当たりはないのかい?」

 

 事件に関して、直接関わりがあることを疑われているわけではないらしい。この件に関して、一同は間違いなく関わりはない。

 ただその関係者については、一同もまったく心当たりがない、とは言い切れなかった。

 

「王族からの事情聴取ねえ……断ったら、さぞや面倒なことになるんでしょうね」

「否定はしない。どうしても嫌ならそう伝えるが、その後が恐ろしくてな……」

「話をするだけなら、構わないわよ。ただ、詳しいことは城で、とか、私達の誰か一人でも連れ出そうってんなら、その時点で何もかもお断り」

 

 勝手がわからないからなのか、非常に強気ともとれる発言である。

 そのことを咎めかけたロニだが、一言で黙殺された。

 

「話自体には応じるんですもの。そのくらいはいいでしょ?」

「……では、その旨伝えよう」

 

 支配人が席を立ち、しばらくして。条件が承諾されたものとして、王女殿下御一行が通される。

 ナタリアら一行、だ。

 

「お初にお目にかかりますわ。ナタリア・ルツ・キムラスカ・ランバルディアです」

「ハロルド・ベルセリオスよ。基本的に聴取には私が応じるけど、紹介しておくわ」

「ちょ、ちょっとハロルド……」

「私達はあなたのとこの民じゃないから、恭しく振る舞う気はないわよ。不敬罪ってんなら改めて接してあげる。今うろたえたのはリアラね」

 

 ジューダスが肩をすくめ、ロニが額に手を当てて頭を振る中、マイペースに一同を紹介していく。

 返す形でナタリアもまた自らの供──ルーク達──を紹介したところで、本題を切り出したのはハロルドだった。

 

「で、何か聞きたいことがあるのよね。こないだの事件、えっと……」

「元大詠師逃亡事件の後、あなた方は往来で兵士と諍いを起こしましたね」

 

 ナタリアが確認の形でそれを問われて、ハロルドは軽く眉を跳ねあげた。

 一見平静だが、泳ぎ始めた視線が一同に不安を与えている。

 

「あ~……そのことなのね。厳密に言えばちょと違うけど、事実に変わりないわ。ひょっとして、しょっぴきに来たの?」

「違いますわ。報告ではその際に、あなた方の引率を名乗る女性が仲裁に入った、とあります」

 

 これも事実かと確かめられて、ハロルドは黙して首肯する。

 ナタリアらルーク一行が気づいているかどうか。ハロルドの目つきが、それまでのものと一転して真剣なものになっていることを。

 

「新緑色の髪、菫色の瞳に細身の女性と伺っていますが……あなた方のお知り合いなのですね?」

「知り合い、ね。まあ、肯定させてもらうわ。ちょっと前に知り合った程度だけど」

 

 彼女の言は、ハロルドに関して言えば、けっして偽りではない。否定しようとした面々も、ジューダスのアイコンタクトで抑えられる。

 今は、聴取に応じると言ったハロルドに任せようと。

 それまでの様子と一変、急に歯切れの悪くなった返答にも関わらず、ナタリアは手にした書類をぱらぱらとめくった。

 

「知り合いになられたばかりなのですね。その経緯は?」

「それを話すことはできないわ。こっちにもプライバシーってもんがあるのよ」

 

 歯切れが悪くなったと思ったら、つっぱねた。

 不遜な態度に続いて、協力的でないその姿勢に。むしろカイル達がはらはらと事の成り行きを見守っている。

 そこへ、初めてジューダスが口を開いた。

 

「なるほど、あいつのことが聴取内容か。この分だと、ついさっきまで闘技場にいたこともご存じだろう」

「ご明察ですわ。今回闘技場にて団体戦における単独制覇を成し遂げた、との知らせを耳にし、あなた方との接触を図った次第ですの」

 

 ハロルドよりは遥かに慇懃に、何故後を追わないのかとジューダスが尋ねる。

 そこで、ナタリアが初めて押し黙った。

 

「……」

「追跡は試みましたが、気取られてしまいましてね。尾行を担当した者達は、高いびきで発見されました。心当たりはお有りで?」

 

 書類を手にすることもなく、ナタリアの背後に立つ青い軍服の男──ジェイドが、眼鏡の位置を直しながら答えた。

 間違いなくフィオレの仕業である。ただそれを肯定してしまったら、知り合ったばかりだと言った先程の証言に、僅かだが矛盾が生じてしまう。

 それを回避するべく、とぼけようとしたハロルドだったが。

 

「高いびきねえ。睡眠薬でも盛ったのかしらぁ?」

「声が裏返っていますわよ」

 

 あっさり露呈した。

 軍人だったとはいえ、尋問はされるよりする側だった彼女の演技力は、高くなかった模様である。そんなことはない、と重ねて否定するのは、更に疑ってくれと駄目押ししているようなものだ。

 気まずく黙るハロルドに対して、カマをかけたジェイドはにこやかに語りかけた。

 

「まあ、あなた方と彼女の関係自体はさほど重要ではありません。私達が尋ねたいのは、彼女の「あいつの行き先に心当たりはないか? あんたらから聞きたいことは勿論あるんだが、あいつに直接話をつけたい」

 

 遅々として進まない話に、イラついたように切り出したのは。それまで事の次第を見守っていた金髪碧眼の男──ガイである。

 柔らかではあるが詰問の口調とは大幅に異なる、その真摯な態度にハロルドが詳細を尋ねる。

 

「どういうこと?」

「あいつは──」

 

 その内容を耳にして、カイル達は刮目せざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

 

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