もしも、ネタが被っていたらすぐに修正します。
「よしっ」
姿鏡の前で真っ白いワンピースのしわをピンと伸ばして、くるりとその場で回る。
栗色の髪がふわふわと私の肩を触り、薄い茶色の目が鏡には映っていた。
朝日がガラス窓から入って、余計に髪がキラキラとして輝いて見える。いや、実際に輝いているんだろう、ほんの数年前は髪は濁っていたのだから。
美味しいご飯を食べれることと、最近平民向けに発売された市販のシャンプーの力だ。数日使っただけでも別物のようになったのだから。
数分間鏡を眺めてから自分の部屋の扉を開ける。
「今日はお嬢様を見に広場に行くんでしょ? ゆっくりしてて大丈夫?」
お母さんに話しかけられ壁に掛けられた、丸い時計を確認する。予定の時間よりもまだ、余裕があった。
「トイレ行ってから」
「はいはい、水はちゃんと流すのよ?」
「分かってるよ。子供扱いしないで、今日で私は十歳なんだよ。オ・ト・ナなの」
薄く笑いながら「はいはい」とお母さんは私の頭をポンポンと撫でられてから、トイレに入った。
もう、私は大人なのに。お母さんはまだ子供扱いをしてくる。嫌いじゃないけど、少し、いやかなり恥ずかしい。
レバーを下に向けると、水が流れる。水が止まったのを確認してからトイレを出た。
洗面所で手を洗い、壁にかけられてちるふかふかしたタオルで手を良く拭いてからリビングに戻る。
「夜までにはしっかり帰ってくるのよ」
「わかったー」
靴を履いて、玄関の扉を開けた。後ろを振り向いて大きく息を吸いこむ。
「行ってきまーす」
「はいはい。いってらっしゃい」
お母さんはまた呆れた声で薄く笑いながら私に言った。
扉を開けた先は見慣れた視界が広がっている。
歩き慣れた石タイルの上で紐付きの靴を縛ってから歩く。
タイルは薄い灰色で道が何所までも続いている。整備されていて昔の土の満ちに比べて格段に歩きやすくなった。
どこからか、歌が聞こえて拍手も聞こえるし、風船を器用に折って犬や猫に自由な姿にして子供に配っている不気味な人もちらほらと見かけた。
そんな私も含めた平民の生活レベルの高さに何故かソワソワとしてしまう。
私はこの世界に生まれてから、デジャブとううか何か違和感を覚えていた。
例えば。通った道に偶々いた人の普通の会話。
「朝の新聞を見たかしら」
「またお嬢様が何かしら大きな事をやるだとか。字を書ける人を優先に雇うらしいわね」
「お嬢様のおかげで字が書ける人は多いし。やっぱり、凄いのねぇ。この前なんて――」
「少し、肌寒くなってきましたし、そこの喫茶店に入らない?」
「良いわね、あそこの喫茶店のショートケーキが美味しいって噂ですよ」
「まあ、良いわね」
例えば。町の通り道にある普通のお店。
「寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。野菜が安いよぉ!」
「どれがオススメなんですか?」
若い女性が八百屋さんに近づいて行く。
「いらっしゃい、奥さん。今日取れたての真っ赤なトマトが美味しいよ」
「私、トマト好きだから買っていくわ」
ガサガサと半透明な袋に、トマトを詰め込んでいく。
「毎度! 一個おまけに付けといたからまた来てくれや」
「うふふ、おじさんありがとう」
女性が離れてから八百屋の人はクルクルと腕を動かして。
「寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。野菜が安い、安いよ」
この領土はここ五年で瞬く間に成長した。特に食べ物や読み書きについて。
今までも餓えていた訳じゃないが、生活は豊かではなかった。甘い物だって気軽に平民が買えて食べれたわけじゃない。
字だって、読める人はまだしも書ける人は殆どいなかった。字に関しても、これまた五年で若い子達を中心に急激に増えた。子供に負けるのが嫌なのか字が全く関係ない職種の大人達も徐々に字を書ける人が増えている。
そのおかげなのか、お仕事の給料が上がり。商人にぼったくられる事が少なくなり、領土にいる一人一人が豊かになったと。
それも全てここの領土は一人の令嬢が変えていったということに驚きだ。
公爵令嬢のイリーナ・クローバー様。噂が絶えないお方らしい。
曰く、白い髪と金の瞳を持つ王子でさえ魅了した絶世の美少女。
曰く、令嬢としては完璧で歌もダンスもマナーも全てが完璧である。
曰く、その道のプロを超える発想力を持っていてその上で大変謙虚な方だとか。
噂は星の数だけあるのに悪い噂は殆どない。まさに聖女と言っても過言ではないらしい。
私も噂を耳にしただけで、本当のことは何一つ分からない。流石に何かしらは誇張されているとは思うけど。
でも、会ってお礼を言いたい。言われ慣れているだろうけどお父さんのいなくなって、お母さんと私が二人で暮らして貧しくなく生きていけるのも仕事を充実させてくれたお姫様のおかげだから。
それに今から行く広場にある立派な噴水もお嬢様が考えた物らしいからあながち噂も嘘じゃないのかもしれない。もしも、噂通りなら余計に一目だけでも見てみたい。
会ってみたい気持ちでいっぱいになって。つい、ぎゅっと拳を握って止まってしまった。。
急に止まった私が邪魔になっていたのか、私が止まると同時に後ろの人もコツンと止まってしまったようだ。
誰かは分からないだけど慌てて横にそれて、道を塞いでしまったその人に謝る。
「あっ、すみま――」
白い雪のような髪が風にそって私の鼻先をくすぐった。花の香りが私の鼻の中をくすぐった。私に気にせずに優雅に私の前をスタスタと歩いていく。
彼女に気がついた人達がザワザワと騒ぐ。何時もとは違ったうるささに耳を塞ぎたくなった。
「おお、お嬢様だ」
「おまえら、お嬢様が通るぞ道を空けろ!」
海が割れるように人々が道を作っていく。
令嬢は一回お辞儀をしてから、前に進んでいく。
途中、一人の女の子が飛び出した。それにまたザワザワとなったけど「これ」と言って女の子が何かを差し出している。
慌てて母親らしき人も飛び出た。
「お嬢様すみません。うちの子が」
「良いのよ。クッキーありがとね」
子供が可愛く「うん」と返事をすると、母親に連れられて手を引っ張られる子供に令嬢は手をひらひらと振って見送る。その様子を見てその様子を他の人は感動しながら見ていた。
コツコツと噴水前に歩き、一人一人に対して微笑む。
私は頭をゴツンと殴られた痛みが頭の中心から波紋して広がっていく。
横を通った彼女に見惚れたわけじゃない。見たことのない記憶がどこからともなく溢れてきた。
思い出していくのは断片的な文章たちと綺麗な押し絵。ページを捲っているのは黒髪のただの一般人。
乙女ゲーの世界に降り立った一人の転生者の話。
本来だったら嫌われ者だった悪役令嬢がゲームの未来から少し外れたことをして、皆から愛されていく、優しいよくある量産された中の一つ。
『どうして、貴女が断罪されないのょ』
『五歳からの今まで実績ですわ』
『じっせき?』
『食べ物。貴女だって例えばトマトとかジャガイモ、あとタコだったり。珍しいとか言われて食べたりしたでしょ? それを広めたのは私なの』
『あれは、乙女ゲーだったからかと』
『……そんなはずないでしょ』
悪役令嬢が呆れた顔でヒロインを見下す。
『ぐぬぬ』
『おっほほほ』
彼女が転生したのは五年前だ。急に成長した領土を考えてみて頷く。もしも、日本の家電とかの作れる知識があったら、噂の内容にも合っている。謙虚なのも自分自身が考えたわけじゃないから罪悪感があるという日本人らしさという設定なのだろう。
確かに、その小説でも噴水のある広場で講演があってそこまで一人で行く場面があった。……だけどその場面で前を歩いていた人が急に立ち止まるなんて文章はなかったはずだ。
ということは。
「悪役令嬢が転生した、小説の世界に転生したんだ私」
すっごいややこしい。
そりゃ、元が乙女ゲーの世界をモチーフにしてるから、衛生状態も食べ物も良いし。そこに知識を持った設定の悪役令嬢も居るので爆発的に技術が発展したんだろう。
そういえば、この領土が機械生産量ナンバーワンにいずれなるはずだ。そうしたら、工場で働けて、小説では給料の面でかなり人気な仕事になっていた。
うんうんと一人で納得をする。
ところで、この小説の最後はどうなったんだっけ? たしか、まだ続きがあったと思うけど。
人の邪魔にならない場所にあるベンチに座ってゆっくりと一つ一つの展開を思い出していく。
えっと。ヒロインとラップバトルをして友情が芽生えて仲直り。
それから迎えに来た隣国の王子とイチャイチャして悪役令嬢と結婚したい人達がバトルロイヤルをはじめて、優勝者が決まって。結婚式当日。
誓いのキスとともに最後に国全体が爆発。爆発オチなんてサイテーと実際に口を出した覚えがある。
「……ばくはつ?」
背中からジュッと熱を持った鉄を押し当てられたように汗が出た。
口をパクパクと動かしている。他の人が見たらきっと馬鹿だと思われる。
じゃなくて、爆発? この国が? なんで?
――そうだ、
急激に栄養ドリンクを飲んだときのように自然と頭の中がすっきりとした。
爆発を止められるのは私しかいない。小説では彼女目線の話しか語られなかったから原因は分からないままだった。
それなら直接私が話しかけるしかない。だけど、ただの平民の私の話を聞いてくれるのだろうか?
小説では彼女は今の時期に、自分が断罪されるか、されないかで気を張っていたと思う。何が開発されるかは細かく覚えていないが、学園が始まるギリギリになって彼女が潔白だと証明できる機械を開発を成功させたとなっていた。
もしも今、機械の開発を止めろと他の領土に散らばった機械を回収しろと言っても、彼女は止めてくれるか?
いいや。私だったら無視をするだろう。爆発するから回収しますなんて機械に慣れた人達が素直に応じるわけない。
悪役令嬢も不特定な情報よりも、自分が助かる確かな道をまず選ぶ。それから、余裕があれば気にし始める。
でも、それじゃあ遅すぎる。回収するのには間に合わなくなる。
ここから噴水の後ろに風が集まっているのが微かに見えた。今は誰も気がついていない。だけど、だんだんと渦が大きくなって悪役令嬢に迫る。
あの風はきっと長く続く。どうしてそう思ったのかは分からないが砂をまとってクルクルと、強くはない。だけど、人の目があれに長い時間とらわれて私を気にしなくなる。
行くなら今しかない。広場から遠く離れた場所から眺めていた私は一歩踏み出す。また一歩。私を止める人混みの中に誰一人としていない。
砂塵が広場を横切る。それと同時に私も噴水に向かって人々を横切って行く。
あの悪役令嬢を後ろにある噴水に突き落とせば良い。そうすれば何か違和感を覚えて私の話を聞いてくれるかもしれない。
私は殺されるかもしれない。だけど、お母さんはこれからもこの国で生きていける。私はお母さんに生きて欲しい。
それなら私は――
ガシッと肩を掴まれた。男だ、騎士様でもなく、特別汚い服を着ているわけでもない。その辺に居そうな一般人。物語風に言うならモブ。
彼は、言葉を発するわけでもなくじっと首を横に振っている。
「……どうして?」
どうして、この風の中で私の位置が?
どうして、私が彼女の元まで動くと思ったの?
どうして、私は彼女に対して悪意があると分かったの?
無言で見つめ合う。つむじ風はまだ止まない。私たち以外は静かで、いくら声を抑えても誰かに聞こえてしまう。だから、話すことができない。
「僕も転生したのです」
私が息を呑む。つむじ風が止んだ。周りにいる人達がガヤガヤとまた騒ぎはじめる。他の人には聞こえなかっただろう。それほどタイミング良く彼が口を開いたから。
今あの悪役令嬢の下には行けない。だから、目の前の人の話をただじっと続きを待つしかない。
「貴女が悪役になってしまう小説の中に」
一応、考えた設定。
イリーナ・クローバー
乙女ゲーの世界に転生した悪役令嬢モノの小説の主人公
平民の子
元々は日本から転生した女の子が、乙女ゲーの世界に転生した悪役令嬢の右腕になるまでの成り上がりコメディモノの主人公。ちなみにこの子が右腕になったら爆発は起こらない
なんか悪役
つむじ風を発生させて、平民の子の考えを誘導させた人。平民の子が転生した小説に転生した人で爆発が起こって欲しいから悪事を働いた
止めた人
なんか悪役のせいで悪者にされた平民の子の小説の世界に転生した人。
『乙女ゲーの悪役令嬢に転生した世界の平民に転生した小説の裏から操る系ラスボスに転生した小説に転生した人』
続きないです