学戦都市アスタリスク 消失の魔術師   作:ネタバレOK派

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お久しぶりです。色々と落ち着いてきたので投稿します。

【注意】
・クオリティ低下
・残酷な描写、グロ描写


夜吹英士郎

 

 

 日も上らない時刻。星導館の女子寮のとある一室を双眼鏡で監視する。盗撮や覗きのためではない。クローディアの監視だ。

 

 記者会見での挑発だけならまだしもあの頭のおかしい腹黒女なら更なる挑発をしてもおかしくない。母親が最高幹部を務めているのだから、面会もそう難しくはないはずだ。

 

 監視をしていると案の定襲撃班が窓から侵入した。そのうちの一人がこちらの方角に振り向いている。ローブのせいではっきりと顔は見えなかったが、相当な手練だ。早々に離脱だ。かなり距離があるから追いつかれることはないだろう。一先ず綾斗達に連絡をしなければ。

 

「...あ?」

 

 通信が取れない。どうやら妨害されているようだ。離れれば影響から逃れられそうなものだが、通信を優先させている場合ではない。

 何せ数人の気配ががこちら側へ近づいてきているのだから。建物から建物に飛び移り移動する。

 

 到着したのは廃ビルの中。すぐさま複数人が着地する。同時に大きな瓦礫が飛んできたので能力で消し去った。

 

 いや待て。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

(この感じ......ヴァルダに誘い込まれた時と似ている)

 

 あれほど強い精神干渉ではないにせよ、何というか、こう、人間の心理や習性をつかれたような感覚。まんまと嵌められた。

 

 ローブを被った人間が9人。とはいえ先ほど理空の方を見た者ほどの使い手は誰もいない。

 

「...久しぶりですね。《消失の魔術師(ヴェイカント)》」

 

 そう言った一人がローブを剥がして顔を露わにする。

 

「...?」

 

 見覚えはあるが名前が思い出せない。

 

「...確かアルルカントに唆された馬鹿だったか」

「サイラス・ノーマンです。以後お見知りおきを」

「お前ら『影星』だろ。なんでお前がいるんだ?」

「苦渋の選択でしたよ。地下に繋がれたままでいるか、使い捨ての駒になるか......僕に選択権はあってないようなものでした」

 

 手を大袈裟に仰ぐ。どうやら演出家気取りな面があるらしい。

 

「ですが、復讐のチャンスを得ましたよ!あなたにも、あの《叢雲》たちにも!」

「......」

「どうしました?声も出ませんか?」

「いいや。お前らにチャンスをやる」

「は?」

「今からお前らのことを殺していく。その前にもう1人について喋れば見逃してやらんこともない」

「...この数を見て何を言ってるんですか?僕が操っていた人形とはわけが違いますよ。一人一人が序列上位に入れるメンバーです」

 

 そう言って両手を広げた手の片方に生温かいものがかかった。

 サイラスの一番近くにいた者の首から先がなくなっていたのだ。首から下はそのまま血を噴き出しながら前に倒れる。

 

「...所詮決闘(スポーツ)の中での上位か」

 

 サイラスの顔面が白く染まる。他の『影星』のメンバーも素顔は見えないが同じような反応か、事態を把握できていないか、嘔吐するかのどれかだった。こんな様で学園の裏仕事を行うエージェントなのだから片腹痛い。一番躱しやすい箱の『相互移動』に反応すら出来ないようでは腕に関しても0点だ。

 

「死にたくないならさっさと吐けよ」 

 

 もっとも、自分がその誘導した人間ならこんな素人達に情報を与えたりはしないだろう。事実上の死刑宣告というわけだ。

 

「あっ、あ、あなた、何をしてるかわかってるんですか!こんなことどう考えても星武憲章(ステラ・カルタ)違反ですよ!」

 

 何を言っているんだろうか?裏社会のことを何も理解していないようだ。ついでにわかりやすく教えてやろう。

 

 背が低く、座り込んでしまった者に対して発砲する。着弾しうめき声が聞こえローブで隠れていた素顔が顕になる。女子生徒だったらしい。だからどうということでもないが。『相互移動』で胴体真っ二つにする。残り七人。

 棒立ちになっていた三人が固まっていたため首のあたりを狙って『相互移動』を発動させる。二人は首が飛び、一人は顔の方に当たったのか、脳が一つ飛び散る。残り四人。

 嘔吐して蹲っていた一人を縦半分に真っ二つにする。大量の血が噴き出す。残り三人。

 まだマシな二人が居たらしい。同時に襲いかかってきたので攻撃を躱し一人の首辺りに銃口を当てて0距離で五発放ち、もう一人の胴体に発勁を当てて箱の『相互移動』で腹の辺りに大きな風穴を開ける。倒れると同時に腸や肝臓の一部ががずるりと出ている。念の為首に発砲した方も切断しておく。残るはサイラスただ一人。

 

「ひっ、う、あぁ...」

 

 先程までの威勢はどこへやら。尻餅をついて失禁してしまっている。殺そう。

 

「まっ、待ってください。貴方にはもう逆らいません!あの役立たず共とは違ってお役に立てます!だから────ヘボゥア⁉︎」

 

 威力を弱めた銃弾で腹に撃つ。

 

「状況を見てものを言え。オレの求めている情報を出せば見逃してやると言ってる」

 

 逃げられないように両足の骨に穴を空ける。悲鳴があがるが五月蝿いので鳩尾を殴って呼吸を止める。

 

「さて、最後にもう一回だけ聞く。もう1人はどこにいる?」

「ひっ、う、あぁ......」

「もういい」

 

 面の『相互移動』で首を切断する。目に映る範囲ではもう敵はいない。しかし全く安心できない。はっきり言って雑魚ばかりだ。自分をここまで誘導できるほどの使い手がこの中にいるとは思えない。

 

(どこだ?どこにいる?)

 

 状況から考えて『影星』とあのローブを被った連中は共犯(グル)だろう。この集団に与えられた命令は恐らく足止めもしくは始末。だがこんな素人共では力不足なのはわかりきっているだろう。しかし新手の敵が出てくる気配がない。まさかこの連中を捨て駒にした情報収集?

 考えても埒が開かない。穴から飛び降りて下へと向かう。それと同時に黒い霧が突然湧き出てくる。

 

「........っ!」

 

 苦無が死角から飛んでくる。咄嗟に避けるがいつもに比べて冷たい汗が多く走った。

 すぐに飛んできた方向を視認してフードを被った男(女?)を見る。星導館の制服を着ている。

 どこか見覚えがある。短剣型煌式武装(ルークス)を起動し、小手調べに面の『相互移動』を数発放つ。フードの部分に掠りその素顔が明らかになる。

 

「随分なご挨拶だな、《消失の魔術師》さんよ」

 

 サイラスの一件の際に現場に居合わせていた人間────────夜吹英士郎である。

 

 

 

 

 

 

 

 

「意外だな。こういうのにお前が参加するとは思わなかった」

「へへっ、いやーこっちも仕事なんでね」

「まあ命は惜しいか。『夜吹』の連中がうるさいだろうしな」

 

 一瞬、顔が固まる。英士郎の事情はお見通しというわけだ。

 

(ってかあの時も思ったけどなんでうちの一族のことを知ってんだよ!)

 

 恐らく空汐の術も知られているだろう。手負だったとはいえ、今の一撃は『黒猫機関(グルマルキン)』の金目の七番を仕留めたものと全く同じものだ。それを初見であっさりと防がれた。これは久しぶりにかなり骨が折れる相手だ。警戒のレベルをさらに上げた。

 

 それは理空も同じだった。『夜吹の一族(ナイトエミット)』についてはある程度知っている。実際に相対するのは初めてだが、予想以上に厄介なようだ。ほんのわずかな万応素を利用した暗殺術。加えてこの身のこなし。少なくとも《冒頭の十二人(ページ・ワン)》上位クラスはあると見ていいだろう。いや、それよりも厄介なのはおそらくこの男は人を殺せるという点だ。例えば綾斗が相手だとしても死ぬことはまずない。だが、裏のプロは違う。必要とあらば躊躇なく殺せるだろう。英士郎もその類だろうと判断した。牽制も兼ねて『相互移動』を放つ。

 

 英士郎は発動される直前に体をねじってそれを避ける。持っていた苦無には当たったのだろう。刃の部分がなくなっていた。

 

「ひゅー、あっぶね。喰らったらアウトだな」

 

 これは本音だった。もし上手く体をねじれていなかったら地面に転がっている肉の塊と同じようになっていただろう。

 とはいえ先ほど捨て石にした『影星』の連中のおかげで発動の際の法則性は掴んである。当たり前だが万応素が反応する。反応してから発動されるまでのごくわずかなラグを利用すれば避けられる。幸い、夜吹の術と違いかなりはっきりと反応する。軌道が見えないのが厄介なところだが、地の利がある今ならそうそう当たることはないだろう。

 

「にしても、能力の内容を一切明かさないあたり徹底してるな。新聞部に所属してる身とすりゃあ、取材に答えてもらいたいもんなんだがな」

「この業界、実力よりも情報が大事なんでね」

 

 それは英士郎も同感だった。情報の少なさを利用して地力では劣る人間が格上を喰うというのは多々ある話だった。《星武祭(フェスタ)》と違う点はそれで負けたら取り返しがつかない場合がほとんどだという点である。

 

(やっぱ正面から戦んのはマズそうだな)

 

 当たり前のことだが、事前に準備をしておいたのは正解だったようだ。

 

 英士郎の姿が暗闇の中に消える。気配は、感じ取れない。どうも普段に比べその手のものがうまく機能していない。

 

 飛苦無が飛んできたので理空はそれを回避するが通り過ぎた苦無が地面に刺さる前にプツンと音が鳴る。すぐに逆方向からの攻撃が来る。短刀型の煌式武装が飛んでくるのでそれを回避しようとするがその先に細い線が見えたので煌式武装を振るい防御する。

 

(...なるほどな)

 

 おそらくこのビル内は英士郎による仕掛けが張り巡らされている。いや、今もリアルタイムで張っているのかもしれない。仕掛けは2種類。切れにくいワイヤーと切れやすいワイヤー。切れにくいワイヤーは不注意を犯さない限り見えるが引っ掛かれば動きが制限される。切れやすいワイヤーは動きは制限されないが見えにくい上、切れたら罠が発動するようになっている。他にも仕掛けがある可能性はあるが一先ずそれは置いておこう。追撃が来ているのだから。防御と回避に徹し、攻撃を凌ぎ続ける。居場所が掴み取れないため下手に攻撃が仕掛けられない。向こうも『相互移動』を警戒してか、間合いを詰めさせてくれない。

 

 正直、『瞬間移動』で離脱するのもアリな状況だ。空汐の術は暗闇と相性が良すぎる。おまけに幾重にも仕掛けられた罠。漫然とただ攻撃をしているとは思えない。始末も視野に入れているとなると、何か仕留められる自信のあるものを準備していると考えるのが妥当だ。

 しかし問題はどこに移動するかということだ。勿論、人が多い場所、あるいは集まりやすい場所がベストだが、理空の能力は常にマニュアルであり、移動先と現在地の距離を明確に把握しておかなければならない。例えばシリウスドームへ移動したい場合でも「シリウスドームへ移動する」ではなく「どの方向へ何キロメートル移動する」としなければならない。つまり移動先が大雑把であれば良いが具体的な地名や建物に移動したい場合、遠ければ遠いほど発動までに時間がかかる。

 仮に移動ができたとしても最悪なのは待ち伏せされているパターンだ。『夜吹の一族』がどこにいるかわからないため、安易にその手は使えない。クローディアに人員を割いている以上、その可能性はかなり低いが、もしそうであった場合、能力が割れてしまうだろう。

 

 と、なると仕方がない。多少の浪費はやむを得ないだろう。

 

(─────奴の必殺技を誘って凌ぐ)

 

 

 

 

 

 

 

(...おっ)

 

 理空が動いた。短刀を駆使してワイヤーを切りながら下へと向かっていく。一階に着地し、理空の動きが止まった。万応素が反応し続けている。大技を繰り出す気だろうか。英士郎の居場所は察知できていないはずだ。が、敵が大技を出そうとしたときの最適解の一つは出させる前に仕留めることだ。 

 逃げようとしたところを狙おうと思っていたが、まあいい。もう準備は整っている。

 

()()()()()()()()()()警戒とか注意とかはよ!)

 

 気配を殺して慎重に降りて近づく。空汐の術を使用した状態で飛苦無を投げる。

 

 理空から見て左斜め前から飛んできた苦無はそのまま心臓へと突き刺さる─────直前で消え去った。

 

「...はぁ⁉︎」

 

 思わず声を挙げてしまう。ハッとなってすぐに口を塞ぐ。しかし無理もない。空汐の術は人の持つセンサーを一時的に断つ術。もちろん全てのセンサーを断つことが出来るわけではない。手練が相手ともなれば一つのセンサーを封じたところで別のセンサーで対応されるだけだ。それを封じるために英士郎は遅効性の空汐の術を組み合わせて全てのセンサーを断つ"五領封戮"というオリジナル技を使った。この状態では防御も回避も取れないはずなのだ。

 

(......まさか一定範囲内のものを自動的に消失させられる?いやいや、んなチートがあるわけが......)

 

(...今のはかなりやばかったな)

 

 当然そんな能力は持ち合わせていない。かといって空汐の術が効いてなかったわけでもない。実際に今の攻撃には全く反応できなかった。

 単純に『相互移動』を身体の周りで発動し続けていただけだ。発動してまたすぐさま発動。この間を限りなくゼロに近づけたのだ。発動と発動の間の隙を突かれない限り、全ての攻撃が『移動』される。理空が一歩も動かなかったのは英士郎の位置を探っていたのもあるが、『相互移動』に自分の身体を削られないためでもあった。

 

 英士郎の手が効いていなかったわけではない。事実として、今の攻防で星辰力(プラーナ)が五割近くが消費された。理空の能力は正面戦闘では真価が発揮されない。むしろ戦闘になる前に決着をつける暗殺の方が向いている。仮に正面戦闘となった場合でも、短期決戦に持ち込むべきなのだ。星辰力が少ないとなれば尚更。

 理想としては箱でも面でも線でもなく発動速度が最も速い点の『相互移動』で心臓か脳に中てるべきなのだが、流石にこのレベルの敵にそれは不可能に近い。しかし、苦無が服に僅かに刺さっていたためその角度から割り出すつもりでいたのだが、声まで挙げてくれたのは嬉しい誤算だ。

 

(少し派手になるが仕掛けるか)

 

「は......?」

 

 発動させたのは箱の『相互移動』。ただしそれは英士郎を狙ったものではなく、この建物に対してだった。3階から上が文字通り全て無くなっていた。つまりそれは入念に張った罠や仕掛けがほとんど取り上げられたということだ。無論、隠れる場所も。上の階へ離脱しようと考えていたというのにそれが封じられた。一瞬の動揺の隙をついて脚に星辰力を集中させて接近する。

 

 英士郎は目の前にいる。切り札と呼べるものもおそらく防ぎ切った。

 

(踏み、込め!)

 

 界龍(ジェロン)の拳士が多用する星辰力を部分的に集中させる技術を併用した右のオーバーハンドパンチ。鋭い。だが避けられる。

 

「.......っ!」

 

 目を思わず見開いてしまう。何せ理空の人差し指と中指が伸びていたのだから。

 

(眼が狙いかよっ........!)

 

 流石に片方の視界を奪われてしまうのは辛い。今後どころか今距離感がつかめなくなる。指を伸ばした分リーチが数センチ伸びる。後ろに下がるだけでは抉られる。右側に顔をずらせ。視界の左を右拳が通過したのが目に入った。

 

 その瞬間カツン、と音が立つ。英士郎の視界が若干揺れた。

 ──────なぜ。躱したはず。ダメージよりも先に頭に駆け巡ったのは困惑。直後に目に入ったのは()()()()()()()()()()()()だった。手首の力で強引に拳の軌道を曲げたのだ。

 

 眼球狙いの方も囮。本命は顎だったというわけだ。

 

(やべえっ......!効いちまった!)

 

 口の中は切れていないが脳を揺らされてしまった。意識が飛んでないのは幸いだが足に来る。当然、理空がその隙を見逃してくれるはずもない。

 

「くっ......!」

 

 完全に立場が逆転してしまった。油断はなかった。事前の準備のおかげで終始優位に状況を進めていたはずだ。惜しむらくは情報。理空の能力がどういったものかもう少しわかっていればこうはならなかっただろう。奇しくも理空の言葉が現実として現れた結果だった。

 

(なんとか距離をとらねーとヤバい!)

 

 携帯している煙玉を投げる。懐から取り出したのはワイヤー。罠に使用していた切れにくい方だ。脚が思うように動かないのでこれを適当な場所に引っ掛けて距離を取る。

 

「甘い」

 

 そう考えていたが、煙自体が消え去ってしまった。理空の『相互移動』である。

 

(しまった、これがあった.......!)

 

 相手の遠距離攻撃を消し去っていたのは以前記録映像で見たことがあるというのに。

 理空の周辺の万応素が再度反応する。あの不可視にして防御不可の攻撃が来る。身体を動かさなければ。

 そう思いワイヤーを投げようとした瞬間に、手首に何か引っかかってしまい支柱に引っかけることを失敗してしまう。それと同時に浮遊感と背中に冷たい汗が走った。地面に対しての『相互移動』。英士郎が立っていた地面に小さな穴が開き両足が嵌る。すぐさまワイヤーで拘束する。

 裏仕事に精通した学生同士の戦いが決着した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一体何が起こったのか。腕を振った場所をよく見る。光に反射する一本の線があった。

 

「...まさかそっちもワイヤーを持ってるとはな」 

「いいや、持ってなかったぞ?よく見てみろ」

 

 そう言われて巻かれているワイヤーをよく見る。

 

「...俺のを回収したのか」

 

 張られたワイヤーを処理していたのは罠を削るためだけでなく手持ちの武器を増やすためでもあったというわけだ。

 

(はっ、完敗だな)

 

 入念に準備をしたにも関わらず、向こうは限られた手札でそれを飛び越えて心理戦でも上を行かれた。

 だが、それはあくまでも戦いの話。まだ終わりではない。極論、裏仕事は死ななければ負けではない。また出直せば済む話。拘束されたということは交渉の余地がある。

 

「お前さんが今知りたいのはあれの行き先かい?」

「他にもあるが話が早いな。奴らはどこへ追い詰めようとしている?」

 

 クローディアが、とは言わなかった。極小の確率ではあるが誰かに聞かれている可能性もある。

 

「呑んでもいいんだが、その代わりに俺の命を...」

「分かったから早く話せ。どの道お前は使えるから可能なら生かすつもりだった」

 

 もう少し話が長引くかと思っていたので肩透かしを喰らった気分だ。まあ、理空としてもこれ以上下手にここに留まりたくはないのだろう。

 

「...港湾ブロックにいる」

 

 これで終わりだ。後は理空がこの情報を綾斗達に伝えて自分が嫌いな連中にも嫌がらせができる。英士郎ではなく理空が伝えたとなればある程度自分に向く矛先も少なくなるだろう。全てが万々歳だ。

 ────と行かせてもらえるほど甘い相手ではなかった。

 

「その情報を今()()()天霧達に伝えろ」

「は?」

「他にもあるって言ったぞ。ってか責任逃れしようってんだろ?甘いんだよ。嫌なら死ね」

 

 理空は勝手に英士郎のポケットから端末を取り出しハッキングされロック解除をし、音声通話を繋ぐ。空間ウィンドウが浮かぶ。

 

『英士郎?どうしたの、こんな時間に』

「...あー、天霧、うちの学園の港湾ブロックだ」

『え?』

「ルートは送っとくぞ」

『ちょっと待って、何のこ────』

 

 理空が通話を切った。というか今ルートを送ったのも理空だ。

 

「...なあ、そろそろ拘束を」

「それとこれを見させてもらうぞ」

「げっ.......」

 

 取り上げられたのは英士郎の端末。当たり前のようにこちらもロックが解除されてしまう。

 『影星』に対する行為が撮影されている可能性がある。それは英士郎も理解できるのたが、新聞部としての特ネタがいくつも入っているというのにそれを見られてしまうのは辛い。

 

「じゃあな。お前とは仲良くやれそうだな」

 

 チェックが終わったのか端末を投げられ、拘束も解かれ、皮肉も込めた発言を残して理空はその場から消えた。

 

「はっ、こっちはもう御免だっつーの!」

 

 後ろに倒れ大の字になりながら叫んだ。

 

 

 

 

 




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呪術読んでて理空の能力なら無下限貫通できるんじゃ?って思ってました。無量空処喰らったら終わりですけどね。
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