冷たい雨が降りしきる中、一人の少女が立っていた。
その顔は雨に濡れた白の髪に赤のメッシュが入った長い髪で隠れていたが、その彼女から雨に紛れて流れる筈のない涙が流れていた。
彼女の目の前にある男の死体、かつて彼女の入っていた部隊の隊長だったもの。ただの機械人形である彼女が信頼と好意を抱いていた唯一の人。
彼女が手にしていた銃が"ガチャリ"と雨で濡れた地面に落ち、水しぶきを上げた。
「何でよ・・・何でアンタが死んでるのよ」
彼女が濡れたコンクリートの地面へと座り込む。
そして彼が死んだ事を否定するかのように、その死体を揺らしながら呟く。
「ねぇ・・・起きてよ・・・アンタ、私に死なないって言ったじゃない・・・」
彼女はそう呟き、彼を揺らす。
すると彼女の持つ無線から仲間の声が響き渡った。
『──四番隊──えるか?──敵の攻──が激──撤退──るぞ!」
撤退命令。
その命令を聞いた近くの味方が撤退していく。
そして近くにいた味方の機械人形が彼女に声をかける。
「撤退だ。行くぞ、────」
彼女は俯いたまま動かない。
「おい、何をやっ────」
動かない彼女に痺れを切らした男性型の機械人形は彼女の肩を掴み言ったその時。
"パァン"
火薬の乾いた音と共に男性型の機械人形の頭が弾けとぶ。同胞だった彼を彼女は躊躇いもなく破壊した。
「───────アハッ」
彼女は嗤う。
美しいその顔が歪み、彼女の赤い瞳が狂気に染まる。
「徹底?何言ってるの?そんなのするわけないじゃない。まだ、殺してないのよ?隊長、──を殺した奴等が目の前にいっぱいいるじゃない」
彼女はそう嗤いながら、手にした銃を握る。
その銃は───が持っていた銃、いわゆるグレネードランチャーと呼ばれるものだった。
彼女は自身の銃を地面に捨て、───の銃を大事そうに手にする。
そして──────。
「赦さないわ。私は私自身が許せない。貴方を死なせちゃったのは私だもの。だったら私は私に罰を与えるわ。貴方の代わりに私が殺すわ。最後の一人になるまで、敵を殺して殺して殺して殺して殺し尽くして、貴方の願いを叶えてみせるの。そして私も死ぬわ。貴方が願ったのは世界平和ですもんねぇ」
彼女はそう言ってまた笑う。
そして携帯でも取り出すかのようにスカートの上に巻き付けられたポーチからリモコンを取り出す。
そして───。
「バァン」
彼女がボタンのスイッチを押した次の瞬間。
彼女の目の前にあったビル街に設置されたリモート爆弾が一斉に起爆した。
「な、なんだ!?」
「ビ、ビルが崩れるぞ!?」
「逃げろ!!」
敵が、味方が一斉に街から離れてゆく。
瓦礫が空から落ちてくる中、彼女は一人その光景を見て壊れたように笑った。
「アハハハハハハッ!アハハハハハッ!」
周りの敵が味方が、瓦礫に一人、また一人と潰されていく。瓦礫に潰され地面に赤い華がいくつも咲いた。
彼女の上にも瓦礫は落ちてくる。が、まるで"透明な何か"に弾かれるように瓦礫が四散した。
そんなもの、"私に当たる筈がない"。
彼女は散歩でもするかのように、瓦礫が落ち、崩れていくビル街に一人歩いていった。
「ねぇ────。貴方が悪いの。貴方が人形である私に愛なんて教えてくれたから私はこうなったんだから。でも約束は守るわ。それがせめてもの償いなのだし。───」
彼女は最後呟くように死んだ男に向けて言った。
──貴方が死んだって離れてあげないんだから。しきかぁ~ん──