竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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第十話 永遠に紅い幼き月

 

リュウSide

 

地下の探索を終えた俺は、移動して屋敷の二階に探索してるんだけど……一向に犯人が見付からない。

鍵の掛かっていない部屋を見つけては、扉を開けて中を覗いているんだけど、メイドの姿も無ければ生活している痕跡すらない。

まぁ、別に見付からないなら見付からないで問題ないんだけど、今は手持ちのスペカが心許無いから会いたくは無いな。

さっき屋敷の左側の方から戦闘音が聞こえて来たから、もしかしたら既に霊夢が戦っている可能性も在る……ってか、寧ろそうであって欲しい。

 

「それにしても、無意味に広い屋敷だよな。これだけ広いと迷いそうだな」

 

屋敷の広さに呆れながらも関心していると、直ぐ近くから鐘の音が聞こえて来た。

でも、この部屋には鐘なんて置いていなければ、聞こえてきたのは外の方からだ。

鐘の音がなんとなく気になった俺は、廊下の窓から顔を出し周囲を見回してみる。

 

すると外には大きな時計台が在り、その傍に羽の様なものが生えた少女の姿があった。

どうやらさっきの鐘は、外の時計台が時刻を知らせる為のものらしく、その傍に居る少女は………恐らくこの屋敷の住人だろう。

今まで見てきた妖精たちとはシルエットが違うから、此処のメイドって事はないんだろうな。

 

「無視しちゃ……駄目なんだろうな、きっと」

 

本当なら無視して霊夢と合流したいけど、外に居る少女はさっきから俺の事を見てる。

時計台まではそれなりに距離があるのに、彼女からの視線を物凄く感じる。

こんな事なら鐘の音なんて無視すれば良かった。

そんな事を思いつつ、俺は外に飛び出し時計台へと向かった。

 

 

 

 

………

……

 

時計台にまで辿り着くと、空を覆っていた紅い霧が一部だけ晴れ、紅い月が姿を現していた。

そしてその月をバックに、背中にコウモリの様な翼が生え、フリルの付いた薄紅色のドレスを着た少女が浮んでいた。

翼の生えた種族は知っているけど、コウモリの翼が生えた種族は初めてみたな。

 

「こんばんは、何処かの誰かさん。私の名はレミリア・スカーレット。この屋敷の主よ」

「こんばんは、レミリア。俺の名前はリュウ。……それで君はこんな所で何をしているんだ?」

「月光浴ついでに人を待っていたの」

「そうなんだ」

「えぇ。私はずっと此処で待っていたのに、中々来ないからヤキモキしたわ」

「その人にも色々と都合があったんだよ」

 

俺達はにこやかに会話してるけど、辺りに立ち込めている空気はピリピリしている。

誰を待っていたのかなんて分かりきってるが、俺としては待たないで居て欲しかったんだがなぁ~。

 

「そんなの私の知った事じゃないわよ。この夏の寒空の下で一人待っているのは退屈だったわ」

「寒いなら中で待っていれば良かったのに」

「私が外で待っていたい気分だったの」

「さいですか。……それじゃ俺はこの辺で」

「あら。折角来たのだし、少し遊んで行きなさいよ」

「悪いけどそう言う気分じゃないんだ。ごめんな」

「私は遊びたい気分なの」

 

俺の返事を無視した少女は、背中の羽を大きく広げて抑えていた力を解き放った。

屋敷で探索している時には感じなかったけど、彼女が持っている力は相当なものだ。

パチュリーから我が侭だとは聞いてたが、まさか此処までだとは思いもしなかったな。

 

「(……参ったな。これは逃げれそうに無いぞ)」

「こんなにも月が紅いから、本気で殺しに行くわ」

「……やれやれ。こんなにも月が紅いのに―――」

「「大変な夜になりそうだ/楽しい夜になりそうね」」

 

こうして俺と少女の戦いの火蓋は切って落とされた。

先に仕掛けて来たのは少女の方。全方位に紅い大弾と青い弾をばら撒き始める。

放たれる紅い弾の大きさと、隙間を埋める様に放たれる青い弾が中々に厄介だな。

早めに弾の軌道を読まないと一気に落とされそうだ。

俺は早めに弾の軌道を読み、掠りながらも彼女の弾幕を避け続けた。

 

「天罰『スターオブダビデ』」

 

弾幕を避け続けていると、少女は一枚目のスペカを宣言した。

宣言すると、彼女を周囲全てに紅い光球が出現する。

その光球は動いたりはしないが、彼女が放った力に連鎖して一斉にレーザーを照射し始める。

この程度ならまだ楽だったが、周囲にある基点から無数の青い弾が撃ち出された。

 

最初のレーザーの所為で逃げ場がかなり制限され、次に放たれる青い弾を避けるスペースが少ない。

僅かに空いたスペースを使い、なんとか弾を避けるけど……心の中では何時当たるかと冷や冷やしてる。

それでもなんとか避け続け、彼女に俺の弾幕を叩き込む。

レミリアは回避行動をしたりせず、ただ同じ弾幕を放ち続けている。

俺の攻撃など避ける必要すらないといいたいのか、それとも動いてしまうと弾幕を維持する事が出来ないのかは分からない。

でもコッチとしては、こんな弾幕を何時までも避け続けられる訳ないし、早く終わってくれた方が良いに決まっている。

そんな事を考えながら避けていると、何の前触れもなく唐突にレミリアの弾幕が止んだ。

 

「一枚目は攻略されたか。…まぁ、その位してくれないと楽しくないわ」

「こっちは必至だから楽しむ余裕なんてないんだけど……」

「だったら、貴方の力を解放すれば良いじゃない。そうすれば楽しめるわよ」

「……………」

 

あの子が何時俺の力を知ったのか分からないけど、出来る事ならそれは避けたい。

でも、パチュリーの話だと彼女は我が侭らしいから、何が何でも俺の力を使わせるだろうな。

彼女ほどの力の持ち主となると、『ジャバジブ』や『ナイト』じゃ力不足だろうし。

使うとしてもアレは論外だから、やっぱり此処は『カイザー』しかないな。

 

「二枚目、冥符『紅色の冥界』」

 

彼女の二枚目のスペカは、さっきのレーザーとは違い無数の小さな弾を飛ばしてくる物だった。

ただ、飛ばしてくる弾の数が多く、立て続けに全方位交差弾が飛んでくる。

飛んでくる弾の数は多いものの、一つ一つのサイズが小さいお陰で回避するだけのスペースはある。

落ち着いて弾の軌道にさえ注意していれば避ける事は差ほど難しくない。

多少掠っても大したダメージも無いし、直撃さえしなければこっちから攻撃する隙だってある。

俺は見つけた隙を突く様にして弾を放っていき、少しでもレミリアにダメージを蓄積させていく。

今度は左右に避けたりもするから当て難いが、彼女の攻撃も当たらないので其処はお互い様だ。

弾の軌道を読み切った俺が回避しつつ攻撃を仕掛けていると、自分の弾が当たらない事を悟ったのか、さっきよりも早く弾幕を展開するのをやめた。

 

「……二枚目も突破されたか。それなりに頑張るのね」

「あんまり力は解放したくないからね」

「そう言われると、無理矢理にでも解放させたくなるのが人の性よ」

「……君は人じゃないだろ」

「貴方も人じゃないでしょ?」

 

確かに俺は人じゃなくて竜だけど、この場合俺は関係あるのか?

……いや、今はそんな事気にしている場合じゃないか。

彼女はまだまだやる気みたいだし、此処は気合を入れて掛からないとな。

 

「さてっと。三枚目は少し趣向を変えようかしら」

「お好きにどうぞ」

「えぇそうさせて貰うわ。…獄符『千本の針の山』」

 

彼女が宣言した三枚目のスペカは、大量のナイフと小さな弾が同時に飛んでくるものだった。

ナイフは俺狙いで飛んで来るが、一緒に放たれた弾の方は壁やナイフに当たると跳ね返って軌道が読み辛くなる。

只でさえ弾の数が多いのに、小弾が跳ね返ってくるんじゃ何処から弾が来るのか分からなくなる。

手元に武器でも有れば、当たりそうな弾だけを弾いて攻略していけるんだが、無い物ねだりをしていても仕方が無い。

かなりギリギリの所で回避しているけど、こんな調子じゃ何時まで持つか……ッ?!

 

「しま……ッ!?」

 

跳ね返ってくる弾の軌道を読むのに集中していた所為で、俺はナイフの軌道を読み損ねて直ぐ傍にまで来ていた弾を見落としていた。

咄嗟の判断で回避行動を試みたけど、完全に回避する事は出来ず、ナイフは俺の脇腹に深く突き刺さった。

弾幕ごっこで被弾しても死なないって言ってたけど、ナイフの刺さり具合からみて流石にコレは不味いだろ。

刺さった箇所から血が流れ出てるし……今このナイフを抜いたら余計に血が出そうだな。

 

「あらあら。血が出てるけど大丈夫?」

「大量にナイフを投げて来た奴が言う台詞か」

「でも、この位やられないと本気にならないでしょ? 私は貴方の本気が見たいのよ竜さん?」

「……………」

 

さっきの趣向を変えるって言うのは、弾幕の難易度を上げるって事か。

一枚目、二枚目みたいな弾幕じゃ俺が本気にならないと判断のか……。

……正直な話し、こんなの使わなくても結構きつかったんだけどな。

 

「さぁ、次で四枚目。その調子じゃ次で終わりかしら?」

 

余裕綽々と言った感じで、目の前に居るレミリアは次のスペカを見せびらかす。

実際の所、このままじゃ何も出来ずに終わるのは目に見えている。

この場に霊夢が来てくれれば……なんて事を考えても、現実は非情なのは重々承知してる。

……だったら使うしかないよな。

手加減出来るのか分からないけど、このままやられる訳には行かない!

 

「……一つ良いか」

「何かしら?」

「頼むから死んだりしないでくれよ。遊びで殺してしまいましたってのは、流石に洒落にならないからな」

「それは要らぬ心配よ。…私は夜の支配者たる吸血鬼。そう簡単に死んだりしない」

「そっか、だったら問題ないな」

 

彼女の言葉を聞いて少しだけ安堵した俺は、ポケットから一枚のカードを取り出す。

このカードはスペカであってスペカじゃないもの、俺が戦いの最中に変身する時に宣言する様のカード。

妖精や低級の妖怪ならまず使う事の無い物だけど……目の前に居る相手なら問題はない。

出来る事ならこの力を使わずに平穏な暮らしをと願ったが、やっぱり俺は戦いの中でしか生きられないのかもしれないな。

……仮にそうだったとしても、俺は俺の信じた道を歩き続けてみせる。

そうする事で自分の手で倒してもう一人の自分に報いる事にも為るんだからな。

 

「……皇帝『カイザー』!!」

 

覚悟を決めてカードを宣言すると、解き放たれた力が赤いオーラと為って足元から立ち上る。

さぁ行くぜ吸血鬼、力を解き放った俺は今までの様には行かないぞ!!

 

リュウSide out

 

 

 

 

レミリアSide

 

私の目の前でスペカを宣言した彼は、突如足元から発生した赤いオーラに包まれてしまった。

あの光の中で何が行われているのか理解できないけど……とうとう彼が本気になった事だけは理解出来た。

今はまだ彼を包む赤いオーラで姿は見えないけど、それでも今まで感じたことの無い様な強大な力をはっきりと感じる。

コレほどまでに強大な力を持つ妖怪は、古くから幻想郷に住む妖怪でも数える程度しか居ない。

……いや、純粋な力だけならあの妖怪の賢者よりも上か?

あの妖怪の賢者よりも上の力……そんな存在との弾幕ごっこだなんて…………最高じゃない。

私は今、自分の心が歓喜のあまり打ち震えているのをはっきりと感じ取れる。

500年近く生きて来た中で初めて出会う最高の遊び相手……それが今、私の目の前に居る!

 

「さぁ! 早く姿を現しなさいリュウ! その力、私に魅せてみろ!!」

 

すると、私の声に反応したのか立ち上っていたオーラは弾け、中から変身したリュウが現われた。

さっきまでの人の姿とは違い、上半身の服は無くなり、髪は白く背中には皮膜の無い赤い羽が生えている。

ズボンはそのままだが、尻の辺りからは赤い尾が生え、足は赤いかぎ爪となっていた。

これは人の竜の中間の様な姿と言えば良いのかしら? ……少なくとも〝人〟とは言え無いわね。

 

「……………」

「何を呆けている吸血鬼。早く続きを始めるぞ」

「え、えぇ。そうね」

 

なにコイツ。姿が変わっただけじゃなくて、態度まで変わったわ。

最初に会った時は気分じゃないとか言って癖に、如何言う心変わりをしたのよ。

……まぁ、いいわ。私も久し振りに本気で遊ばせて貰うから。

 

「紅符『スカーレットマイスタ』」

 

私の四枚目は、彼に向かって連続で大弾を放った後、周囲にも大小様々な弾を発射するスペカ。

自分に向かうだけではなく、周囲にも弾幕を張るから中途半端な回避は意味を為さない。

さぁ、この弾幕を如何攻略する?

 

「……………」

 

私の期待に反し、彼はただその場で佇んでいるだけだった。

私の予想を超える何かを期待してたのに、佇んでいるだけなんて……。

これだけの力を発しておいて、まさかこの程度だと言うのかしら?

 

「おい。どっちを見てるんだ、俺はこっちだ」

「……えっ?」

 

彼の声が突然右の方から聞こえ、慌てて確認するのと同時に彼が弾幕を放って来た。

私は慌てて彼の弾幕を回避しようとするが、彼が放って来た弾幕の速度がさっきと比べて極端に上がっている。

変身する前の彼の弾幕はお世辞にも早いとは言えず、遅いと断言しても良い様なものだった。

でも、今放って来た弾幕は風を思わせるくらいに速い弾幕だった。

ギリギリのところで反応して回避したけど、予想以上の速度に流石の私も戸惑ってしまう。

 

流石に力を解放したくらいで、此処まで弾幕の速度が上がるとは思わなかった。

だけど、彼の弾幕は先程と変わらず真っ直ぐ飛ぶだけのもの。

彼の射線上から移動すれば避けるのは簡単……だけど、本当に注意すべきは彼本人の移動速度だ。

さっきまで右側にいたのに、今度は正面に移動してるのがその証拠。

 

私も周囲に弾幕を張っているけれど、彼が速過ぎて弾が掠りもしない。

集中していれば眼で追えるけど、私の弾幕が遅くて話に為らない。

このスペカじゃ、どんなに頑張って弾幕を張ったとしても彼を撃ち落とすのはまず不可能。

そう考えて観念した私は、これ以上意味の無いスペカを撃つのを止める事にした。

 

「……なんだ、もうこのスペカは終わりか」

「当たらない弾幕を使っても意味はないわ。だから今度は攻め方を変える」

「そうか」

「行くわよ。神槍『スピア・ザ・グングニル』」

 

私が宣言した五枚目のスペカは、速さだけならさっきのよりも上。

ただ巨大な槍の形をした弾幕を相手に向かって投げるのもの。

弾を彼方此方にばら撒くのとは違い、真っ直ぐ相手に向かって行く弾幕。

今の彼みたいに素早く動き回られると当て難いんだけど、その動きを読み切れば当てられる。

 

私は牽制用の弾幕を張り、彼に弾を避けさせる。

彼は私の狙い通りに弾を避け、グングニルの射線に入る。

私は彼が射線に入った瞬間、手に持っていた槍を全力で投げ付けた。

投げた槍は真っ直ぐ突き進み、彼に命中する……かと思ったら―――、

 

「大爆発『ドギガ』」

 

―――彼は、手元に残していたスペカを宣言した。

彼がスペカを宣言すると、私達の間で突如大爆発が発生する。

その爆発に巻き込まれ、私はグングニルごと吹き飛ばされてしまった。

 

私は爆発の熱に焼かれながらも、なんとか体勢を立て直した。

そして周囲を確認すると、先程の爆発の被害を受けたのか時計台の一部が破損している。

……でも、破損したのが一部で運が良かった。

アレを時計台の中心で受けてたら、屋敷にまで被害が出ていたに違いない。

 

「やれやれ。グングニルが不発に終わるなんてね。こんな事ならもっと早くに投げれば良かった」

「どのタイミングで投げようと、ドギガで吹き飛ばすだけだ」

「まぁ、そうでしょうけどね」

 

手元にスペカが残っていたのは予想外だったわね。

アレが無ければグングニルで射抜く事が出来たかも知れないのに……。

まぁ、既に過ぎた事を反省をしていても仕方が無いわ。それより次のスペカは如何しましょう。

彼の速さを考えると、弾幕が厚いタイプのスペカが良いでしょうね。

そうなると、アレを使うのが手っ取り早いかしら。

どの道残りのカードも少ないし、コレでラストにしましょう。

 

「ラストスペル『紅色の幻想郷』」

 

私が宣言したラストスペル。

このスペカは周囲に大弾を発射した後、その軌道に沿って無数の弾を出現させ四方にばら撒く物。

放たれる大弾の数が多ければ多いほど、出現する弾の数も増える。

幾ら移動速度が速い彼でも、四方を弾幕に囲まれて身動きが取れない筈。

 

「……………」

 

私の目論見通り、彼の周囲は無数の弾で回避スペースが狭まっている。

今も周辺に散った弾が、彼に降り注いでいる。

回避スペースも極僅かしか残っていない。このまま行けば避け切れずに被弾する筈。

悪いわねリュウ。この勝負貰ったわ!

 

「……そう言えば、お前は俺の力が見たいんだったな。今からその一端を見せてやるよ」

「…? 今更何を言っているの。力なら既に解放してるじゃない」

 

既に四方を私の弾幕で囲まれているにも関わらず、彼には危機感が無いのだろうか?

そんな事を思いつつ弾幕を張っていると―――、

 

「ラストスペル『カイザーブレス』」

 

―――今度は彼がラストスペルを宣言した。

お互いに最後のスペカである以上、彼の弾幕に被弾したら私の負けになる。

それに先に私が宣言しているから、私の弾幕はこれで掻き消されてしまう。

……でも、彼のラストスペルを攻略出来れば私の勝ち。

私に逃げの選択はない。なら、必ず攻略してみせる!

 

「行くぞ、レミリア・スカーレット」

 

そう言うと、彼のスペカが消失し、魔法陣の様なものが描かれた黒い球体が現われ彼を包む込んだ。

そして、球体に描かれた魔法陣が光り輝いたと思ったら、球体が崩壊し始め、何かが飛び出して行った。

はっきりと姿を確認出来た訳じゃないけど、琥珀色の巨大な生物が空に飛んで行くのが見えた。

 

「………? 何も来ない?」

 

球体が崩壊し、何かが空に飛んでいったにも関わらず、彼の弾幕は未だに張られていない。

それどころか、球体の中に居ると思っていた彼の姿が何処にもない。

ラストスペルである以上、嘘を吐いて逃げ出したとは考え難い。

流石にそんな腰抜けではないだろうし、逃げるのならもっと早くに逃げている筈。

 

私は幾つかの疑問を抱えながら、何時なにが来ても良い様に周囲を警戒していた。

すると、突然私の頭上が明るくなり始めた。

突然の光に驚きつつも、空が明るくなった事に疑問を持った。

 

今の時刻は深夜零時過ぎで、日の出にはまだ時間がある。

だと言うのに、昼間と同じかそれ以上の光が降り注ぐのは幾らなんでも可笑しい。

それに光に当たっているのに、身体が気化しないのも不自然過ぎる。

私は、この光の正体を知る為に空を見上げると―――、

 

「なッ……?!」

 

―――私の頭上には、幾つもの光の柱の様な物が降り注いでいた。

私は慌ててソレを避けようとしたが、光の柱が降り注ぐ方が早く……そのまま光に飲み込まれた。

 

 

レミリアSide out

 

 

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