竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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今回は珍しく全編アリスの視点でお送りします。


第百三話 アリスの受難

今年も暑かった夏が終わり、漸く涼しくなって来た今日この頃、私は紅茶の入ったカップを手に優雅にお茶を飲んでいた。

最近は寝ずに上海の改造を施していたけど、ちょっと行き詰ったから久々に休息を取っている。

身体の魔力許容量を増やすと言っても、既に出来上がっている身体を弄くるのも容易な事じゃない。

0から創るのなら割と簡単だけど、10として完成してる物に手を加えて、また10に戻すのも中々大変な作業だ。

でも、この技術を完成させないと次に進めないから、なんとか頑張らないって完成させないと。

 

「……とは言っても、どうやれば良いのかしらね」

 

カップをテーブルの上において、答えの出ない悩みにまた考え込み始める。

手や足のパーツは別の物と取り替えるだけで良いとして、問題なのは頭部や胸部のパーツ。

この二つの部分には、色々と重要な術式が組み込まれてるから、他の部分みたいに取り替えれば良いと言うわけでもない。

必要なところだけ切り取って、別のものと挿げ替えるって方法もあるけど、それで上手くいく保証もないし、一度切り離してしまったら上海を元に戻せなくなる。

魔力許容量が増える特殊な液体を作って、その中に上海を浸すのも考えたけど……流石にそんな都合の良い薬は作れない。

……いっその事、竹林に居る薬剤師に相談してみようかしら? 色んな薬を作れるみたいだし、魔法薬の参考くらいにはなるかもしれないわね。

 

―コンコンコンコン―

「…? こんな所に一体誰かしら?」

 

来客を告げるノックが耳に届き、私は迷い人でも来たのかと思いながら玄関に向かった。

数多くいる訳じゃないけど、たまにこの森に迷い込んで私の家に訪ねてくる人間もいる。

如何して私の家なのか不明だけど、大抵の人間は一時間も経たずにこの家から逃げ出してしまう。

特別おかしな事はしてない筈なのに、何故か毎回道案内をする前に出て行ってしまうのよ。

手間が省けて楽なんだけど、如何して逃げ出してしまうのか理由を聴いてみたいものね。

 

―コンコンコンコン―

「はいはい、今出るわよ」

 

私はドア越しに応対して扉を開けると、其処に居たのは意外にも幻想郷の住人ではなかった。

 

「は~い。お久し振りね、アリスちゃん」

「お、お母さん?!」

 

ドアを開けた先に立っていたのは、魔界にいる筈の私の母……魔界神こと『神綺』その人だった。

私の家に尋ねてくるのは珍しい事じゃないけど、何時もなら来る前に必ず連絡を入れてくれるのに、今回は突然如何したのだろう?

それに普段ならお供として夢子を連れてくるのに、今回は一人だなんて……一体どういう風の吹き回しかしら。

 

「どう、アリスちゃん? 驚いてくれた?」

「確かに驚いたけど……一体なんの用で来たの?」

「一応用事はあるけど、一番の理由は急にアリスちゃんの顔が見たくなったからかな」

「見たくなったって、仕事の方は如何したのよ。それに夢子は一緒じゃないの?」

「仕事は全部夢子ちゃんに押し付けてきちゃった。テヘっ」

「……………」

 

悪びれる事無く言ってくる母に対して、私は呆れ果ててしまって何も言えなくなった。

きっと今頃は、夢子がお母さんへの愚痴を良いながら、せっせと仕事をこなしているんでしょうね。

そんな風に考えると、彼女たいして物凄く申し訳ない気持ちで一杯になってくる。

……お母さんが帰る時に、夢子へのお土産として何か持たせた方が良いかもしれないわね。

 

「ねぇねぇ、アリスちゃん。そろそろお家の中に入れて欲しいんだけど」

「あ、ごめん。何も用意して無いけど入って」

「お邪魔しま~す」

 

気楽そうに言いながら家に上がった母は、そのまま居間の方へと向かって歩いていった。

私はドアを閉めた後、台所の方に向かって、お母さんの分のお茶とお菓子を用意する。

 

「マスター、オ客サンデモ来タノ?」

「あ、上海ちゃん。こんにちわ~」

「コ、コンニチワ……」

 

上海は突然やってきた母に驚きながらも、礼儀正しく確りと挨拶を返した。

でも、まだ人見知りするのは治っていないのか、挨拶をした後は直ぐに私の元にやって来た、私の後ろに隠れてしまう。

 

「うぅ…そんな露骨に避けないでよ~……」

「まだお母さんに慣れてないだけよ。それよりも、今日は何の用で来たの」

「その前に一つ聞きたいのだけど、アリスちゃんって今好きな人いる?」

「別に居ないけど……それが如何かした?」

「実はお母さんねぇ、アリスちゃんに縁談の話を持って来たの」

「…………はい?」

 

突然おかしな事を言い出した母は、私が驚いているのも気にせず、何処からか薄い本の様なものを幾つも取り出してきた。

私は用意したお茶と菓子を持ってお母さんの所へいき、それ等をテーブルの上に置いた後、母が取り出してきた本のようなものを手に取り、中身を確認してみた。

本の様な形をしているけれど、中のページはは殆ど無くて、あるのは一枚の写真とその人の名前だけだった。

 

「なにこれ」

「お見合い写真。カッコイイでしょ~、夢子ちゃんに頼んで選りすぐりの人を選んだんだから」

「そうしゃなくて、如何してこんなものを持って来ているのかって聞いてるの」

「だって、アリスちゃん自分の研究ばかり優先してるみたいだから、お母さん心配で心配で……」

「誰もこんな事頼んでないじゃないの……」

 

相変わらずマイペースな母に、私は呆れ果てて頭痛すら覚えてしまった。

本人は私の為だとか言っているけど、恐らくは孫の顔が見たいだけなんでしょう。

前に来た時も恋人の事とか聞いてきたけど、まさかお見合いの話を持ち出してくるとは思わなかったわ……。

 

「如何したのアリスちゃん? もしかしてベリアルちゃんが嫌なら、他の人の写真もあるわよ?」

「そうじゃなくて、私は恋人を作る心算は全く無いの」

「どうしてよ~。アリスちゃんもお年頃なんだし、恋人の一人や二人いても良いじゃない」

「別に興味ないし、今は上海の調整で忙しいから別に良いのよ」

「そうは言っても青春は待ってくれないのよ? 今楽しめる事は今楽しまないと」

「……恋人は今じゃなくても問題ないと思うけどね」

「む~……アリスちゃんの分からず屋め~」

「はいはい」

 

お母さんの文句を聞き流しながら、私は持っていた写真をテーブルの上に置いた。

お見合い写真は他にもあるけど、恋人を作る気の無い私には如何でも良いものでしかない。

でも、出しっぱなしと言うのも邪魔になるから、出された写真を一箇所に纏めておこうかしら。

 

「折角持って来たのに、如何して見てくれないのよ~」

「興味ないからに決まってるでしょ」

「でもでも、アリスちゃんってお友達少ないじゃない? だから、こう言うのも必要だと思うの」

「失礼な事言わないでよ。確かに昔は居なかったけど、今はちゃんと友達くらい居るわよ」

「……それって女の子じゃなくて男の子?」

「えぇ」

 

私が何の気なしにそう告げると、お母さんは本当に嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

「アリスちゃんに男の子の友達?! 一体何処の誰さん? お母さん一目会って見たい!」

「ちょ、ちょっと少し落ち着いてよ。第一、私と彼はお母さんの考えてる様な関係じゃないわ」

「彼だって、今の聞いた夢子ちゃん……っていない。もう、如何してタイミング悪く居ないのかしらね」

「お母さんが夢子を置いてきたんじゃないの……」

 

一人で勝手に盛り上がる母を止める術も無く、結局押し切られてしまい、お母さんにリュウを紹介する事になった。

リュウには既に彼女がいると教えたけど、お母さんは〝なら略奪愛ね、頑張って〟と変な応援をされてしまった。

……誰もそんな事する心算も無いし、霊夢からリュウを奪ったらどんな目に遭うか分からないから、絶対にする心算も無いわよ。

 

 

 

 

 

 

………

……

 

リュウに会いに博麗神社に向かう前に、湖の方から捜して見る事にした。

昨晩、魔理沙が突然私の家に来て〝また宴会するから神社に集合な〟って言ってたから、その時に振舞う魚の調達に来ているんじゃないかと思って。

そしたら案の定、霧の中でリュウは湖に向かって釣り糸を垂らしている所を発見した。

相変わらず釣りが好きみたいね……なんて思いつつ、お母さんを連れて彼に近付こうとしたら……何故かお母さんに引き止められて、そのまま茂みの中に隠れてしまった。

 

「ちょっと如何したのよ?」

「ね、ねぇアリスちゃん。お母さんに紹介する子って彼の事?」

「そうだけど……それが如何かしたの?」

「お母さん、あの子だけは止めておいた方が良いと思うなぁ~。私、彼と仲良く出来る自信がないもの」

「だから、そう言う関係じゃないって言ってるでしょ……」

 

何度説明しても信じてくれず、私たちがプラトニックな関係だと思っている母に、私は思わず呆れ果ててしまう。

一体どれだけ説明を重ねれば良いのか知らないけど、この話が霊夢の耳に届いてしまったら、今後神社に遊びに行けなくなりそうね。

 

「おい、変なの! お前に一つ聞きたいことがある!!」

「ん? ……なんだ大ちゃんと氷精か、相変わらず元気みたいだな」

「こんにちわ、リュウさん」

 

無駄に元気な声でリュウに挨拶したのは、この湖に住んでいる妖精二人だった。

氷の羽の子は随分と態度が偉そうだけど、リュウは特に気にしていない所を見るとアレが何時もみたいね。

 

「ところで変なの、ルーミアはどうしてる? 元気にしてる?」

「嗚呼。聞いた話だと、元気過ぎて困ってるそうだ」

「そっか……。元気ならそれでいいや!」

「良かったね、チルノちゃん」

「うん!」

 

あの子達の会話の内容はイマイチ理解出来ないけど、また彼が何かの厄介事に関わったみたいね。

霊夢と一緒で、トラブルや何かの事件に巻き込まれやすいのかしら?

三人の会話を盗み見ていると、霧の向こうから傘を差した異形な翼を持つ少女が飛んできて、暢気に釣りをしていたリュウと激突した。

 

「ぬがッ?! ……全く危ないな、もう少し気をつけろよフランドール」

「えへへ~、ごめんなさ~い」

 

一切悪びれる様子も無く謝る少女に、リュウはやれやれと言った様子で肩を落とした。

あの子は確か、湖の対岸に住んでいるレミリアの妹のフランドールだったかしら。

あそこの屋敷には何度かお邪魔してるけど、基本的に図書館にしかいかないから余り面識がないのよね。

 

「ところでリュウ。このちっこいのは誰?」

「お前だって似たようなたいけいのくせに、ちっこいとはなにさ!」

「お前じゃないもん! わたしは『フランドール・スカーレット』って言う名前があるもん!」

「アタイは『チルノ』! このあたりでサイキョーの妖精さ!」

「サイキョー? なら、リュウよりも強いの?」

「ああ! アタイが本気になれば、そんな奴イチコロよ!」

「なら試してみても良い?!」

「どんこい!」

「……おい、ちょっと待てフラン!」

 

リュウが慌ててフランを止めようとしたけど、あの子は聞く耳持たずに手の中に創った何かを握り潰した。

その瞬間、氷の妖精の身体から突然爆発が起こり、妖精は跡形も無く吹き飛んでしまった。

その直ぐ傍にいたリュウは、危険を察知したのか釣竿ともう一人の妖精を抱えて、何時の間にか別の場所に避難していた。

 

「ふぇ~……凄いわねあの子。手に出来たものを握り潰しただけで、妖精を壊しちゃった」

「パチュリーからは、かなり危険な能力を持ってると聞いてたけど、まさか此処までとは思わなかったわ」

「それにしても、女の子を助けるなんて随分と優しく為っちゃったのね。なんか別人みたい」

 

私とお母さんは、すぐ目の前で使われたあの子の能力に驚いていた。

もっとも、お母さんはフランの能力以外にも驚いているみたいだけど、何について驚いてるのかイマイチ分からないわ。

一方リュウは、目の前で発生した惨状を眼にして……やれやれと言った感じで溜息を吐いた。

 

「……怪我はないか、大ちゃん」

「はい。髪が乱れた事以外は特に」

「そっか」

 

抱えていた妖精を地面に降ろしたリュウは、そのままフランに近付いていって……彼女の頭を拳骨で殴った。

 

「イタッ!? むぅ~、何するのさリュウ」

「あのな、フラン。前々から言ってたけど、無闇にその力を使うな」

「だって、あの子が……」

「だってじゃない。ったく、相手が妖精だから良いけど、普通の相手だったら今ので殺してるところだったんだぞ。お前だってそう言う事がしたい訳じゃないだろ?」

「…………うん」

「それなら言わなくちゃいけない事があるよな?」

「リュウ、ごめんさない……」

「違うだろフラン。お前が謝らなくちゃいけないのは、後ろで復活しかかってる妖精だ」

 

彼がそう言いながら指を指すと、確かに爆心地で氷の塊みたいなモノが人の形に為ろうとしてた。

妖精はやられても復活するのは知ってたけど、こうして直接見るのは今回が初めてね。

『魔法の森』に妖精なんて殆ど居ないし、倒した後にどうやって復活するのかなんて見ようと思った事も無い。

そう考えると、今目の前で起こっている光景ってかなり貴重な気がしてきたわ。

 

「……っと。アタイ、ふっかつ!!」

「大丈夫、チルノちゃん?」

「うん! このていどで負けるアタイじゃないよ!」

「……チルノ」

「うん? どうしたフランドール」

「……さっきはごめんね」

「別に気にしてないよ。それよりも、さっきのはどうやったの? アタイにも出来るかな?」

「アレは私の能力だから、無理だと思うけど……」

「そうなの? ……ま、いっか! それよりも、折角だから何かしてあそぼうよ!」

「あ…………うん!」

 

すっかり仲良くなった二人は、手を繋いで森の中に向かって駆け出していった。

そんな二人を追い掛けるように、もう一人の妖精も一度リュウにお辞儀した後で、森の中に向かって走っていく。

あの子たちの後姿を見送ったリュウは、何処からとも無く両刃の剣を取り出し、空に向かって剣を振り上げた。

すると、薄い雲で覆われていた空が一遍して、今にも雨が降り出しそうな位にどんよりとした曇り空になってしまった。

 

「これでよしっと。……ところで、何時まで茂みの中で隠れてる心算だ。いい加減出て来いよ」

「……やっぱりバレてたか」

「アリスちゃん、殺される前に早く逃げ出しましょう!」

「ちょっと、落ち着いてよお母さん」

 

私たちが居る事がばれると、お母さんは本当に珍しく慌てだした。

今までこんなお母さんは見た事が無いけど、一体過去に何が遭ったって言うのかしら?

魔界の神であるお母さんが此処まで慌てるなんて、よっぽどの事が無い限りありえないと思うんだけど。

 

「……おい、アリス。その人一体如何したんだ?」

「さぁ? 私にも良く分からないのよね」

「暢気に話してちゃ駄目よアリスちゃん! 早く逃げないとボロボロになるまで攻撃されちゃうわ!」

「おいちょっと待て。誰が何時そんな事をした」

「何時って……何百年も前に私の魔界を荒らしたじゃない! フラっと魔界にやって来て、各地にいる強力な子を叩きのめした後、私の所にやって来てボコボコにしていったじゃない!」

「……リュウ、貴方は何をしてるのよ」

「あ~それはきっと、記憶を失う前の俺の事だな」

 

リュウは一人で納得してるみたいだけど、私には何の話をしているのか今一つ理解出来ない。

お母さんはお母さんで、未だに混乱しているみたいだし……此処はちゃんと説明して貰わないと駄目ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

「って訳で、俺は召喚された以前の記憶がないんだ」

「……それじゃ、魔界各地を荒らしまわった事も覚えていないの?」

「嗚呼、全然。むしろ今日初めて知ったくらいだからな」

「なら、また魔界に来て暴れまわろうなんて考えて無いの?」

「今の俺にそんな趣味はないし、魔界の連中が何かしない限りは攻め入る心算も無い」

「……本当?」

「疑り深い奴だな。本当だって言ってるだろ」

「……よ、良かったぁ~。私はてっきりまた酷い目に遭うんじゃないかって心配しちゃった」

 

なんとかお母さんを落ち着かせた後、リュウから色々と事情を聞いて、二人をなんとか和解させる事が出来た。

以前にリュウから記憶が無いって聞いてたけど、まさか彼にこんな事情があるだなんて思いもしなかった。

しかも、私が生まれる昔に魔界に来て彼方此方で暴れたなんて、今のリュウを見る限りだととても想像が付かないわ。

 

「顔に似合わず、貴方も色々と苦労してるのね」

「……顔に似合わずは余計だ」

 

私が思わず本音を口にすると、リュウは不機嫌そうに顔を顰めて呟いてきた。

とんでもない能力や知恵を持っているのに、こうして不機嫌な顔をしていると、なんだか子供っぽく見えるわね。

 

「それにしても、コレで納得できたわ」

「なにがだ?」

「私の知ってる貴方と随分違うから不思議だったけど、記憶喪失じゃ仕方が無いわね」

「……前にも似た様な事を言われたけど、昔の俺ってどんな奴だよ」

「悪鬼羅刹も裸足で逃げるような危険人物」

「マジでどんな奴だったんだろ……」

 

お母さんのとんでもない一言を聞いて、リュウは明後日の方向を見ながら遠い眼をしてしまった。

今のリュウからじゃ想像付かないけど、お母さんの話だと相当危ない人物だったみたいね。

魔界神であるお母さんに此処まで言わせるなんて、一体どんな人物だったのか逆に興味が出てくるわ。

そんな事を思いながらなんとなく空を見上げてみると、空の彼方から霊夢が物凄い勢いで飛んで来るのが見えた。

 

「大変よリュウ……って、アリスに神綺じゃない」

「お久し振りね巫女さん」

「なんでアンタが居るのか謎だけど、それよりも大変なのよリュウ!」

「如何したんだ霊夢。お前が慌てるなんて珍しい」

「今夜の宴会にルーミアが参加する事が決まったわ」

「……薬の方はどうなってたっけ?」

「まだ完成してないらしいわよ」

「「……………」」

 

二人だけが理解出来る会話をすると、リュウは突然立ち上がって、何処からとも無く普段使っている長剣を取り出した。

剣を出して何をする心算なのかしらないけど、彼の様子を見る限りだと相当切羽詰ってるみたいね。

 

「大きな猪を狩って来るが、それで足りるか?」

「……今回来る人数を考えると、一頭だけじゃ不安が残るわ。せめて二頭は狩って来て」

「分かった。夕方までには間に合わせてみせる」

 

それだけを霊夢に伝えると、リュウは風にでもなったのかと思ってしまう程の速さで、彼は私たちの傍から居なくなってしまった。

残された私たちは呆然とその様子を見送っていると、霊夢が思い出したかの様に私たちに声を掛けてくる。

 

「あ、そうだアリス。アンタ今暇よね? だったら手伝いなさい」

「強引ね。手伝いって何をさせる心算?」

「食料調達よ食料調達。今日はとんでもない暴食な奴が来るから、それ対策に大量の食料を確保しておきたの」

「簡単に言うけど、食材を大量に確保するのも容易なことじゃないわよ?」

「アンタの魔界の物でも良いから集めてくれば良いのよ」

 

霊夢も今回来る子の事で切羽詰ってるのか、魔界の食材でも構わないとか言い出していた。

確かに魔界にも食材はあるにはあるけど、あそこは広すぎるから集めるのも結構大変なような気もするわね。

 

「一つ聞きたいんだけど、それって私とアリスちゃんも参加して良いの?」

「食料さえ持って切れくれれば良いわよ。飛び入り参加なんていつもの事だしね」

「そっか。なら早く集めてこないと。急いで帰るわよ、アリスちゃん」

「あ、ちょっとお母さん?!」

 

コッチの意見も聞かずに、お母さんは私の腕を掴んで空に飛び上がり、物凄い勢いで魔界の出入り口へと向かって翔け出した。

私は今回の宴会に参加しないで、上海の改良に専念しようと思っていたのに……如何してこうなるのかしら。

お母さんが私の話しを聞いてくれるとは思えないし、今回は素直に諦めるしか無さそうね。

 

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