竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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文花帖的な回と言う事で、今回は恐らく最初で最後の射命丸視点でお送りします。


第百七話 鴉天狗の取材

はい、清く正しい新聞記者こと射命丸文です。ワタシは今とある事で非情に頭を悩ませています。

普段でしたら外に出て、ワタシの新聞のネタに使えそうな物を捜しているのですが、運の悪いことに此処最近はネタを拾うことが出来ていないんです!

幻想郷中を飛び回っていても、使えそうなネタなどなく、何時もと変わらない平和な日常を送っているのですが……新聞記者としては、この状況は非常に困ります。

使えそうなネタが無いと言うことは『文々。新聞』を書くことが出来ず、定期購読者の皆様に迷惑を掛けることになり、ひいてはワタシの新聞の売り上げにも直接影響してくる事になりますからね。

なんとしてもネタを見つけないといけないのですが、簡単に見付かってくれるならこんなに苦労はしてませんよねぇ……。

 

「……はぁ~」

 

ワタシが思い悩んで自室の作業台に伏していると、部屋の前に不自然な強風が駆け抜けました。

そして部屋の窓の外に女性の影が映し出され、窓に付いている障子をボスボスと数回ノックをしてきました。

誰が来たのかなんとなく想像は付きますが、顔を出して対応するのも面倒なので、このまま居留守を使う事にします。

別に対応しても良いのですが、ネタが見付からない今のワタシに其処までの元気はありませんし。

 

「文~居るんでしょ~。出て来なさ~い」

「……………」

「出て来ないとアンタの変な噂を里で話すわよ~」

「……社会的に抹消しようとするのは止めて下さい」

 

ワタシは伏した顔を上げて、窓を開けて外にいる女性……『姫海棠 はたて』と顔を見合わせた。

普段から家に引き篭もっているくせに、珍しく外に出てワタシの家に訪ねてくるなんて、今日は一体どういう吹き回しなんでしょうかね。

 

「如何したのよ文? 元気がないなんてアンタらしくないわよ」

「放っといてください。それよりも、普段から外に出る事の無い貴女がワタシの家に来るなんて、随分と珍しいですね」

「そりゃ、アンタが写真を撮ってくれないと、あたしが新聞を書けないもの。全然動こうとしないから様子を見に来たのよ」

「少しはオブラートに包んだら如何ですか? あと、ワタシの写真は貴女の為にあるんじゃない」

「使われるなら誰の新聞に載ったって一緒でしょ」

「……そんなんだから貴女の新聞は、情報が古くて人気が出ないんですよ」

「出鱈目な内容を書いてるアンタに偉そうな事言われたくないわ」

「悪かったですね出鱈目で。…………はぁ~」

 

普段ならもっと突っかかって口論するのですが、今回はどうもその様な気分にはなれそうにない。

なんだかやる気を失ったワタシは、はたてを無視してまた作業台に伏す事にしました。

こんな事していてもアイディアが浮ぶ筈もないのですが、外に出ても面白いネタを見つけられないんじゃ同じ事ですよね。

 

「ちょっとホントに如何したのよ? アンタが溜息吐くなんて珍しい」

「別に如何ってことはありませんよ。ただ、新聞のネタが無くて困ってるだけですから」

「ネタがないって……確りしなさいよね。アンタが写真撮ってくれないと、あたしが困るんだから」

「だから、勝手にワタシの写真を使わないで下さい」

「なら、写真提供者として文の名前を出せば良いのね」

「そう言う問題じゃないでしょう……」

 

此処まで自分勝手な解釈をされると、呆れてものが言えなくなります。

偶には自分で取材に行ってネタを集めてもらいたいものですが、この子にそれを言っても無駄でしょうね。

他人の写真を使って新聞を書いているようでは、大会のランキングに載る事など夢のまた夢ですよ」

 

「……聞こえてるわよ、文」

「おや? ワタシ何か言いましたっけ?」

「………まぁ良いわ。それよりも知ってる文? この間、大天狗様が神社に住んでいる竜の取材に失敗したんだって」

「そうなのですか? それは初耳ですね」

 

引き篭もりのはたての癖に、ワタシの知らない情報を握っているのに興味が湧き、それに釣られて顔を上げてみると、彼女が一冊の新聞をワタシに差し出してきました。

 

「大天狗様が回収する前に持って来てあげたわよ」

「態々すいませんね、はたて。……では、拝見させていただきましょうか」

 

はたてが出して来た新聞を手に取ってみると、見出しに大きく『大天狗取材失敗!!』の文字が書かれていました。

詳しく読んでみると、如何やら山から流れる川で釣りをしていたリュウさんに取材を申し込んだところ、適当にあしらわれた挙句、釣りの邪魔と言う理由だけで山まで殴り飛ばされたとの事です。

この新聞を書いた天狗も取材をしようとした所、睨み一つで身が竦むほどの恐怖を感じてしまい、結局は全く話を聞けずに断念したとの事。

 

「なんと言うか……リュウさんらしい内容ですね」

「えっ? なに? アンタ、このおっかない竜と知り合いなの?」

「まぁ、顔見知りと言った程度でしょうけど」

 

この山で一番親しいのは天魔様でしょうが、ワタシもその次位には見知った仲であると思っています。

もっとも、リュウさんがワタシの事を覚えていてくださっているのか謎ですが、少なくとも初対面の大天狗様よりはもう少しまともな話が出来るでしょう。

……よくよく考えてみると、あの方の事を掲載した新聞と言うのは殆どありませんでしたね。

何せ住んでいるのがあの博麗神社ですし、何かとおっかない噂のあるお人ですからね、取材してみたくても恐くて中々聞く機会がないんですよ。

ですが、何度か顔を合わせたことのある今なら、あの人の取材を敢行する事が出来るのではないでしょうか?

未だ誰一人としてまともに取材をする事の出来ないでいる方に、ワタシだけが独占取材をするが出来れば……新聞のネタに為る上に話題性も十分、もしかしたら発行部数が増えて今年の大会のランキングに載れるかも知れない!!

 

「……そうですよ、その手があったじゃないですか! 如何してこんな簡単な事に気が付かなかったのでしょうかねワタシは!!」

「ち、ちょっと如何したのよ文? いきなり大声なんか出しちゃってさ」

「そうと決まれば早速取材しに行かなければ。えっと……手帳とカメラにフィルムを用意してってその前に、にとりの所に行ってカメラをメンテして貰いましょう。取材中に動かなくなっても困りますしね」

「えっ? 取材しに行くの? それならアタシにも一口かませなさいよ」

「そんなの嫌に決まってるじゃないですか。あと、これは友人としての警告ですが、今回の写真を使って妄想新聞を書くのは止めた方が良いですよ。きっと消されますから」

「け、消されるって……この竜って奴、そんなのおっかない相手なの?」

「えぇ。本気で怒らせたら命に関わりますし、もしかすると天魔様も怒らせる事に為るかもしれませんから。……では、ワタシは急ぎの用ができましたのでこれで」

 

警告をするだけしたワタシは、荷物を持って窓にいるはたてを無視して、急いで飛び出していく。

まずは予定通りにとりの元へと向かって、カメラのメンテナンスをして貰いましょう。

あのリュウさんの事ですから、釣りに出かけていない限りは博麗神社に居る筈ですし、慌てて取材しに行く必要がありませんからね。

 

 

 

 

 

 

………

……

 

カメラのメンテナンスをして貰ったワタシは、その足で真っ直ぐに博麗神社へと向かいました。

幻想郷最速を自負しているワタシには、山から神社までなんて物の数分で往復する事が出来ます。

カメラの方も特に異常は無いとの事ですし、これで何の気兼ねなく取材をする事が出来ますね。

 

「……と言う訳で、取材をさせてくれませんか?」

「俺は別に構わないけど―――」

「―――さっさと巣に帰りなさい天狗」

「予想通りの返事を有り難う御座います。次はもう少し捻った返事を期待します」

 

神社に辿り着いたワタシは、早速母屋の縁側に居るリュウさんに取材を申し込みましたが、案の定そばに居る霊夢さんに拒否されてしまいました。

ある程度予想出来ていた事ですので、特別落胆することでも在りませんが、霊夢さんを説得するのも容易な事ではないでしょうね。

……まぁ、こうなると分かっていたのですから、ちゃんと対策を立てて来てるんですけどね。

 

「なぁ霊夢、何も其処まで突っ撥ねる必要はないんじゃないのか?」

「甘いわよリュウ。コイツ等の新聞なんて碌な物じゃない上に、一度でも取材を許したらその後もしつこく尋ねてくる様になるのよ」

「あ~……それは確かに面倒だな」

「確かに何か遭ったら取材しに来ますが、しつこく聞きには来ませんよ。ワタシだって命は惜しいですから」

「だったら早く帰りなさいよね。私たちは何時までもアンタに関わってる程、暇じゃないのよ」

「(縁側で談笑してたくせに……)まぁまぁ、そう仰らずに。誰もタダで取材させてくれとは言ってないじゃないですか」

「へぇ~……新聞の取材って報酬が出るんだな。初めて知った」

「……何を持ってきても答えは変わらないわよ」

「霊夢さん、少々お耳を貸して頂けませんか?」

「…? 何だって言うのよ」

 

ワタシはリュウさんから少し離れた所に霊夢さんを呼んで、彼女と二人っきりで話を始めます。

別にあの人に聞かれても問題はないのですが、彼女を説得するにはこうした方が良い様な気がしますからね。

 

「それで話ってなによ」

「霊夢さん。リュウさんとのツーショット写真は欲しくないですか?」

「……なんですって?」

「ですから、リュウさんと霊夢さんのツーショット写真です。ワタシの記憶が正しければ、リュウさんはこの幻想郷に現われてからまだ一枚も写真を撮られていません。取材を断り続けるのはそちらの自由ですが、このまま断り続けていたらあの人の写真を手に入れる機会がなくなってしまいますよ」

「確かにその通りかもしれないけど……写真機なら香霖堂でも買うことが出来るし、撮った写真はアンタの新聞に掲載されるんでしょ? それだったら此処で撮って貰う必要は無いわね」

「分かってませんねぇ……。確かに貴女の言う通り、カメラならお店で買う事は出来ますが、その写真を現像する手段が霊夢さんにはないじゃないですか」

「…………あ」

 

霊夢さんはワタシに指摘されて気が付いたのか、眼を丸くして唖然とした表情になりました。

異変解決の時は冴えに冴え渡っている霊夢さんですが、こう言った事には意外と頭が回らないようです。

ですが、これは好機と見るべきでしょう、此処で一気に畳み掛ければ霊夢さんを説得できる筈。

 

「詰まる所、霊夢さんがあの人の写真を手に入れるには、ワタシ達天狗の力を借りねば為らないのです。此処でその絶好に機会を棒に振りますか?」

「だからって、写真の為だけに態々取材を受けるって言うのもなんかねぇ……」

「誰もコレだけとは言ってませんよ。今回取材をさせていただければ、奮発してお賽銭をさせて頂きます」

「……見かけによらず汚い事考えるわね」

「なんとでも仰ってください。……それで如何しますか霊夢さん? 受けますか、受けませんか?」

「…………仕方が無いわね。でも―――」

「ご安心下さい。リュウさんとのツーショット写真はワタシの新聞には掲載しませんから」

「―――それなら文句は無いわ。さっさと済ませちゃいましょう」

 

話し合いの結果、意外とアッサリと霊夢さんからの了承を得る事が出来ました。

もう少し粘られるかと思ったのですが、やはりワタシ達天狗にしか写真を現像する事が出来ないというのが利いたのでしょう。

……とは言っても、あの古道具屋の店主なら写真の現像くらい簡単に行えそうですけどね。

そこら辺の発想に至らなかった事を考えると、霊夢さんも何処か抜けている所があるみたいです。

 

「お前等だけで一体何を話してたんだ?」

「別にリュウは気にしなくても良いわ。それよりも天狗の取材を受ける事になったから、適当に答えてやって」

「それは構わないけど……一体どういう風の吹き回しだ? ついさっきまで断ったのに」

「まぁ、細かい事はお気になさらないで下さい。では、早速取材させて頂きます」

 

不思議そうな顔をするリュウさんを他所に、ワタシは持参したペンと手帳を手に取り、何時でもメモが取れるように準備をする。

その間に霊夢さんは何気なく彼の隣りに座り、リュウさんは小さな溜息を吐いた後、真剣な眼差しでワタシの方に顔を向けてきました。

其処まで真剣になられても良いのですが、天魔様のご友人らしいですし、ワタシも何時も以上に真剣に取材させて頂きましょう。

 

「では、まず最初の質問ですが……リュウさんが、この博麗神社に住む様になった切欠はなんですか?」

「切欠って言われてもなぁ……霊夢が誘ってくれたからとしか」

「へっ? そうだったんですか?」

「嗚呼。……俺の力って結構危険だからな、監視する意味も含めて居候させてくれたのが始まりだ」

「はあ……。その辺りは如何なんですか霊夢さん?」

「大体合ってるわよ。初めて会った時から、コイツが龍族なのは気付いてたし」

「気付いた上で一緒に暮らすなんて、中々に凄い事ですね」

「別にそんな事無いわよ」

 

ワタシは今の会話を走り書きでメモしながら、お二人の図太さに思わず関心してしまいました。

お二人とも大した事ない様に言いますが、普通の人は監視されると分かった上で居候なんてしませんし、リュウさんの力を知ってしまったら普通は畏れると思うんですけどね。

畏れる事無くリュウさんと接する事が出来ると言うのは、それだけ霊夢さんが他の人と違うと言う事なんでしょうね。

 

「それでは次の質問です。前々から噂になっているのですが、リュウさんが湖の湖畔に住む吸血鬼や、幻想郷から姿を消した鬼を倒したというのは本当ですか?」

「嗚呼、それは本当の事だ。吸血鬼は異変解決の時に、鬼は……なんか急に戦う事になって」

「きっとリュウさんの力に気が付いて、その力を試したくなったのでしょうね。そう言う種族ですからね鬼は」

「全く持って傍迷惑な話だよ」

「おや? そう言うリュウさんは戦うのはお好きではないのですか?」

「う~む……あまりそう言うのは考えた事無いが、無闇に戦う趣味は無いかな」

「成る程成る程。では、半霊の庭師と時折り戦っているとも聞きますが、それは如何言う事でしょうか?」

「あれに関しては、向こうから喧嘩を売りに来てるんだよ。俺から戦いを申し込んだ事は無い」

 

リュウさんが困った様に溜息を吐いている所を見ると、今の話は嘘ではないようですね。

事実確認も兼ねて件の庭師にも話しを聞くとして、この様子からして無闇に戦う趣味がないと言うのも本当の事なんでしょうね。

……ワタシの勝手なイメージなんですが、〝龍〟と言う種族はもっと好戦的な方達ばかりだと思ってました。

ですが、リュウさんの話を聞く限りですと、そう言う方ばかりでもなさそうですし、これは考えを改めたほうが良いかもしれません。

 

「では、三つ目の質問です。……お二人は何時、相手の事を意識し始めたのですか?」

「「……はい?」」

「ですから、お二人の馴れ初めですよ。折角の機会ですので聞いておこうかと」

「い、いきなり何を聞いてるのよ!? そんなこと話せるわけ無いじゃない!」

「えぇ~、良いじゃないですかちょっとくらい」

「駄目なものは駄目! ほら、さっさと次の質問をする!」

「むぅ……。まぁ、追い返される訳にも行きませんし、此処は素直に諦めます」

 

個人的には物凄く聞きたい内容でしたが、この話は別の機会がありましたら、その時に聞くとしましょう。

その後もこういった感じに、リュウさんと序でに霊夢さんから色々とお話を聞く事が出来ました。

お二人の日常から、関わってきた異変に付いてまで様々ですが、リュウさんは困ったり呆れたりしながらも、嫌な顔はせずにワタシの質問に答えてくれました。

時折り霊夢さんからのツッコミが入りますが、思っていた以上に色々な事聞く事が出来ました。

その時のお二人のやり取りが面白くて、取材中だと言う事も忘れてワタシも笑ってしまいます。

普段の取材は嫌がられる事が多いですが、今回の取材ではその様な事も無く、三人して笑い合いながら行う事が出来ました。

初めてお会いした時のアレだったので、正直な所あまり良い印象は持っていなかったのですが、こうして話していると思った以上に良い人だと言うのが分かります。

あの時は本当に虫の居所が悪いだけだったらしく、怒ってさえいなければ特別畏れる必要は無さそうです。

初めてお会いした時の殺気は忘れられませんが、今回の取材で大分リュウさんの印象が代わった様な気がします。

 

「―――でっかい天狗は、俺が釣りしてるってのに小難しい事をベラベラ言ってきてな。流石に頭にきたから思わずぶっ飛ばしちまった」

「アンタねぇ……。そんな事してるから、周りから破壊神とか言われて危険人物扱いされるのよ」

「いや、今回は俺悪くねぇだろ。ちゃんと警告だって出してるんだし」

「やり方が過激だって言ってるのよ」

「まぁまぁ、お二人とも今回はそこら辺に。次で最後の質問になりますから」

「お、やっと最後か。思ったよりも長く話していた気がするな」

「それでは質問です。……リュウさんにとって〝神〟とはなんですか」

「……最後の最後で変なこと聞いてくるな」

 

この質問を聞いて、リュウさんは眉を顰めて今回初めて嫌な顔をなされました。

隣に居る霊夢さんも笑顔だったのが一変して、ワタシに向かって射殺さんばかりに睨んで来ます。

ワタシとしてもこうなると予想していましたが、この質問は新聞のネタにするのではなく、個人的な質問だったりします。

季節はずれの花々が咲き乱れた異変の時に、リュウさんは閻魔様をその手にかけ様としていた。

話の内容は近くで聞いていましたが、閻魔様に躊躇無く向かっていくリュウさんを見て、どうしてもこの事が気に為ってしまった。

……ですから、怒られる事も嫌われる事も覚悟の上でこの質問をさせて頂きます。

聞かせてくださいリュウさん、貴方ほどの力を持つ方にとって神様って一体何なんですか?

 

「……俺にとって神とは何かって聞かれても、コレと言って何でもない存在でしかないな。俺自身を〝神〟として崇められるのは嫌いだけど」

「な、何でもない存在ですか? あれだけ閻魔様に怒っていたのに?」

「アレはあの閻魔個人に対して怒っていたのであって、神そのものに怒っていた訳じゃねぇよ」

「ですが、記憶を失う以前のリュウさんは、神々に戦いを繰り広げていたのでしょう? その時も何かの私怨で戦っていたのではないのですか?」

「昔の事なんぞ覚えてないが……龍神の話を聞く限りだと、何らかの使命のために戦っていたらしいからな。恐らくは私怨で戦っていた訳じゃないだろう」

「神々と戦う使命ですか……。一体どんな事だったのでしょうかね」

 

ワタシには関係のない事ですけど、リュウさんが果すべき使命が一体どの様なモノなのか興味が湧いてきます。

その使命が既に果されているのか、はたまた果たす事が出来なかったのか……。

真実を求める一記者として、この方の使命がどのような形で終わりを迎えるのか、なんとしても取材してみたいです。

 

「さぁな。でも、世界中の神々と戦ったらしいから、碌な使命じゃないんだろう」

「あははは……自分からそう言う事を言っちゃいますか」

「まぁ、忘れちまった使命だからな。それに今の俺にとって大切な事は、ソイツの種族や立場じゃなくて一体如何言う奴なのかって事だ」

「種族や立場でなく、その人個人がどの様な人物であるか……ですか」

「良い奴と悪い奴がいるのは、人も妖怪も神々も同じだからな。気に入らない奴とはソリが合わないだろうが、気の合う奴とならどんな種族とでも分かり合えるんじゃないのか?」

「成る程……確かにそうなのかもしれませんね。本日は長々と有り難う御座いました! 最後に写真撮影をして終わりとなります」

 

そう説明してワタシが写真撮影の準備を始めると、リュウさんは両腕を空に向けて伸ばし、凝り固まった体を解すように背筋を伸ばした。

 

「やっとか~……。あ~慣れない事して肩が凝った気がする」

「……私はアンタが肩凝ってるところなんて見た事無いけど?」

「んな事はねぇと思うぞ? やり慣れないことをすると精神的に疲れてだな」

「そんな事言っても翌日には全快してるんだから、別に気にする事でも無いでしょ」

「確かにそうかもしれないけど、今日中に疲れが取れるわけでも無いんだぞ」

「リュウなら大丈夫よ、きっと」

「それはどんな信頼だよ」

 

今し方取材を終えたばかりだと言うのに、お二人はもう別の話題で盛り上がっている。

この二人の姿を見ていますと、リュウさんの言っている事も強ち間違いでもないと思えてきます。

立場も種族も違うお二人がこうして笑い合えるのは、きっと通じ合う事のできる何かがあったからなんでしょう。

そうでなければ、この方達が今日まで一緒に居られる訳無いでしょうからね。

ワタシはメモし終えた手帳をポケットに仕舞い、愛用の一眼レフを手に取り、楽しそうに笑い合っているお二人をファンダーに収めて……そのままシャッターを切りました。

 

 

 

 

 

………

……

 

新聞の取材を恙無く終えたワタシは、お二人と別れたあと真っ直ぐに山へと帰る事にした。

普段でしたら他のネタを集めに駆け回るのですが、今回の新聞はリュウさん特集にする心算ですので、余計なネタを挟まずに書き上げようと思います。

リュウさんも色々な事を話してくださいましたし、あの人の特集が組まれた新聞と言うのも今まで在りませんでしたから、今回の新聞は過去最高の売り上げを記録してくれるに違いない!!

 

「いや~ホント、リュウさんには感謝しないといけませんねぇ」

「その様子だと取材は成功したみたいね、文」

「そりゃ勿論……ですが、貴女に使わせてあげるネタは一つもありませんよ、はたて」

 

山に帰ってきたワタシを迎えたのは、最悪な事に同業者のはたてでした。

折角気分よく帰ってこれたと言うのに、如何してこうタイミング悪く彼女と出くわすのでしょうね……。

 

「そう身構えないでよ文。ただ今回の記事に一口かませて欲しいだけなんだから」

「手伝いもしないくせに良くそんな事が言えましたね」

「こっちが協力を申し入れる前に飛んで行ったのは何処の誰よ」

「さぁ、何処の誰なんでしょうかね? ワタシには心当たりが全く無いのですが」

「……それはまぁいいわ。それよりも返事の方を―――」

「お断りします」

「―――即答?! ちょっとくらい悩んでくれても良いじゃない!」

「嫌ですよ、これはワタシが頑張って取材をした結果なんですから。……と言う訳で、サラバ!!」

「あ! ちょっと待ちなさいよ文!」

 

ワタシはしつこく付き纏われる前に先手を打ち、初速で出せる最高速度を叩き出してこの場から去る事にしました。

はたてもワタシの後を追いかけ様としますが、先に動き出していたワタシに追いつける筈も無く、一気に振り切ってやりました。

ワタシは突風となって幻想郷を駆け抜けた後、はたてに見付かる前に家に辿り着き、早速新聞を書き上げ始めました。

最初の見出しは……そうですね、此処はでっかく〝神社に住む竜との対話〟とでもしておきましょう。

 




今年も残すところあと僅かな訳ですが、今月中にもう一回くらい更新したいところですね。
ただ次投稿しようと思っている回は若干長い話なので、一回の更新で三、四話を同時に上げる事になりそうです。
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