BOFを知っている人は懐かしいと、知らない人はこういうキャラと旅をしていたんだと思ってください。
……もっとも、仲間たちが登場するのは次回からなんですけどね。
輝夜の所の使いから、ルーミアの薬が完成したとの知らせを受けて、彼女を迎えにやって来た。
もっと時間が掛かるかと思っていたが、元になりそうな薬が有ったからか、思いの外早く完成したようだな。
これで幻想郷中の食料が食い荒らされる事も無いだろうし、俺と霊夢がルーミアを滅ぼす必要も無くなった訳だ。
「ようルーミア。調子は如何だ?」
「まぁまぁ」
「……結局どっちなんだよ」
「普通なんだと思うけど?」
ルーミアが寝泊りしていた部屋を訪ねると、中は既に綺麗に片付いていて、帰宅準備が済んでいるように見える。
来るときに何の荷物も持って来ていないから、持ち帰るものなど薬が入っていると思われる紙袋ただ一つのみだった。
「屋敷の連中に挨拶は済んでるのか?」
「それは大丈夫。朝の内に礼だけは言っておいた」
「なら問題ない……よな?」
「いや、知らない」
「俺も入院とかした事無いから分からないんだよな」
「……それなら問題ないと言う事だね」
「何かあった時、文句を言われるのは俺なんだがな……」
俺は思わず乾いた笑みを浮かべるが、ルーミアはそんな俺を気にする事無く、横を通って部屋から出て行ってしまった。
部屋から出て行った彼女の後を急ぎ足で追い、そのまま二人並んで出入り口の方に向かって歩いていく。
その途中で何人かのウサギ達と出会うものの、簡単なお辞儀をするだけで何かを言ってくる事は無かった。
……それにしても、屋敷にいる妖怪ウサギたちが、若干痩せこけている様な気がするのは、俺の気のせいだろうか?
「ところでリュウ。霊夢は一緒じゃないの?」
「アイツは紅魔館に行ってるよ。今日は泊り掛けでフランと遊ぶ約束になってて、先にアイツだけ向かわせたんだ」
「それなら態々迎えに来なくても良かったのに。わたしなら一人でも帰れる」
「漸く退院できるってのに、迎えが一人も来てないのは寂しいだろ?」
「……そう言うものなのか?」
「いや、知らん。…でも、湖に帰っても誰も居ないぞ。今日はチルノも紅魔に来るらしいし」
「そーなのか」
「なんだったら、ルーミアも一緒に来るか? フランの奴も多いほうが嬉しいだろうしな」
「…………邪魔じゃないのならついて行こうかな」
「そうしろそうしろ」
と言う訳でルーミアもくる事になったが、何の連絡もなしに連れて行って大丈夫だったけか?
フラン達が文句を言ってくる事はないと思うが、咲夜からは何か嫌味のひとつでも言われそうだな。
事前に言って貰わないと食材が足りなくなるとか、人数が増えたので貴方の分だけ夕食を減らすわねとか……あれ? これって嫌味になるのか?
………
……
…
小さな不安を抱えたまま紅魔館に着いた俺達を待っていたのは、フランとチルノの熱烈な歓迎と言う名の弾幕だった。
何かあるだろうとは思っていたが、まさか扉を開けた瞬間に弾幕が襲い掛かってくるとは思わなかった。
この状況に呆れれば良いのか、それとも驚けば良いのか分からないが、邪魔になる弾幕を斬り捨てる事にした。
飛んで来る弾の数は結構あるものの、何時もの様に進むのに邪魔な弾だけを斬っていけば問題は無い。
どの弾が如何飛んで来るのかを読みつつ、俺は愛刀を片手に二人の弾幕を次々と斬り捨てて行った。
「おい、変なの! 弾幕をきるなんてひきょうよ! ちゃんと当たれ!!」
「不意打ちを仕掛けてきたお前等が言うな」
弾を斬り捨てて間合いを詰めた俺は、何も言わずに刃を二人に目掛けて飛ばした。
この状況で反撃されると思っていなかったのか、二人の回避行動を取るのが遅れてしまい、俺の攻撃を避け切れずにそのまま撃墜した。
「うぅ~……やっぱり負けた~……」
「俺に勝ちたいならもっとマシな方法を考えろ」
「だってさ、チルノ」
「アタイの完璧な作戦の何処が悪いって言うのよ!!」
「……穴しかねぇよ」
チルノが喧嘩を売ってくるのは何時もの事だから気にしないが、あの程度で勝てると思っているのかと思うと、流石に呆れ果ててしまう。
フランは遊び半分なんだろうけど、チルノは本気で俺に勝てると思っているみたいだからな。
戦い方を考えれば勝算はあると思うが、そんな事考えずにバカ正直に向かって来るからどうしようもない。
「相変わらず真っ直ぐだなチルノ」
「うん? ………あれ、ルーミア? どうして変なのといっしょに居るの?」
「今日はリュウに誘われた」
「そうなの? なら今日は一緒に遊べるんだね!」
「うん、その心算」
「わーい! それなら今日はトコトン遊ぶぞー!!」
チルノはルーミアと遊べるのがよほど嬉しいのか、彼女の周りをグルグルと飛び回ってはしゃいでいる。
食べる時以外だと表情の変化の少ないルーミアだが、チルノと遊べるのが嬉しいのか、何処と無く笑顔になっている様にも見える。
これなら連れて来た甲斐があったと思っていたら、何時の間にか傍に来ていたフランに服の袖を引っ張られた。
「如何した、フラン?」
「リュウ、あの人だれ?」
「あ~……そう言えば、フランは会うの初めてか」
「うん」
「彼女の名前は『ルーミア』。俺の知り合いで、チルノの友達だ」
「チルノの友達……」
フランは小さな声で呟きながら、何処か羨ましそうに二人の事を見ていた。
長い事独りで過ごして来たフランにとって、友達に対する憧れみたいなモノがあるんだろう。
遊び相手なら俺や霊夢がいるけど、フランが望んでいる〝友達〟とはまた違うものだからな。
精神年齢の問題なのか俺達と遊んでいても、小さな子供の相手をするお兄さん・お姉さんって感じになる。
折角部屋から出て、外に目を向けるようになったんだから、ここいらでちゃんとした友達を作った方が良いのかもしれないな。
そう思った俺が、チルノとルーミアに声を掛けようとしたその時―――
「あ、そうだ! せっかく来たんだから、ルーミアにアタイの新しい友達をしょうかいするね! フラン、ちょっとコッチに来てよ!」
―――チルノが気を遣った……のか知らないが、俺達の方を向いてフランの事を呼んできた。
フランは如何すれば良いのか分からず、服の袖を握ったまま俺の背中に隠れてしまう。
自分から前に出て行て欲しかったが、流石に其処までの勇気はまだ無かったようだ。
「うん? お~い、フラ~ン、どうしたのさ~」
「う、うぅ…………」
隠れたまま出て来ようとしないフランに見かね、俺はフランの手を取って二人の元へと向かう。
突然の出来事にフランは目を丸くするが、俺はそんな事気にせずに二人の前にフランを立たせた。
如何したら良いのか分からず、眼で俺に助けを求めてくるが、俺が何かを言うよりも先にチルノが助け舟を出した。
「おぉ来たきた。…しょうかいするねルーミア、この子がアタイの新しい友達の―――」
「ふ、『フランドール・スカレット』。…よ、宜しく」
「うん。わたしは『ルーミア』。宜しくな、フラン」
そう言ってルーミアは手を差し出し、フランに握手を求めてきた。
差し出された手に戸惑うフランだったが、今度は俺に助けを求める事無く、自分の意志でルーミアの手を握り返した。
そんな二人に何故かチルノも入ってきたが、コレもアイツなりの考えがあっての事……だと思う事にしよう。
今はどう言う訳か知らないが、三人で輪になって回転しているが……これも気にしない方向で。
輪の中に大人の体格のルーミアがいて、なんかバランスが悪い気もするけど、そんな事を気にしてたらキリが無いな。
そう結論付けた俺は三人から離れて、近くにあった壁に寄りかかって成り行きを見守る事にした。
しかし、ああして楽しそうにしているところを見ると、昔一緒に旅をした皆の事を思い出すな。
俺は『リュウ』本人じゃないと分かっていても、一緒に旅をした思い出は俺の中に残っている。
……まぁ、あの三人みたいにはしゃいだ覚えはないけど、如何してだか皆の事を思い出してしまう。
昔を思い出して懐かしんでいると、あの三人の騒ぎを聞き付けたのか、二階に通じる階段から霊夢とレミリアが少し驚いた様子でやってきた。
「ちょっとリュウ、コレは何の騒ぎよ」
「フランに友達が出来たから、その喜びを形にしてるんだろ」
「そうなの。……部屋に篭っていたあの子に友達が出来るなんて、なんだか感慨深いわ」
「アンタも屋敷で偉そうにしてないで、フランみたいに友達でも作ったらどうなの?」
「あら、失礼しちゃうわ。私にはちゃんとした親友が一人居るわよ」
「「……それは流石に嘘だろ/でしょ」」
「……貴方達、本当に失礼ね」
俺と霊夢のツッコミに、レミリアは指を鳴らして怒りを顕わにしてくる。
フランと同程度の少女に怒られても恐くは無いが、流石に友達が居ないってのは言い過ぎたか。
でも、基本的に独りでお茶を飲んでいる事が多いから、親友がいると言われてもイマイチ信じられないんだよな。
………
……
…
少しして漸く落ち着いた三人に、レミリアを加えた俺達六人で遊ぶことになった。
遊ぶ内容はかくれんぼで、鬼はジャンケンの結果霊夢に決まった。
隠れられる範囲は、地下を加えた紅魔館の屋敷内部のみで、鬼が60秒数えてる間に隠れなければ為らない。
能力に関しては特に制限されてないが、隠れるのに適した能力はルーミアくらいなもんだから、其処まで気にする必要も無い。
それに鬼が霊夢だし、どんなに上手く隠れようともアイツの勘なら見付かってしまうだろう。
「はぁ……なんで私が鬼なのよ」
「諦めなさい霊夢。これが貴女の運命よ」
「そんな運命なら犬にでも喰わせてしまいなさい」
「文句はいいから、早く数えはじめてよ! ゲームが進まないじゃん!!」
「あ~はいはい。さっさと数えるから、アンタ等も適当に隠れてきなさい」
「わ~い、にっげろ~♪」
「……フラン、これは〝かくれんぼ〟であって〝鬼ごっこ〟じゃないからな」
「リュウ、その二つは違う遊びだったのか?」
「全然違うだろうが……」
フランとルーミアの天然ボケにツッコミを入れつつ、他の四人と別れて何処かに隠れる事にした。
屋敷の内部だけって条件だから、空いてる部屋にでも隠れれば良いんだが、何処が誰の部屋なのか把握し切れてないんだよな。
この屋敷には妖精メイドが数多く居るし、咲夜やレミリアの私室があるから、下手な場所に隠れられない。
適当に選んだ部屋が、もしアイツ等の部屋だったりしたら…………命が危なそうだな。
恐らくは霊夢に読まれているだろうけど、此処は身の安全を考えて地下の大図書館に隠れるとするか。
何時もの様に地下への階段を降りて、道なりに真っ直ぐ進んだところにある紅魔館の大図書館。
相変わらず埃っぽくて、かび臭い所ではあるが、物陰になりそうな所も多そうだ。
「……何しにきたの」
「今はかくれんぼをしてて、ちょいと此処に隠れさせてもらおうかと」
「別に良いけど、散らかしたりしないでよ」
「それは鬼に言ってくれ」
図書館にいるパチュリーの許可を貰った俺は、早速隠れられそうなところを探し始めた。
何処かに隙間でもないかと探すものの、部屋の内部にあるのは所狭しと置かれている本棚と、其処に隙間無く収められている多種多様の本たちのみ。
これだけの数の本棚があるとなると、隙間に隠れているよりも、何処かの物陰に隠れている方が良さそうだ。
それにしても、何度かお邪魔してその度に思うんが、よくもまぁこれだけの数の本を集められたもんだな。
パチュリー一人で集めた訳じゃないんだろうけど、この蔵書量は圧巻としか良い様が無い。
魔導書ばかりなのかと思えば、全く関係の無い小説が収められていたり、何処の文字なのかも分からない本もある。
これ等の本を全て香霖堂で集めたとしたら、一体幾らくらいの値段を費やしたんだろうか……。
「…ん? なんだこの本?」
図書館の中をフラフラと歩いていると、とある本棚の中に背表紙にタイトルのない本を見つけた。
他の本たちにはちゃんとタイトルがあるのに、その本だけは背表紙どころか表紙にもタイトルが載ってなかった。
不思議に思った俺は、その本と手に取ってパラパラと中身を見てみるが、中身も白紙のままになっている。
本としては余りにもお粗末なものだが、何故だかその本から目を離すことが出来ずにいた。
白紙のページを捲っていると、段々と視界が真っ白になっていき、本の中に吸い込まれる様な錯覚に陥る。
その感覚に抗う事が出来ず、そのままページを捲り続けていると……急に視界が真っ暗になり、何が起こったのか分からないまま意識を失ってしまった。