竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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今回は霊夢視点です。
ストーリーの展開上、ちょくちょくキャラの視点が変わりますが、そう言う作品だと割り切って読んでください。


第十一話 霧の夏の終わり

紅い屋敷の二階。其処で私は、銀髪のメイドと弾幕ごっこで戦っている。

メイドの弾幕の所為で、廊下は銀のナイフだらけになっているけど……この程度なら如何と言う事はないわね。

手品みたいに大量のナイフを出現させるのは厄介だけど、落ち着いて対処してしまえば意外と如何と言う事は無い。

これ以上遊んでいられないし、私はさっさとケリを着ける為に切り札のスペカを宣言した。

 

「霊符『夢想封印』!」

「キャアァァッ!」

 

私の周りに出現した七色の光玉は、手品を使って瞬間移動するメイドに命中し見事撃ち落とした。

落とされたメイドは、そのまま無数のナイフが散らばっている廊下に倒れた。

二枚目のスペカを使う事に為ったのは予想外だけど、まだ予備もあるしなんとかなるでしょ。

 

「悪いけど、負けてやる訳にいかないのよ」

「くっ。申し訳有りませんお嬢様……」

 

メイドは悔しそうに呟くけど、コッチとしては彼女の目論見どおりに足止めされてしまった。

彼女の足止めの所為で、思ったよりも時間を食ったけど……リュウの奴は無事なのかしら。

屋敷の外では戦闘音が聞こえてるから、多分リュウが戦っているんでしょうけど、途轍もない力も感じたし、あの馬鹿が力を解放したに違いない。

その所為で本当に暴走でも始めていたら、此処の主にどう責任を取らせようかしら。

まだ何の対策も立てれていないから、いざ討伐しようとなると結構バカにならない被害になりそうね。

 

「……? 外が明るくなって来た?」

 

アレコレ考え事をしていると、突然窓の外が明るくなり始めている事に気がついた。

まだ夜だと言うのに明るくなるのは不自然と思い、窓の外を覗いて見ると―――、

 

「なにあれ……」

 

―――時計台付近に、大量の光の柱が降り注いでいた。

一つ一つに込められている力も凄いけど、アレだけの量を一度に放つ存在が居るのにも驚いた。

なんであんな物が降り注いでいるのか知らないけど、あの光から感じる力はリュウと同じ物。

つまり、あの光はリュウが放った物と言う事になるわね。

 

「あの馬鹿。幻想郷を崩壊させる気?」

 

アイツがそんな事しないのは分かってるけど、あの力を見るとそう思えてしまう。

前に紫が警戒していたのも、リュウが力を使いたがらないのも納得だわ。

常にあの力で戦われたら幻想郷に張り巡らされている結界が持ちそうにないもの。

 

「お嬢様?!」

「…今度は何事よ」

 

光の柱が降り注ぐのを見ていたメイドが、驚いた様な声を挙げると忽然と姿を消した。

多分、さっきまで使っていた手品を使って移動したんでしょ。

それにしても、唐突に姿を消したけど一体何があったのかしら?

…………そう言えば、今リュウと戦っているのは此処の主だったわね。

あの光を見て、自分の主が無事なのか心配になったってところかしら。

 

「まぁ、あの力を見れば誰だって不安になるか」

 

メイドの行動は一先ず置いておくとして、私もあの場所に向かうとしますか。

……出来る事なら無事であって欲しいけど、万が一の場合は本気で行くしかないわね。

私は手持ちのスペカに不安を感じつつ、光が降り注いだ時計台の辺りまで行く事にした。

 

 

 

 

 

………

……

 

私が時計台に行くと、地面は大きく抉れ幾つものクレーターが出来ていた。

その大きさからして今の攻撃がどれだけ凄まじかったのかが良く分かる。

この光景を見ていると、本当に加減して打ち込んだのかすらも疑問に思えてしまう。

地面に出来たクレーターに目を向けていると、さっきのメイドとコウモリの翼を持った子供の姿を見つけた。

子供の方は服がボロボロになっているところから、さっきの光に巻き込まれてしまったのは明白。

彼女の姿にメイドは心配そうにするけど、当の本人は疲れ切ってはいるけど一応生きてはいた。

地面を抉るような攻撃を受けて生きているなんて、さすがは妖怪と言ったところかしらね。

 

そんな事を思いながら辺りを見渡すけど、この状況を作ったであろうリュウの姿が見当たらない。

クレーターの中には居ないし、戦っていたと思われる空中にもその姿はない。

一体何処に行ったのかと辺りを見回していると、空から強大な力を持った何かの気配を感じた。

その気配は少しずつ此方に近付いてきているのか、ゆっくりとその気配が近付いてくるのが分かる。

何が居るのか気になり空を見上げると、上空から腕に空色に光る四対の羽を持つ琥珀色の鱗の巨大な竜が降りて来た。

 

《うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!》

 

私達の事を視認出来るくらいにまで降りてきた竜は、紅い月をバックに大きな雄叫びを挙げた。

紅い月を背景に空に浮ぶ竜の姿……これは私が見た夢と全く同じ風景だった。

あの夢が予知夢だった事に驚きを感じつつも、その幻想的な光景に思わず心奪われてしまう。

人にも妖怪にも興味は無かったけど、あの竜だけは目を離すことが出来ず、私らしくも無くその姿を見詰めていた。

この幻想郷でも竜の存在は珍しいからだと思うけど、あの竜は先代達に教えられた竜とは何かが違う様な気がする。

もっとも、そのトカゲに近い容姿の所為なのか、肌に感じるその圧倒的な力の所為なのかは分からないんだけど。

 

《……吸血鬼。この勝負、俺の勝ちで良いのか?》

「「ッ?!」」

 

空から私達の事を見ていた竜は、突然下に居る吸血鬼に話しかけた。

どうやらさっきの光線を放ったのはこの竜らしく、勝負の勝ち負けをはっきりさせたいみたい。

……でも、あの竜の声が物凄く聞き覚えのある声なのよね。

いや、今の状況から考えれば、あの竜の正体なんて察しが付くんだけど……。

 

「……えぇ。コレ以上戦う気は無いわ」

《そうか》

 

竜は一言そう言うと、その巨体が一瞬にして消滅し……代わりに青い髪の少年(リュウ)が姿を表した。

この状況をちょっと考えれば、あの竜がアイツだって事は直ぐに解るんだけど……なんか納得が行かない。

人の時のアイツを知っているからか、あの姿のリュウに魅せられた自分が無性に腹が立つ。

 

「あ~。暴走せずに終わって本当に良かった」

 

当の本人は私の気など露知らず、暢気に背伸びしながら体を解し始めた。

その様子に怒りを通り越して呆れ果てた私は、小さな溜息を一つ吐いたあと彼の傍に向かった。

 

「ったく、良かったじゃないわよ。お陰でコッチは無駄な心配しちゃったじゃないの」

「えっ? 霊夢、俺の心配してくれたのか?」

「アンタの心配じゃなくて、アンタが暴走した時の処理を如何しようか心配したのよ」

「処理って……せめて封印って言ってくれ」

「どっちでも同じよ」

「酷い……」

 

私の辛辣な言葉に傷付いたのか、リュウはガックリと肩を落とした。

確かに言葉は悪いかも知れないけど、あんな力を持ってる奴を封印だけでなんとか為る訳ないじゃない。

第一、リュウが暴走した時は私が止めるって約束でしょ。

多少言葉が悪くても気にするんじゃない……って―――、

 

「あんた、お腹から血流してるじゃない?!」

「あ、これ。さっきの戦いで被弾した時にナイフが刺さって。その時の傷だよ」

「いや、そんなに暢気に言える傷じゃないから。……それ大丈夫なの?」

「ん~……こうしてるのも結構辛いかな?」

「だったら早く治しなさいよ! その位出来るでしょ!!」

「分かってるって」

 

そう言うとリュウは、お腹に刺さったナイフを抜いて空の上で傷の治療を始めた。

治療に関しては何も出来る事はないし、私は下に居る吸血鬼に話でもしましょう。

そう考えた私は、クレーターから出た吸血鬼とメイドの下へと向かう。

 

私が傍に近付くと、メイドがナイフを取り出そうとするけど……吸血鬼がそれを止めた。

メイドは納得が行かない様だが、吸血鬼の睨み一つでナイフを仕舞いこんだ。

見た目は完全に子供なのに、睨みだけでメイドを黙らせるなんて意外とやるわね。

 

「……それで何か用かしら巫女さん」

「言わなくても分かってると思うけど、この霧を今夜中になんとかしなさい」

「あら? 私に勝ったのは彼であって、貴女の言う事を聞く必要は無いわよ」

「アイツは私の神社の居候で、今回は来たのは霧を晴らす為なの。だから目的は一緒よ」

「そうなの。……だったら仕方が無いわね」

「手早くやりなさいよ」

 

それだけを言うとこれ以上馴れ合う心算も無く、私は空で待っているリュウの元に向かう。

傍に近付くと、リュウの怪我はすっかり塞がっていて、服に血を流していた痕跡がある位だ。

如何やって傷を治したのかは知らないけど、あの短時間で治せるのは凄いわね。

……これを利用して神社に人を呼べないかな?

 

「……霊夢、今へんな事考えて無いか?」

「気のせいよ」

 

相変わらず妙なところで勘が良いわね。

まぁ、コイツを利用して神社の信仰獲得しても有り難味も薄いだろうし、気長に別の方法を考えましょう。

それに神社と言っても、博麗神社くらいしかないんだし、変に焦る必要も無いわね。

 

「それじゃ帰るわよ、リュウ」

「お~う」

 

私はリュウを連れて吸血鬼の屋敷を後にした。

 

 

 

 

 

………

……

 

神社への帰り道。隣りで飛んでいるリュウの機嫌が妙に良いのが気になる。

あのやり取りの間に何かあった訳でもないし、コイツの機嫌が良くなる様な事は無かった筈。

……だとしたら、なんでコイツはこんなにも機嫌が良いんだろ?

 

「リュウ。妙に機嫌が良いけど如何したのよ」

「いや、霊夢が俺の心配してくれたのが嬉しくて」

「はぁ? 何時私がアンタの心配したのよ」

「俺の怪我を知った時」

 

……あ~、あの時か。

アレは見ていて痛々しいから言っただけなんだけど……。

 

「他人なんて如何でも良いと思っていた霊夢が、ちゃんと人の心配が出来るのが嬉しくて」

「……アンタ、そんなにご飯抜きにされたいの?」

「なんで?!」

 

全く、コイツは私の事をなんだと思っているのよ。

確かに他人に興味は無いけど、優しさの欠片も無いみたいな言い方は止めなさいよ。

私にだって優しさの一つや二つ…………あるわよね?

あまりにも周りの事を気にしないでいたから、自分が優しいのかなんて気にした事も無かったわ。

 

「……まぁ、別に良いか」

「えっ?! 本当に飯抜きなの!?」

「そっちの話じゃないわよ」

 

妙なところで勘が良い癖に、変な思い違いをするわね。

さっきの優しいとかもそうだけど、誰も本気で食事抜きにするとは言ってないでしょ。

本当に変わった奴よね、リュウって。……でも、悪い奴じゃないか。

 

「飯抜きだけは勘弁してくれ!!」

「ふふっ。そんなの分かってるよ」

 

コイツの慌てる様が可笑しかったのか、自然と笑みが零れた。

私はリュウにそう笑い掛けながら、コイツの隣りを飛んで我が家へと帰るのだった。

 




駆け足となりましたが、今回で紅魔郷編は終了と為ります。
最初の方に書いた話と言う事もあり、改めて読み返してみると……結構な荒さが目立ちました。
色々と編集をしたいと思ったのですが、下手に弄るとストーリーが変わる可能性があったので、軽くしか弄る事が出来ませんでした。

紅魔郷を終わらせるのに11話も使っていますが、原作ネタとして異変は星蓮船までやる心算なので、まだまだ序盤だったりもします。
ストックも後139話も残ってますから、まずはコレを使いきらないとな。
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