竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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第百十二話 目覚める白き力

 

本の主とやらを探し始めて既に数日が経過していた。

何処に居るのかも分からない相手を探すため、仕事をサボって街に繰り出していたが……手掛かり一つ見付かっていない。

その間に起こった事と言えば、霊夢に受けた借りを返したり、二人でいるところを魔理沙に見付かってからかわれたり、仕事をサボった事がアースラにばれて怒られたりしたくらいだ。

それ以外の事はコレと言って何も起こらず、ウインディアは平和な毎日を起こり続けていた。

この国が平和なのは良い事なんだが、問題があるとすれば俺がこの世界に馴染んでしまいそうだと言う事だ。

俺には幻想郷に戻るという目的があるんだが、余りにも平和で居心地が良いもんだから、ちょっとでも気を抜くと向こうの事を忘れてしまいそうになる。

なんとか気を引き締めて探しているけど、このまま何事も無く平和な日常が続くと為ると……かなり危ないかもしれないな。

 

「はぁ……どうしたもんかな?」

《何をそんなに悩んでいるの》

「ん? えっとお前は………あ、パチュリーか」

 

する事が無く自室でボケーっとしていると、部屋の窓の一部が変化して、図書館にいるパチュリーからの交信が入った。

外ではどの位の時間が経っているのか分からないが、この世界では既に数日が経過しているから、コイツと会うのも久し振りな気がするな。

 

《私の名前を忘れるなんて……随分と馴染んでるみたいね》

「まぁな。正直このままだと不味いと思ってる」

《確かにそのまま馴染むと、こっちに戻って来れないかも知れないわ》

「急いで話を完結させたいけど、平和過ぎて物語が進んでる気がしないんだよ。本の主も見付からないし、何か良い方法はないか?」

《そうね…………荒っぽい方法だけど、貴方が好きな様に暴れて物語を破綻させれば良いんじゃない?》

「物語を破綻させる? そんな方法で良いのか?」

《えぇ。ただし、中途半端にやるのではなくて、話が続けられない位に徹底的に暴れる事ね。そうでないと別の物語が始まるわよ》

「徹底的に暴れるか……。なんとかして竜の力を解放すれば行けるかな」

《でしょうね。戦闘は貴方の専売特許みたいなものだし》

 

なんか……そこはかとなく莫迦にされた気もするが、今は幻想郷に戻るのが最優先事項だし、あまり気にしないでおこう。

それよりも問題なのは、俺に掛けられている力の制限をどうやって解除するのかって事だ。

無理矢理にでも解放すれば行けると思うが、徹底的に暴れると為ると少なくとも『カイザー』以上の力は欲しい。

あの力を無理矢理に解放するとなると、生半可な事じゃまず無理だろうし、本の主からの妨害もありそうだな。

 

「……この際手段なんて選んでられないし、ここは強硬手段に出るとするか」

《それが良いでしょうね。…でも、霊夢が貴方の事を捜しに来てたから、あまり時間は掛けてられないわよ》

「分かってるって。それじゃ、アイツ等の事は頼んだぞ」

《……言っておくけど、これは貸しだからね》

「竜化した時の俺の血液で如何だ?」

《今日一日くらいなら彼女達を騙しきってみせるわ》

「……頼もしい言葉だなおい」

 

よっぽど俺の血液が欲しいのか、パチュリーは張り切った様子で俺との交信を一方的に切った。

そんなパチュリーの様子に呆れながらも、霊夢達が騒ぎに為らない様に頑張ってもらいたいとも思う。

こっちからじゃ幻想郷の様子が分からないし、今頼りに為るのがパチュリーだけだからな、今はアイツを信じるしかないか。

そんな事を考えながら、窓の外を見ると大分日が傾いてきているのが見える。

いい加減休憩も終わるだろうし、今日はエリーナさんの誕生日だから、何時までも部屋でだらけてる訳にも行かないな。

俺はベットに立てかけて置いた剣を手に取り、朝早くにアースラから言い渡された持ち場へと向かって部屋を出ていった。

 

 

 

 

………

……

 

日もすっかり落ちて、空には満点の星空が輝きだした頃、城ではエリーナさんの誕生日を祝うパーティーが行われていた。

貴族や他の国のお偉いさんが来ている所為か、城の兵士たちは普段よりも緊張しているように見える。

かく言う俺も周りの空気に当てられて、柄にもなく緊張しているんだが……こんな時こそ平常心を忘れたらいけないと思う。

警戒しないといけないからって、緊張のし過ぎで視野を狭めてしまったら守れるモノも守れなくなるからな。

 

「とは言っても、こんな高所の城に攻め込む奴もそうはいないと思うけど」

「私語は慎めリュウ。今は警備中だぞ」

「…すんません」

 

お目付け役のアースラに怒られつつ、怪しい奴がいないかと辺りを見回してみると、夜の闇の中で動く数名の人影を見つけた。

この城の兵士……と言うには服装が違うし、何よりも動きが周りにばれないように動いている。

十中八九侵入者だろうけど、周りの皆はアイツ等の存在に気が付いていないのか、誰もアイツ等の事を見ようとはしない。

見かねた俺は、騒ぎを起こす前に侵入者を倒しに行こうとすると、アースラに肩を掴まれて止められてしまった。

 

「待てリュウ、何処に行く気だ」

「あ~……ちょっと侵入者を見つけたので倒しに行こうかと」

「そう言ってサボる心算なんだろうがそうはさせん。お前は私の眼の届く所にいろ」

「……………」

 

何度も仕事をサボっていた所為で、大分アースラの信頼を失っているようだ。

事情があったとは言え、此処まで信頼されていないとなると結構悲しくなってくるな。

……まぁ、ぶっちゃけて言えば自業自得なんだけど。

 

「ほら、さっさと持ち場に戻れ」

「……すまん、アースラ」

「なに?」

 

此処で口論している時間がないと判断した俺は、アースラのお腹を全力で殴り一撃で昏倒させる。

上官に手を上げたって事で、確実に脱退が確定しただろうけど……この世界に永住する心算もないし、コレと言って問題もないだろう。

言葉を挙げる事無く気絶したアースラを地面において、俺は侵入者達の所に向かって全速力で駆け出した。

城壁から高台へと昇り、其処から城の屋根に移って侵入者達の所へと走っていく。

この城の屋根は平たい形になっているから、見張りとして兵士は何人か配置されているが、俺が辿り着いた時には既に全員が倒されていた。

侵入者達は、倒した兵士の鎧を剥いで、この国の兵士に成り済まそうとしていた。

このまま奴等の行動を許したら、今日来ている来賓やニーナ達にも被害が及んでしまう。

そう判断した俺は、迷う事無く腰にある『ドラゴンブレード』を抜いて、近くにいた二人の侵入者を斬り捨てた。

 

「だれ?!」

「侵入者に名乗る名前は無い」

 

残っている侵入者は三人、その中で手下と思われる二人の兵士が、傍にあった槍を掴んで俺に襲い掛かってきた。

相当訓練された兵士なのか、二人の槍捌きは中々のもので、見張りの兵士がやられてしまうのも頷ける強さだ。

二人の連携も中々のものだが、全くの同時に攻めて来たり、タイミングを若干ずらして攻めて来たりする。

……でも、この程度の実力なら今の俺の実力でも十分に対処出来そうだ。

俺は繰り出してきた槍を紙一重で躱した後、突き出した槍の柄を剣で斬り落とし、斬った刃の部分を投げ付けてまず一人倒す。

そして、相方が倒されて驚いている僅かな隙に、もう一人の方との間合いを詰めて一気に斬り捨てた。

 

「あら、アタシの部下を全部倒しちゃったの」

「……次はアンタだ。命乞いを聞く心算はないぞ」

「そんな事言う心算もないし、倒されるのは僕の方よ」

 

そう言って侵入者が人型の紙を投げると、紙が巨大な盾と剣を持った人型の鉄人形に変化した。

あの人形の姿を眼にした時、思い出したくも無い記憶が脳裏を過ぎり、嫌な記憶が蘇ってきた。

前にいた世界でも戦い、俺達を全滅寸前にまで追い詰めた最強の鉄鬼『アイトー』。

あの鉄鬼を繰り出してきたって事は、あの侵入者はラッソの奴か!

この世界の登場する人物は、俺の記憶から選ばれるって話だからアイツが出て来ても不思議じゃないが、まさかこんな所で遭う思いもしなかった。

 

「さぁ、やりなさい『アイトー』! あの小生意気な坊やを叩きのめすのよ!」

 

ラッソの命じられた鉄鬼は、主に応える様に赤い眼を光らせて、俺に襲い掛かってきた。

アイトーは巨大な剣を振り下ろしてくるが、数々の戦いを潜り抜けてきた今の俺には問題なく躱せる一太刀だ。

俺はアイトーの一撃を躱した後、そのまま間合いを詰めて斬り掛かる……が、アイツの持っている巨大な盾に阻まれ、そのまま弾き飛ばされてしまった。

分かってはいたが、アイツが持っている盾を壊さない限り、俺の攻撃が本体に当たる事は無さそうだ。

盾破壊に全力を注ごうにも、アレを破壊できたのが『カイザー』だけだからな、変身出来ない今の俺には辛すぎる相手だ。

この場で無理矢理変身しようにも、そんな時間をくれる訳無いだろうし、あの時みたいに瀕死からの覚醒に賭けてみるか?

……いや、あの時みたいに覚醒出来るとは限らないし、こいつに態とやられるってのは納得がいかない。

 

「やっぱり此処は、別の手段を使って破壊するしかないか」

「何ブツクサ言ってるのよ。坊やにそんな余裕はないでしょ!」

 

ラッソの声が辺りに響き渡ると、アイトーは攻撃の勢いを強め、巨大な剣を縦横無尽に振るい攻め立ててくる。

俺はその攻撃を剣で受け流したり、躱したりしてなんとか猛攻を凌ぎつつも、反撃の機会を窺っている。

相手の攻撃を捌き続けて、漸く出来た隙を使い間合いを詰めて剣を振り下ろすけど、やはりあの盾が邪魔で攻撃が届かない。

盾に弾かれて後ろに下がったところを狙って、アイトーは滅茶苦茶な突きを繰り出して来る。

その攻撃を紙一重で躱していると、突如アイトーが突きを繰り出すのを止め、無詠唱で魔法を唱えて業火を放ってきた。

俺はその炎に襲われながらもなんとか回避し、一旦後ろに下がって間合いを離した。

 

「あの猛攻を避けるなんて、中々やるじゃない。気に入ったわよ坊や」

「オカマのアンタに気に入られても嬉しくねぇよ」

 

ラッソは悪態を付く俺を忌々しそうに睨むが、状況としては俺の方が不利なのは間違いない。

これだけ派手に戦ってるのに、他の兵士が駆けつけて来る気配も無いし、盾を破壊出来なければあいつを倒す事も出来ない。

今は攻撃を回避出来ているけれど、制限のある今それも何時まで持つか分からない。

力の制限さえ掛けられてなかったら、この程度の奴なんて一瞬で片付けられるってのに……。

盾の内側に潜り込めれば戦いようがあるが、そんな事させてくれる程相手も甘くは無いか。

 

「……もっと坊やと遊んであげても良いけど、コレ以上時間を使う訳もいかないわね。……だから、さっさと死になさい」

 

ラッソが非情にも言い放つとアイトーの猛攻が再開される。

俺はアイトーの猛攻を避け続けるけど、アイツの攻撃の速度と正確さは少しずつ増して来ている。

前に戦った時はこんな事は起こらなかったから、何処かにいる本の主が俺を倒そうと細工でもしているんだろう。

そんな事を考えていると、視界の隅の方に俺達の戦いを観戦している少女の姿を見つけた。

暗がりではっきりとした姿は見えなかったけど、あの少女こそが俺の探していた奴で間違い無さそうだ。

漸く見つけた少女に気を取られていると、直ぐ其処にまで迫っていたアイトーの攻撃に反応するのが遅れてしまった。

今から攻撃を回避は無理と判断した俺は、咄嗟に『ドラゴンブレード』を盾代わりに使うものの、アイトーの一撃の前に呆気なく吹き飛ばされしまう。

アイトーの一撃で吹き飛ばされた俺は、その勢いで城の屋根から落とされてしまった。

俺は咄嗟に剣を城の壁に突き刺しす事で、なんとか地面への落下を防ぐ事ができた。

落下を防げたとは言え、空を飛べない今の俺には屋根に昇る術は無く、誰かが助けてくれるのを待つしかない。

……とは言っても、この戦いに誰も気が付いていないみたいだし、救助には来てくれる訳も無いか。

 

「良い様ね坊や。……〝ごめんなさい〟の一言が言えたなら、助けて上げても良いけど?」

「……アンタに助けを請うのだけはゴメンだね」

「そう、だったらそのまま死んでしまいなさい」

 

ラッソがそう言い放つと、アイツの後ろからアイトーがやって来て、俺に向かって剣を突き出してくる。

俺は素早く剣を引き抜いて攻撃を躱すけど、その代わりに重力に遵って地面へと落下していく。

このままだと十数秒後には地面と激突するが、力の制限を力付くで破壊するには丁度良い時間だ。

俺は手に持っている剣を鞘に仕舞い、心の奥底に眠っている力を呼び覚まそうとする。

普段なら直ぐに俺の意思に呼応するが、制限が掛かっている所為なのか、力の反応が何時もより鈍く感じる。

あまりノンビリとしていられないし、何時もより力強く念じるが……力は何も応えてくれない。

少しずつ地面に近付いているのを肌で感じ取るが、俺はただ意識を集中させて心の奥底に眠っている力を呼び覚まそうとする。

あの力は今も俺の中で眠っていている筈だし、何よりも竜の力は俺そのものだ! なら、この程度の封印なんて軽く討ち破れる筈だ!!

意識を集中させて力を呼び続けていると、心の奥底から僅かに湧き上がる白い力(アンフィニ)の存在を確かに感じ取った。

俺はその力に意識を集中させ、僅かに湧き上がった白い力を呼び覚まし、一気に覚醒させていった。

 

「……でぇあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

覚醒させると同時に、俺の全身を赤いオーラが包み込み、そのまま竜人形態へと姿を変える。

『カイザー』以上の力が全身に満ち溢れていくと、近くて遠い場所で何かが壊れる音が聞こえた。

一体何が壊れたのか分からないけど、今はただ城の屋根に戻ってラッソの奴を倒すだけだ!!

空中で体勢を立て直した俺は、足元の大気を足場代わりに蹴り、一瞬にして城の屋根へと舞い戻った。

俺が屋根に辿り着いた直後、上昇気流のように空へと立ち昇る烈風が吹き抜けた。

城を吹き飛ばさないように加減して跳んだ心算だが……まだ強過ぎた様だ。

 

「い、今の風はない?! それにアンタは一体だれよ!?」

「……さっきも言っただろ、侵入者に名乗る名前は無いと」

「ッ?! アイトー!!」

 

突然の出来事に狼狽したラッソは、慌てたようにアイトーを呼び出して、俺に襲い掛かってきた。

俺は特に身構えたりせず、右手の中に『ドラゴンブレード』を出現させた後、一瞬にして間合いを詰めてアイトーの盾に斬り掛かった。

だが、一撃で盾を壊す事はできず、小さな傷が表面に出来ただけだった。

 

「無駄よ! その盾は絶対に壊れたりしないわ!!」

「……だったら、俺はその〝絶対〟を超えていくだけだ」

 

一旦アイトーとの間合いを離した俺は、空中に静止して握り締めた剣に力を込めていく。

剣は愛刀の様に光だしたりしない代わりに、熱を帯びたように段々と熱くなって行くのが分かる。

ある程度力を込めたら、もう一度間合いを詰め直し……盾に向けて迷う事無く剣を振り下ろした。

熱を帯びた剣は、防がれる事無くアイトーの盾を溶かし斬り、奴の鉄壁の守りを両断した。

その勢いのまま一気に決めようとしたが、俺が込めた力に剣が耐え切れなかったのか、盾を破壊したと同時に灰になって消滅した。

剣が消滅した一瞬の隙を突いて、アイトーは巨大な剣を振るって、もう一度俺を吹き飛ばしてきた。

またしても屋根から落とされるが、空を飛べる竜人形態の俺にこの程度の攻撃など意味が無い。

空中で体勢を立て直した俺は、その場で静止して屋根の上にいるラッソを見下ろした。

 

「あ、アイトーの盾を破壊したのは褒めてあげるけど、武器のないアンタに勝ち目は無いわ」

「……剣ならもう一つある」

「なんですって?」

「剣ならもう一つあると言ったんだ。最良の友が創ってくれた至高の剣が」

 

俺がそう宣言すると左手の中に光が溢れ、その光が消えると鞘に納められた愛刀が出現した。

現われた愛刀を無言のまま抜き、その刀身にありったけの竜の力を込めていく。

力を込められた愛刀は、熱を帯びる事無く鈍く光だし、剣とは思えない圧倒的な存在感を放ち始める。

 

「光るからなんだって言うの! アタシのアイトーは最強の鉄鬼よ!!」

「相手が何者であろうと関係ない。俺はただ、目の前に居る敵を打ち倒していく」

 

俺が挑発するように言い放つと、ラッソは怒り心頭気味にアイトーをけし掛けて来た。

アイトーは命じられるままに跳び上がって、その巨大な剣を俺に向かって振り下ろそうとする。

巨大な剣が迫り来るその刹那、俺は愛刀に込めた力を全て奴に叩き込み、一瞬にして斬り抜けた。

アイトーを背に屋根に降り立った俺は、静かに愛刀を鞘に納刀し始めると、奴に叩き込んだ力が一気に弾け白い光が包み込んだ。

 

「……神滅『テラ=ブレイク』」

 

愛刀を完全に納刀すると、アイトーは内側から溢れ出る竜の光に完全に破壊され、白く輝く光に包まれたまま跡形も無く消滅した。

城の屋根に残っているのは、竜人の姿のまま佇んでいる俺と、化け物を見る様な眼で見てくるラッソの二人だけ。

最強の鉄鬼を破壊した事で、アイツに戦う術はないだろうが……きっちりケジメは付けておかないとな。

俺は愛刀を片付けた後、すっかり怯え切っているラッソへと近付き、奴の首を片手で掴み軽々と持ち上げた。

 

「な、なにをする……」

「そう怯えるな、何もお前を殺すつもりはない。もっとも逃がしてやるつもりも無いがな」

「それはどういう―――」

 

ラッソが言葉を言い終わるよりも先に俺が竜人の姿のまま奴の腹を殴って無理やり黙らせた。

腹の痛みに耐えかねたラッソはそのまま白目を剥いて動かなくなるが、別に全力で殴ったわけでも無いから死んでしまったわけでもない。

奴が気絶したのを確認した俺は、邪魔に為るラッソを放り投げて変身を解除してもとの姿に戻る。

急に力が抜けてバランスを崩して屋根の上にへたり込むと、周りの兵士たちが漸く侵入者に気付いたのか、アチコチで騒いでいるのが耳に入ってきた。

今頃になって気がつくなんて随分と暢気なもんだと思いながら、俺は屋根の上に寝転がり夜空を見上げて息を吐き出した。

 

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