竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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第百十七話 真冬に咲く桜の花

 

幽々子様から剣を頂いてから一月が経ちました。

この間に私は一度もリュウさんと戦う事はせず、ちゃんと扱える様にするため我武者羅に剣を振るい続けた。

その甲斐があってか、何時もの『楼観剣』ほどではないにしろ、大分扱えるようになって来た。

まだ剣の重さに慣れないところもあるけど、この剣で『未来永劫斬』と『六根清浄斬』を放つ事が出来んだ。

この二つの技が放てる様になった今なら、今日こそあの人に勝つことも夢じゃない筈!!

 

「……と言う訳で、リュウさん勝負です!!」

「久々に来たと思ったら、いきなりソレか」

 

朝早くからきた私は、境内の雪掻きをしていたリュウさんに勝負を申し込んだ。

リュウさんは、此方の顔を見るなり嫌そうな顔をしてきたけど、そんな事知った事じゃない。

既に連敗数が100を超えているし、幽々子様にも応援されている以上、絶対に勝ち逃げなんて許しませんよ。

 

「別に勝負しに来るなって言わないけど……雪掻きくらいはさせてくれ」

「なら、私もお手伝いします。二人の方が早く片付きますからね」

「まぁな。(……コイツ、どんだけ勝負したいんだよ)」

 

リュウさんは、自分が使っていたスコップを私に手渡した後、倉庫から別のスコップを取りに行きました。

私は彼の居ない間に、自分の荷物を賽銭箱の上に置き、リュウさんの代わりに雪掻きを始めた。

この後に大事な勝負が控えているので、無駄な体力を使わないようにしないと。

 

途中で戻ってきたリュウさんと共に、私は手早く雪掻きと戦うための場所を確保した。

足元には若干雪が残っているけど、滑るような状態でなければ戦いに何の支障も無い。

私は足元の状態を確認しながら、賽銭箱の上に置いておいた『斬馬刀』を背中に背負い、腰に『白楼剣』を差した。

リュウさんは何時もの剣を構え、何時でも私と戦えるように体勢を整えてくれる。

久し振りの勝負に気分が高揚してるのを感じながら、私は背中に背負っていた『斬馬刀』を抜いて構えた。

 

「……その刀、何時もの奴じゃないな。何処で手に入れたんだ?」

「一月前に幽々子様から授かりました。この刀で、今日こそ貴方に勝ってみせます!」

「そうか」

 

リュウさんは私の気合に何の感慨もなく一言呟くだけだったけど、警戒する様な視線を『斬馬刀』に向けていた。

もしこの刀の事を知っていて警戒しているのなら、幽々子様が言っていた龍を斬ったという逸話は本当のことなのかもしれない。

あの人に流れる龍の血がこの刀を見て警戒しているなら、今回の戦いは私にとって有利に事が運ぶかも。

……でも、有利だからと言って油断をしていると、簡単に足元を掬ってくるのがリュウさんだ。

油断なく攻めていても、僅かな隙からあっという間に逆転された事なんて過去に何度も経験している。

この刀のお陰で有利に運ぶからと言って油断していると、何時もの様に返り討ちに遭うのがオチだ。

今回は如何しても負けられない以上、何時も以上に気を引き締めて戦わないと……!

 

「…さて、そろそろ始めるか」

「何時でもどうぞ」

 

私とリュウさんは、自分の武器を握り締めて、間合いとタイミングを計り始める。

地面を確りと踏み締め、呼吸を整えた後……臆する事無く前へと駆け出していく!

足元の雪を蹴り飛ばし、眼前に居るリュウさんとの間合いを詰めた私は、力強く踏み込んで剣を振り抜く。

 

「ハアァァァァッ!!」

 

リュウさんは、私が剣を振るのに合わせて自分の剣を振るい、何時もの様に剣同士をぶつけ合わせてきた。

何時もなら此処で力負けするけど、この刀の重さに加えて、長いリーチから生まれる遠心力が合わさり、単純にぶつかっただけでは競り負けたりはしない。

私とリュウさんは、お互いの剣をぶつけたまま身動きが取れず、膠着状態になる。

 

「……普段なら力押しでいけるんだが、随分と重い一撃だな」

「この刀は『楼観剣』よりも重いですからね。初撃で競り負けたりしませんよ」

「だとしても、力では俺の方が上だ」

 

そう言うとリュウさんは、剣に力を込めて私を押し潰そうとしてくる。

私は押し切られる前に身体を捻り、リュウさんの剣を刃の上で滑らせ、彼の体勢を一気に崩しに掛かる。

刃の上で剣を滑らせることで、剣が離れると共に膠着状態が解けて身動きが取れるようになり、押し潰そうとしていたリュウさんはバランスを崩した。

動けるようになった私は、身体を捻った勢いで回転し、今度は重さや遠心力だけではなく、速さも乗った一撃を叩き込む。

 

私の刀は吸い込まれるようにリュウさんへと奔るが、当たる直前で後ろへと跳ばれてしまい、有効打にはならなかった。

攻撃を躱されても私は気にせず前に出て、剣を振るい続けてペースを握っていく。

思うように攻勢に出れないリュウさんは、私の攻撃を防いだり躰したりしている内に後ろへと追い詰められていった。

コレ以上、後ろに下がることが出来なくなったリュウさんは、剣を脇腹の辺りで構えて一気に斬り込んで来た。

 

咄嗟の判断で防ぐ事はできたけど、リュウさんの一撃で後ろに吹き飛ばされ、折角詰めた間合いを大きく離されてしまう。

私は直ぐに間合いを詰めようと駆け出すが、リュウさんは自身の正面に、何故か飛ばない斬撃形の弾を出して来た。

その攻撃を右に回避すると、またしても飛ばない斬撃を出して、私にその攻撃を回避させてくる。

あの人が何を狙っているのか分からず、私はリュウさんが繰り出して来る攻撃を次々と回避していく。

幾度と無く攻撃を回避していると、気が付いた時には私の周りは斬撃に取り囲まれていて、既に逃げ場が無い状態に追い込まれていた。

 

「これは……斬撃の檻?」

「俺から見たら壁なんだが……どの道気が付くのが遅かったな!」

 

リュウさんは、私に向かって特大の斬撃を放ち、取り囲んでいる弾ごと叩き斬って来た。

上下左右に回避出来る場所はなく、残っているのは後ろのみだけど……下がった所であの斬撃を躰せる訳じゃない。

何処かに躰せる場所はないかと探していると、斬撃と斬撃の間に僅かな隙間があるのを見つけた。

人一人が通り抜けられるか如何かと言う位の隙間だけど、他に回避出来る場所が無い以上、あの隙間に飛び込んでいくしかない。

私は恐怖を押し殺し、迫り来る斬撃にも臆さずに、見つけた僅かな隙間へと向かって飛び込んだ!

 

「……マジかよ」

 

斬撃に服を掠らせながらも、なんとか避ける事の出来た私は、内心で喜びながらも直ぐに体勢を整え、リュウさんへと向かって一気に斬り込んでいく。

あの人も直ぐに迎撃しようとするけど、私が斬り込みの方が速かった。

先に放った私の『現世斬』は、リュウさんの胴を見事に斬り抜け、あの人を上へと大きく吹き飛ばした。

今までに無い手応えを感じた私は、追撃としてリュウさんの真下を通り抜けながら、地面に剣を叩き込んでいく。

空中で体勢を整えたリュウさんが地面に着地するのと同時に、地面に込めておいた剣気が吹き上がった。

追撃の『桜花閃々』は、ギリギリの所で防がれてしまったけど、リュウさんの体勢を崩す事は十分に出来た。

このチャンスを逃す前に、剣に妖力を注ぎ込んで巨大な刀身を作り上げて……一気に振り下ろした!

 

「貰ったァッ!!」

「……舐めんなッ!!」

 

私が剣を振り下ろすのに合わせて、リュウさんも同じく力を注ぎ込んで、巨大な刀身を作り振り上げてきた。

二つの刃がぶつかった勢いで、大きな衝撃波が発生し、神社の境内の中を駆け巡った。

私とリュウさんは、刃をぶつけ合ったまま動けずに居るけど……少しずつ、私の刃が押し始めた。

僅かな時間で刀身を作り上げた事と、リュウさん自身の体勢が悪いらしく、イマイチ剣に力が乗らないみたいだ。

コレを好機と読んだ私は、剣を握る手に力を込めて、一気にリュウさんを押し潰しにかかった。

少しずつ私の刃がリュウさんの刃を押して行き、あと少しで勝てる……そう思った瞬間、新たな光の刃が出現して、二つの刃で私の刃を受け止められてしまう。

一体何処から出ているのかと辺りを見てみると、リュウさんの手にはもう一本の剣が握られていて、その剣でもう一つの刃を作っているのが見えた。

 

「……まさか、二刀の『迷津慈航斬』だとでも?!」

「でぇりゃあァァァァァァァッ!!」

 

私の疑問が解消される前に、リュウさんは二つの刃で私の刃を圧し折ってきた。

『迷津慈航斬』が破られた時に、行き場を失った妖力は暴発してしまい、雪混じり粉塵が巻き起こる。

粉塵の所為で視界が悪くなり、リュウさんの姿が見えなくなるが、煙の向こうからやってくる人影を見つけた。

間合いに入られる前に剣を振るい、なんとか迎撃しようとしとけど、リュウさんは私の間合いの外から光の刃を振り下ろして来た。

ギリギリの所で気が付いた私は、腰に差していた『白楼剣』を抜き、迫ってきている刃をなんとか防ぐ。

未だに『迷津慈航斬』を維持している事に驚いていると、今度は煙を薙ぎ払いながら別の刃が迫ってくる。

私は直ぐに後ろに跳んで、迫って来た刃を回避して、一度リュウさんから間合いを取る。

 

粉塵の向こうから出てきたリュウさんは、左右の光の刃の長さを『冥想斬』ほどの長さに調整していた。

確かに『迷津慈航斬』だと、刀身が長くなりすぎて振るうには少々不便だし、妖力の消費も大きい。

でも半分ほどの長さの『冥想斬』なら、妖力の消費も抑えられる上に、技量さえ伴えば双剣で振るう事も出来なくは無い。

……出来なくは無いとしても、一体どれだけの鍛練を経験を積めば良いのだろう。

私は『楼観剣』に妖力を纏わせるので精一杯なのに、簡単にやってのけるこの人の技量って一体……。

 

「考え事か、妖夢。……そんなんじゃ死ぬぞ、お前」

「クッ!」

 

考え事に集中しすぎた私は、リュウさんの接近に気付かずに一撃貰ってしまう。

妖力が抑えられているからか、一撃の威力は其処まで高くは無いものの、そう何度も受けられる様なものでもない。

私は剣を握り締め、真っ直ぐリュウさんを見据えて、臆する事無く立ち向かっていく。

特に策らしい策も立てず、後ろに引くことも考えずに、我武者羅になって剣を振るう。

その様子は酷く滑稽に映るかもしれないけど、後手に回ったら負ける以上は滑稽だとしても立ち向かって行くしかない!

 

「ハアァァァッ!」

「オラァッ!!」

 

私が振り下ろした剣は、リュウさんの左手の剣で弾かれてしまう。

弾かれて出来た隙に、彼の右手の剣が私の胴を薙ぎに来るけど、素早くしゃがむ事でその一撃を躱す。

その体勢から立ち上がるのと同時に、リュウさんの喉に向かって剣を突き上げていく。

リュウさんは、後ろに跳ぶ事で私の突きを躱してくるけど、そんな事気にもせず一歩踏み込み、両手で剣を握り締めて一気に振り下ろした。

私が振り下ろした一撃は、彼の肩から脇腹に掛けて叩き込めたけど、まだリュウさんは倒れない。

振り切った傍から、私は素早く彼の胴を薙ぎ払い、更に斬り上げるまで繋いで叩き込んだ。

 

リュウさんは多少よろけるものの、直ぐに立て直して左右の剣を同時に振るってくる。

私は後ろには下がらないで、横をすり抜けるようにして移動し、リュウさんの背後を取った。

そのまま剣を振るうが、素早く反転したリュウさんの剣に弾かれ、もう一本の剣で私の胴を薙ぎに来る。

私は弾かれた剣をムリヤリ振り下ろし、胴に迫って来ていた剣を弾き落とし、刃を返して彼の首を狙いにいく。

……だが、それよりも先にリュウさんの突きを貰ってしまい、後ろへと突き飛ばされてしまう。

 

なんとか体勢を立て直したけど、私が間合いを詰めるよりも先に、リュウさんに間合いを詰められてしまった。

突きを繰り出したのと同時に、間合いを詰めて来ていたリュウさんは、二つの剣を同時に振るって私の胴を薙いだ後、剣を逆手に持ち替えて力強く地面に突き刺した。

すると、地面から扇状の剣気が噴出し、私は下から立ち上ってきた光の奔流に飲み込まれた。

 

胴薙ぎを喰らって体勢が崩れていたから、今の一撃を躱す事はおろか、防ぐ事もできずまともに受けてしまうが……私はまだ剣を握って立っている。

何度もリュウさんの苛烈な剣技を受けていた所為か、あの人と戦う前に比べて、身体が丈夫になったのは自覚していた。

そのお陰で、今の一撃を貰っても気絶する事無く、こうして剣を握り続けることが出来る。

私は痛む体に鞭打って、なんとか体勢を整えようとするが、ソレよりも先にリュウさんが斬りかかって来ていた。

力を使い切ったのか、光の刃は形成してなかったけど、この一撃を受けても耐えていられる自信はない。

……だから私は、力を振り絞って最後の賭けの出ることにした。

 

迫り来る刃を『白楼剣』でいなして、フットワークを活かして五人に分身しながら、リュウさんの周りを駆け回る。

この五人で同時に斬り込むと、リュウさんを中心にして桜の花が咲き誇る。

彼に斬り込んだ後に上空に飛んでいた私は、勢い良く落下して……渾身の力を込めた一撃を、桜の中心にいるリュウさんに叩き込んだ!!

 

「が……ッ」

 

私が一撃を叩き込むと、咲き誇っていた桜は散り、リュウさんも地面に倒れ伏せていた。

倒れているリュウさんを見て、私は勝てたのかと思ったが、最後の最後で油断して負けた事が何度もある。

私は本当に気絶しているのか確かめる為、少し離れたところから切っ先でリュウさんを軽く突いてみた。

リュウさんは、切っ先で突かれてもピクリとも動かず、立ち上がる気配を全く見せなかった。

その様子を見て、私は漸くリュウさんに勝てたという実感が湧いてきた。

 

「…勝った。……やっとリュウさんに勝ったーッ!!!」

 

私は声を張り上げて、声高々にあの人に勝てた事を喜んだ。

リュウさんに挑み続けて既に半年以上が経つけど、今日漸くこの人に勝つことが出来た。

戦えば戦うほどに強くなっていく人から、リュウさんには勝てないんじゃないのかって思ったこともある。

何度も自分の弱さを嘆いて、リュウさんの強さを羨んだのかも分からない。

……だけど今日! 私はやっとこの人に勝つことが出来たんだ!!

幽々子様に頂いたこの刀のお陰か……は、イマイチ分からなかったけど、あの方の応援が励みになったのは確かだ。

 

「見ていますか、幽々子様に師匠。私、妖夢は漸く彼に勝つことが出来ました……」

「へぇ~。アンタが誰に勝ったって言うのかしら?」

「それは勿論、リュウさんに決まってるじゃないです…か……」

 

突如聞こえてきた第三者の声に反応して、声の方を振り向いた瞬間……勝利の喜びが綺麗に消え去ってしまった。

何故なら、声の主はこの神社の主『博麗霊夢』その人だったからだ。

 

「ん? 如何したの妖夢? 随分と怯えてるじゃない」

「いや…あの……」

 

何か声を掛けなければと思うけど、霊夢さんの笑顔が妙に恐くて、言葉が上手く出てこない。

彼女は確かに笑顔の筈なのに、眼がまったく笑ってないし、両手には札を持っている。

なんで臨戦態勢なのか不思議に思ったけど、周りの状況を見て直ぐに理由が分かった。

私達が戦った影響で、境内の中が滅茶苦茶に為っていて、直ぐ傍でリュウさんが倒れている。

神社の主で彼の事が好きな霊夢さんの事だから、きっと物凄く怒っているに違いない。

 

「とりあえずだけど……妖夢」

「な、なんでしょう」

「『夢想封印』いっとく?」

 

まるで死刑宣告でもするかのように言う霊夢さんに、意味は無いかもしれないけど私は大慌てて弁解をする。

 

「リュウさんを気絶させたのは勝負だから仕方ないですし、境内を滅茶苦茶にしたのはリュウさんも同罪だと思います!!」

「アイツには後で説教するから良いのよ。でも、先に起きているアンタから……よね?」

「わ、私にそんな確認を取らないで下さい!!」

「問答無用。……神霊『夢想封印』」

「イヤーーーーッ!!!」

 

私は勝利の余韻に浸る間もなく、霊夢さんのスペカをまともに受けてしまう。

境内を滅茶苦茶にしたのは、私よりもリュウさんの技の方が多いのに……。

私はこの状況に理不尽さを感じながら、必至の弁解も空しく、霊夢さんの光弾の前に気絶するのだった……。

 




オマケ

新年を迎えたばかりの白玉楼の一室。
其処には主の亡霊姫とスキマ妖怪だけではなく、吸血鬼に月の姫それに鬼、山に住む天魔に龍神と言った面子が一堂に会していた。
彼女らは新年会の為に集ったと言う訳でもなく、スキマから覗いていた戦いの結果を見て一喜一憂している。

「くぁ~~ッ! あの馬鹿リュウ、なんで簡単に負けちゃってるのよ! もうちょっと粘りなさいよ!」
「……あの程度の相手に負けるなんて気が緩んでいる証拠ね。今度フランと一緒に苛めてあげないといけないわね」
「あのリュウが負けるとはねぇ~。こりゃ新年早々珍しいモノが見れた」

あの結果を見て月の姫は声を荒げて怒り、吸血鬼は額に青筋を浮かべながら少々物騒な事を呟く。
その一方で天魔は二人の様に怒る事は無く、今回の結果をただ驚いていた。

「だから言ったじゃない。今回の妖夢は一味違うって」
「一味違うと言うか、アレは武器に助けられたというのが正しいじゃろ。まぁ武器に関しては前から言っておったし、無効試合とは言えんがの」
「…彼なら引き分けに持っていけると思ったのに完全に読み間違えたわ」

亡霊姫は自分の従者の勝利を素直に喜び、龍神は横で若干の訂正を加えながら負けを認める。
スキマ妖怪は読み間違えた事を悔しがっているが、あの二人の様に恨み言をもらしたりはしなかった。

「何にせよ、今回の賭けは幽々子の一人勝ちだ。おめっとさ~ん」
「ありがとう鬼さん。でも、褒めるなら私よりもあの子を褒めて頂戴」
「ちょっと待ちなさいよ! このままなんて引っ込みつかないわ、もう一勝負よ!」
「そうね。私も咲夜に〝今日は大勝してくる〟なんて言っちゃったし、このままじゃ帰れないわ」
「ん~……そんなら皆でチンチロでもやる?」
「「乗った!」」

鬼の提案でまた別の賭けが始まろうとしている中、龍神は呆れた様子でその様子を眺めていた。

「やれやれ。一つの勝負が終わったと思ったら次の勝負とは、こ奴等も物好きじゃのぉ」
「ですが、この面子が集って静かなまま終わるはずも無いではないですか。それにこうして騒いでいる方が私たちらしいと思いませんか?」
「…確かにその通りじゃな。どれ、妾も賭けに参加するとしようかの」
「では、レートは十倍と言う事で」
「幾らなんでもそれは高すぎじゃろ……」

                              終わり。
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