竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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……え~お久し振りです。今回は本当にお待たせしました。
実は先週は全くネタが思いつかず、今週初めにインフルに掛かってしまいまして、また寝込んでました。
まさか一月の間に風邪とインフルに掛かるとは思いもしませんでしたが、治ったのでまた更新を再開していきます。

それで今回の話ですが、今回は霊夢視点でお送りします。


第百十九話 月下の遊泳

 

リュウと二人で買い物に行った帰り道、雪が積もった白い道を二人でのんびりと歩いていた。

買い物帰りにしては口数は少なく、二人して少々行儀悪く里で買った焼き芋を食べ歩きしている。

 

「あむ。…やっぱり、寒い日に食べる焼き芋は格別ね」

「あぐ。…でも、その量はちょっと買いすぎじゃねぇか?」

「大安売りしてたんだから問題ないわよ」

「いや、値段の問題じゃなくてだな……」

 

隣りを歩くリュウが呆れたように呟きながら、私が抱き抱えている袋の中身を見てくる。

私が抱えている袋の中には沢山の焼き芋が入っていて、確か六・七本は入っていたはず。

数だけ見れば確かに買い過ぎな気もするけど、店が一本150円で販売しているのが悪い。

今年は芋が豊作だったって聞いたけど、それでもあの値段設定は絶対おかしいわ。

駄目になる前に売ってしまいたかったんだろうけど、あんな値段で採算が取れるのかしら? …まぁ、私としては美味しい焼き芋が食べられれば満足なんだけどね。

 

「しかし、その量を考えると今日の晩飯は焼き芋になるのか?」

「幾らなんでもそんな手抜きしないわ。ちゃんと晩御飯も作るわよ」

「お、そりゃ良かった。俺はてっきり晩飯も芋だとばかり」

「あのねぇ……」

 

リュウの検討外れな心配に呆れていると、風も吹いていないのに直ぐ傍の草むらが音を立てる。

獣でも潜んでいるのだろうあまり気にしないでいると、辺りが急に闇に覆われてしまう。

 

「…リュウ」

「分かってる」

 

私が声を掛けると、リュウは買った荷物を地面に置いて何時もの刀を呼び出す。

リュウは火球で光を確保しながら周囲の警戒を始めるけど、拍子抜けするくらいに何も襲ってこない。

私たちを油断させる為の罠かと思ったけど、耳を澄ましてみると何かが飛び交う音が聞こえる。

 

「喰らえ、変なの! 氷符『アイシクルフォール』!」

「わーッ! どっちに向かって撃ってるのさ、チルノ!」

「あ、あれ? なんかリグルの声がした。それじゃ……こっちだ!」

「きゃーッ! こっちでもないよーッ!」

「「…………はぁ」」

 

聞こえてきた声のお陰で今の状況を察した私たちは、思わず呆れて小さな溜息を吐いた。

辺りが急に闇に覆われた時は何事かと思ったけど、どうやら只の妖精の悪戯のようね。

全く、私たちに悪戯を仕掛けようとする度胸だけは認めるけど、もう少し相手を選んで悪戯しなさいよ。

心の中でそんな事を思いながら、私は買ってきていた焼き芋を一つ取り出して、闇の向こうに声を掛ける。

 

「ルーミア。この焼き芋あげるから、闇を解除してちょうだい」

 

見せ付けるように軽く焼き芋を振りながら言うと、鬱陶しかった闇がいとも簡単に消え去った。

消えた闇の向こうには、何処かで見た妖精に虫の妖怪と鳥の妖怪がいて、二人の妖怪の周りには何故か大量の氷柱が突き刺さってる。

恐らくさっき宣言した弾幕の影響なんでしょうけど、周りを認識できない状況で不用意に弾幕なんて使ってるんじゃないわよ。

 

「ちょっとルーミア! まだ変なのに一あわ吹かせてないんだから、のうりょくかいじょしないでよ!」

「だって、闇を解いたら焼き芋くれるって霊夢が……」

「ホント話の分かる奴で助かったわ。…はい、ルーミア。約束の芋よ」

「いただきます」

「それでお前ら、こんな所で何してんだ?」

「んぐ、んぐ……。ここらで遊んでたら変な籠を見つけた」

「変な籠?」

「うん、アレ」

 

そう言われてルーミアが指差した方を見ると、確かに其処には籠が雪の中に放置されているけど、確かに少々おかしな形をしている。

人が数人は入りそうな大きさの籠に、凧の様な帆がくっ付いていて物を入れて運ぶような物には見えない。

水の上に浮かべる……にしては少し脆そうで、かなり頼りがい無い様な印象を受ける。

……うん、確かにコレはルーミアの言う通り変な籠ね。そもそも本当に籠なのか如何かすら怪しいわ。

 

「なんだ、ただのカゴじゃないか。変なのって言うからもっと珍しい物かと思ったのに」

「ん? その口ぶりだとアンタはアレの事を知ってるの?」

「正確にはアレと似てる物をだけどな。…でも、ルーミア達には必要のない物だぞ、アレ」

「ひつようの無いってどう言うことよ! せつめいしろ、変なの!」

「説明って言われてもなぁ……。まぁ簡単に言うと、アレは空に浮かび上がる事の出来るカゴだ」

「空にうかび上がる?」

 

慣れないながらに説明してくれたリュウの話しを纏めると、最初に言っていたとおり人が空に上がる為のカゴみたい。

リュウが乗ったカゴだと、かなり高い塔の天辺からあのカゴに乗り込んで発射装置で空に弾き飛ばされる仕組みだったとか。

飛ばされたカゴは帆が気流を受ける事で落下する事無く、暫くの間は空を飛んでいられるとかなんとか。

弾き飛ばされるって辺りがちょっと引っ掛かるけど、空を飛べない人間からしたらかなり面白い道具かもしれない……けど、妖精や妖怪からしたら確かに必要のない物ね。

 

「―――そう言う訳だから、アレはお前らには必要のない物なんだよ」

「ちぇー、つまんないのー。みんな、他のところ行ってあそぼ」

「あ、待ってよチルノ!」

「こ、こんな所に私を置いていかないでー!」

「それじゃあね、二人とも。お芋、ご馳走さま」

 

リュウの説明を聞いて興味が無くなったのか、氷の妖精はさっさと何処かへと飛び去っていき、それに釣られて残りの三人もこの場から飛び去っていった。

 

「…やれやれ。相変わらず騒がしい奴だな」

「本当よね……って、あーッ!」

「うおッ?! 今度はなんだよ」

「わ、私の芋が全部食べられてる……」

 

まだ五・六本残っていると思っていた袋の中に焼き芋の姿はなく、食べかすすらなく綺麗さっぱり無くなっていた。

これは気付けなかった私の落ち度だけど、やっぱり全部食べられちゃったのは悔しい。

 

「あ~……それはご愁傷さま」

「ご愁傷さまじゃないわよ! 今日のお昼にと思って買ったのに、結局一つしか食べられなかったじゃない!」

「怒鳴るな、怒鳴るな。相手はあのルーミアなんだから、全部食べられるのは仕方が無いだろ」

「そうだとしても悔しいものは悔しいのよ! 焼き芋なんて滅多に買わないから楽しみだったのに……」

 

楽しみがなくなって落胆していると、慰めるようにリュウは私の頭を優しく撫でてくれる。

 

「そんなに落ち込むなって。…代わりじゃないけど、今夜珍しい所に連れて行くからそれで機嫌直してくれ」

「珍しい所ってどこよ? 大概の場所ならもう見飽きてるわよ」

「昔の仲間と見た景色だから、霊夢もあんまり見た事無い景色だと思うぞ。まぁ、どんな風景かは夜に為ってからのお楽しみって事で」

「……分かったわ。でも、つまらなかったら許さないからね」

「わーってるって。それじゃ、冷え込んできたし、さっさと神社に帰るか」

「えぇ」

 

そう言って私たちは買ってきた荷物を持って、神社へと続く道をまた歩き始めた。

焼き芋を全部食べられたのは悔しいけど、リュウがまた何処かに連れて行ってくれるのは素直に嬉しい。

一体何処に行くのか分からないけど、私も余り見た事の無い景色だって言うし、何処に連れて行ってくれるのか今から夜が待ち遠しいわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

それから時間も経って夜、天候は生憎の曇り空だけど辺りはすっかり暗くなっていた。

冬の夜は昼間よりも冷えるから、防寒対策に二人分の毛布を持って神社の境内に出ると、境内に昼間見たあの変な形のカゴとそれを整備しているリュウの姿がある。

リュウは夕食を終えたと同時に出かけてたけど、まさかアレを雪の中から掘り出してくるなんて思いもしなかったわ。

あのカゴを持って来たと言う事は恐らく空に何か有るんでしょうけど、態々そんな物使わないで自力で飛んでいけば良いじゃない。全く何を考えてるのかしら。

 

「リュウ」

「ん? おぉ、霊夢。待ってたぞ」

「待たせて悪かったわね。それで……こんなの引っ張ってきて如何するの?」

「如何するも何も、コレに乗って空に上がるんだよ」

「そんな事は分かってるけど、空を飛ぶだけなら別にこんなのに乗る必要は無いでしょ」

「確かにそうなんだが……細かい事は気にするな。とりあえず、さっさと乗ってくれ」

「……仕方が無いわね」

 

私はイマイチ納得が行かないまま、リュウに促されてヘンテコな形のカゴに乗り込んだ。

頭上にある羽の部分が乗るとき少々邪魔だったけど、乗り込んでみるとそれほど狭いとは感じなかった。

元々複数の人を乗せれるように設計してあるのか、あと三・四人は一緒に乗り込んでも大丈夫そう。

カゴに乗り込んでそんな事を思っていると、整備が完了したのかリュウもカゴに乗り込んできた。

 

「それじゃそろそろ行くけど、念のために頭を低くしておいてくれ」

「…? なんでそんな事をしなくちゃいけないのよ?」

「……怪我防止のためかな」

「ちょっと待ちなさい。怪我ってなによ、怪我って!?」

「それじゃ行くぞ―――」

「こら、私の話はまだ終わって……」

「―――…羅風(ラフ)!」

「キャアッ!?」

 

私が言い終わる前にリュウが旋風を起こすと、カゴが巻き起こった風を受けて浮かび上がり、私たちを乗せたまま地面から離れ始めた。

私たちを乗せたまま地面から浮かび上がったのは驚いたけど、まだ空を飛んでいると言えるほど上空まで浮かび上がった訳じゃない。

このまま放っておけば重力に従って落下し始めるけど、リュウはそうなる前にもう一度旋風を巻き起こしてカゴを更に飛ばす。

それを何回か繰り返していると、浮かび上がったカゴは上空に広がる雲の中に入っていってしまう。

今が夜である事を差し引いても雲の中は暗く、今私たちが何処に居るのかもはっきりと分からない。

雲の中は私が思っていた以上に寒く、私は寒さ対策に持って来ておいた毛布に包まって暖をとる。

かなりの高度に来たけどリュウはカゴに風を送り続け、まだ上へ上へと浮かび上がらせようとしている。

一体何処まで上げる気なのかと聞いてみようとした時、やっと雲を抜けたのか急に辺りが明るくなった。

一度周囲を確認してみようとカゴから顔を出してみると―――

 

「……綺麗」

 

―――其処に広がっていたのは綺麗な円を描く月に、宝石を散りばめた様な満天の星空。そして眼下には地平の先まで続いている雲の平原。

簡単に言うとそれだけしかない景色だけど、私にはそれだけで十分過ぎるように思う。

今まで夜に空を飛んでいても気にしたこと無かったけど、夜空ってこんなにも綺麗な物だったんだ……。

夜空に広がる小さな星々の瞬きに、太陽の光とは違う月の優しい光が雲の平原を白く照らし出す。

私は今まで見てきたどんな風景よりも、今目の前に広がっているこの光景が素晴しい物に思えた。

 

「……どうだ、霊夢。気に入ってくれたか?」

「えぇ。本当に〝綺麗〟としか表現のしようが無いわ」

「そっか。…気に入ってくれたのなら俺も頑張った甲斐があったよ」

 

そう言ってリュウは疲れた様に溜息を吐いて、カゴにもたれ掛かって腕を大きく伸ばした。

私を此処に連れてくるために大分頑張ったみたいだけど、あれだけ魔法を連発していれば疲れるのも無理ないのかもしれない。

リュウの事だから明日には全快しているんでしょうけど、今は此処まで連れて来てくれたリュウに感謝したい。

私は家から持って来ていたもう一つの毛布を手に取り、それを広げてリュウにそっと掛けてあげる。

 

「お、悪いな」

「気にしないで。此処まで連れて来てくれた礼にしては安過ぎるもの」

「別に礼が欲しくて連れて来た訳じゃないし、お前の嬉しそうな顔が見れただけで十分だ」

「……なんて言うか、そう言うところはアンタらしいわね」

 

大した見返りを求めてこないリュウに呆れた口調で言うけど、内心では何時までも変わらないリュウに安心してしまう。

でも、与えてもらってばかりと言うのも癪だし、偶には私の方からリュウに何かしてあげたい。

私に出来る事なんできっと限られてるんでしょうけど、小さなことから私が貰った幸せ(モノ)をリュウにもあげて行こう。

そう思った私はカゴを揺らさない様にリュウの隣りに移動して、胸から湧き上がる恥かしさをグッと堪えながらリュウの腕に抱き付いた。

 

「ん? 如何かしたのか、霊夢」

「べ、別に如何もしないわよ。……ただ、こうしたらアンタが喜ぶかなって」

「…………ぷっ、ぷくくくくくく」

 

私が顔を赤くしながら言うと、いきなりリュウが笑い出してきた。

 

「な、なによ! 別に笑わなくたって良いじゃない!」

「い、いや悪い。でも、霊夢がそんな殊勝なことを言うなんて思わなくてさ」

「なによ、私が殊勝なことを言ったらいけないっていうの!?」

「そんな事は無いけど、正直いって似合わん」

「如何いう意味よそれ!!」

 

リュウのあんまりな一言につい怒り出しちゃうけど、当の本人は特に気にする様子もなく楽しげに笑う。

楽しげなリュウに更に文句を言い続けるけど、段々と怒っているのが馬鹿らしくなってくる。

目の前に広がる雄大な景色のお陰なのか、それとも好きな人相手に本気で怒る気に為れないだけなのか。

正直な話し自分でもよく分からないけど、気が付くと私の怒りもすっかり消えていて、何時もの様にリュウと談笑をしていた。

神社に居ても空に居ても私たちは変わらないけど、心の中ではこんな私たちが嬉しかったりもする。

 

「―――で、カゴを使って風の竜に会ったんだが、降ろし方が乱暴でな。案内とか言いながら雪山の山頂に墜落しちまってさ」

「ちょっと、そんなんでこのカゴは大丈夫なんでしょうね? 幾らなんでも幻想郷の何処かに墜落なんて嫌よ」

「あ~……降りるときはまた風を操るから多分なんとかなるだろ」

「た、多分って不安に為るような事言わないでよ」

「悪い。……もしかして、もう地上に戻りたくなったのか?」

「……別にもう少しだけこのままでも良いかな」

「そっか。なら帰りたくなった言ってくれ」

「うん」

 

そう言って私は腕に抱きついたままリュウの肩にもたれ掛かった。

リュウも嫌がる素振りを見せず、優しく微笑んでそのまま受け止めてくれる。

私たち以外の生命を感じさせない雲の平原で、月と星々が私たちの事を優しく見守っていた……。

 

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