竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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第十二話 道具蒐集

 

吸血鬼『レミリア・スカーレット』が起した紅霧異変を解決してから一週間が経った。

紅い霧が晴れた空には太陽が戻り、幻想郷は何時もの暑い夏が戻って来た。

この一週間の間に特別事件もなく、俺達は平和な毎日を送っている。

……もっとも霊夢は、この暑さにやられてダウンしているけど。

 

本人は夏ばてだと言っているけど、普段と大差無いから本当に夏ばてなのか良く解らない。

前に魔理沙が霊夢の事を辛辣に言っていたの理由がよく解る。

あの状態の霊夢を見ると、働かない巫女と言われても仕方が無いな。

 

まぁ、霊夢に関しては何時もの事だから置いておくとして。

俺は今、博麗神社と人里を結ぶ道の整備をしている。

普段から人の来ない神社だけど、流石に何時までも獣道のままにしておく訳にもいかない。

それに、この道をきちんと整備すれば参拝客も増えるかも知れないし。

……と言うのが建前で、本当は俺が歩きにくいからと言うのが最大の理由だったりする。

 

霊夢は人里に向かう時は空を飛んで行くけど、俺は徒歩で行く事が多い。

確かに空を飛んでいけば楽だけど、人の時の姿は出来るだけ歩きで移動したいからだ。

別に飛ぶのが嫌いって訳じゃないけど、のんびり歩くのも悪くないし。

 

そう言った理由から、今は獣道をちゃんとした道と認識出来る様にしている。

まぁ、やっている事と言えば、邪魔に為りそうな木や草を刈るだけなんだけどね。

木の方は流石に幹自体を切る事は出来ないから、邪魔になる枝を折っているだけ。

だから、今は重点的に草を刈り取っている所だ。

 

「とは言え、流石に中々終わらないな……」

 

朝早くから始めた作業だけど、昼が過ぎたのにまだ半分にも終わっていない。

……いや、昼までで半分終わらせた事を褒めるべきか?

でも草刈りが終わった後も作業は残ってる上に、神社の仕事もほって置く訳にもいかない。

そう考えるともっと効率よく作業がしたいものだ。

 

「まぁ、道を作るのは魔法使うから良いんだけどな」

 

土属性の『破土(ハード)』を使えば道らしいものは出来るだろう。

後はそれを整備すればいいんだし、この作業さえ終われば多少楽が出来る筈だ。

……いっその事、魔法で草を地面に埋めるか? いや、また生えそうだから止めよう。

それに今は人里へのルート開拓だし、そう言うのは後でも良いか。

 

「……ん? 何か落ちてる?」

 

道の草刈りをしていると、直ぐ傍の木の根元に一振りの剣が落ちていた。

なんでこんな所に剣が落ちているんだ? 誰かの落し物か?

……でも最近は神社に人も来てないし、妖怪が出るって言う道で武器を落とすのも考え難いか。

傍に人骨の一つでも有れば、此処で亡くなった人の遺留品って事になるけど……それも無いな。

 

「じゃあ、本当になんなんだ?」

 

剣の形としては、仲間の一人が使っていた『太刀』に近いかな。

俺には彼の戦い方が真似出来なかったから、旅をしている時は装備する事は無かったけ。

……でも、剣の基本的な型は一緒なんだし、今なら装備できるかな。

流石に抜刀すると同時に斬るのは練習が必要だけど、普通に使う分には問題ないか。

 

「……何処の誰の物かは存じませんが、有り難く頂戴します」

 

念のため、一度手を合わせてから落ちている剣を頂戴した。

俺は刀身の状態を確認する為、一度剣を鞘から抜いてみる事に。

鞘から抜くと、其処にはサビ一つない完璧な状態の刀身が姿を現し、太陽の光に反射して銀色に輝いていた。

旅をしてる中で色々な剣を見てきたけど、これ程の剣を見たのは久々だな。

……でも、『ドラゴンブレード』や『グミ王の剣』程じゃないか。寧ろ、あれ程の剣がそこら辺に転がっているほうが異常だな。

 

「まぁ、この剣も十分に使えそうだし良しとするか」

 

俺は剣を鞘に仕舞い、再び草刈りを再開する事にした。

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

剣を拾ってから二時間ほどが経った。

時折、変な物を発見する以外は何の問題も無く作業をしていたんだけど、此処に来て問題が発生した。

 

「……すっかり囲まれたな」

 

俺は今、この山の周辺に住んでいると思われる妖怪たちに囲まれてしまった。

敵の数は大体……十人かそこ等って所か。

別に妖怪に囲まれたこと事体は大した問題じゃないけど、このままだと道の開通の妨げになる。

仮に開通出来たとしても、妖怪に襲われる可能性のある道なんて誰も通りたがらないな。

俺が通る分には問題ないけど、人里と神社の交流の為に整備してるんだし、コイツ等をなんとかしないと不味いか。

 

「仕方が無い。いっぺんコイツ等を締めるか」

 

そう呟くと、取り囲んでいた妖怪達が一斉に襲いかかって来た。

俺は奴等の攻撃が届くよりも早く剣を抜き―――、

 

「乱舞『せん切り』」

 

―――周囲を取り囲んでいる妖怪たちに、無数の斬撃を叩き込んだ。

叩き込んだといっても、この技自体は強くないし、ちゃんと手加減したから死んだ妖怪はいない。

全員生きている事を確認したら、軽く竜の力を解放した。

俺の力を理解した妖怪たちは、顔を青ざめたり、冷や汗を流している。

 

「……命が惜しいなら今すぐ失せろ」

 

力を解放しつつそう言うと、取り囲んでいた妖怪たちは蜘蛛の子を散らす様に一斉に逃げ出した。

この場に居た全員逃げたことを確認し、俺は力を再び封印し、握っていた剣を鞘に仕舞った。

 

今回は威嚇の為に使ったとは言え、本当はこう言う事はしたくないんだよな。

此処の妖怪たちを従えて勢力を作る気も無いし、やり過ぎて幻想郷のパワーバランスを崩すような真似もしたくない。

それにこんな事の為に力を解放するのも癪だしな。今後はこの剣一つで追い払う事にするか。

……でもそれだと、道の問題解決には為らないんだよな。

 

「やれやれ。本当に如何するかな?」

 

如何すれば良いのか分からず、溜息を一つ吐くと……近くの茂みが少しだけ動いた。

俺はさっきの妖怪の誰かが戻って来たと思い、鞘から剣を抜き……一気に茂みを切り裂いた。

 

「うわぁッ?! …い、いきなり何をするんだ! 危ないじゃないか!!」

「……人?」

 

茂みの中に居たのはさっきの妖怪ではなく、銀髪にメガネを付け、青を基調にした服を着た男性だった。

 

 

 

 

 

 

………

……

 

「本当にすいませんでした」

「いや、もう良いから」

 

剣を仕舞った俺は、間違って切り掛かってしまった人に頭を下げ謝罪していた。

男性はこう言っているけど、〝妖怪と間違えて斬り殺した〟じゃ笑い話にもならない。

こんなのそこら辺の三流新聞にも使われないって。

 

「…それで、君はこんな所で一体何をしているんだ?」

「えっと、俺は博麗神社と人里の間に在る道の整備をしてます」

「神社と里を?」

「はい。俺、あの神社に居候してまして。少しでも道が良くなれば買出しが楽になるかな~って」

「それじゃ、君が前に霊夢の言っていた居候か」

「……霊夢の知り合いの方ですか?」

 

あ、危なッ! もう少しで霊夢の知り合いを斬り捨てるところだった!!

もし斬り捨てていたら……飯抜きどころか、神社から追い出される可能性もあったな。

本当に茂みだけを切れて良かった。後一歩踏み込んでいたら、確実に首を刎ねてたぞ。

 

「重ね重ね本当にすいませんでした。だから、この事は霊夢には黙っていて下さい」

「あ、嗚呼。それは構わないよ」

「ありがとうございます。(おっしゃッ!)」

「その代わり、僕の頼みを聞いてくれるかい?」

「……頼みですか?」

「大丈夫。別に難しい事じゃないし、道の整備の片手間で出来る事だよ」

「はあ…」

 

道の整備の片手間で出来る事って、一体何をさせる気だろう?

整備でやる事なんて言ったら、草を刈ったり歩き易い様に土を弄る程度なんだけど……。

その片手間で一体何が出来るって言うんだ?

 

「それで、俺にして欲しい事と言うのは?」

「実は僕、魔法の森入り口で古道具屋を営んでいてね。店に出す商品の集めるのを手伝って欲しいんだ」

「商品の仕入れって事ですか? ……そう言うのはやった事がないんですけど」

「いや、そう言うことはしないよ。ただ、この辺りに落ちている物を持って来て欲しいだけだよ」

「……はい?」

 

イマイチ理解出来ない俺は、詳しい事を聞くことに為った。

この人が言うには、博麗神社は幻想郷と外の世界の境に位置するらしい。

二つの世界の境の為か、神社の周辺にはよく外の世界からの道具が流れ着くとか。

それでこの人は、そう言った道具を集めて店で売っているみたいだ。

……要するに、道の整備の途中で見つけた道具を自分の店に持って来て欲しいんだと。

 

「勿論お礼もするけど……如何かな?」

「その位でしたら良いですよ。寧ろ、道具が落ちていて邪魔だと思ってた位ですし」

「なら交渉成立だね。……僕は森近 霖之助。君の名前は?」

「俺はリュウ。ただのリュウです」

「〝龍〟? 随分と立派な名前なんだね」

「そんな大した名前じゃないですよ。なんせ、霊夢が適当に付けた名前ですから」

「……あの子は何を考えているんだ」

「あ、あはは……」

 

多分、何も考えてなかっと思いますよ。

なにせ名付けた理由が〝俺の存在が竜だから〟って理由ですし。

……いや、ある意味霊夢らしい名付け方なのか。

その後、簡単に打ち合わせをした俺達は、そろそろ日が暮れて来たと言う事もあって、今日は此処までにする事にした。

 

「それじゃリュウ。出来るだけ定期的に頼むよ」

「頑張ります」

 

森近さんと別れた俺は、帰り道に落ちている道具を拾いつつ博麗神社に帰る事にした。

……旅してた時の癖で落ちている物を大量に神社に拾ってしまい、その所為で霊夢にこっ酷く怒られたのは、また別のお話。

 

 

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