竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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今回は久々の戦闘回です。前回に比べればあっさりな感じの回になると思う。


第百二十三話 暴走する悪魔の妹

 

紅魔館の地下にある大図書館の一角でパチュリーは試験管を手にして何やら難しい顔をしていた。

彼女が手にしている試験管の中には紅玉(ルビー)よりも紅い液体が入っていて、一見すると色鮮やかな血にも見える。

彼女が今これを手に悩んでいる訳は、この液体を如何処分するべきかと言う割と単純な事。

普通ならメイドに頼んで排水溝に捨てれば良いのだが、この液体は竜の血で作られた魔法薬であるため、そんな方法で捨てるのは流石に躊躇われる。

自分で飲んで消費する方法も在るが、実験の時に薬を注入したマウスが一秒も掛からずに死んだ為、原液のまま飲むのは只の自殺行為にしかならない。

数百倍に希釈したものならば飲めるのだが、小悪魔に一滴だけ舐めさせたらその場で卒倒してしまい、ためしに自分で飲んだところ三日も寝込んでしまった。

今度は数千倍に薄めれば飲めるとは思うが……其処まで薄くしてしまうと、今度は薬の恩恵を受ける事が出来なくなってしまう恐れがある。

そうなってしまったら薬の意味が無い為、それならばいっその事捨ててしまおうと魔女は考えたんだが、今度は如何捨てれば良いのかで頭を悩ませていた。

 

「……毒以外のなんでもないし、これは一体どうやって捨てれば良いのかしらね」

 

普通に捨ててしまったら、どんな事が起こるのか分からない危ない薬。

土壌汚染や水質汚染はないと思うが、動植物に何らかの影響が出るのは容易に想像が出来る。

過去に何度か騒ぎを起こしているため、この薬を適当に処分した所為で何かの異変を起こしてしまったら……今度こそ命が危ない。

現在の裁定者には強力な竜が傍にいる上に、その竜の血で精製した薬が原因で起こった異変としれば、彼女がどんな行動に出るのか分かったもんじゃない。

 

「いっその事、この薬を彼に渡して直接処分して貰おうかしら。元々は彼の血から出来ているのだし、危ない薬だと知れば二つ返事で処分してくれるでしょう」

 

そう考えて、早速件の竜が住む神社に向かう為の準備を始めようとする。

液体が漏れないように試験管の口に蓋をした後、別の場所に保管しておいた原液の方を取りに行く。

希釈した方よりも原液の方が危険度が高い為、原液の方は親友にも触れられない場所に保管していた。

他にも危険度の高いモノが多く在り、盗まれないように何重にも魔法を掛けている所為で、液体一つ取り出すのにも時間が掛かってしまう。

昔は此処まで厳重にしなくても問題はなかったのだが、どこぞの白黒魔法使いが本を持ち去っていく所為で此処まで厳重にしなくては為らなくなっていた。

危険度の低い魔導書は兎も角、此処に保管している道具に関しては絶対に秘密にしなければならない。

魔女は自分にそう言い聞かせながら、何重にも掛かった魔法を一つずつ慎重に解除していった。

 

「パチュリ~、本借りたいんだけど良い~?」

 

魔女が魔法を一つずつ解除していると、図書館の入り口の方から親友の妹の声が聞こえてきた。

 

「妹様? 別に構わないけど、私の机を荒らさないでね」

「分かった~」

 

親友の妹はパチュリーに気楽そうな返事をするが、彼女はその返事に一抹の不安を募らせた。

なにせあの我が侭な親友の妹だ、口では分かったと言いながらも興味本位で作業机を調べるに決まっている。

直ぐにでも彼女の元に向かいたい魔女だが、魔法を中途半端に解除したまま向かうのも危険な気がして為らない。

魔法や儀式を半端な形で終わらせた時のリスクを考えると、此処は慎重にかつ出来るだけ手早く解除していった方が良いだろう。

そう考えた魔女は、解け掛かっている魔法のロジックを丁寧かつ素早く解除していく。

複雑に絡み合った糸を丁寧に解いて行くように、何重にも重なった魔法は一つ一つ解除されていき霧散していく。

漸く全ての魔法を解除し終えた魔女は、中に入っている物を取り出さずに急いで作業机へと戻る。

余り運動しない魔女にとって、保管場所から作業机に駆け足で戻るだけでも息が上がってしまう。

喘息持ちの彼女には余り好ましくない事ではないが、のんびりと歩いていて万が一の事が起こったら眼も当てられない。

だからこそ魔女は、走りたくもないのに駆け足で自分の作業机へと戻ったのだ。

 

「い、いもうと様……机の上にあるくすりだけど……」

「ん~?」

 

本人にしては急いで戻ったものの、魔女の努力も空しく親友の妹は既に机を荒らしていた。

いや、机を荒らしただけならまだ良い、それよりも問題なのは彼女が例の薬を飲んでしまっている事だ。

竜の血液から作られているそれは、見た目は綺麗な血のように見えなくもない。

種族柄、他者の血を好んで飲む習性のある彼女からしたら、魔女が作った劇薬が美味しそうな血に見えてしまったのだろう。

 

「な、なんでそれを飲んじゃうのよ……」

「いや、美味しそうだったからつい」

「……まぁいいわ。それよりも妹様、何処か身体の具合悪いとかはない?」

「…? 別にそんな事もない…ケド……」

「妹様?」

 

魔女の問いに答えようとした親友の妹だが、返事をしている途中で言葉が止まり、眼から光が急に消えて虚ろなものになってしまった。

彼女の変化に驚いた魔女は、自分や使い魔と同じ様に薬にやられて気絶したのかと心配するが、彼女に現われた症状は二人の物とは全く別の症状だった。

一番最初に症状が現われたの彼女の異形の羽。

骨の様な突起に、七色の色鮮やかな飾りが付いていると言う少々風変わりな羽をしているが、その飾りが全て真っ赤な深紅へと変わる。

次に変化が現われたのは彼女の眼。元々赤い眼をしていたのだが羽飾りの色が変わった後、瞳は虚ろなまま色彩だけが血の様に赤黒い色へと変貌した。

 

「い、妹様……?」

 

瞳と羽の色の変化に驚く魔女だが、親友の妹は魔女の声に返事をする代わりに、口角をつり上げて虚ろな瞳のままおぞましい笑みを浮かべた。

嫌な予感がした魔女は直ぐにその場から離れようした瞬間、何かに身体を撃ち抜かれその場に倒れ伏せてしまう。

朦朧とする意識の中、魔女が最後に見た光景は……自分に向かって弾幕を放とうとする親友の妹の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

リュウSide

 

今日はフランと遊ぶ約束をしているのだが、どうも紅魔館周辺から嫌な気配を感じる。

また紅い霧が発生したとか、そんな事は断じてないんだが……また紫もやしが面倒事でも起こしたのか?

あの魔女は本当に碌な事をしないなぁ~っと思いながら、面倒事が発生しているであろう紅魔館の敷地に入った。

表面上は特に変化は無いが、何時もなら居る筈の門番の姿が何処にもない。

前にもこんな事があったが……また門番を動かさなくちゃいけないほどの出来事が発生した訳か。

 

「はぁ~……。此処の連中は本当に面倒しか起こさないな」

 

呆れながら屋敷の中に入ると、中の方は俺の予想よりも遥かに悲惨な事になっていた。

玄関ホールに有った家具がなんかはボロボロの壊れ、壁や床には幾つモノ皹や亀裂が走っている。

正直なところ、また紫もやしが魔物でも召喚して手に負えなくて急いで退治していると思ったが、この壊れ具合から察するに今回の相手は前以上に手強い奴の様だな。

今度はいったいなにを召喚したのかと首を捻っていると、地下の方から戦闘音の様な轟音が響いてくる。

それ聞きつけた俺は、興味本位で屋敷の地下へと降り、音のする方に向かって歩き始める。

音は地下の大図書室の辺りから響き、かなり激しい戦闘が行われているように聞こえる。

俺は念のために愛刀を取り出し、そのまま轟音の発生源である図書館の中へと踏み入った。

部屋の中には異様なまでに紅い眼をした四人のフランと、それと戦っているレミリア・咲夜・門番の三人の姿が在った。

 

「リュウ? 丁度良かったわ、貴方フランを止めるのを手伝いなさい」

「開口一番にそれかレミリア。手伝うのは構わないが、今回の原因は一体なんだ」

「それは私にも分からないわ。でも、今のフランを外に出したら何をするか分からないわよ」

「……そうみたいだな」

 

俺が納得したように呟くと、四人の中の一人がレヴァンティンを構えたまま襲い掛かってくる。

素早く愛刀を抜いて襲い掛かってきたフランを迎え撃つが、彼女の様子は明らかに普段とは違っていた。

フランは羽までも紅に染まっていて、正気を失った瞳のままケタケタとおぞましい笑みを浮かべている。

気が触れた時のフランとも似ているが、あの状態でも一応は意識と呼べるものはちゃんとあった。

だけど今のフランは、おぞましい笑みが顔に張り付いたままで喋る事もなく、ちゃんと意識があるのかもかなり怪しい状態だ。

なんだってこんな事に為ってるのか知らないが、レミリアの言う通り今のフランを外に出す訳には行かないな。

 

「さてお仕置きだフラン。何をしたか知らないが、かなり痛いから覚悟しろよ」

「アハハハハハハハハhahahahahahahahahahahahahaはははははははははッ」

 

そう言いながら俺は、彼女が振り下ろして来たレーヴァテインを愛刀で受け止める。

振り下ろされた一撃は何時もよりも重く、正気を失っているからか手加減と言うものを一切感じられない。

このまま受け止めるのも不味いと察した俺は、愛刀を逸らす事でフランの剣を受け流し、そのまま刃を返してフランに袈裟斬りを叩き込んで斬り飛ばす。

斬り飛ばされたフランは、空中で体勢を立て直してもう一度向かって来ようとする。

だが、彼女が動くよりも先の俺が動き、一気に間合いを詰めて今度はフランの胴を薙ぎ払う。

直ぐに刃を返して斬り上げた後、脳天から真っ直ぐに剣を振り下ろし、最後に彼女の胸を穿ってまた図書館の奥へとフランを突き飛ばす。

 

向こうも手加減がないように、こっちも一切の手加減なく叩き込んだ袈裟斬り始動の五連撃。

この連撃で倒す事はできないにしても、それなりのダメージを与える事が出来たはずだが……フランに堪えた様子はなく、正気を失ったままの笑みを浮かべている。

確かな手応えを感じたのだが、あの笑みの所為で本当に攻撃が通っているのか疑問になってくる。

恐らく痛覚を感じていないんだと思うが、それだと怯む事もないだろうから倒し辛くなるな。

 

目の前に居る相手を冷静に分析していると、フランは七色の光弾を幾つも作り出し、俺に向かって一斉に放って来た。

この弾幕は以前に見た事はあるが、手加減をしていない所為か何時もよりも弾速が速くなっている。

俺は小さく舌打ちを打ちながらも、命中しそうな弾だけを確実に切り裂いてなんとか凌ぐ。

本当は斬撃と飛ばして、少しでも多くの弾を切り裂きたいんだが、フランの弾速が思ったよりも速く、斬撃を飛ばしている暇が無い。

それでもなんとか弾幕を切り裂いて凌いでいると、俺の頭上に移動していたフランがレーヴァテインを振り下ろして来た。

迫り来る弾幕の対応をしていた所為で反応が遅れてしまい、俺は防ぐ事もできずに切り伏せられてしまう。

俺は直ぐに体勢を立て直そうと立ち上がるが、フランはそれよりも先に弾幕を展開して放ってくる。

飛んで来た幾つかの弾に身体を撃ち抜かれながらも、俺は気合で後ろに跳んでなんとかフランとの間合いを大きく離す。

 

後ろに下がったところで体勢を立て直そうとするが、またフランに間合いを詰められて横に斬り飛ばされる。

今度はギリギリのところで防ぐ事は出来たが、斬り飛ばされても直ぐに間合いを詰められてしまう。

俺はまともに体勢を立て直せないまま、フランと剣戟を結ぶが体勢が悪い分コッチが不利な状況に追い込まれてる。

それでも長年培って来た経験でなんとか渡り合うが、今のフラン相手に何処まで持つのか分からない。

なんとか体勢を立て直すために、フランの胴を薙いで斬り飛ばそうと試みる……が、彼女は俺の一撃をものともせずレーヴァテインを振り下ろした。

 

フランの繰り出した一撃はかなり力任せで、俺はその力に負けて壁際にまで斬り飛ばされてしまう。

壁にある本棚に激突すると、衝撃で肺に溜まっていた空気を吐き出し、棚に整頓されていた大量の本が一斉に落ちた。

ダメージを受けて直ぐに動けなかった俺は、上から落ちてくる大量の本の中に埋もれてしまう。

落下して来た本は大した事は無いが、フランから受けたダメージが大き過ぎて身体の動きが鈍ってきてる。

もう戦えないと言う程でもないが、コレ以上人の姿のままでフランと戦うのはかなり危ないだろう。

出来る事なら使いたくはなかったんだが、俺は内側で眠っている竜の力を呼び起こし、その力を解放して行使する事を決めた。

 

「……でぇあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

雄叫びを挙げながら竜の力を解放すると、覆いかぶさっていた大量の本は赤いオーラで吹き飛ばされる。

俺はその赤い光の中で人の姿から、強大な力を持つ『カイザー』の竜人へと姿を変える。

変身が終わり、赤い光を吹き飛ばすのとほぼ同時に、フランはレーヴァテインを振り下ろして来た。

俺は振り下ろされた一撃を躱し、そのまま彼女の腹に膝を叩き込んで蹴り飛ばす。

蹴り飛ばされてもフランは直ぐに体勢を立て直すが、俺は愛刀と叢雲を手の中に呼び寄せて刀身に光の刃を纏わせる。

俺は一瞬にして間合いを詰め、まだ体勢が整っていないフランに向かって剣を振り下ろした。

攻撃を受けても怯まないフランは、俺の攻撃を受けても何事もなかったかの様に体勢を立て直すが、俺も彼女が昼間ない事など気にせずに二つの剣を振るっていく。

叢雲でフランの剣を弾いた後、直ぐに愛刀を振るって袈裟斬りを叩き込み、一回転しながら今度は叢雲で彼女の胴を薙ぐ。

そのまま愛刀の持ち方を逆手に変えて斬り上げた後、叢雲を振るって逆袈裟斬りを叩き込んで斬り飛ばす。

 

フランは斬り飛ばされながらも、怯んだ様子もなく俺に向かって弾幕を放ってくるが、その表情にはあのおぞましい笑みは消えていた。

瞳は変わらず虚ろなままでいるが、赤一色だった羽の飾りは点滅しながら何時もの色を取り戻しつつあった。

戦いの中で正気を取り戻しつつあるようだが、この姿に為った以上は最後まで手を抜いたりはしない。

俺は迫り来る弾幕を一つも掠らせる事なく避けきり、フランの背後に周りこんで地面に向かって蹴り飛ばす。

 

地面に蹴り飛ばされたフランは、床と激突した衝撃で一度だけ大きく弾んだ。

フランは直ぐに立ち上がろうとするが、今までの攻防で身体のアチコチにガタが来ているのか、上手く立ち上がる事が出来ない。

この隙に他の連中の様子を見てみると、三人ともボロボロに為りながらもなんとかフランを追い詰めていた。

人間の咲夜は満身創痍っと言った感じだが、膝に手をつきながらも確りと自分の足で立っている。

レミリアと門番はまだ若干の余裕がありそうだが、コレ以上戦闘を行うのは厳しいと言ったところだろうか。

他の三人はそろそろ限界の様だし、ここら辺で正気に戻ってくれると助かるんだが……そうもいかないだろうな。

 

四人のフランの内、レミリア達と戦っていた三人が忽然と姿を消すと、俺と戦っていたフランが羽を赤く染めながらまた立ち上がってきた。

表情もさっきまでと同じ笑みを浮かべていて、完全に……とは言いがたいが、それなりに力を取り戻したようだ。

もう一度力を取り戻したフランは、弾幕を展開することはせず、握り締めているレーヴァテインに力を注ぎ込んで刀身を巨大なモノに変えた。

そしておぞましい笑みを浮かべたまま、フランは迷う事無く俺に向かって突撃して来る。

赤く燃える巨大な刀身が振り下ろされるが、俺は叢雲でレーヴァテインを弾き、光の刀身を伸ばした愛刀でフランに斬り掛かる。

斬られてもフランは怯む事無く立ち向かってくるが、愛刀と叢雲を縦横無尽に振るい立ち向かってくるフランを何度も切り伏せて行く。

何度斬られようともフランは向かって来るが、その様子に痛ましさすら覚えてしまう。

コレ以上あんなフランを見る事が出来なくなった俺は、次の一撃でケリを付けること決めた。

 

「人鬼『未来永劫斬』」

 

呟くように言った宣言の後、俺は一瞬にしてフランを斬り飛ばし、高く打ち上げて追撃していく。

視認すら出来ない速度で攻撃を繰り出し、斬撃で作られた結界の中に閉じ込められたフランは、空中に縫い付けられた様に動けなくなる。

数秒の間に何十と言う斬撃を叩き込んだ後、下から結界を斬り裂きながら中にいるフランを更に高く斬り飛ばした。

斬り上げられたフランは、空中で体勢を立て直すこともなくそのまま気絶したのか落下し、そのまま地面に激突した。

フランが気絶すると、変色していた彼女の羽が漸く元に戻り、張り付いていたおぞましい笑みもすっかり消え去っている。

やっと元のフランに戻った事を確認した俺は、変身を解いて荒れ果てた図書館に降り立つ。

出していた愛刀を鞘に仕舞い、全身の力を抜くように深い息を吐き出すと、慌てた様子のレミリアがフランへと駆け寄る。

 

「大丈夫フラン?! ちゃんと生きてるわよね!?」

「…………………う~ん、うるさいなぁ。もうちょっとねさせてよ」

「人が心配してるって言うのにこの子は……ッ。何時までも寝惚けてないで起きなさい!!」

「ひゃあッ!? な、なに、何事なの?! ……あ、リュウ、お早う。なんでウチに居るの?」

 

レミリアに叩き起こされたフランは、隣に居る姉ではなく正面に居た俺に暢気な挨拶をしてきた。

さっきまで暴れていた面影は既に何処にもなく、フランは何時もと変わらない様子でいた。

 

「お早うフラン。俺が何で此処に居るのか気にする前に、隣を見たほうがいいぞ」

「…? となり?」

 

不思議そうな顔をしながらフランは横を向くと、其処には青筋を浮かべているレミリアの姿が在った。

 

「お、お姉様、なんでそんなに恐い顔をしているの?」

「別に恐い顔なんかしてないわ。ただ、貴女が何時もと変わらず私に迷惑を掛けてきただけよ」

「そんなの何時もの事じゃない。その程度の事で一々怒ってたら、小皺だらけに為っちゃうよ」

「貴女って子は…………其処に直りなさいフラン! 今日と言う今日は本気で怒ったわよ!!」

「キャーお姉様が怒ったー」

 

おどけながら言ったフランは走り出し、その後を怒ったレミリアが追いかけ始める。

怒っているレミリアは真剣なんだろうが、見た目が幼い分子供の追いかけっこにしか見えない。

なんとも微笑ましいと思いながら、二人を止めようともせず、俺はその場に座り込んでじゃれ合っている二人を見守る事にした。

 

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