竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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第百三十五話 よく晴れた秋の空

気絶した八坂を担いで神社に戻る途中、さっきの騒ぎを聞きつけた霊夢と合流した。

俺が事情を説明すると、霊夢は呆れて溜息を吐くが……何時もの事なので深くは気にしない。

隣で霊夢に小言を言われながら八坂の神社へと戻ると、霊夢と緑の巫女の闘いで荒れた境内に、緑の子の姿と奇妙な帽子を被った少女の姿を見つけた。

緑の子は霊夢との闘いで疲れたのか、地面にへたり込んでいて、奇妙な帽子を被った少女は彼女の事を励ましている様だ。

俺達はあの奇妙な目を引かれつつ、気絶している八坂を送り届ける為に境内に降り立つと、俺達に気付いた緑の子が酷く慌てた様子で駆けつけて来た。

 

「神奈子様?! 大丈夫ですか!?」

「あ~気を失ってるだけだから安心しろ」

 

そう言って担いでいる八坂を少女に任せると、少女は優しく抱いて八坂を横に寝かせた。

俺の最後の技が大分効いているのか、八坂は未だに目を覚ます気配は無いものの、呼吸は落ち着いてコレと言って目立った外傷はない。

ちゃんと手加減したから、神社に戻る途中で目を覚ますと思っていたんだが……予想以上にダメージが大きい様だ。

其処まで強力な技の心算はなかったけど、相手が神族と言う事もあってコッチの予想を上回る威力になっていたんだろうな。やっぱりあの技は封印するしかないかな~……。

そんな事を考えていると、奇妙な帽子をかぶった子が俺達の傍に近付いてきた。

 

「久し振りだね白いの。ウチの神奈子が世話に為ったみたいだけど……ホントに大丈夫なの?」

「俺はちゃんと手加減して放ったんだが、それ以上に相性が悪かったみたいだ」

「君は私ら神々の天敵なんだから、どんなに手加減してもソッチの想定以上の威力になるって」

「そうみたいだな。……ったく、やり過ぎない様に手加減するのって結構大変だってのに」

「あっはっはっは! 自分の生まれ持った能力を嘆いた所でどうしようもないよ」

「お前に言われなくたって分かってるっての……」

 

俺が不貞腐れながらそう言うと、奇妙な帽子の子は俺の態度を見て、楽しそうに笑い出した。

笑われる方としては、余り面白くないんだが……彼女の態度に毒気が抜かれたのか、怒る気も起きやしない。

龍神の奴を似た様な性格なのか、コイツと話していると何となくアイツを思い出してしまう。

別にアイツが故人に為っている訳じゃないけど、性格が似てるってのも色々と考え物だな。

 

「楽しそうに雑談してるところ悪いけど、一つ聞いても良いかしら?」

「なに? ウチの早苗を倒した紅の巫女さん?」

「アンタは一体誰なの? 雰囲気的には神様みたいだけど……」

「あぁ、そう言えば自己紹介がまだだったね。私の名前は『洩矢 諏訪子』。この神社の神様さ」

「……あれ? この神社って八坂のじゃないのか?」

「外交的にはね。でも、此処は元々私の物で、今は神奈子と一緒に二柱の神様をやってるよ」

「詳しい事は聞かないけど、何となくメンドクさそうな関係なのね」

「まぁ、何千年も昔の話だけどね。……さて、二人とは色々と話さないといけないけど、その前に早苗は神奈子を神社に運んでくれる? 流石に何時までも境内に寝かせるのは可哀相だし」

「分かりました」

 

洩矢にそう指示を受けた少女は、気絶している八坂を担いでフラフラと歩きながら、なんとか神社へと下がっていった。

危なっかしく歩くから、手でも貸してやろうかとも思ったけど、恐らく彼女に嫌われただろうから突っ撥ねられるのがオチか。

 

「それじゃ、話し合いをして決める事を決めようか」

「別に良いけど……アンタは戦わないの? 一応はこの神社の神様なんでしょ?」

「只でさえ白いのが居るのに、二対一でしょ? 如何考えても勝ち目なんてないって」

「まぁそうだろうけど、一つ言わせろ。俺の名前は『白いの』じゃねぇ!」

「あ~はいはい」

「この野郎……。一度キツイのお見舞いしてやろうか……」

「とりあえずリュウは落ち着きなさいよ。話が全然進まないから」

 

霊夢に宥められながらも、俺達は洩矢と今後について幾つかの取り決めを決めた。

取り決めと言ってもそれ程大層なモノではなく、単純に今回の様な事は止めろと言うだけだ。

この幻想郷に取って『博麗神社』とその巫女は必要不可欠な為、今回の様な神社乗っ取りは下手をすれば幻想郷の存亡にも関わってくる。

此処に来たばかりのコイツ等は、その事を知らなかったらしいが―――

 

「それならウチの早苗が代わりをすれば良いよ。あの子はまだ未熟者だけど、才能はあるし努力もしてるからきっと大丈夫だよ」

 

―――と反省の色も見せずに、暢気にトンでもない事を提案して来やがった。

流石にこの発言には俺も呆れ果ててしまい、隣りに居る霊夢は額に青筋を浮かべてた。

こんな俺達の様子を見て、今のは失言だったと気付いた洩矢は、直ぐに今の言葉を撤回してきた。

もし撤回せずに推し進めてきたら、間違いなく霊夢がブチ切れて大変な事に為っていただろうな。

信仰集めに関しては、度を過ぎなければ此方から口出ししないと言ったら、機嫌を良くしてウチの神社を乗っ取らないと約束してくれた。

俺達……と言うか霊夢は、あまり信仰とか気にしていない様だが、神社としては洩矢達みたいなのが正しい姿なのだろうか?

宗教とかはあまり興味が無いから、正直ドッチでも良いんだけど……〝外〟の神社は皆こんな奴等ばっかりかと考えると、あまり行きたいとは思えない世界だな。

後は細かい事を聞きだした俺達は、残りは山の連中に丸投げする事にして今日の所は帰る事にした。

山の問題に関してまで口出ししたら、後で旋那の奴に睨まれちまいそうだからな、後の問題はアイツ等に任せるとしよう。

 

「それじゃ、俺達は帰るからあまり派手な事するんじゃないぞ」

「分かってるって。……それにしても、昔の竜とは思えない性格になってるね。噂以上だよ」

「俺の噂ってなんだよ。てか、どこら辺で伝わってるんだよそれ」

「神々の世界に決まってるじゃない。君が再来したって伝わった時はちょっとした混乱が起こったくらいだし」

「……俺の知らないところで、また天照を泣かせてた訳か」

「あははは。君の問題で一番泣きを見るのは彼女だからね、色々と苦労掛けてると思うよ」

「今度会った時にでも謝っておくか……」

「天照なら何時もの事ですからって言いそうだけどね。…それじゃ、私達はもう行くから、暫くは大人しくしてなさいよ」

「りょーかい。……それじゃ、またね二人共」

 

洩矢に見送られた俺達は、すっかり暗くなった空を飛んで帰路に着くことになった。

今日は色々とあったからさっさと寝たいんだが、アイツ等が本当に大人しくする気があるのかが物凄く気掛かりだ。

流石に翌日から動き出すとは思えないけど、余り面倒をかけないで欲しいものだな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

山から帰ってきた翌日、昨日は神を懲らしめたと言う事もあって、今日は二人揃って神社でのんびりする事にした。

特別何かをする訳でもなく、二人して縁側に座り込んで、気持ちの良い秋晴れの空を眺めながら、霊夢が淹れてくれたお茶を飲んでる。

激しい戦いがあった反動……って程でもないけど、俺も霊夢もすっかり気が緩んでいた。

今日はこのまま静かに過ごせれば良いなぁ~って考えていると、裏庭に一陣の風が吹き抜け、俺達の目の前に射命丸が唐突に姿を現した。

 

「やぁやぁご両人。本日はいかがお過ごしでしょうか?」

「そうね、何時もの様にのんびりと過ごせてたわよ。……アンタが来る前までは」

「これは手厳しいですね。そんな時の気分転換に新聞の定期購読を―――」

「新聞を買う心算なんて一切無いからその心算で」

「―――……チッ」

「いま舌打ちしたぞコイツ……」

「まぁ、定期購読の方はまた今度ご契約して貰うとして、幾つか取材しても良いですか?」

「定期購読はしないが、取材くらいなら別に構わないぞ」

「其処は両方許可してくれても良いじゃないですか。けち臭いですね」

「リュウ、其処の五月蝿い鴉を追っ払ってくれない?」

「ちょっと待ってろ。すぐに五体満足じゃいられない様にしてやるから」

「すいません、調子に乗ってました!!」

 

俺達が軽く脅してやると、射命丸はその場で土下座して許しを請うて来た。

余りの反応の速さに思わず驚いてしまうが、恐らくは昨日の闘いが相当堪えたんだろう。

其処まで酷い技を使った心算は無いけど、実際に受けてみないと威力がどの位なのか分からないからな、こんな反応をされても仕方がないのかもしれない。

そう考えて思わず溜息が出てしまうが、今は関係のない事だし、余り気にしないでおこう。

俺は頭を下げたままの射命丸の頭を上げさせ、頼まれていた取材だけを受けてやる事にした。

 

「それで? 今回は何の話が聞きたいんだ?」

「山に現われた神様ご一行について詳しく教えてください」

「詳しくって言われても、私もリュウもアイツ等の事なんて何も知らないわよ」

「えっ? ですが、境内の方であの人達が分社を建てる準備をしてましたけど?」

「……なんだって?」

 

おかしな話を聞いた俺は、手の中に愛刀を取り出して急ぎ境内へと駆けて行った。

裏庭を抜けて境内の方に行くと、其処には確かに八坂と洩矢の二人がせっせと何かを設置していた。

神様本人が何をしているのかとツッコミたいが、とりあえず今は堪える事にしよう。

俺はいつもの様に叢雲を取り出して肩に担ぎ、何かの作業に集中している二人に気付かれないように近付いて、叢雲を振り被って力一杯二人の頭を叩いてやった。

 

「いった~~ッ。一体何処の誰だい! わたし等の頭を叩くなんて言う不届き者は!!」

「俺だよこの野郎。テメェ等、此処で一体何をしてやがる」

「あ、竜、こんにちわ。今日は気持ちの良い秋晴れだね」

「そうだな、洩矢。下手に誤魔化そうとしないでさっさと喋ろうか」

「……此処にわたし等の分社を造ろうしていたが、何か問題でも?」

「あるに決まってるだろうが!!!」

 

悪びれる心算もなく言ってくる八坂に、俺はもう一度叢雲で殴りかかる。

だが、流石に二度も当たるほど甘くはなく、今度の一撃は当たる前に避けられてしまう。

 

「危ないねぇ、わたし等の分社を建てるのに何の問題があるってんだ?」

「家主に相談もせずに勝手に建てようとするがだ」

「そうは言うけど、此処は竜の神社でもないし、他の神も居ないなら別に良いと思うけど?」

「……家主の霊夢に話しを通せって言ってるんだよ」

 

俺は頭が痛くなるのを感じながら搾り出すように告げるが、二人は特に反省した様子もなく平然としている。

 

「おい、紅の巫女。わたし等の分社を建てるけど問題ないだろ?」

「うん、平気だよ、竜なんか気にしないで大きいの建てちゃって」

「うんうん、紅の巫女は話が早くて助かる。それに比べて白竜と来たら……」

「……………」

 

特に反省する様子もないどころか、似てもいない霊夢の声真似をしてまで話を押し通そうとする。

好き放題やって来る二人に堪忍袋の緒が切れた俺は、無言のまま『カイザー』の力を解放して竜人形態へと変身した。

俺が変身したのを見て、流石の二人もやり過ぎたと気が付いたのか、顔色を悪くしているが反省したところで許すつもりなど毛頭ない。

手の中に二つの光剣を作り出し、有りっ丈の力を注いで昨日作った奴よりも強力な刃を完成させる。

 

「お、落ち着け白竜! お前さんとわたし等が本気で戦うのは流石に不味い!」

「そうだよ竜! こんな事をしても誰も幸せに為れないよ!」

「……そうだな、とりあえずお前等は―――」

「「ん?」」

「―――徹底的に叩き潰した方が良さそうだな」

「「…………さらばッ!!」」

「今の俺から簡単に逃げられると思うなよ貴様等!!」

 

神社から全速力で逃げ出そうとする二人を逃すまいと、足元の大気を蹴って全力で追い掛けて行く。

莫迦共は俺に捕まるまいと弾幕を放ってくるが、どんな攻撃も愛刀の一振りで掻き消していけるので全く効果がない。

俺は幻想郷に影響を及ぼさない様に注意しつつも、反省を言う言葉を知らなさそうな二人を躊躇う事無く斬り掛かって行く。

信仰集めなんて微塵も興味ないが、霊夢の神社にコイツ等の分社が出来るのはなんか腹立つ! 殺す心算はないからとりあえず一撃殴らせろ!!

 

「貴様等、逃げるな!」

「「コッチへ来るなぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」」

「……良いんですか霊夢さん、アレを放って置いて」

「リュウだって莫迦じゃないんだから、大結界を壊すような真似はしないから平気よ」

「そう言う問題でも無い様な気が……」

 

神社の方からなにやら声が聞こえた様な気がしたけど、今はそんな事が気に為らないほどに怒り心頭している。

逃げ惑う二人はなんとか助かろうと必至になっているが、お互いに絶妙な感じで足を引っ張っている所為で、逃げるどころか俺の間合いに入って来てくれる。

 

「ちょっと! 神奈子の方がタフなんだから囮になってよ!」

「ふざけるんじゃないよ! 諏訪子の方が小柄なんだからアイツの剣ぐらい避けれるだろ!」

「面倒だから二人まとめて切り伏せられろ!」

「「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」」

 

逃げ惑う二人を追い掛け回していた結果、俺はその日は昼過ぎまでずっとあの二人を追いかけ続けるする破目になった。

無駄にすばしっこいお陰で少々手間が掛かったけど、コレに懲りてアイツ等も大人しくなってくれると……良いんだけどな。

 




…さて、やっとの思いで風神録の話しを投稿した訳ですが、色々とあっさりし過ぎた出来になってしまいました。期待していた方には申し訳ない。
早苗が自分の事を名前で呼んでいるのは、どのキャラが喋っているのか分かるようにする為です。東方のキャラは多いですから、〝わたし〟だけだと誰が喋ってるのか分からなくなるんですよね。
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