いや~、Fate/EXTRAcccが面白すぎて、気がついたらもう四週目ですよ。あっはっはっはっは…は………本当にスミマセンでした!
秋も深まってきた十月の中ごろ、博麗神社の境内は普段とは打って変わって物々しい雰囲気に包まれている。
境内には叢雲を中心とした大掛かりな結界が張られていて、結界の効力なのか、叢雲には霊力の鎖が幾重にも巻きついていた。
「…それじゃ、始めるわよ」
結界の向こうで姿が見えないが、真剣な声で開始を宣言する霊夢とは裏腹に、俺はコレは無理だろうなと思いながら叢雲の柄を握り締める。
俺が剣の柄を握り締めると霊夢は祝詞を読み始め、それに呼応するように結界の光が強くなっていく。
光が強くなるに連れて鎖も強固に為っていき、叢雲は宙に固定されてピクリとも動かなくなる。
俺の力でも動かせなくなったのを確認してから、俺は叢雲に力を纏わせていき、邪魔な鞘を破壊しようする。
ちょっとやそっとの力では破壊できないのは既に分かっている。
だから俺は、有りっ丈の力を叢雲に纏わせようとしたその時―――
「あ、ちょっと! 何処に行くのよ!?」
―――悲鳴にも似た霊夢の声が聞こえた途端、鎖の頑強さは消えてなくなり、剣に巻きついていた鎖は俺の力に当てられて簡単に崩壊してしまう。
やる前から失敗するだろうとは思っていたけど、まさかこうも簡単に崩壊するとはな……。コレならまだ前のやり方の方が可能性があった気がするぞ。
そんな事を思いながら叢雲を片付けると、展開していた結界が唐突に霧散し、雰囲気も何時もの境内に戻る。
結界が解けて何時もの境内に戻ったものの、霊夢は鎖を維持出来なかった事を悔んでいるのか、彼女の表情は誰の眼から見ても落胆していた。
「…ごめん、リュウ。今回も駄目だったわ」
「別に気にするなって。そもそも無理のある作戦だったんだ、失敗したからって悔むなよ」
「…それ、フォローになってないわよ」
「そうか? ……いや、確かにそのとおりだな。すまん」
「なんでアンタが謝ってんのよ。謝るのは私の方でしょうに」
霊夢は呆れた様子でそう言ってくるものの、その表情はさっきよりも明るかった。
…やっぱり、霊夢は暗い表情よりも明るい顔の方が良く似合うな。
「まぁ、それは兎も角として、今回の作戦はイマイチだったな」
「そうね。
「結界で俺の姿を隠せても力までは隠し通せないからな。こうなるのは眼に見えてたよ」
「ぐぬぬ……。力の神である
「別に焦っているわけでもないし、気長に別の方法を探せばいいだろ」
「アンタがそう言うならそれでも良いけど…せっかく新しい術を覚えただし、何かで試したいじゃない」
「気持ちは分かるが、発言が子供っぽいぞ」
そんな話しをしながら軽く後片付けを始めようとすると、空の向こうから何かが風を切る音が聞こえてくる。
また射命丸が来たのかと思い、音が聞こえてくる方に眼を向けてみると―――
「リュウーッ!」
「へぶらッ?!」
―――空から飛んで来たフランが勢いよく俺に突っ込んで来た。
あまりにも勢いが強すぎた所為で受け止め切る事が出来ず、そのまま後ろに倒れこみ頭を強打する。
幸い意識こそ飛ばなかったものの、フランが飛びついてきた腹部と、地面に強打した後頭部が物凄く痛い。…あ、やばい。ちょっと涙が出て来た。
地面に倒れて動けずにいると霊夢が心配そうな顔で俺に声を掛けてきた。
「…一応聞くけど、リュウ大丈夫?」
「こ、これがだいじょうぶにみえるか…?」
「あ~…うん、ごめん」
申し訳無さそうに謝罪してくると、霊夢は猫みたいにフランの服の襟を掴み上げる。
「コラ、フラン! あんな勢いで飛びついて来るなんて危ないでしょ!」
「あぅ…ごめんなさい」
「全く。リュウに抱き付きたい気持ちは分かるけど、少しは自重しなさいよね」
「…ちょっと待て霊夢。今の発言はどういう意味だ」
「あら、私いま何か言ったかしら?」
物凄く聞き逃せない事を言った気がするが、霊夢はすっ呆けた顔で何事もなかったかのように恍けてくる。
有耶無耶にせず追究すればボロが出ると思うけど、下手に深入りすると取り返しの付かない事に為る気がする。
個人的には物凄く追究したいが、その気持ちを押し殺してここはグッと我慢する事にしよう。
「……………」
「ん? リュウ、どうかしたの?」
「いや、なんでもない。それよりも神社に来るなんて珍しいな、フラン。今日は一人できたのか?」
「そんな訳ないでしょ。幾ら太陽を克服しても妹様お一人を出歩かせる訳ないじゃない」
傍から呆れ果てたような声が聞こえ、その声の方を振り向いてみると其処には咲夜の奴が立っていた。
その手には座布団くらいの大きさの薄い箱が抱えられていて、表面にはなんとかゲームと書かれてある。
咲夜の持ち物……にしてはセンスがないし、恐らくフランの持ち物を彼女が運んだんだろう。
「あら、咲夜が来るなんて珍しいじゃない。レミリアの世話をしなくていいの?」
「これもお嬢様のご命令だから何の問題もないわ。それに貴女たちに聞きたい事があるのよ」
咲夜は大した事じゃないと言いたげにいうが、俺にはあんまり良い予感がしない。
また面倒な事に巻き込まれる。そんな気がして為らないからだ。
「俺達に聞きたい事ねぇ。……もしかして、屋敷の地下に作ってた小屋…じゃなくて、ロケットの相談か?」
「貴方にしては中々に良い勘をしてるわね。でも、それじゃ半分しか合ってないわ」
「それなら後の半分はなんなのよ。て言うか、ロケットってなんの事よ。私は初耳なんだけど」
「あら、そうなの? 少し長くなるけど一から説明しましょうか?」
「出来るだけ手短に頼むわ。そんなに興味もないし」
「そう。…なら掻い摘んで説明するわね」
そう言うと咲夜は霊夢の要望どおり、本当に掻い摘んで説明してきた。
月へ侵攻しようとしている八雲を嫌がらせするために、自分たちだけで月へと向かおうとしているが、肝心要のロケットの燃料がなくて困っているとの事だ。
咲夜の話しを聞いて思うところは多々あるが、予感どおりやっぱり面倒な事を企んでいやがった。
八雲への嫌がらせも、レミリアの月への侵攻も、ロケットの燃料も何もかもが如何でもいい。
やりたかったら自分達だけで勝手にやってくれってのが俺の素直な感想だ。
「―――と言った感じで、私は今ロケットの燃料になる〝三段の筒状の魔力〟を探しているのよ」
「「ふ~ん……。で、だからなに?」」
俺と霊夢が
俺達がどんな反応をするのか分かった上で尋ねるとか、流石はレミリアのメイドと言ったところだろうか。
「まぁ、貴方達ならそう言う反応をするのは分かったけど、少しくらい相談に乗ってくれても良いんじゃないかしら?」
「なんで妖怪退治の専門家である私が妖怪の手助けしないといけないのよ。第一、探してる物自体が意味不明じゃない」
「物凄く興味が無いからお前達だけで勝手にやってくれ」
「リュウは無理だとしても、霊夢には丁度良い暇潰しになると思ったのだけど…仕方が無いわね。正直、私も何を探せばいいのか分からないし」
「「……………」」
〝何を探せば良いのか分からない〟と笑いながら言ってくる咲夜を見て、俺と霊夢は呆れて言葉を失った。
相変わらずアイツ等の無茶振りは酷いが、それに応えようとする咲夜も咲夜で如何かと思う。
そんなヘンテコな魔力はないってはっきり突っ撥ねればいいのに、忠犬ここに極まる、だな。
「今、さらっと喧嘩を売られた気がするのだけど、気のせいかしら?」
「気のせいか、美鈴がお前の陰口を叩いてるかのドッチかだろ」
「それなら帰ったらあの子を折檻しないといけないわね。どうせサボっているでしょうし、丁度いいわ」
折檻が確定した美鈴に心の中で黙祷を捧げつつ、俺はこれ以上この話題に触れない事を決めたのだった。
それにしてもレミリアの我が侭の呆れを通り越して関心するよな。八雲に嫌がらせしたいなら別の方法を考えればいいだろうに。
あんな何もない空間に行っても退屈なだけだと思うが、この星から出た事の無い奴にそんな事が分かるわけないか。
「全く、自分でも何を探せばいいのか分からないのに、態々私たちに聞きに来るんじゃないわよ」
「妹様をお送りするついでよ。元々貴女たちに期待なんてしてないわ」
「……咲夜。アンタ本気で探す気はあるの?」
「これはお嬢様の望みでもあるのよ。本気で探してるに決まってるじゃない」
「その割にはやる気が微塵も感じられないわよ」
「あら、そんな事もないわよ。ただ、何を探せばいいのか分からなくてお手上げなだけ」
霊夢は呆れた様子で咲夜に一言申すが、当の本人は微塵も気にしてはいない様子だ。
あのレミリアの従者をやってるくらいだから、それなりに図太い神経なんだろうけど、この位でなきゃアイツの従者は務まらないと言う事なんだろうか。
「何を探せばいいのか分からないし、闇雲に探しても効率が悪いから、ヒントを得られれば良いくらいの気持ちで貴女たちに話しを持ちかけたのよ」
「それだったら考え方を変えて、船か航海の資料でも読み漁ってればいいだろ。俺等に聞きに来るよりかはずっとマシだ」
面倒な話しをさっさと切り上げたくて適当な事を言ってみたが、案の定咲夜から〝なにいってんだコイツ〟的な視線を向けられる。
「…貴方は一体何を言っているの? 海のない幻想郷でそんな物を調べても何の意味もないじゃない」
「だから考え方を変えろって言ったんだ。ロケットってのは
「……なるほど、確かに一理あるわね。幻想郷には海が無いからその辺りの事は失念していたわ。さっそくそのあたりの事を調べてみたいと……と言う訳で霊夢、航海の安全を祈願するお守りって売ってないかしら?」
「ウチの神社にそんなのあるわけないでしょ。海がないのに安全を祈願しても意味がないんだから」
「あら、そうなの。それじゃ船や航海に関係する神様っていないわけね」
「その位ちゃんといるわよ。住吉さんって呼ばれる三柱の神が…………あーッ!」
話の途中で何かに気がついたのか、霊夢は突然大きな声を挙げた。
余りにも突然の出来事に俺と咲夜は驚いてしまい、何時の間にか眠っていたフランが飛び起きてしまう。
「うわぁッ?! なに、何が起こったの!?」
「あ、起こしちゃったかしら。寝てるところ悪いわね、フラン」
「ん~……別にいいけど、何があったの?」
「別に大したことじゃないわ。ただ、咲夜が探している物の正体が分かったのよ」
「あら、本当? で、それは何処にあってどんな物なのかしら?」
咲夜が情報を聞きだそうと霊夢に詰め寄るが、霊夢は彼女を手で制して押し留めた。
「まず一つ訂正させて頂戴。私が見出した答えは神様の事で物じゃないわ」
「……神様?」
「えぇ、住吉さんとも呼ばれる三柱の神で、
霊夢は得意げに思い付いた方法を話すが、傍で聞いていた俺は余計な事を言うんじゃなかったと後悔している。
まさか神道の神に航海を司る奴が居るとは思わなかったし、霊夢が此処まで乗り気に為るとは予想もしてなかった。
確かにさっきも〝覚えた術を使いたい〟とは言ってたけど、こうも都合よく術を使う好機が巡ってくるとはな。
「海と航海の神様で、名前にも筒が入っている三体の神……。確かにこれならロケットを飛ばして、宇宙に進出することも夢じゃないわ。でも、どうやって住吉さんをロケットに乗せるか。其処が問題ね」
「それに関しては私が力を貸してあげても良いわよ?」
「あら、巫女なのに神様を捕縛するのに手を貸してくれるのかしら?」
「海のない幻想郷に住吉さんが居るわけないでしょ。…だから、私が新しく覚えた術を使って三柱の神をこの身に降ろし、アンタ達のロケットを飛ばしてあげるわ」
「此方としては有り難いけど……貴女の目的はなに? まさか只で手を貸してくるわけじゃないんでしょ?」
「別に大した理由も無いわよ。最近覚えた術を試してみたいってのが最大の理由だしね」
そう言う霊夢の言葉を咲夜は信じられなかったのか、目線で俺に〝本当のことなのか〟と尋ねてくる。
俺はそんな咲夜の視線に頷いて返事を返すと、彼女は少しの間考え込んだあと、霊夢に〝なら手を貸してもらうわ〟と言って承諾した。
「…ねぇリュウ。難しい話はもう終わった?」
「ん? まぁ、そうなるんじゃないか。…それで今日は何して遊ぶんだフラン」
「あのね、今日こうりんどうで変わったスゴロクを見つけたの! だから皆で遊ぼう!」
「スゴロクかぁ……。なんとなく霊夢が一人勝ちしそうな気がする」
「それはアレよ。リュウが実力で私を負かせばいいだけじゃない」
「…彼の予想を否定しない辺り、貴女も大概よね」
「何はともあれ、外でスゴロクなんてするもんじゃないし、とりあえず家に上がりましょうか」
咲夜から冷静なツッコミが入るが、霊夢はそれを軽く聞き流し何事もなかったかのように振舞う。
そんな霊夢の様子に俺と咲夜は呆れて小さな溜息を零すが、それも何時もの事なので余り気にはならなかった。
実際のところ、霊夢の強運があればスゴロクでも一人勝ち出来るだろうし、運に関しては本人も認めていることだし否定する要素が思いつかなかったんだろ。
「よっし! 今日は負けないからね霊夢!」
「はいはい。そのやる気が空回りしない程度に頑張りなさいね」
余ほど俺達をスゴロクするのを楽しみにしていたのか、フランはさっきからはしゃぎっ放しで、霊夢はそんな彼女を諭すように諫める。
フランは母屋に向かう霊夢について行き、俺と咲夜はそんな二人の後を追いかけて母屋へと向かう。
「…って、お前も参加するのかよ?!」
「あら、何か問題でもあるのかしら?」
「別に問題はないけど、直ぐにでもパチュリーに報告すると思っていたから」
「報告なら後でも問題はないし、妹様お一人を残すのも不安があるのよ」
「ふ~ん……。まぁ別にいいけど、霊夢が一人勝ちしても怒るなよ」
「子供じゃないんだから怒らないわよ」
咲夜は呆れた様子で言うが……数時間後、霊夢の強運に愕然とする彼女の姿があった事は言うまでも無い。