竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

14 / 212
第十四話 吸血鬼の戯れ

人里で暴れた人形を破壊した俺達は、その残骸を回収し森近さんの店に持って行く事にした。

霊夢曰く、コレは外の世界で作られた物じゃないし、幻想郷の物でもないそうだ。

だから〝未知のアイテムの名称と用途がわかる程度の能力〟を持つ森近さんに鑑定して貰う事になった。

用途については、あの暴走具合を見る限りだと戦闘用だと思うけどな。

まぁ、回収した道具をあの人の所に持って行かないと行けなかったし、丁度良いと言えば丁度良いんだけど。

 

「それじゃ行くわよ、リュウ」

「お~う」

 

大きな籠一杯の道具を持って、俺は霊夢の案内の元『香霖堂』へと向かった。

……霊夢と言えば、あの一件以来妙によそよそしくなったな。

普通に暮らしている分は大丈夫なんだけど、俺が近付くと〝近いッ!〟とか言って殴って来るんだよ……俺、何か悪い事したかな?

コレと言って思い当たる節は無いし、本人に聞いても〝なんでもない〟って返されるし。

ホント、幻想郷は謎に満ちているよな。……この場合、霊夢が謎なのか。

 

霊夢に案内されて歩く事、一時間弱。漸く森近さんの店に到着した。

飛んで行けば30分も掛からないらしいけど、俺はこんな重い物を持ったまま空を飛ぶ事が出来ない。

最初は飛んで行こうかと思っていたんだけど、荷物が重過ぎて上手くバランスが取れなかった。

 

そう言った事情から歩いて行く事になった訳だが……未完成だけど、頑張ってあの道を整備していた甲斐があったよ。

獣道のままだったら、物凄く歩き辛かったろうしな。

 

「こんにちわ。霖之助さん居る?」

「いらっしゃい霊夢。今日はリュウも一緒か」

「どもです。頼まれていた通り、道具を集めて来ましたよ」

「有り難う」

「そのガラクタ買い取る序でに、変な人形の鑑定もしちゃってよ」

「変な人形?」

 

俺は背負っていた大きな籠を店のカウンターに置いた。

籠の中には、古い本や黒い円盤状の何かに用途不明の箱なんかが有る。

幾つも入っている中で、一番の存在感を放っているのが例の人形だ。

そして、この中で一番重かったのもこの人形だ。……本当、何十㎏在るんだッてくらいに重かった。

 

「…た、確かに変な人形だね。これは如何したんだい?」

「この間『無名の丘』で暴れていたのを、私とリュウで倒したのよ」

「それで、この人形が異変の前兆だと困るから森近さんに鑑定して貰おうって事に」

「僕の能力は飽く迄、その道具の名称と用途を知るだけなんだけど……」

「でも、何も知らないよりはマシでしょ? だからお願いね」

「やれやれ。……君も苦労してそうだね」

「あ、あははは……」

「……其処は否定しなさいよ」

 

否定しろとか言われても、苦労してるのは事実だからね。

別にあの神社に居たくなくなる程じゃないけど、即答で否定出来ないんだよ。

 

「とりあえず、さっさと鑑定するから暫く待って居てくれ」

「手早くお願いね」

「……無茶を言わないでくれ」

 

森近さんはカウンターに置いた籠を抱えると、そのまま店の奥に引っ込んでいった。

俺達は鑑定が終わるまで暇なので、この店の売り物を覗く事にした。

 

 

 

………

……

 

鑑定が始まって既に一時間が経った。

霊夢は暢気にお茶を飲みつつ、店に置いてあった本を読んでいる。

一方俺は、この店の商品を片っ端から調べていた。

 

この店は外の世界の道具を取り扱っているから、色々と面白い道具を置いてある。

……とは言え、俺には殆どの商品の用途が分からず、見ては直ぐに他の物を手に取っている状態だが。

外の世界ってのは、幻想郷(ここ)とは違って科学技術が発展した世界なんだとか。

その為だろうか、この店に置かれている物や俺が見つけた物の殆どが、この世界の雰囲気に合わない物ばかりだ。

此処まで雰囲気に合わない物ばかりだと、外の世界とやらが如何なっているのか気になるな。

 

店の中を物色していると、突然店の扉が開いて誰かが入って来た。

霊夢は興味ないみたいだけど、俺は興味が湧き扉の方を覗き込んだ。

扉の前に居たのは、紅い屋敷の幼い主(レミリア)と銀髪のメイドだった。

 

「あら? 珍しい所で会ったわね、皇帝(カイザー)さん」

「……その呼び方止めて欲しいんだけど」

「だってコレが貴方の名前なんじゃないの?」

「俺の名前はリュウだ。それ以外のなにモノでもないよ」

「そう。……ところで、貴方達は何をしているのかしら?」

「俺達は―――」

「霖之助さんを待ってるのよ。アンタ達も買い物なら暫く待った方が良いわよ」

 

俺が答えようとしたが、それよりも先に霊夢が彼女の質問に答えた。

答えはしたけど、霊夢は相変わらず本を読んでいて、まともに彼女達の顔を見ていない。

流石にその態度にメイドは険しい表情になるけど、レミリアは特に気にしては居ない様子だった。

 

「そうなの。なら、私達も少し待ってようかしら」

「お嬢様、宜しいのですか?」

「構わないわ。…それよりも咲夜。何か面白い物が無いか捜して来なさい」

「畏まりました」

 

咲夜と呼ばれたメイドは、レミリアの無茶振りを二つで了承した。

珍品ぞろいの香霖堂だけど、我が侭な彼女を満足させられる様な物があるのだろうか?

と言うか、あんな無茶振りを二つ返事で了承出来る彼女は凄いと思う。

 

「それで、貴方は何をしてるのかしら?」

「…俺も君と同じで暇潰しの物を探してるんだよ」

「貴方と同じなんて心外ね。それじゃ、私が暇人みたいじゃない」

「……違うのか?」

「違うわよ」

 

う~む。レミリアの私生活なんて知る訳ないし、はっきり否定されると何も言えなくなるな。

でも、この子が何か仕事をしてるとは思えないんだよな。

あの屋敷でも、偉そうな椅子に座ってふんぞり返っているだけな気がするし。

 

「……貴方、今不愉快な事を考えなかった?」

「多分、気のせいだよ」

「そうかしら?」

「そうだよ」

「「………………」」

 

な、なんだこの妙な沈黙は。物凄く居心地が悪いぞ。

確かに不愉快にさせる様な事を考えたけど、それは心の中での事だし、聞かれたりしてない筈。

だと言うのに、この居心地の悪さ一体なんだ?! レミリアは心の中を読む事が出来るとでも言うのか!?

……微妙にキャラが崩壊してるから、一旦落ち着け俺。

 

「お嬢様。面白い物を発見しました」

「あら、何かしら? ……………ねぇリュウ。コレを食べてみる気は無い?」

「ん? どれだ?」

 

レミリアが俺に見せて来たのは『おじや』と書かれた箱だった。

……ただ、レミリアの持ち方が少し可笑しい。

幾らこの子が幼いとは言え、箱に書かれている文字を隠すように持つのは変だ。

と言うか、『おじや』と言う名前の物にあまり良い思い出が無いんだよな。

 

「……とりあえずだ。その箱をコッチに渡してくれないか?」

「いやよ。貴方は〝イエス〟か〝はい〟で答えなさい」

「それ拒否権ないよな?!」

「そんな事ないわよ。だから答えなさい」

「……なら〝ノー〟で」

「却下」

「「……………」」

 

コイツ、俺に何が何でもこの『おじや』を食べさせる気だ。

そんな事無いとか言いつつ、即答で却下して来たのが良い証拠だ。

……さて、如何する? このまま言い合いしていても勝てる気がしないぞ。

だからと言って、逃がしてくれる訳が無い……と言うか、既にメイドが『おじや』を用意してる。

マジで如何しよう……。何か上手く逃げられる手が思いつかないぞ。

 

「さぁ、早く食べなさいリュウ。嫌だと言うなら、無理矢理食べさせるわよ」

「くッ」

―ビリッ―

 

……今、何かが破ける音がしたけど、そんな事を気にしてる場合じゃないか。

既にメイドはスプーンを持ってスタンバイしてるし、レミリアは逃げられない様に臨戦態勢だし……万事休すか?

いや、案外アレは普通の『おじや』って可能性が……ある訳ないよな。

 

「全く、貴方も強情ね。……咲夜、やりなさい」

「承知しました、お嬢様」

「ちょっ、やめッ?!」

 

既に俺に逃げ場は無く、このまま嫌な予感しかしない『おじや』を食べる破目になるのかと思いきや―――、

 

「……君達、僕の店で何をしているんだ?」

「森近さん!?」

 

―――救いの主が店の奥から現われてくれた。

……ヤバイ。森近さんに光が差し込んで輝いている様に見える。

 

「チッ。空気の読めない奴ね」

「…? 意味が分からないのだが……」

「そんな事より森近さん! 鑑定の結果は?!」

「あ、嗚呼。……あの人形の名前は『バーサーカー』。用途は敵を殲滅する事だ」

「見たまんまの用途って訳ね」

「そうらしい。……ところで霊夢。その破けた本は買い取ってくれるんだろうね?」

「嫌よ。それにこの本は最初から破けていたわ」

「……そんな事は無かったと思うけどな」

 

あ、さっきの破けた音は霊夢が本を破いた音なのか。

何を思ってそんな事をしたのか知らないけど、流石に店の商品を破くのは不味いだろ。

 

「まぁ、それは兎も角して。リュウ、買い取った商品の決算をしたいんだが」

「はいはい」

 

俺は二人から逃げ出し、店のカウンターに近寄った。

それなりの量を持っていったから、あの竹竿が買える位の値段に為っている筈。

もし無理だったら……自作するしかないか。釣り糸と針くらいは買えるだろ。

 

「例の人形も含めると、一万円って所だね」

「……予想以上に高い」

「あの人形に使われている材質も珍しいし、制作技術も独特だからね。壊れていなかったらもっと高値で買い取りたい位だよ」

「それは止めておいた方が良いわよ。アレが暴走したら、霖之助さんじゃ一撃で死ぬだろうし」

「……そんなに危ない物なのかい?」

「えぇ。まぁ」

 

準備不足だったとは言え、霊夢一人でも倒し切れなかった相手だ。

この狭い店で暴走でもされたら、森近さんじゃきっと避け切れないだろうな。

 

「ところで霖之助さん。アレが何処で作られた物か分かる?」

「……少なくとも幻想郷や外の世界の物じゃないね。一番可能性が高いのは『魔界』だと思うけど」

「成る程ね……」

 

俺は『魔界』とやらは初めて聞いたけど、霊夢には心辺りがある様だ。

彼女の顔を見るとそれは分かるけど、なんであんなにも嫌そうな顔をしているんだ?

その後俺は、森近さんから代金を受け取った。

あの人形を手元に残しておく気の無かったので、他の道具と一緒に買い取ってもらう事に。

お金を貰った後、また二人に捕まる前に霊夢を連れて急いで帰る事にした。

手を繋いだ時、霊夢の顔が赤かった様な気がするけど……きっと気のせいだろ。

 




にじファンから読んでくれている方は分かると思いますが、ある意味この小説は霊夢がリュウに惚れてからが本番。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。