竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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毎度の事ながらサブタイに深い意味はありません。


第百四十一話 秋の終わり、冬の始まり

霊夢Side

 

最近秋も終わりに近付いてきたと感じる今日この頃。

今日はロケットの事前打ち合わせがあるとか何とかで、珍しくパチュリーが咲夜を連れて神社にやって来た。

普段から図書館に篭って屋敷の外に滅多に出ないくせに、こう言う時ばかりはちゃんと外に出てくるのね。

何の前触れもなくやって来た魔理沙も一緒にいるけど、コイツが突然ウチにやって来るのは何時もの事だし、余り気にしないでおこう。

本殿前でパチュリーからロケットの話を聞くけど、説明が長い上に覚える事も多いから話半分にしか聞いていなかったりする。

 

「ふぁ~……」

「それで、機体の揺れがある程度収まったら…って、貴女ちゃんと話しを聞いてる」

「あんまり。只でさえ住吉三神を降ろす為に夜遅くまで修行してるのに、朝早くからそんな小難しい話しをしに来ないでよ」

「ロケットの制御は貴女に掛かっているのだから、ちゃんと覚えてもらわないと困る」

「そんなのアンタが逐一教えてくれればいいじゃない」

「……私は乗らないから」

「なんでよ」

 

眼を逸らしながら逃げようとするパチュリーに、私は半目で睨みながら食い掛かる。

ロケット制作に1から携わってきたくせに、ここぞと言う時に関わろうとしないのなら、それなりの理由を言ってもらわないと。

 

「航海が成功するよう私は地上に残ってする事があるの。月まで導く魔法はロケットの外からしか出来ないから」

「ふーん。そんなの導きの専門家(てんぐ)にでも任せれば良いのに」

「〝外〟の世界のロケットにも地上に残るナビゲーターが必要らしいのよ」

 

今の話を聞く限りだと、私が良く使うホーミング弾と似た様な原理でつきまで導く気かしらね。

私がロケットを動かす動力で、パチュリーはロケットをコントロールする導き手って訳か。

乗らない理由はそれ以外にもありそうだけど、幾つも思い当たる節があるから詮索するだけ時間の無駄ね。

 

「しかし、そう言うのは貧乏くじを引いた奴がやりそうな仕事だよな」

「確かにくじ運悪そうよね、アンタ」

「……今年は末吉だった。此処のおみくじ」

 

パチュリーは少し悔しそうな顔で呟くけど、私は彼女の言葉に若干の違和感を覚えた。

 

「あれ、ウチの神社に末吉なんて入ってたっけ? 大吉とはずれくらいしか見た事無いけど」

「それならわたしが暇潰しに入れておいたぜ。末吉とか大はずれとかな」

「アンタ、よくリュウに見付からずに悪戯できたわね」

「いいや、アイツには作業してる途中でバレちまったぜ。その後で中身の整理とかしてた筈だけど……全部取り切れずにちょっと残ってたんだろ。ある意味運がいいぞ」

「「……………」」

 

悪びれる様子も無く言う魔理沙に、私とパチュリーは二人して呆れてしまった。

確かに言われてみると、去年の冬頃にリュウが一人でおみくじの整理をしていた様な気がする。…アレってそう言うことだったのね。

いつもの事と言えばそれまでなんだけど、なんだってそんな地味な悪戯を仕込んでたのよ。

末吉はまだ良いとしても、大はずれって何よ、せめてそこは大凶とかにしておきなさい。

 

「…とりあえず、手順は本に纏めておいたけど、間違わない為にも説明を聞きなさい」

「霊夢に魔術書なんて読めないと思うぜ」

「と言うよりも読まないし、説明も真面目に聞く気はない」

「……咲夜が読めるようにルビでも振っておこうかしら」

 

パチュリーは呆れて溜息を付くように呟くけど、如何したら私が魔術書なんてものを読むと思ったのか聞きたい。

ただでさえ魔術なんてものに興味が無いのに、それを纏めた本を読むわけ無いじゃないの。

私からしたらあんなのは文字を羅列させただけの意味不明なものでしかないわよ。

そんな風なことを考えていたら、突然パチュリーが何かを思い出したかのように私に話しかけてくる。

 

「ところで霊夢。彼はロケットに搭乗する気はあるのかしら?」

「彼って……もしかしなくてもリュウの事?」

「えぇ。ぜひ彼にも乗ってもらいたいのだけど」

「それは無理ね。アイツは月に行く事に興味はないし、一緒に乗ったら計画自体が破綻するわ」

「彼一人を乗せたくらいで破綻するような計画ではないわ。私が入念に計算したのだから」

 

パチュリーは少し怒った様な顔で反論してくるけど、私は首を横に振って真っ向から否定する。

 

「あんたの計画に不備がある訳じゃないわ。ただアイツの方にちょっと問題があるってだけの事よ」

「…? それはつまり、彼が乗り物に乗ると墜落してしまうと言う事?」

「そう言う事じゃないんだけど、アイツが傍にいると〝神降ろし〟は成功しないのよ」

「…??」

 

私の言葉の意味を理解出来ないのかパチュリーは首をかしげ、傍にいる魔理沙と咲夜も不思議そうな顔をしている。

アイツの本質を理解していれば解る事だけど、この幻想郷でその事を知っている方が少ないか。

ちゃんと理解してるのは私を筆頭に、龍神であるたっちゃんと紫にその式、それに衣玖と神々と言った所かしら。

魔理沙も知っているのかと思ったけど、あの様子だと〝強大な力を持った竜〟程度にしか思って無さそうね。

まぁ、アイツは自分の力を周りに言いふらす様な奴じゃないし、変身自体滅多に使わないから知らないのも仕方が無いのか。

 

「貴女の言っている事は良く分からないけど、彼に乗る気が無いと言う事だけは分かったわ」

「それだけ分かれば十分よ」

「でもよ、なんでリュウが一緒だと術が発動しないんだ? もしかして、アイツが傍にいると霊夢が集中出来ないとかか?」

「そんなんじゃないわよ。只単にアイツが居ると神様が恐がって逃げ出して行くのよ」

「……神様が恐がるって一体如何言う事だよ。普通は逆じゃね?」

「アイツにも色々とあんのよ。まぁ、如何してもアイツを連れて行きたいのなら、神々がリュウを認識できないようにするしかないわね」

「あら、そんな方法で良いの? なら一応考えておいて見るわ」

「面白そうだからわたしにも一枚かませろ」

 

冗談半分で言ってにも関わらず、パチュリーと序でに魔理沙は本気で考え始めてしまった。

昔にも似た様な事をしてボコボコにされたのに、二人して全く懲りていないらしい。

呆れ果てている私を無視して、二人は神社で魔術談議を繰り広げているけど……そう言うのはもっと別の場所でやって欲しいわね。

 

 

霊夢Side out

 

 

 

 

 

リュウSide

 

霊夢が修行中と言う事で、暇潰しに『妖怪の山』から流れる川で龍神と釣りをしている。

最初は俺一人だったんだが、何処からか嗅ぎ付けたらしく、龍神が釣竿を持っていきなり押し掛けてきた。

喧しい氷精とかだったら追い払うんだが、龍神なら特に問題も無いだろうと言う事で、珍しく二人でのんびりと釣りを楽しんでいる。

今日の釣果は今のところ微妙だけど、大量に釣れても食べ切れる訳でもないし、何も釣れないよりはマシだろう。

そんな事を考えながら釣りを楽しんでいたら、何の前触れもなく背筋が粟立ち悪寒の様なものを感じ取った。

 

「うおっ?! なんだ、今変な悪寒が走ったぞ」

「風邪でも引いたのではないか? 妾達が居るのは川辺じゃし、今は季節の変わり目じゃからの」

「おいおい。俺が風邪を引くような奴に見えるのか?」

「見えはせんが、お主が絶対に風邪を引かぬと誰が決めたのだ?」

「……誰かが決めるような問題でもないだろ」

 

呆れて溜息を吐いていると、釣り糸が何かに引っ張られ、川に浮んでいるウキが勢い良く沈んだ。

沈んだタイミングに合わせて竿を引き、その勢いのまま掛かった魚を手元にまで引っ張り上げる。

 

「はぁ~……。相も変わらず上手い事魚を釣るのぉ~……」

「ポンポン釣れている訳じゃないから普通だと思うがな」

 

そう言いつつ、俺は魚の口に引っ掛かっている針を抜いて、龍神が用意した大きな籠の中に放り込む。

籠には半分くらいにまでの深さに水が入っていて、中には既に釣り上げた魚が何匹が泳いでいる。

この籠を用意した龍神の話だと、外の世界に有る水漏れする事のない便利な籠なんだとか。

どうやってこんな物を用意したのか聞こうとしたが、翌々思い出してみると龍神は大結界を無視して自由に移動出来るんだし、外の世界で籠一つ買うのに何の苦労も無いだろ。

 

「ところで龍神。あの鞘を破壊する方法は見付かったのか?」

「いいや、全然。須臾(しゅゆ)の紐なんぞで出来ておるから、妾と天照では如何する事も出来ん」

「アレが紐で出来ているのは知っているが、須臾って如何いう意味だ?」

「須臾と言うのは数字の単位の事で、分かり易く言うと1000兆分の1の事じゃな。つまりそれは、眼に見えぬほどに細い繊維が幾重にも編みこまれて出来ておる訳じゃ」

「そんな細いものをよく編みこめたもんだな」

「その辺りはあ奴等の技術力の賜物と言ったところじゃろ。それにな、須臾で出来た紐は余計な不純物が一切含まれない上に、決して腐る事なく、恐ろしいまでの頑強さを誇るのじゃよ」

「恐ろしいまでの頑強さ…ねぇ」

 

何処か感心したような口調で言う龍神に対して、俺はその発言に呆れて一言呟き、叢雲を取り出して龍神に鞘を見せる。

 

「ん? 一体何のつもりじゃ?」

「いいからよく見てみろ」

「…??」

 

龍神は首を傾げながらも叢雲を手に取り、入念に鞘を観察し始める。

最初の内は怪訝そうな顔をしていたが、鞘に出来た傷を見つけた途端に目を丸くして驚きを顕わにする。

 

「お、お主、この傷はどうやって付けたんじゃ!?」

「その鞘にアンフェニの力を纏わせたらなんか出来てた」

「出来てたって……いや、まぁ確かに無限とも言えるあの力ならば可能じゃろうが、相変わらず出鱈目じゃな」

「悪かったな出鱈目で。俺だって好きでこんな力を持って生まれた訳じゃねぇよ」

「まぁ、それはそうじゃろうな。…しかし、コレを壊す光明が見えたというのに、何故未だに鞘を付けておるのじゃ? こんなもんさっさと壊せばよいじゃろ」

「…幻想郷の結界が如何なってもいいなら今此処で壊してやるが?」

「すまん、結界を壊すのだけは勘弁してくれ」

「そう言うと思って、今までソレを力尽くで壊さずにいたんだよ」

 

吐き捨てるように俺がそう言うと、龍神は申し訳なさそうな顔をする。

別にそんな顔をして欲しくて言った訳じゃないんだが、龍神にも多少は思うところがあるだろうから黙っておく。

アンフェニの力を解放しただけで壊れる様な結界じゃないと思うけど、封印を壊すほどの力を纏わせでもしたら、結界に多少の影響は出るだろうな。

その事を考えれば龍神も許可を出すわけにも行かないだろうし、八雲の奴も黙っちゃいないだろ。

 

「そ、そう言えば竜よ。此処最近、霊夢の奴が〝神降ろし〟の術の修行をしておるようじゃが、順調に進んでおるのか?」

「ん~……あんまり近くで見てないからなんとも言えないが、アイツの事だから順調なんじゃないのか?」

「そうではなくてだな。お主が傍に居てもちゃんと術を使えておるのかと聞いておる」

「結界で俺の姿を隠しておけば呼ぶことは出来るみたいだぞ」

「それでは戦いとなった時に使えぬではないか。何を考えて居るんじゃおぬし等は」

「んな事言われてもよ、大概の神は俺の姿を見た途端に逃げ出すんだから仕方がねぇだろ」

「……その辺りは因果応報としか言えぬのぉ。全て過去のお主の所為な訳じゃし」

 

呆れた様な顔で呟きながらも、龍神は何処と無く納得した様な雰囲気を醸し出している。

非情に遺憾な事だが、コイツの言う通り過去の俺の所為だから文句を言う事すら出来ない。

色々と派手に暴れていたそうだからな、変な噂が広まっていても不思議じゃないだろ。

 

「俺からしたら、何千年も前の事なんだしさっさと忘れろと言いたいんだが」

「あれだけ派手に暴れておったら難しいじゃろうな」

「だとすると、霊夢の〝神降ろし〟は俺と一緒だと使えない術に為る訳か」

「使う手段があるとすれば、お主の戦闘力を一時的に封印するか、お主と友好のある神族を呼ぶしかあるまい」

「……そんな奴がいるのか? 大半の奴に敵視されてると思ってたんだが」

「数える程度しか居らぬが一応何人かおるぞ」

「宴会にきてた連中の事か」

「あ奴等以外にも居るぞ。……まぁ、本当に数える程度しか居らんがな」

 

俺から眼を逸らしながら話をしていると、龍神のウキが勢い良く沈み、何かが掛かった事を知らせてきた。

話を中断した龍神は釣竿を引き、針に引っ掛かった一匹の魚を釣り上げる。

手元に引き寄せた魚から針を取り外しつつ、龍神はさっきの話の続きを教えてくれた。

 

「アチコチで暴れ回ったが、お主のお陰で助けられた事も幾度かあったからな。少なくとも上位神はお主を毛嫌いしておる訳ではないぞ」

「俺のお陰で助けられたって……世界に害なす邪神を葬ったとか、そんな理由か?」

「その通りじゃが、記憶が無いのに良く分かったな」

「なんとなくそんな気がしてな。でもその理由だと、影で便利屋扱いされてそうだな」

「確かにそう陰口を叩く輩もおったが、その時は妾と天照が出向いて説教していたぞ」

「龍神はまだ分かるんだが、天照もなのか? なんか意外だ」

「アヤツの場合は、受けた恩を仇で返す様な真似が気に入らんかったのじゃろう。お主と違って礼節は確りしておるからな」

「お前にそんな風な事を言われるのが凄く腹立つのは何故だろうか」

「さてのぉ。自分の胸に手を当ててじっくり考えるが良い」

 

龍神はからかいながらそう言って、自分が釣った魚を籠の中に放り込んだ。

俺はあの物言いに苛立ちを感じながらも、込み上げて来るのをグッと胸に仕舞い込む事にした。

 

「どちらにせよ、今の霊夢では上位神を呼ぶのは少々力不足ではあるし、今のまま修行するのも悪くは無いじゃろう」

「……でも思うんだが、あの霊夢が神の力を借りてまで戦わなきゃいけない相手っているか?」

「お主……では返り討ちに遭うのは目に見えておるか。第一アヤツが求めて居るのは、竜と共に戦う事の出来る力じゃからな。そうなると…………何かおったかのぉ?」

「大概の敵は俺と霊夢が力を合わせれば勝てるし、切り札としてアンフィニを解放すれば良いだけの事だしな」

「霊夢は能力で無敵になれるから、お主が全力で暴れても巻き込まれる心配もあるまい」

「だとすると、ここまでする理由が本当にあるのか疑問になってくるな。世界を滅ぼすようなとびっきりの化け物が出て来るなら話は別だけど」

「えぇい、さらっと恐ろしい事を言う出ない。そんなのが出て来たら、幻想郷始まって以来の大惨事になるではないか」

 

二人してトンでもない事を話していると言う自覚はあるが、実際にその通りなんだから仕方がない。

 

「俺だって勘弁して欲しいが、神の力を借りた霊夢と全力の俺が一緒に戦うなんて、この位の相手でないとまずありえないだろ?」

「……まぁその通りなんじゃがな」

「「………………」」

「とりあえずだ龍神、この話は霊夢の前では絶対にしないでおこう」

「うむ、それが良いじゃろう。力を鍛えて損をする事も無いじゃろうし」

 

龍神がそう言って締め括ると、俺達は同時に川に糸を投げ入れて釣りを再開した。

今日此処で話したことは出来るだけ早く忘れる事にして、今まで通り霊夢の修行を影ながら見守る事にしよう。

俺は川に浮ぶウキを眺めながら、心の中で自分に忘れるように言い聞かせていた。

 

リュウSide out

 

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