竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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第十五話 紅魔館の図書館

 

夏も終わりに近付き、季節はそろそろ秋の装いと為り始めた。

未だ残暑は続いているものの、木々の色づきや日暮れを見ていると、もうすぐ秋なんだと思い知らされる。

そんな中でも博麗神社は何時もと変わらず、俺と霊夢は母屋の縁側でお茶を啜っていた。

 

「……もうすぐ秋だな」

「そうね」

「秋って何かあったけ?」

「落ち葉が大量に出るから、掃除頑張ってね」

「霊夢もやれよ」

「……最近のリュウって、私に対する言葉遣いが荒くない?」

「そんな事は無い。仮にそうだとしても、それは霊夢に心を許し始めた証だと思う」

「……そう言う事にしておくわ」

 

他愛の無い話をしつつ、俺達は手元にあるお茶を啜る。

神社への山道も大体出来たし、今はコレと言ってする事が無い。

この間納品で、予想以上にお金も入ったし、釣竿でも買って何処かに釣りに行っても良いかもな。

頭の中ではそんな事を考えているんだけど、なんとなく神社でまったりとしていた。

別に動きたくない訳じゃないんだが、此処最近は道具蒐集や山道整備で動いてたからな。

偶にはこうしてノンビリしても良いよな。

 

「よっ、ご両人。遊びに来てやったぜ」

「「帰れ」」

「……いきなりヒデェな、おい」

 

縁側でのほほんとしていたら、いきなり魔理沙がやって来た。

前に来た時も唐突だったけど、今回も唐突に来たな。……まぁ、事前に連絡を取る手段がないんだし、来るのが唐突に為るのは仕方が無いのか。

でも、前みたいに『マスタースパーク』を撃たれるのは嫌だなぁ。

 

「で、今日は何しに来たのよ。魔理沙」

「いやな。この前の紅い霧異変の事を聞きたくて」

「……アレって随分前な気がするけど」

「まだ一月も経ってないぜ」

「そうだったけ?」

「そうみたいね」

 

ホントに最近は色々と動いていたからな、時間の感覚が少し可笑しくなってるみたいだ。

……それにしても、魔理沙も行き成りへんな事を聞いて来るな。

あの異変の事を聞いたって、特に面白い事なんかないと思うぞ。

 

「アンタも物好きね。アレは只の異変よ」

「話す位別に良いだろ。わたしは現場に立ち会えなかったんだし」

「まぁ、別に良いけどね」

 

個人的には余り話したくないけど、霊夢が良いなら別に良いか。

 

 

 

 

………

……

 

多少ボカしつつ、霊夢はあの異変の事を魔理沙に教えた。

ボカした部分は、主に俺の力の事だ。

幻想郷(ここ)で暮らしていれば、何れはバレると思うけど……別に話さなくても良い事か。

それに本物の神様も居る幻想郷だ。竜の一体が神社に住み着いても問題はないだろう。

 

「あの異変の事はこれで全部よ」

「吸血鬼の住む館かぁ……。なんかお宝とかあるのかな?」

「知らないわよ、そんなの」

「……お宝か如何かは知らないけど、あの屋敷の地下に大量の本が在ったな」

「大量の本って……地下に図書館が在るって事?」

「そう言う事。なんの本かは知らないけど」

「地下の図書館か。……こりゃお宝の匂いがするぜ! リュウ、案内頼む!!」

「……へっ?」

 

突然の出来事で、何が起こったのか把握するのに時間が掛かった。

とりあえず、俺は魔理沙に拉致された事だけは理解出来た。

……うん。如何してこうなった? 別に俺を連れて行く必要なんて無いよね?

 

「ちょっと魔理沙?! 勝手にリュウを連れて行かないでよ!!」

「少し借りるだけだぜ!!」

「俺は物じゃねぇぇぇぇッ!!」

 

必至の叫びも空しく、俺は魔理沙に腕を引っ張られたまま空を飛ぶ羽目に為った。

しかし、俺を引っ張って空を飛べるなんて、魔理沙って意外と力が強いのかも。

 

 

 

………

……

 

魔理沙に引っ張られるまま、俺は再び紅魔館へとやって来た。

一応、逃げ出そうと抵抗はしたものの……脅されてあえなく屈服してしまった。

……ゼロ距離でマスパを放つとか、幾らなんでも酷いと思うんだ。

今回はトランスする暇がなかったから、既にボロボロです。……物凄く帰りたい。

 

「此処が紅魔館かぁ~。思ったよりもデカイな」

「そうだな……」

「ん? 如何したリュウ?」

「いや、門番なのに門を見張ってないって如何言う事なのかと」

「きっと昼寝の時間なんだろ」

「……それで良いのか紅魔館」

 

正直な話、前回みたいに門番が立ちはだかると思っていたんだけど、寝てるって如何言う事だよ。

個人的には、門番が俺達を撃退してくる事を期待してたのにな~。

……あ、魔理沙に迎撃されるに決まってるか。じゃあ、此処に居る門番の意味って一体……。

 

「それじゃ、図書館への道案内頼むな」

「……へ~い」

 

物凄くげんなりしながら、俺と魔理沙は紅魔館に侵入した。

屋敷の中は相変わらず紅いが、そんな事は気にしていられない。

あのメイドと主に出くわす前に、さっさと図書館に魔理沙を置いてこないと。

 

「へぇ~。外だけじゃなくて、中も紅いとか悪趣味だな」

「確かに此処まで紅いと、他の色が欲しくなるな」

「例えば何色だ?」

「例えば…………白とか?」

「それだったら目出度い感じになりそうだな」

「そうなのか?」

 

あの世界で紅白が目出度いって風習は無かったと思う。

……と言うか、ずっと戦い続けていたからそう言うのは良く分からないな。

そう考えると、かなり寂しい人生を送ってたんだな俺。

 

「……はぁ」

「如何したリュウ? 恋わずらいか?」

「なんでそうなるのさ」

「其処は乗って来いよ。つまらないな」

「……じゃあ、俺が告白したら如何する心算だ?」

「ごめんなさい。わたし達、良いお友達で居ましょう」

「うん。そう来ると思ったよ」

「お、リュウもわたしの付き合い方が分かって来たな」

「……出来る事なら解りたくなかった」

「酷いなおい」

 

俺は魔理沙を適当にあしらいつつ、地下にある階段を目指した。

その道中で、この屋敷の妖精メイド達が襲って来るけど……特に気にはしない。

大抵は魔理沙が一人で蹴散らして行くから、俺が出る幕が無いんだよ。

 

 

……

 

メイド相手に暴れる魔理沙を引き攣れ、俺は地下の図書館までやって来た。

図書館は相変わらず大量の本があって、少々たじろいでしまう。

コレだけの本を一体何年掛けて集めたのやら。あのパチュリーって奴は凄いな。

 

「おぉッ! こんな所にこんなにも本が有るなんて知らなかったぜ!!」

「満足したか魔理沙? それじゃ俺はこの辺で」

「まぁ、待てよリュウ。もう少しわたしに付き合えって」

「いや、霊夢も待ってるだろうし、早いとこ帰りたいんだけど」

「……知ってるかリュウ。門限ってのは破る為にあるんだぜ?」

「それ、絶対に違うからな」

 

魔理沙は俺のツッコミを無視して、本棚にある本を物色し始めた。

このまま帰ってしまおうかと思ったけど、地下に変な力が居るのを感じる。

前に来た時は感じなかったのに、今になって如何して?

俺の持っている竜の力とも違うし、ただの妖怪……にしてはかなり異質だな。

 

「其処で何をしているんですか?」

「ん?」

 

何処からか感じる力に関して考えていると、右の方から女性に声を掛けられた。

この屋敷の住人とは大体会った心算だったけど、この声は初めて聞いたな。

初対面の相手だし、此処はちゃんと自己紹介をしておかないとな。

そう思った俺は、彼女の方を振り向いた。

其処に居たのは、白い長袖のシャツに袖のない黒のブレザーに、黒のロングスカートを穿いた、頭と背中に黒い羽を持つ赤い髪の悪魔だった。

……いや、吸血鬼の屋敷だし悪魔が居ても可笑しくないよな。

 

「あの~……」

「あっと、俺はリュウ。此処には…………あれ? 何しに来たんだ? 魔理沙に案内してくれって頼まれただけだしな」

「魔理沙って、さっきから本を物色している魔法使いの事ですか?」

「そうそう。ホント、何をしに此処に来たのやら」

 

魔理沙に何をしに来たのか聞こうと思い、彼女の方を見てみると……既にその姿は無かった。

流石にもう帰ったって事は無いだろうけど、何処に言ったんだアイツ?

辺りと見てみるが、魔理沙の姿はない。あの悪魔も見ていたから、さっきまで居たのは間違いないんだが……。

 

「ちょっと其処の白黒。私の図書館で何をしているのよ」

「少し借りるだけだぜ」

「この図書館は貸し出し禁止よ」

「ちょっとだけなら良いじゃないか」

「駄目よ」

「そうか。……だったら、力付くで借りて行くぜ!」

「今日は喉の調子が良いから、全力で撃退してあげる」

 

……此処からじゃ姿は見えないが、如何やらパチュリーと戦う気の様だ。

魔理沙の魔法もそうだけど、パチュリーの魔法も結構派手だからな。……此処に居たら確実に巻き込まれるな。

 

「…あの、悪魔さん。何処か安全な場所はない?」

「では、こっちへどうぞ」

「お願いします」

 

俺は悪魔の少女に連れられて、この図書館から逃げ出した。

あの二人も弾幕ごっこに巻き込まれるなんて、堪ったもんじゃないからな。

レミリアや銀髪メイドと出くわす事になるかも知れないけど、図書館に残っているよりはマシだろ。

 

 

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