夏も終わりに近付き、季節はそろそろ秋の装いと為り始めた。
未だ残暑は続いているものの、木々の色づきや日暮れを見ていると、もうすぐ秋なんだと思い知らされる。
そんな中でも博麗神社は何時もと変わらず、俺と霊夢は母屋の縁側でお茶を啜っていた。
「……もうすぐ秋だな」
「そうね」
「秋って何かあったけ?」
「落ち葉が大量に出るから、掃除頑張ってね」
「霊夢もやれよ」
「……最近のリュウって、私に対する言葉遣いが荒くない?」
「そんな事は無い。仮にそうだとしても、それは霊夢に心を許し始めた証だと思う」
「……そう言う事にしておくわ」
他愛の無い話をしつつ、俺達は手元にあるお茶を啜る。
神社への山道も大体出来たし、今はコレと言ってする事が無い。
この間納品で、予想以上にお金も入ったし、釣竿でも買って何処かに釣りに行っても良いかもな。
頭の中ではそんな事を考えているんだけど、なんとなく神社でまったりとしていた。
別に動きたくない訳じゃないんだが、此処最近は道具蒐集や山道整備で動いてたからな。
偶にはこうしてノンビリしても良いよな。
「よっ、ご両人。遊びに来てやったぜ」
「「帰れ」」
「……いきなりヒデェな、おい」
縁側でのほほんとしていたら、いきなり魔理沙がやって来た。
前に来た時も唐突だったけど、今回も唐突に来たな。……まぁ、事前に連絡を取る手段がないんだし、来るのが唐突に為るのは仕方が無いのか。
でも、前みたいに『マスタースパーク』を撃たれるのは嫌だなぁ。
「で、今日は何しに来たのよ。魔理沙」
「いやな。この前の紅い霧異変の事を聞きたくて」
「……アレって随分前な気がするけど」
「まだ一月も経ってないぜ」
「そうだったけ?」
「そうみたいね」
ホントに最近は色々と動いていたからな、時間の感覚が少し可笑しくなってるみたいだ。
……それにしても、魔理沙も行き成りへんな事を聞いて来るな。
あの異変の事を聞いたって、特に面白い事なんかないと思うぞ。
「アンタも物好きね。アレは只の異変よ」
「話す位別に良いだろ。わたしは現場に立ち会えなかったんだし」
「まぁ、別に良いけどね」
個人的には余り話したくないけど、霊夢が良いなら別に良いか。
………
……
…
多少ボカしつつ、霊夢はあの異変の事を魔理沙に教えた。
ボカした部分は、主に俺の力の事だ。
それに本物の神様も居る幻想郷だ。竜の一体が神社に住み着いても問題はないだろう。
「あの異変の事はこれで全部よ」
「吸血鬼の住む館かぁ……。なんかお宝とかあるのかな?」
「知らないわよ、そんなの」
「……お宝か如何かは知らないけど、あの屋敷の地下に大量の本が在ったな」
「大量の本って……地下に図書館が在るって事?」
「そう言う事。なんの本かは知らないけど」
「地下の図書館か。……こりゃお宝の匂いがするぜ! リュウ、案内頼む!!」
「……へっ?」
突然の出来事で、何が起こったのか把握するのに時間が掛かった。
とりあえず、俺は魔理沙に拉致された事だけは理解出来た。
……うん。如何してこうなった? 別に俺を連れて行く必要なんて無いよね?
「ちょっと魔理沙?! 勝手にリュウを連れて行かないでよ!!」
「少し借りるだけだぜ!!」
「俺は物じゃねぇぇぇぇッ!!」
必至の叫びも空しく、俺は魔理沙に腕を引っ張られたまま空を飛ぶ羽目に為った。
しかし、俺を引っ張って空を飛べるなんて、魔理沙って意外と力が強いのかも。
………
……
…
魔理沙に引っ張られるまま、俺は再び紅魔館へとやって来た。
一応、逃げ出そうと抵抗はしたものの……脅されてあえなく屈服してしまった。
……ゼロ距離でマスパを放つとか、幾らなんでも酷いと思うんだ。
今回はトランスする暇がなかったから、既にボロボロです。……物凄く帰りたい。
「此処が紅魔館かぁ~。思ったよりもデカイな」
「そうだな……」
「ん? 如何したリュウ?」
「いや、門番なのに門を見張ってないって如何言う事なのかと」
「きっと昼寝の時間なんだろ」
「……それで良いのか紅魔館」
正直な話、前回みたいに門番が立ちはだかると思っていたんだけど、寝てるって如何言う事だよ。
個人的には、門番が俺達を撃退してくる事を期待してたのにな~。
……あ、魔理沙に迎撃されるに決まってるか。じゃあ、此処に居る門番の意味って一体……。
「それじゃ、図書館への道案内頼むな」
「……へ~い」
物凄くげんなりしながら、俺と魔理沙は紅魔館に侵入した。
屋敷の中は相変わらず紅いが、そんな事は気にしていられない。
あのメイドと主に出くわす前に、さっさと図書館に魔理沙を置いてこないと。
「へぇ~。外だけじゃなくて、中も紅いとか悪趣味だな」
「確かに此処まで紅いと、他の色が欲しくなるな」
「例えば何色だ?」
「例えば…………白とか?」
「それだったら目出度い感じになりそうだな」
「そうなのか?」
あの世界で紅白が目出度いって風習は無かったと思う。
……と言うか、ずっと戦い続けていたからそう言うのは良く分からないな。
そう考えると、かなり寂しい人生を送ってたんだな俺。
「……はぁ」
「如何したリュウ? 恋わずらいか?」
「なんでそうなるのさ」
「其処は乗って来いよ。つまらないな」
「……じゃあ、俺が告白したら如何する心算だ?」
「ごめんなさい。わたし達、良いお友達で居ましょう」
「うん。そう来ると思ったよ」
「お、リュウもわたしの付き合い方が分かって来たな」
「……出来る事なら解りたくなかった」
「酷いなおい」
俺は魔理沙を適当にあしらいつつ、地下にある階段を目指した。
その道中で、この屋敷の妖精メイド達が襲って来るけど……特に気にはしない。
大抵は魔理沙が一人で蹴散らして行くから、俺が出る幕が無いんだよ。
……
…
メイド相手に暴れる魔理沙を引き攣れ、俺は地下の図書館までやって来た。
図書館は相変わらず大量の本があって、少々たじろいでしまう。
コレだけの本を一体何年掛けて集めたのやら。あのパチュリーって奴は凄いな。
「おぉッ! こんな所にこんなにも本が有るなんて知らなかったぜ!!」
「満足したか魔理沙? それじゃ俺はこの辺で」
「まぁ、待てよリュウ。もう少しわたしに付き合えって」
「いや、霊夢も待ってるだろうし、早いとこ帰りたいんだけど」
「……知ってるかリュウ。門限ってのは破る為にあるんだぜ?」
「それ、絶対に違うからな」
魔理沙は俺のツッコミを無視して、本棚にある本を物色し始めた。
このまま帰ってしまおうかと思ったけど、地下に変な力が居るのを感じる。
前に来た時は感じなかったのに、今になって如何して?
俺の持っている竜の力とも違うし、ただの妖怪……にしてはかなり異質だな。
「其処で何をしているんですか?」
「ん?」
何処からか感じる力に関して考えていると、右の方から女性に声を掛けられた。
この屋敷の住人とは大体会った心算だったけど、この声は初めて聞いたな。
初対面の相手だし、此処はちゃんと自己紹介をしておかないとな。
そう思った俺は、彼女の方を振り向いた。
其処に居たのは、白い長袖のシャツに袖のない黒のブレザーに、黒のロングスカートを穿いた、頭と背中に黒い羽を持つ赤い髪の悪魔だった。
……いや、吸血鬼の屋敷だし悪魔が居ても可笑しくないよな。
「あの~……」
「あっと、俺はリュウ。此処には…………あれ? 何しに来たんだ? 魔理沙に案内してくれって頼まれただけだしな」
「魔理沙って、さっきから本を物色している魔法使いの事ですか?」
「そうそう。ホント、何をしに此処に来たのやら」
魔理沙に何をしに来たのか聞こうと思い、彼女の方を見てみると……既にその姿は無かった。
流石にもう帰ったって事は無いだろうけど、何処に言ったんだアイツ?
辺りと見てみるが、魔理沙の姿はない。あの悪魔も見ていたから、さっきまで居たのは間違いないんだが……。
「ちょっと其処の白黒。私の図書館で何をしているのよ」
「少し借りるだけだぜ」
「この図書館は貸し出し禁止よ」
「ちょっとだけなら良いじゃないか」
「駄目よ」
「そうか。……だったら、力付くで借りて行くぜ!」
「今日は喉の調子が良いから、全力で撃退してあげる」
……此処からじゃ姿は見えないが、如何やらパチュリーと戦う気の様だ。
魔理沙の魔法もそうだけど、パチュリーの魔法も結構派手だからな。……此処に居たら確実に巻き込まれるな。
「…あの、悪魔さん。何処か安全な場所はない?」
「では、こっちへどうぞ」
「お願いします」
俺は悪魔の少女に連れられて、この図書館から逃げ出した。
あの二人も弾幕ごっこに巻き込まれるなんて、堪ったもんじゃないからな。
レミリアや銀髪メイドと出くわす事になるかも知れないけど、図書館に残っているよりはマシだろ。