竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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第百六十八話 竜神神社

天人の暇潰しによって引き起こされた地震に、勝手に改造された神社を解体などを経て、博麗神社の再建は漸く完了した。

あの小娘は神社を建て直す際に、神社の床下に要石なる物を無断で埋め込んでいたらしく、八雲はその辺りの事でも切れていたようだ。

恐らく自分の所の神社と縁を結ぶ為に埋めたのだろうが、勝手にあんなデカイ漬物石を埋め込まれても困る。

俺は目障りな石を取り除こうとしたが、龍神曰くこの石は小娘の家系にしか抜けず、無理やり抜くと大災害が発生するからやめた方が良いとのことだ。

数億年前の昔はこの大地にも要石があったそうだが、その石が抜けた事で災害が起こり、当時の生物の殆どが死滅したんだとか。

その抜けた石が原因で当時の大地が今の天界の大地と為っている事を考えると、中々に業の深い事を仕出かしてくれたもんだと変に感心してしまう。

俺個人としては、今すぐにでもこの石を抜き取ってやりたいんだが、下手に弄って幻想郷崩壊なんてしたくないし、此処は我慢するしかないか。

 

そんなこんな遭って、建て直された博麗神社だが、パッと見ただけでも前の1.5倍くらいでかくなった気がする。

本殿周りも以前より立派に為ったし、中の装飾もかなりの物で荘厳な雰囲気を醸し出している。

母屋の方もアチコチ改修されていて、一部屋辺りの広さが前よりも広くなっていたり、台所周りも中々に充実している。

風呂場や倉庫も良くなっている物だから、霊夢は大層喜び、さっきからはしゃぎっ放しだ。

霊夢が喜んでいるのは別に構わないんだが、俺はアイツとは逆に今回の改修に微妙に不満を持っていた。

部屋が広くなったり、風呂が新しく立派なものに変わったのは素直に嬉しい……だが、本殿の方の装飾がかなり不満だ。

本殿の中にある祭壇には、木彫りで出来た巨大な竜の彫刻があるんだが、その像の姿がなんでか知らないが『アンフィニ』の姿をしている。

こんな事、誰も頼んでいないって言うのに、一体誰がこんな真似を……って、こんな事をするのはアイツ等しか居ないな。

 

「……おいコラ、八雲と龍神。そこら辺に隠れているのは分かってんだから、姿を現せ」

 

俺は本殿の祭壇前に立ち、この場には居ない筈の二人に声を掛けて呼び出す。

少しすると虚空から龍神の化身体が姿を現し、その後に空中に亀裂を作って、八雲の奴が顔を出した。

二人とも悪戯が成功した子供のような笑顔をしており、俺の苛立ちを更に募らせた。

 

「テメェ等、この像は一体何の真似だ」

「中々に良い出来でしょ? 龍神様と二人、必至になって設計図を描いて創って貰ったわ」

「んな事を聞いてるんじゃねぇ。なんでこの像が神社に祭られてるのか聞きたいんだよ」

 

俺は二人を睨み付けながら問い質すが、二人は特に畏れたりする事は無く、何時もの様に平然としていた。

そんな二人の様子に俺は更に苛立ち、今度は殺気も込めて睨みつけようとすると、龍神が一歩前にでも口を開いた。

 

「少し落ち着け竜。そう怒っておっては出来る話も出来なくなる」

「……そう思うならさっさと話せ」

「分かった分かった。……竜よ、二度に渡りこの神社が狙われた理由がお主に分かるか?」

「神社が狙われた理由? んなもん、アイツ等が自分勝手だっただけだろ」

 

苛立っている所為か、口調を荒くしながらも俺は理由と思われる答えを言った。

だが、俺の答えは間違っているのか、龍神は露骨に肩を落として首を横に振って否定した。

 

「天人に関してはそうかもしれぬが、それでは百点はやれぬのぉ」

「別に点数なんて欲しくないが、一体何が答えだって言うんだよ」

「答えは至極単純。本来ここに居るべき神が住んでおらぬ、その一点に尽きる」

「……それ今更じゃねぇのか? 此処の神様なんて随分前から居なくなってるだろ」

「確かにそのとおりじゃ。神が居らぬこそ、八坂のはこの神社を乗っ取り、自らの神社にしようと企てた訳じゃからな」

 

龍神は偉そうな態度で説明してくるが、なんとも実も蓋もない話ではある。

だが、全く筋が通らないわけでもないし、此処に神が居ればアイツ等も乗っ取ろうとしなかった可能性も無い訳じゃない。

終わった事をあーだこーだと言う心算は無いが、確かに誰かが居れば食い止められた事かもしれない。

 

「……お前の言いたい事は何となく分かった。だが、この像とそれに何の関係がある」

「本当にお主は鈍いのぉ……。よいか? お主が此処に居る限り殆どの神はこの地には寄り付かん。だからと言って、何時までも神のいない神社にしておく事も出来ぬ。……ならば、お主の姿を祀ればよいだけじゃろ」

「いやいや、ちょっと待て。それなら天照を呼べば良いだけの話じゃねぇのか?」

「その手も考えて相談してみたが、この間の叢雲の件があるから厳しいと言われてな、仕方が無いからお主の姿を祀る事にした。まぁ、名も無き竜神と言う事で祀っておるから、信仰は全て妾に入るから安心せい」

「……………」

 

龍神は満面の笑みで親指を立ててくるが、俺は強烈な頭痛に襲われて頭を抱えてしまう。

何となくだが、コイツの言いたい事は分かっているつもりだが、納得出来るのか如何かは別の話だ。

龍神には、あの世界で経験した事を話しているから、俺が神様扱いされるのを嫌いだと知っているはずだが、なんだってこんな嫌がらせでしかない事をしたんだ……。

確かに俺が此処に居たら他の神が近寄らないってのは分かるが、別に『アンフィニ』じゃなくて自分の像を作って祀れば良いだろうに。

 

「ったく、なんでよりにもよってその姿なんだよ……」

「単純に妾が人とこれ以外の姿を余り知らんと言うのと―――」

「―――他のと比べて神々しい感じがするからかしらね。次点では『カイザー』だったのだけど、神社で祀るなら此方の方が見栄えが良いのよ」

「そうかそうか。……んで、本音は?」

「「お主/貴方の驚く顔が見たかったから」」

「このあいだ、俺を態々外の世界に放り込んだのは」

「これを運ぶのに邪魔をされない為ね。居たら絶対叩き切っていたでしょ?」

「お主の行動なんぞ全てお見通しじゃからな!」

 

八雲と龍神は二人同時に満面の笑みで物凄く腹正しい事を言ってきやがった。

 

「テメェ等……ちょっと其処に直れ! 粛清してやる!!」

「誰が大人しく粛清など受けるものか! 逃げるぞ紫!」

「分かっておりますわ。……それでは竜神さん、ごきげんよう。建築祝いの宴は夜から行う心算だから、準備しておいて頂戴ね」

「ふざけんな!!」

 

俺は叢雲を取り出して、一度斬り付けてやろうと振り被るが、相手の方が速く逃がしてしまった。

俺は苛立ちながらも叢雲を仕舞い、問題の彫刻を如何してやろうかと思案するが、コレと言ったアイディアが浮んでこない。

ぶっ壊すって言う手もあるが、自分で自分の姿をした像を壊す趣味はないし、何よりも後片付けが物凄くめんどくさい。

外に運び出して捨てるにしても、竜の彫刻はそれなりにデカイし、この大きさの物を不法投棄する訳にも行かないか。

 

「……はぁ。なんだってこんな事に」

「リュウさん。少し宜しいでしょうか」

「ん? あぁ、衣玖か。構わないから入ってきてくれ」

 

莫迦二人の勝手な行動に呆れて溜息を吐いていると、本殿奥にある扉から衣玖が顔を出して来た。

迎えに行った時は疲れ切った顔をしていたが、神社が建て直されるまでの間ずっと永遠亭で療養していた事もあり、今ではすっかり健康そうな顔色に戻っている。

永琳に見せたときに〝疲れを溜めすぎだ〟と言われたが、あの小娘はどれだけ無茶な仕事を押し付けていたのやら。

 

「…? どうかされたのですか、リュウさん。なんだか、呆れた様な疲れたような顔をしてますが」

「いや、別に如何って事も無いが、この彫刻の事で悩んでてな」

「この竜の彫刻ですか……」

 

衣玖は俺の横に立って彫刻を観察しだすが、正直言ってあんまり良い気分じゃない。

ただの像とは言え、模られているのが俺の変身竜の一体と為れば、自分を観察されているのと同じだからな。

観察さて喜ぶような特異な趣味は無いし、あんまりジロジロと見ないで欲しいんだがな……。

 

「衣玖。何の徳もありはしない像なんだから、そんなに熱心に見る必要は無いぞ」

「あ、すみません。……ですが、わたくしは好きですよ。この像」

「どこら辺だが? 破壊の権化の様な存在だぞ」

「確かに力強く雄雄しい姿をしていますが、優しいそうな顔をしているじゃないですか」

「……優しいねぇ」

 

衣玖にそう言われて、訝しむように『アンフィニ』の像を見てみるが、どこら辺が優しそうなのかがさっぱり分からん。

俺からしたら、ひたすら敵を追い求めている姿にしか見えないんだがな。

そもそも、竜の姿のまま鏡を見る事が無いから、どんな顔をしているのかなんて、今回初めて見たくらいだ。

 

「……やっぱり俺にはそんな風には見えねぇけどな」

「ご自身の事ですから、そう感じないだけなのだと思います。霊夢さんもこの像を褒めてましたし」

「褒めるような姿じゃないって言うのに、何を言ってるんだアイツは」

「ふふ。霊夢さんも〝褒めてもアイツは絶対に良い顔しない〟って仰ってましたよ」

「分かってるなら態々言うなよ」

「すみません」

 

衣玖は一礼して謝罪してくるものの、ちゃんと反省した風には見せず、何処と無くこの会話を楽しんでいる様にさえ見えた。

俺はそんな彼女の様子に呆れて溜息を吐くが、衣玖は反省をするような素振りは見せなかった。

まぁ、俺も怒っているわけじゃないし、反省しなくちゃいけない様な事でもないし、別に良いか。

 

「ところで衣玖。霊夢の奴は何処で何をしてるんだ? 新しくなった部屋でだらけているのか?」

「いえ、そろそろお昼時ですので、台所で料理を作っていると思います」

「そっか。……んじゃ、俺達も居間に向かうとするか。あんまり遅くなると霊夢も煩いしな」

「ふふ、そうですね」

 

俺達は本殿奥の扉を抜けて、霊夢が待つ母屋の方へと向かった。

神社が新しくなったり、衣玖が俺の従者になったり、竜の彫刻が出来たりと、色々と環境が変わっちまったが……まぁなんとかなるだろ。

 

「あ、そうだ衣玖。ちょっと渡す物があるから手首を見せてくれ」

「手ではなく、手首を……ですか?」

「まぁな。ほれ、良いからさっさと出す。ついでに目を瞑ってくれると助かる」

「は、はぁ……」

 

訝しみにながらも、衣玖は俺が指示したとおり目を瞑って、右手首を差し出してくる。

その間に俺は外の世界で買ってきた物を取り出し、彼女の右手首にそっと着けた。

 

「……もういいぞ」

「一体何がしたかったのですか、リュウさん。わたくしの手首に何かしていたみたいですが―――」

「気に入ってくれると良いんだが……」

 

衣玖が自分の手首に着いている物を確認した途端、目を見開いて固まってしまった。

俺が彼女の手首に着けたのは蒼い球が付いたシンプルなブレスレット。

外の世界のお土産として、こっちでは余り売られていないものを選んで買ったんだが……駄目だったか?

 

「あの……リュウさん。これは一体……」

「外の世界でのお土産と、ウチに来たお祝いってところだ。正直向こうの小物は色々とゴチャゴチャしていて何がいいのか分からなかったから、出来るだけシンプルな物を選んでみた。主が従者に物を贈るのはどうかと思うが、友人として贈るなら問題はないだろ」

 

そう言うと衣玖は俺が贈ったブレスレットを包み込むようにして握ると、静かに涙を零し始めた。

 

「お、おい、如何したんだよ急に。……もしかして気に入らなかったか?」

「い、いえ、そうではありません。ただ貴方様から贈り物を頂けた事が嬉しいのです」

「嬉しいって……正直言って安モンだぞ、それ。第一、霊夢の奴のと色違いだから、感涙する程の物でも……」

「値段が如何こうの問題ではありません。貴方様から贈り物を頂いた、それが重要なのです」

「……そういうもんかねぇ?」

 

贈り物を頂いた事が重要だと衣玖はいうが、正直俺には良く分からなかった。

値段の問題じゃないってのはなんとなく分かるけど、嬉し泣きする理由がよく分からない。

ぶっちゃけ、道端でやっていた露天商から買った品だから、そこまで喜ばれると逆に困るんだがな。

 

「確かに、リュウさんには分からない事かもしれませんね。……ですが、貴方様に感謝を。ありがとうございます、従者(わたくし)には過ぎた贈り物です」

「だから、そこまで畏まられても困るんだが……まぁいいや。それじゃ居間に行くぞ。いい加減腹も減ったし」

「はい、畏まりました」

 

深々とお辞儀をしてくる衣玖に相変わらずだなと呆れながら、彼女を連れて今度こそ本殿を出て行く。

霊夢にお土産を渡す時、どんな反応をされるのか若干こわくはあるが……衣玖よりはまともだろ。

衣玖の性格は変わることはないって分かっていても、彼女との距離感がイマイチ掴めないときがある。……まぁそれは追々慣れていくしかないか。

 




はい、なんやかんやありましたが〝緋想天編〟これにて完結となります。
今回の話は特に苦労もせず終わりましたが、やっぱり平日の時間が取れなくなったのはデカイなぁ~。これで就職が決まったらもっと時間がとれなくなるから、更に大変なことになりそうだ。
さて唐突ですが、前回のラストにリュウが使った新しい技について説明します。

神剣『天叢雲剣』:あらゆる災厄を薙ぎ払う一閃。それ以上でもそれ以下でもない。

まぁ分かりやすく言えば、カウンター性能を持つ斬撃ってところですね。
草薙の言い伝えをそのまま再現した様な感じなので、大量の弾幕に襲われても切り抜けることが出来るって感じです。

しかし、この小説を移転してからもう一年以上が経ったわけですが……此処で一つお知らせがあります。
実はこの小説……とうとうストックの底が見えてきまして。
完璧になくなった訳ではないのですが、アレ等を投稿するか凄く微妙なんですよね。ぶっちゃけなくても問題はない。
ストックがあるのはなにかと便利だったので、それが尽きるのは結構辛いです。
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