と言うか、原作シリーズ通してリュウは鈍い。
フランドールと知り合ってから二週間が経った。
壊れ掛けた剣の代わりは未だに見付かってないが、コレと言った厄介事もなく平和な日々を過ごしている。
早いところ別の剣を手に入れたいんだけど、中々いい武器が無くて困っていた。
一応、里の鍛冶屋に見せたけど……はっきりと買い換える事を進められたよ。
俺もそうしたんだけど、いい武器が見当たらない上にお金もなくて。
森近さんの所に道具を売りに行っているから、収入が無い訳じゃないけど……貰える金額が今一つで。
あの変な人形の様に珍しい物が手に入ればいいんだけど、そう簡単に手に入らないから珍しいんだよな。
そんな愚痴を霊夢に零しつつ、何時もの様に二人でお茶を飲んでいたある日、神社にフランドールと魔理沙が遊びに来た。
「やっほ、お兄ちゃん! 遊びに来たよ!!」
「いらっしゃい、フランドール。昼間なのによく来たな」
「今日は曇り空だから平気なんだよ」
「そうなのか。……それで魔理沙は何の用だ?」
「わたしも遊びに来ただけだぜ。フランと一緒なのはただの偶然だ」
「偶然か。なら、仕方が無いな」
「仕方が無いんだぜ」
我ながら変な挨拶だと思うが、魔理沙はこう言うノリの奴だからな。
変に硬くなる必要も無いかわりに、如何しても少し変わった挨拶になってしまう。
……まぁ、態々付き合ってやる必要もないし、今後は適当な挨拶でも良いかもな。
「……あんた等、訳の分からない挨拶してんじゃないわよ」
「霊夢。そう言う細かい事を気にしたら負けだぞ?」
「細かい事のかしら……」
気にするほど細かいのかは知らないけど、魔理沙相手ならこんな挨拶でもいい気がする。
魔理沙はなんて言うか……フランクだからな。堅苦しい挨拶よりは良いだろ。
心の中でそんな事を考えていると、フランドールが自分の定位置と言わんばかりに俺の膝の上に座ってきた。
なんでなのか未だに分からないけど、あの戦いの後からフランドールには妙に懐かれてしまった。
別に困る様な事でもないけど、なんでこんなにも懐かれたのかが分からない。
「……ちょっと其処の吸血鬼。なんでリュウの膝の上に座ってるのよ」
「なんでって……フランが座りたいから」
「はしたないから降りなさい」
「え~やだ~」
「やだって……アンタねぇ」
霊夢はフランドールが俺の膝に座っているのが気に入らないらしい。
別に膝の上に座るくらい大した事ないと思うが、一体何が気に入らないんだろう?
「まぁ、落ち着けよ霊夢。相手は子供だぜ?」
「あのね魔理沙。相手は吸血鬼よ? 見た目は幼くても私達よりは年上に決まってるじゃない」
「実際のところは如何なんだフラン?」
「ん~っとねぇ……確か495歳の筈だよ」
「……マジで?」
「うん」
なんで霊夢がこんなに突っかかって来るのか分からないが、フランドールって意外と長生きなんだな。
この子で495歳って事は、姉のレミリアはそれ以上の年齢って事か。
……でも、その程度の歳なら其処まで目くじらを立てる必要も無いと思うが。
「なぁ、一つ聞きたいんだけど。495歳って年寄りなのか?」
「妖怪だから年寄りとは言わないけど、
「そうか。なら、俺も霊夢からすると年寄りになるのか」
「はぁ? なんでそうなるのよ」
「だって、俺もフランドールと同じかそれ以上に生きてるからな」
「「「……えっ?」」」
確か、俺があの世界に召喚されたのが数百年前だった筈。
その時の召喚事故で、俺は二つに別れたけど……召喚される以前から生きてる事になるよな。
まぁ、もう一人の自分が目覚めるまで長い事眠ってはいたけど、少なくとも数百歳なのは間違いない。
召喚される以前の事は何も覚えてないが、下手するとフランドールよりも年上になるな。
「……もしかしたら数千年も生きてたりしてな」
「あ、アンタ、一体幾つなのよ」
「さぁ? あんまり古い事は覚えてないけど、数百年以上生きてるのは間違いないな」
「……そう言えばアンタ竜だったわね。普段が普段なだけに、すっかり忘れたわ」
霊夢が普段から俺を如何見てるのか分からないが、少なくとも老け込んでいる訳じゃないみたいだ。
嬉しいと言えば嬉しいんだが、此処は年上として貫禄みたいなものを出した方が良いのか?
……でも俺って、そう言うのは絶対に似合わないと思うんだよな。
「あ~っと、つまり如何言う事だ?」
「俺も見た目以上の爺だって事」
「いや、意味が分からないって」
「説明すると長いぞ」
「なら遠慮しとくぜ」
「それよりもリュウ! あの時の約束守ってよ!!」
あの時の約束って……今度は別の竜を見せるって奴の事かな?
別に今じゃなくてもいい気がするけど、このままフランドールを膝の上に座らせてたら、またさっきの話をぶり返すだけか。
話を逸らすと言う意味でも、ここは約束通り変身するか。
「約束? ……アンタ、今度は何をしたのよ」
「別に大した事じゃないよ。ちょっとフランドールに別の竜を見せるって約束しただけだ」
「……十分に大した事あるじゃないの」
「まぁ、霊夢の言いたい事も分かるけど……今回は大目に見てくれ」
「……仕方が無いわね」
「ありがとう、霊夢」
そう言って俺はフランドールを退けてから立ち上がり、直ぐに変身……しようとしたが、今俺達が居る裏庭では狭すぎる。
体格の小さい『パンク』や『オーラ』ならまだしも、今回変身しようと思っている竜には合わない。
あの竜は体格的に『オーラ』よりも大きいからな、此処じゃ周りの物を壊しかねないか。
……仕方が無い、此処は一度境内に移動してから変身するか。
………
……
…
俺が事情を話すと三人はあっさりと了承してくれた。
フランドールや魔理沙は兎も角、霊夢も二つ返事で了承したのはちょっと意外だったな。
只単に神社を壊されたくなかっただけか、それとも他の竜に興味があったのか? ……意外と両方の理由だったりしてな。
そんな事を考えながら境内に移動した俺は、境内の真ん中に立ち、意識を集中し俺の中に眠っている力を呼び覚ます。
「でぇあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
力を解放すると、足元から赤い光が立ち上り俺を包み込む。
……本当は此処で竜人とも言える姿になるけど、今回は面倒なんでその過程を飛ばす。
俺を包んでいる光を吹き飛ばすと、俺は人の姿からアズキ色の腕の無い飛竜へと変身する。
多分、俺が変身出来る竜の中でイメージが良いのはコレだろうな。
……他に変身できる『ナイト』と『バンダスナッチ』は、もはや竜と言うよりも別の存在って感じだし。
《……コレが火竜『ジャブジブ』だ》
「「「……………」」」
《如何した? 何処か変か?》
「……スゲェなリュウ! お前、本当に変身出来たんだな!!」
「前に見た黒いトカゲよりもカッコイイ!!」
「そう? 私は前に見た『カイザー』の方が好きだけど」
フランドールと魔理沙は大はしゃぎだが、霊夢は至って冷静な反応だった。
以前に『カイザー』を見ているから、この姿じゃ物足りなさがあるのかもしれないが、あの竜は出来る限り使いたくない。
《アレは危険だから当分は使う気は無い》
「……まぁ、あの破壊力じゃあね」
《いや、アレは以前に暴走した前科があってな》
「もう分かったから全部言わなくて良い」
確かに『カイザー』は一度暴走した事があるが、今の状態で一番危険なのは間違いなく『アンフィニ』だろう。
あの力は、俺の中にある他の竜達よりも危険だからな。アレが俺本来の力だと思うと自分でもゾッとするぞ。
……召喚事故で記憶を失う以前の俺は、一体何を思って生きていたんだろうな。
「お兄ちゃん、一つお願いがあるんだけど良い?」
《面倒事でなければな》
「フランね、リュウの背中に乗って空を飛んでみたい!!」
《……はっ?》
「お、それ良いな。リュウ、わたしも乗せてくれ!」
《いや、お前ら普通に飛べるだろ》
「それとこれとは関係ないの! ねぇお兄ちゃん、良いでしょ?」
《……………》
フランドールは両手を合わせて頼み込んでくるが……一体如何したもんだろうか。
特に拒む理由は無いが、あまり甘やかしても良いものなのだろうか?
頼られるのが嫌な訳ではないが、だからと言って何でも頼みを聞く訳にもいかんだろ。
…………まぁ、今回くらいは構わないか。どうせ飛ぶだけだしな。
《やれやれ、仕方が無い》
「えっ? それじゃあ!?」
《直ぐに飛ぶからさっさと乗れ》
「うん!」
「サンキューな」
《嗚呼。……それで霊夢は如何する》
「わ、私は良いわよ。自分で飛べるし」
二人に便乗して乗ってくると思ったが、意外にも霊夢は搭乗を拒否してきた。
霊夢の性格なら、物珍しさから乗ってくると思ったんだが……遠慮でもしているのか?
《遠慮する必要は無いぞ。二人も三人も大して変わらないからな》
「別に遠慮なんてしてないわよ」
「まぁまぁ、折角リュウがこう言ってるんだし、変な意地はらないで乗ろうぜ?」
「あ、ちょっと魔理沙?!」
多少渋っていた霊夢だが、結局は魔理沙に強引に乗せられた。
結局は三人を乗せる事になったが、特に問題も無いだろう。
俺は背中に居る三人を振り落とさない様に注意しながら、両翼をはためかせ空へと飛翔した。
………
……
…
今日が曇りだと言っても、あまり高度を上げ過ぎるとフランドールが灰になる。
そこら辺の事を考慮しつつ、出来るだけ高い所を飛ぶようにした。
背中に居るフランドールと魔理沙は、
だが、一緒に居る筈の霊夢の声は全く聞こえてこない。途中で降りた感じはしなかったから、まだ背中に乗っている筈なんだが……。
なんとなく気に為った俺は、後ろを振り向き霊夢の様子を窺った。
《如何した霊夢。具合でも悪いのか?》
「……別にそんな事ないわよ」
《なら如何した。元気が無いように見えるが》
「あのね、幻想郷では龍は最高神なのよ。……異世界のとは言え、そんな存在の背中に乗ってはしゃげる訳無いじゃない」
「んな細かい事気にするなって霊夢。第一、幻想郷の最高神って蛇みたいな姿をしてるんだろ? それならこの竜とは関係ないじゃないか」
「竜の姿形は問題じゃないわ。問題なのはその竜の本質がなんであるかよ。蛇の様な姿の竜でも本質によっては邪龍として恐れられるわ」
「ふ~ん。蛇みたいな竜なら無条件で神様になるって訳でも無いんだな」
《神、か……》
あの世界を旅してきた所為か、俺は〝神〟と言うのが嫌いだ。
……いや、〝神〟と言う存在が嫌いなんじゃなく、そう呼ばれるの嫌いなんだ。
これだけの力を持っていた所為で、自分自身の命も狙われ、無関係な人達を巻き込んでしまった。
だからあの時、
力そのものである俺には、捨てる事なんて出来ないけど……神である必要は無い筈だ。
《…なぁ霊夢。お前は俺の事を神様として見ていたのか?》
「えっ? ……別にそんな事は無いわね。寧ろ、時々忘れそうになるし」
《だったら、そのまま忘れてくれないか?》
「はぁ? アンタ、いきなり何を言ってるのよ」
《俺は力を持ち過ぎてしまっただけの竜だ。決して神なんかじゃない》
「そんな事言われてもねぇ」
《人間が言う〝神〟の定義は良く分からないが、俺は只この幻想郷に……霊夢の傍に居たいだけだ》
「ッ!? ……なら、アンタを一人の男として見て、もし龍神に何か言われたら如何するのよ」
《その時は俺がお前を守る。何が遭っても霊夢だけは絶対に守り切ってみせる》
「~~~~~~ッ!?」
この位置からだと良く見えないが、何故か霊夢が顔を真っ赤になっていうように見える。
風邪でも引いたのかと思ったが、今日一日の様子を見てそれは無いだろう。
それなら一体何が原因なんだ? 寒くて顔が赤く為ってる訳じゃないだろうし……。
「……なぁ、霊夢」
「なによ」
「お前ン家、今夜は赤飯か?」
「馬鹿言ってんじゃないわよ!!」
「ねぇ、折角だから咲夜に頼んでご馳走を作って貰おうよ」
「洋式でのお祝いか……。それも良いかもな」
「勝手に話を進めるんじゃないわよ!!」
二人の言い草が気に入らないのか、霊夢は俺の背中の上で暴れ始めた。
せめて降りてからにしてくれれば良いが、どう言う訳か背中の上でなんだよ。
このまま暴れられるとちょっと……いや、マジでヤバイかもしれない。
《おい、霊夢! 俺の上で暴れるな!! バランスが崩れる!!》
「元はと言えばアンタが悪いんじゃない!!」
《なんでそうなるんだ?!》
「ウッサイ、馬鹿!!!」
俺は必至に霊夢を宥めようとするが、火に油の様で効果は無かった。
フランドールと魔理沙にも協力して貰おうと思ったが、あの二人何時の間にか降りてやがった。
去り際に[痴話喧嘩は犬も食わない]とか言ってたが、それよりも霊夢を止めるのを手伝えと言いたい。
その後、なんとか霊夢を落ち着かせた俺は、ボロボロに為りながら博麗神社に帰ることになった。
BOFⅣに登場する竜たちはかなり奇抜なデザイン。
中にはコレの何処が竜なのかとツッコミたくなる様な奴も居る。