竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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一つ言い忘れていましたが、この作品のリュウは鈍いです。
と言うか、原作シリーズ通してリュウは鈍い。


第十七話 火竜飛翔

フランドールと知り合ってから二週間が経った。

壊れ掛けた剣の代わりは未だに見付かってないが、コレと言った厄介事もなく平和な日々を過ごしている。

早いところ別の剣を手に入れたいんだけど、中々いい武器が無くて困っていた。

一応、里の鍛冶屋に見せたけど……はっきりと買い換える事を進められたよ。

俺もそうしたんだけど、いい武器が見当たらない上にお金もなくて。

森近さんの所に道具を売りに行っているから、収入が無い訳じゃないけど……貰える金額が今一つで。

あの変な人形の様に珍しい物が手に入ればいいんだけど、そう簡単に手に入らないから珍しいんだよな。

そんな愚痴を霊夢に零しつつ、何時もの様に二人でお茶を飲んでいたある日、神社にフランドールと魔理沙が遊びに来た。

 

「やっほ、お兄ちゃん! 遊びに来たよ!!」

「いらっしゃい、フランドール。昼間なのによく来たな」

「今日は曇り空だから平気なんだよ」

「そうなのか。……それで魔理沙は何の用だ?」

「わたしも遊びに来ただけだぜ。フランと一緒なのはただの偶然だ」

「偶然か。なら、仕方が無いな」

「仕方が無いんだぜ」

 

我ながら変な挨拶だと思うが、魔理沙はこう言うノリの奴だからな。

変に硬くなる必要も無いかわりに、如何しても少し変わった挨拶になってしまう。

……まぁ、態々付き合ってやる必要もないし、今後は適当な挨拶でも良いかもな。

 

「……あんた等、訳の分からない挨拶してんじゃないわよ」

「霊夢。そう言う細かい事を気にしたら負けだぞ?」

「細かい事のかしら……」

 

気にするほど細かいのかは知らないけど、魔理沙相手ならこんな挨拶でもいい気がする。

魔理沙はなんて言うか……フランクだからな。堅苦しい挨拶よりは良いだろ。

心の中でそんな事を考えていると、フランドールが自分の定位置と言わんばかりに俺の膝の上に座ってきた。

なんでなのか未だに分からないけど、あの戦いの後からフランドールには妙に懐かれてしまった。

別に困る様な事でもないけど、なんでこんなにも懐かれたのかが分からない。

 

「……ちょっと其処の吸血鬼。なんでリュウの膝の上に座ってるのよ」

「なんでって……フランが座りたいから」

「はしたないから降りなさい」

「え~やだ~」

「やだって……アンタねぇ」

 

霊夢はフランドールが俺の膝に座っているのが気に入らないらしい。

別に膝の上に座るくらい大した事ないと思うが、一体何が気に入らないんだろう?

 

「まぁ、落ち着けよ霊夢。相手は子供だぜ?」

「あのね魔理沙。相手は吸血鬼よ? 見た目は幼くても私達よりは年上に決まってるじゃない」

「実際のところは如何なんだフラン?」

「ん~っとねぇ……確か495歳の筈だよ」

「……マジで?」

「うん」

 

なんで霊夢がこんなに突っかかって来るのか分からないが、フランドールって意外と長生きなんだな。

この子で495歳って事は、姉のレミリアはそれ以上の年齢って事か。

……でも、その程度の歳なら其処まで目くじらを立てる必要も無いと思うが。

 

「なぁ、一つ聞きたいんだけど。495歳って年寄りなのか?」

「妖怪だから年寄りとは言わないけど、私達(にんげん)からすると十分過ぎるわね」

「そうか。なら、俺も霊夢からすると年寄りになるのか」

「はぁ? なんでそうなるのよ」

「だって、俺もフランドールと同じかそれ以上に生きてるからな」

「「「……えっ?」」」

 

確か、俺があの世界に召喚されたのが数百年前だった筈。

その時の召喚事故で、俺は二つに別れたけど……召喚される以前から生きてる事になるよな。

まぁ、もう一人の自分が目覚めるまで長い事眠ってはいたけど、少なくとも数百歳なのは間違いない。

召喚される以前の事は何も覚えてないが、下手するとフランドールよりも年上になるな。

 

「……もしかしたら数千年も生きてたりしてな」

「あ、アンタ、一体幾つなのよ」

「さぁ? あんまり古い事は覚えてないけど、数百年以上生きてるのは間違いないな」

「……そう言えばアンタ竜だったわね。普段が普段なだけに、すっかり忘れたわ」

 

霊夢が普段から俺を如何見てるのか分からないが、少なくとも老け込んでいる訳じゃないみたいだ。

嬉しいと言えば嬉しいんだが、此処は年上として貫禄みたいなものを出した方が良いのか?

……でも俺って、そう言うのは絶対に似合わないと思うんだよな。

 

「あ~っと、つまり如何言う事だ?」

「俺も見た目以上の爺だって事」

「いや、意味が分からないって」

「説明すると長いぞ」

「なら遠慮しとくぜ」

「それよりもリュウ! あの時の約束守ってよ!!」

 

あの時の約束って……今度は別の竜を見せるって奴の事かな?

別に今じゃなくてもいい気がするけど、このままフランドールを膝の上に座らせてたら、またさっきの話をぶり返すだけか。

話を逸らすと言う意味でも、ここは約束通り変身するか。

 

「約束? ……アンタ、今度は何をしたのよ」

「別に大した事じゃないよ。ちょっとフランドールに別の竜を見せるって約束しただけだ」

「……十分に大した事あるじゃないの」

「まぁ、霊夢の言いたい事も分かるけど……今回は大目に見てくれ」

「……仕方が無いわね」

「ありがとう、霊夢」

 

そう言って俺はフランドールを退けてから立ち上がり、直ぐに変身……しようとしたが、今俺達が居る裏庭では狭すぎる。

体格の小さい『パンク』や『オーラ』ならまだしも、今回変身しようと思っている竜には合わない。

あの竜は体格的に『オーラ』よりも大きいからな、此処じゃ周りの物を壊しかねないか。

……仕方が無い、此処は一度境内に移動してから変身するか。

 

 

………

……

 

俺が事情を話すと三人はあっさりと了承してくれた。

フランドールや魔理沙は兎も角、霊夢も二つ返事で了承したのはちょっと意外だったな。

只単に神社を壊されたくなかっただけか、それとも他の竜に興味があったのか? ……意外と両方の理由だったりしてな。

そんな事を考えながら境内に移動した俺は、境内の真ん中に立ち、意識を集中し俺の中に眠っている力を呼び覚ます。

 

「でぇあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

力を解放すると、足元から赤い光が立ち上り俺を包み込む。

……本当は此処で竜人とも言える姿になるけど、今回は面倒なんでその過程を飛ばす。

俺を包んでいる光を吹き飛ばすと、俺は人の姿からアズキ色の腕の無い飛竜へと変身する。

多分、俺が変身出来る竜の中でイメージが良いのはコレだろうな。

……他に変身できる『ナイト』と『バンダスナッチ』は、もはや竜と言うよりも別の存在って感じだし。

 

《……コレが火竜『ジャブジブ』だ》

「「「……………」」」

《如何した? 何処か変か?》

「……スゲェなリュウ! お前、本当に変身出来たんだな!!」

「前に見た黒いトカゲよりもカッコイイ!!」

「そう? 私は前に見た『カイザー』の方が好きだけど」

 

フランドールと魔理沙は大はしゃぎだが、霊夢は至って冷静な反応だった。

以前に『カイザー』を見ているから、この姿じゃ物足りなさがあるのかもしれないが、あの竜は出来る限り使いたくない。

 

《アレは危険だから当分は使う気は無い》

「……まぁ、あの破壊力じゃあね」

《いや、アレは以前に暴走した前科があってな》

「もう分かったから全部言わなくて良い」

 

確かに『カイザー』は一度暴走した事があるが、今の状態で一番危険なのは間違いなく『アンフィニ』だろう。

あの力は、俺の中にある他の竜達よりも危険だからな。アレが俺本来の力だと思うと自分でもゾッとするぞ。

……召喚事故で記憶を失う以前の俺は、一体何を思って生きていたんだろうな。

 

「お兄ちゃん、一つお願いがあるんだけど良い?」

《面倒事でなければな》

「フランね、リュウの背中に乗って空を飛んでみたい!!」

《……はっ?》

「お、それ良いな。リュウ、わたしも乗せてくれ!」

《いや、お前ら普通に飛べるだろ》

「それとこれとは関係ないの! ねぇお兄ちゃん、良いでしょ?」

《……………》

 

フランドールは両手を合わせて頼み込んでくるが……一体如何したもんだろうか。

特に拒む理由は無いが、あまり甘やかしても良いものなのだろうか?

頼られるのが嫌な訳ではないが、だからと言って何でも頼みを聞く訳にもいかんだろ。

…………まぁ、今回くらいは構わないか。どうせ飛ぶだけだしな。

 

《やれやれ、仕方が無い》

「えっ? それじゃあ!?」

《直ぐに飛ぶからさっさと乗れ》

「うん!」

「サンキューな」

《嗚呼。……それで霊夢は如何する》

「わ、私は良いわよ。自分で飛べるし」

 

二人に便乗して乗ってくると思ったが、意外にも霊夢は搭乗を拒否してきた。

霊夢の性格なら、物珍しさから乗ってくると思ったんだが……遠慮でもしているのか?

 

《遠慮する必要は無いぞ。二人も三人も大して変わらないからな》

「別に遠慮なんてしてないわよ」

「まぁまぁ、折角リュウがこう言ってるんだし、変な意地はらないで乗ろうぜ?」

「あ、ちょっと魔理沙?!」

 

多少渋っていた霊夢だが、結局は魔理沙に強引に乗せられた。

結局は三人を乗せる事になったが、特に問題も無いだろう。

俺は背中に居る三人を振り落とさない様に注意しながら、両翼をはためかせ空へと飛翔した。

 

 

………

……

 

今日が曇りだと言っても、あまり高度を上げ過ぎるとフランドールが灰になる。

そこら辺の事を考慮しつつ、出来るだけ高い所を飛ぶようにした。

背中に居るフランドールと魔理沙は、(おれ)に乗って見える景色が珍しいのか、さっきからはしゃぎっ放しで少々五月蝿い。

だが、一緒に居る筈の霊夢の声は全く聞こえてこない。途中で降りた感じはしなかったから、まだ背中に乗っている筈なんだが……。

なんとなく気に為った俺は、後ろを振り向き霊夢の様子を窺った。

 

《如何した霊夢。具合でも悪いのか?》

「……別にそんな事ないわよ」

《なら如何した。元気が無いように見えるが》

「あのね、幻想郷では龍は最高神なのよ。……異世界のとは言え、そんな存在の背中に乗ってはしゃげる訳無いじゃない」

「んな細かい事気にするなって霊夢。第一、幻想郷の最高神って蛇みたいな姿をしてるんだろ? それならこの竜とは関係ないじゃないか」

「竜の姿形は問題じゃないわ。問題なのはその竜の本質がなんであるかよ。蛇の様な姿の竜でも本質によっては邪龍として恐れられるわ」

「ふ~ん。蛇みたいな竜なら無条件で神様になるって訳でも無いんだな」

《神、か……》

 

あの世界を旅してきた所為か、俺は〝神〟と言うのが嫌いだ。

……いや、〝神〟と言う存在が嫌いなんじゃなく、そう呼ばれるの嫌いなんだ。

これだけの力を持っていた所為で、自分自身の命も狙われ、無関係な人達を巻き込んでしまった。

だからあの時、(アイツ)(おれ)を捨て、神である事を止めたんだ。

力そのものである俺には、捨てる事なんて出来ないけど……神である必要は無い筈だ。

 

《…なぁ霊夢。お前は俺の事を神様として見ていたのか?》

「えっ? ……別にそんな事は無いわね。寧ろ、時々忘れそうになるし」

《だったら、そのまま忘れてくれないか?》

「はぁ? アンタ、いきなり何を言ってるのよ」

《俺は力を持ち過ぎてしまっただけの竜だ。決して神なんかじゃない》

「そんな事言われてもねぇ」

《人間が言う〝神〟の定義は良く分からないが、俺は只この幻想郷に……霊夢の傍に居たいだけだ》

「ッ!? ……なら、アンタを一人の男として見て、もし龍神に何か言われたら如何するのよ」

《その時は俺がお前を守る。何が遭っても霊夢だけは絶対に守り切ってみせる》

「~~~~~~ッ!?」

 

この位置からだと良く見えないが、何故か霊夢が顔を真っ赤になっていうように見える。

風邪でも引いたのかと思ったが、今日一日の様子を見てそれは無いだろう。

それなら一体何が原因なんだ? 寒くて顔が赤く為ってる訳じゃないだろうし……。

 

「……なぁ、霊夢」

「なによ」

「お前ン家、今夜は赤飯か?」

「馬鹿言ってんじゃないわよ!!」

「ねぇ、折角だから咲夜に頼んでご馳走を作って貰おうよ」

「洋式でのお祝いか……。それも良いかもな」

「勝手に話を進めるんじゃないわよ!!」

 

二人の言い草が気に入らないのか、霊夢は俺の背中の上で暴れ始めた。

せめて降りてからにしてくれれば良いが、どう言う訳か背中の上でなんだよ。

このまま暴れられるとちょっと……いや、マジでヤバイかもしれない。

 

《おい、霊夢! 俺の上で暴れるな!! バランスが崩れる!!》

「元はと言えばアンタが悪いんじゃない!!」

《なんでそうなるんだ?!》

「ウッサイ、馬鹿!!!」

 

俺は必至に霊夢を宥めようとするが、火に油の様で効果は無かった。

フランドールと魔理沙にも協力して貰おうと思ったが、あの二人何時の間にか降りてやがった。

去り際に[痴話喧嘩は犬も食わない]とか言ってたが、それよりも霊夢を止めるのを手伝えと言いたい。

その後、なんとか霊夢を落ち着かせた俺は、ボロボロに為りながら博麗神社に帰ることになった。

 




BOFⅣに登場する竜たちはかなり奇抜なデザイン。
中にはコレの何処が竜なのかとツッコミたくなる様な奴も居る。
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