竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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更新が一日遅れてしまい申し訳ない。遅れた原因がアマ公と戯れていたとか、そんなんじゃないですからね。


第百七十話 肝試し

八月も半ばに入っても衰える事なく猛暑が続く日々の中、何の前触れもなく上白沢さんが神社にやって来た。

慌ててきたと言う訳でもないが、手ぶらで来た所を見ると、神社の再建祝いに来たと言う訳でもなさそうだ。

 

「いらっしゃい慧音。今日は何の依頼できたのよ」

「……私=依頼か。間違ってはいないが少々悲しいものがあるな」

「アンタがそれ以外の理由でウチに来ないんだから当然でしょ」

「依頼以外で此処に来る用事がないんだ。仕方がないだろ」

「はいはい。それで今日は何をさせたいのよ」

「何時も通り妖怪退治だが……少々話すのが躊躇われる内容でな」

 

そう言って上白沢さんは言いづらそうに今回の依頼内容を説明しだす。

上白沢さんにしては珍しく歯切れが悪いが、話を聞いてみた限りだとかなり曖昧な内容だった。

なんでも、里の若い衆がここ最近夜中になると肝試しをしに里の外に出てしまっているらしい。

夜は妖怪たちの時間だから、日が落ちたら里から出るなと言い聞かせているにも拘らず、怖い物見たさからなのか上白沢さんの話に耳を貸そうともしない。

里の若い衆は川に沿って森の方にまで歩いていったって言うから驚きだよ。

 

「森となると目的地は魔法の森か。確かにあそこに強力な妖怪はいないけど良くやるな」

「最初は玄武の沢まで行こうとしていたらしいが、流石にそこまで行く勇気はなかったそうだ」

 

若さゆえの無鉄砲さがそうさせたのか知らないが、妖怪に出会いながらも護身用に持って来たお守りなんかを使って森の入り口にまで辿り着いたそうだ。

森の入り口に着いて、近くの木に自分達が此処まで来たと言う証拠を刻んでいると、妖怪と思われる何かに襲撃されたとの事だ。

その妖怪が何なのかは暗くて分からなかったらしいが、音もなく近付き、姿を見せなかったことから、かなり凶悪な妖怪じゃないかっと言うのが若い衆は言っている。

自業自得としか言いようがないが、襲撃されたときに何人も怪我をしたため、依頼を出す事に為ったそうだ。

 

「私の忠告を聞かず、夜中に里を出たアイツ等も悪いし、妖怪が人間を襲うのは当然の事だから仕方がないのだが、正体不明の妖怪が出たとあっては里に不安が広がる。だからなんとかしてくれと言うのが今回の依頼だ」

「物凄く面倒な依頼ね。第一、正体の分からない妖怪を退治してくれなんて都合が良すぎるわよ」

「それに山にはかなりの数の妖怪が住んでいるからな。一人一人問い詰めるのは骨が折れそうだ」

「二人の言い分はもっともだが、去年の大晦日の一件以来、里の者はこの様な事に敏感でな。何もしないと言う訳にも行かないんだ」

「……慧音も大変ね」

「好きで里に暮らしているんだ、この位大したことじゃない。それにこの神社は立地が悪いからな、里の者に行かせるには少々酷だろ」

「立地が悪いとか言うな! まだ守矢神社よりはマシよ!」

「……霊夢、妖怪の山に神社を構えたアイツ等と張り合うなよ」

 

変なところで怒り出す霊夢に呆れながら、とりあえず俺達は今回の依頼を受ける事にした。

正体不明の妖怪を退治するかは相手の出方次第として、その妖怪が何なのか見極めておくのに越した事はないだろ。

あの辺りは茸の胞子の所為でかなり住み難いんだが、絶対に暮らせないってわけでも無いからな。知らない内に何者かが住み着いた可能性もある。

もし古参の奴だったら、俺達にビビッて出てこない可能性も有るし、念のため何かしらの対策を練ってから行くか。

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

正体不明の妖怪に悟られないように準備をしていたら、何時の間にかすっかり日が落ちてしまっていた。

時間の掛かるような準備はしていない筈だが、八月も半ばに入って少しずつ日が落ちる時間が早くなっているんだろう。

夕闇に包まれだした空を見上げながら、俺は新しく建てられた里の入り口付近で霊夢が来るのを待っている。

妖怪に悟られない為に今回は簡単な変装をして行く事に為ったが、正直こんな事をする必要があったのだろうかと疑問だったりする。

確かに変装すればばれないかも知れないけど、他に方法があっただろと提案者の上白沢さんを問い詰めたい。

第一俺が変装するって言ったって、髪を短く切って、里の若い衆が着てる着流しを着るくらいなもんだ。

別にこのくらいならしなくても問題なかった様な気がするが……本当に効果があるのか謎だな。

 

「リュウ、お待たせ」

 

今回の変装に疑問を持ちながら空を眺めていると、着替え終わったのか、巾着を手に提げた霊夢がやってくる。

霊夢の服装は普段の巫女服ではなく、里の若い女性が好んで着る衣服を纏っている。

髪を結っていたリボンを解き、綺麗な黒髪をそのままにしているから、パッと見ただけじゃ誰だか良く分からない。

服装について衣玖とあーだこーだと話し合っていたみたいだが、思ったよりも地味な感じに仕上がったな。

 

「遅いぞ霊夢。随分と準備に手間取っていたみたいだな」

「ごめん。最後の最後まで髪を如何するかでもめて」

「髪をって……そんな事でもめてるんだよ」

「いや、髪をどんな風に縛るかで言い合いに為ったのよ。結局時間がなくてそのままにしちゃったけど」

「ふ~ん。でも、これはこれでいいんじゃないか? 俺は好きだぞ」

 

素直に髪の感想を言うと、何故か霊夢は顔を赤くして自分の髪を弄りだす。

 

「そ、そうかな? 私としては地味な気もするんだけど」

「確かに赤いリボンがない分地味だけど、霊夢の髪は綺麗だからそのままでも十分だろ」

「そっか。アンタがそう言ってくれるならそれで良いかな」

「俺が言うならって……霊夢はそれで良いのか?」

「良いのよ。それじゃさっさと行きましょう。まだ完全に日は落ちてないけど、のんびり行けば丁度いい時間に着くでしょ」

「……そうだな。急いで片付けるような仕事でもないし、のんびり行くか」

「うん!」

 

霊夢は笑顔で頷くと、俺の手を取って促すように引っ張ってくる。

その様子に若干子供っぽいなと思いつつ、俺は霊夢に促されるがままに歩を進める。

もしかしたら妖怪と一戦交えるかもしれないというのに、俺達は和やかな雰囲気に包まれていた。

 

森へと続く道に人影などなく、薄暗くなった空に星々が輝き始める中、俺達は慌てる事なく暢気に歩いている。

夜は妖怪たちの時間だと言うのに、こんな人気のない道を男女二人が暢気に歩いているなど普通じゃまず考えられない。

暗くなるのに合わせて取り出したランプの灯りが俺達を照らし、暗い闇の中に俺達の姿をぼんやりと照らし出す。

妖怪たちから見ればかなりマヌケな光景に見えるだろうが、俺達の正体に気付いていないのあれば好都合だ。

そんな事を思いながら霊夢と夜の散歩を楽しんでいると、風も吹いていないのに近くの茂みが音を立てて揺れる。

一瞬獣かとも思ったが、獣にしては気配を完全に殺しきれていない。

一応用心の為に霊夢を後ろに下げて、注意深く揺れた茂みを見ていると―――

 

「う~ら~め~し~や~っ!」

 

―――突然茂みの中から古い傘を広げたオッドアイの少女が現れた。

この時間帯に出歩いているところを見るに、恐らく妖怪の類なんだろうが……一体何がしたいんだ?

 

「う、うらめしや~っ!!」

「「………………」」

「……あ、あの、驚かないの?」

「「いや別に驚くほどの事じゃないし」」

「う、うわ~んッ!!」

 

少女は俺達が驚かない事を知るや否や、泣き出しながら何処かへと飛んでいってしまった。

一体何がしたいのか分からないが、とりあえず害意はなさそうだし、アレは放置でもよさそうだな。

 

「……なんだったのかしら今の」

「さぁ? 俺達に驚いて欲しかったんじゃないのか?」

「益々意味が分からないわよ」

「まぁ、妖怪の考えることなんて良く分からない事が多いから、深く考えないほうがいいだろ」

「それもそうね。それじゃ先に進みましょうか」

 

俺達は先程の妖怪の事など直ぐに忘れ、何事もなかったかのようにまた歩き出した。

夜が深まるに連れて妖怪たちの気配が強くなるが、さっきみたいに驚かそうとする変り種はいなかった。

でも、俺達の正体がばれたという訳でもなく、こちらの様子を窺って機会を窺っているような感じだ。

妖怪たちからすれば、今の俺達は格好の獲物だからこうなるのも当然だけど、流石にジロジロと見られているのは落ち着かないな。

 

「……周りが鬱陶しいわね。無想封印で蹴散らそうかしら」

「止めろ。そんな事をしたら何のために変身したのか分からないだろ」

「それはそうだけど鬱陶しいものは鬱陶しいのよ」

「気持ちは分かるが落ち着け」

 

暴走しそうになる霊夢を宥めていると、草場の影からいきなり妖怪が飛び出してきた。

何の妖怪なのかまでは判断できなかったが、爪を伸ばし、霊夢に襲い掛かろうとしているのだけは分かる。

俺は反射的に霊夢を後ろに下げさせ、そのまま回し蹴りを妖怪の顔に叩き込んで蹴り飛ばす。

 

「ぎゃふっ!?」

「……あ、しまった」

 

反射的な行動だったとは言え、今ので様子を窺っていたほかの妖怪たちを刺激してしまった。

一人目が蹴り飛ばされたのを皮切りに、周りにいた妖怪たちが次々と俺達に襲いかかってくる。

 

「リュウ」

「悪い、つい」

「全く。ちゃんと反省しなさいよ」

 

周りを妖怪たちに囲まれてしまったが、俺達は動じる事なく冷静に対処する。

近付いてくる妖怪を俺が蹴り飛ばして距離を離し、霊夢は巾着から取り出した札を使い結界を張って退ける。

霊夢が張った結界に触れた妖怪は次々と弾き飛ばされ、この結果は破れないと判断したのか、妖怪たちは我先にと逃げ出していく。

結界を破壊しようとする者がいれば叢雲を抜くつもりだったが、流石にこの辺りを(たむろ)している妖怪にそこまでの気概のある奴はいないか。

 

「あらら、皆逃げちゃったわね。最近の妖怪は根性なしで困る」

「そっちの方が仕事がしやすくていいだろ」

「確かにそうだけど、それだと人間と妖怪のバランスが崩れるのよ。……まぁ、そこ等の野良妖怪に期待なんかしてないからいいけど」

「妖怪に期待するってのもなんか間違ってる気がするけどな」

 

妖怪に期待する霊夢に呆れながら、周囲にまだ妖怪が隠れていないかを確認する。

夜の闇に閉ざされ、周囲を照らす灯りがランプしかないものの、五感を集中して気配を探る事はできる。

目を瞑り何か隠れ潜んでいないか探ってみるが、今の騒ぎで俺達のことを狙っていた妖怪は全て逃げた様だ。

まぁアレだけの事をしてまだ狙う気概のある妖怪なんてそうはいない。今ので正体不明の妖怪にも勘付かれたかもしれないが、今更言ったところでどうしようもない。

こういうのは割り切りが肝心だと頭を切り替え、とりあえず若い衆が襲われたというポイントにまで行ってみる事に。

 

俺達はランプに柔らかな灯りだけを頼りに、道なりにするんでみるが、その道中で妖怪に襲われることはなかった。

やっぱりさっきの一件が効いたのか、襲ってくる者どころか、俺達の様子を窺う者すらいない始末。

道なりに進んでいって、前に来たという里の若い衆がつけた証とやらを見つけたが、それでも正体不明の妖怪に会うことはなかった。

この様子じゃ例の輩も逃げ出しているだろうなと思っていると、小さな黄緑色の光が俺達の前を横切った。

 

「今の光は……」

「多分ホタルね。この辺りにも生息してたんだ」

 

驚いた様子の霊夢だが、その視線は今前を横切っていったホタルに向けられている。

俺も霊夢と同じ様にホタルに視線を向けると、その先には同じ様な小さな光が無数に集っていた。

その数は大よそ数十匹にも及び、黄緑色の光を発しながら宙を飛び回っている。

なんとなく気になった俺は、霊夢の手を引いてホタルを驚かせないように静かにその場所に近付いていく。

ホタルを刺激しないようにランプを消して近付くと、そこには思い掛けない光景が広がっていた。

 

「へぇ……」

「綺麗……」

 

俺達の眼に飛び込んで来たのは、川辺で黄緑色の小さな光が踊るように宙を飛ぶ光景だった。

綺麗な川が鏡の様になって夜空の星々を映し出し、水面を見ればホタルが星の中を飛んでいる様にも見える。

星の中を飛ぶホタルは中々に幻想的で、此処が化け物茸の胞子が舞う森の傍だと言う事を忘れてしまう。

前の世界は隅々まで探索したつもりだけど、あの世界ではこんな幻想的な光景は見る事は出来なかった。

もしかしたら俺が見つけられなかっただけで、本当はあったのかもしれないが……もう戻る事のない世界の事を想っても仕方がない。

今はただ、この幻想的な光景を目に焼き付けておこう。そう思ったとき、俺達の周囲から突然音が消えた。

 

「……霊夢」

「分かってる」

 

俺は即座にランプに火を灯し、霊夢は巾着から札を取り出して周囲の様子を窺う。

だが、周囲を探ってみても気配はするのに姿が見えず、葉が揺れる音も聞こえない。

気配が移動している事は分かるんだが、姿が見えない所為で何と戦っているのか皆目見当も付かん。

一体何が現れたのか分からないまま様子を見ていると、霊夢に向かって何かが飛んで来るのを視認する。

俺は飛んできた飛来物を無造作に掴み取り、その正体を確認してみると―――

 

「……木の実?」

 

―――この辺りに自生している何の変哲もない木の実だった。

なんでそれが霊夢に向かって飛んでいくのか分からないが、少なくとも俺達に害意を持った奴が居るという事だけは分かった。それだけ分かれば十分だ。

俺は手にしていたランプを空高く放り投げ、気配の主の動きが止まったことを察知すると、すぐさまソイツの元へと駆け寄り、頭と思われる部分を鷲掴みにして高々と掲げる。

そして右手に叢雲を取り出し、その切先を持ち上げた奴の首に向ける。

 

「五秒やる。その間に正体を現せ。でなかったらお前の首を掻っ切る。……4、3、2、1、ゼ―――」

「わーッ! 分かったからちょっと待ってッ!!」

 

ゼロと言い切る直前に謎の主が降参し、その姿を俺達の前に顕わにする。

俺達の前に現われたのは、オレンジ色の髪をした赤い服の何処にでも居そうなただの妖精だった。

 

「妖怪じゃなくて、ただの妖精?」

「そうよ! 姿を見せたんだからその手を離して! その剣、物凄く怖い!!」

「………………」

 

俺は聞いていた話と違う奴の登場に戸惑いながら、鷲掴みにしていた妖精を放り投げ、風を操って空に放り投げたランプを手元に戻す。

放り投げた妖精が地面に尻餅付くと、闇の中から黒髪に青い服を着た妖精と金髪に白い服を着た妖精が姿を現した。

何処かで見た事のある妖精に首を捻りながら、三人をランプで照らしていると霊夢がこっちへとやって来る。

 

「一応聞くけど……サニー、大丈夫?」

「うん。怪我はしてないけど、すんごく怖かった。あの人、目がマジなんだもん」

「サニーも災難ね。だから私はやめた方がいいって言ったのよ」

「そんな事ルナ一言も言ってないじゃん!!」

 

赤い服の妖精の言葉を皮切りに、三人の妖精がなにやら喧嘩をし始めた。

喧嘩といっても、赤い服の子が青い服の子に突っ掛かっているだけで、殴る蹴るまではしていない。

妖精の喧嘩なんて放っておいても良いんだが、何時までもコントを見ているわけにもいかないし、さっさと止めるか。

 

「あ~……そこの三人。ちょっと良いか」

「ん? なによ、わたしはルナに一泡吹かせるのに忙しいの」

「いや、そんな事どうでもいいから。とりあえず、いきなり俺達を襲って来た理由を聞かせてもらうか」

「理由って言われても……ただなんとなく? 前に来た人間たちみたいに驚かせてやろうと思って」

「前に来た人間ってことは、里の若い衆を襲って怪我をさせたのはアンタ達ね」

「別に襲ってないよ。ただ今回みたいに悪戯をしたら、向こうが勝手に驚いて盛大にこけただけよ」

「……怪我をしたってそんな理由だったのかよ」

 

妖精たちが言っている事が本当か知らないが、嘘を吐いている風にも見せないし、恐らく本当の事だろう。

音もなく近付き、姿を見せなかったってのは、さっきの俺達と同じ状況に陥ったからそう感じたんだろ。

確かに真夜中にあんな事をされて驚くのは分かるけど、もっと正確に起こった事を話して欲しいもんだ。

 

「……リュウ。こいつら如何する?」

「そうだな……流石に野放しにするわけにもいかないが、態々本気出すのも莫迦らしいし、テキトーに吹き飛ばす程度でいいんじゃないか?」

「それもそうね。相手はただの妖精だし」

 

呆れた感じで霊夢が同意すると、霊夢は三人の額に一枚ずつ札を貼っていく。

そして何かの印を切ると、妖精に張った札の文字が光、吸い寄せられるように三人を縛り上げる。

 

「わッ?! なにこれ、一体なんなの!?」

「全く動けない……」

「……こんな事が平然と出来るなんて、もしかして貴女たちはッ!」

「まぁとりあえずアレよね。面倒だから紅魔館辺りまで吹っ飛んどきなさい!!」

 

そう言って霊夢は、三人に向かって陰陽鬼神玉のような霊力の塊を叩き込み、宣言通り三人を紅魔館の方角へと吹き飛ばした。

吹き飛ばされた三人は断末魔を挙げる事も出来ず、闇夜の彼方へと消えていった。

 

「全く。今回の騒動の原因が妖精の悪戯だなんて迷惑な話だわ」

「蓋を開けてみれば拍子抜けだったが、こんな事で依頼料が貰えるんだから楽な仕事だろ」

「確かにそうだけどさぁ~。このくらいの事で私に依頼しないでよね。……確かにホタルは綺麗だったけど」

 

よっぽど今回の顛末に不満を持っているのか、霊夢は不貞腐れてしまっている。

確かに今回の事は俺も思うところあるけど、それは霊夢にいったって仕方がない事だ。

霊夢も頭では分かっているんだろうが、それでも愚痴や不満ってのは出てしまうものだ。

中々機嫌が治ってくれなくて如何したもんかと悩み、ふと目を横に向けると先程と変わらない光景が広がっていた。

 

「霊夢、横を見てみろ」

「ん? なによ」

 

霊夢は俺に促されるまま横を振り向くと、川辺ではホタルたちの舞が続けられていた。

ちょっとした騒ぎがあったにも関わらず、ホタルたちは何事もなかったかのように宙を飛んでいる。

ランプを消してみると、雲が流れて夜空に浮ぶ月と星空が綺麗に映し出され、その中をホタルが舞う。

その光景に霊夢の機嫌も少しは治ってくれたのか、さっきよりは表情が和らいでいる。

 

「……どうする? もう少し眺めていくか?」

「そうね。もうちょっとだけ見て行きましょうか」

「分かった。気が済むまで付き合うよ」

 

おどけながら言いつつ、俺は霊夢の横に並んで夜空に舞うホタルを眺める。

次は何時見られるか分からないから、俺達はその幻想的な光景をしっかりと目に焼き付けた。

 




えっ? 肝試し要素は何処にいったんだって? 最初にしてたじゃないですか、里の若い衆が。
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