竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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小説の更新が滞っていた理由について。

リュウと霊夢がキスをしたが、次回に書くネタがない → 以前に活動報告に寄せられたネタは次の異変が終わってから使いたい → なら、地霊殿の話を書けばいいじゃない(今ここ)


第百七十四話 地中から現れるもの

 

霊夢と初めてのキスをしてから暫く経ったが、コレと言った異変もなく平穏な日々を過ごしていた。

まぁ、あの日の翌日の霊夢は顔がニヤけて気色悪かったり、俺の顔を見るたびに顔を真っ赤にしていたりしたが、今はそんなことはなく元の状態に戻っている。

ニヤけている霊夢は遠目から見ると本当に気色悪くて、変な病気にでもなったんじゃないかと本気で心配になったよ。

その事を衣玖に相談したら呆れられて「放っておいても大丈夫です」とか言われたけど、まさか本当に治るとはな……。アイツ、医者にでもなれるんじゃないのか?

霊夢の調子も戻り、空から降る雪を見ながらそろそろ年末かと思っていたある日、地面の底から何かが噴出すような轟音が神社の近くで響き渡った。

 

「うおッ?! 一体何事だ!?」

 

余りの突然の出来事に慌てて外を見てみると、神社の近くで巨大な水柱が天を突かんばかりの勢いで立ち昇っていた。

水柱からは湯気が立ち昇っているところを見るに、アレがお湯なんだって事は分かるんだが……それがいきなり噴出してくるってのが分からん。

神社の近くにあんな事を仕出かす妖怪も居ないし、人間の力でどうにか出来る様な事じゃないし、訳の分からない事だらけだ。

 

「……マジで一体なんなんだありゃ?」

 

巨大な水柱の出現に呆気に取られていると、騒ぎを聞きつけた霊夢と衣玖がこっちへとやって来た。

 

「ちょっとリュウ、今の轟音は一体何よ……って、本当に何よアレ」

「間欠泉……ようですね」

「間欠泉? アレがか?」

「はい、恐らく。わたくしも見るのは初めてですが……」

 

衣玖は自信なさ気に言うが、状況から考えてそれ以外には考えられない。

でも一つ解せない事がある。幻想郷で暮らすようになって何年にもなるが、あの辺りで水が湧き上がっているのを今まで一度も見た事がない。

この前の地震で地盤が変動したのだとしても、なんらかの予兆があってもいいはずだが……なにか別の原因があるのか?

 

「それでリュウさん。アレは如何なさいますか?」

「あ~……流石にあのままって訳にもいかないし、水が落ち着いたら間欠泉を塞ぐか」

「そんな! 温泉を閉じるなんて勿体無いじゃない!!」

「そうは言うけどな、霊夢。高温のお湯が定期的に噴出すなんて危なっかしいだろ」

「確かに危ないかもしれないけど、天然温泉が汲み放題で入り放題なんて最高じゃない! 幻想郷で温泉に入れる機会なんてそう滅多にあるもんじゃないし、コレを逃す手はないわ! 衣玖もそう思うでしょ!?」

「お前もそう思うのか、衣玖?」

「えっ?! あ、その…………実はちょっとだけ興味があります」

 

衣玖は若干気恥ずかしそうにしながらも、霊夢の意見に同意してくる。

正直なところ、風呂なんてお湯を沸かせば済むと思うんだが、温泉ってだけで魅力があるのかもしれないな。

 

「ほら見なさい! と言う訳で、アレは塞がずにそのまま利用させてもらうわよ!」

「……まぁ、お前等がそこまで言うならそれでいいけど、どうやって汲みに行くんだ?」

「それは……紫か萃香に協力させるからなんとかするわよ。と言う訳でリュウは一足先に間欠泉を下見しておいてね」

「やれやれ、しょうがねぇな」

 

面倒だ。そう思いながらもあの間欠泉のもとへ向かう事にした。

向こうにいって原因が分かるとは思えないが、家に居ても原因が突き止められるわけじゃない。

なんかの異変の前触れじゃなければいいけど、もしそうだとしたら……二人には悪いが穴は塞がせてもらうか。

そんな事を思いながら間欠泉の傍へとやってきたが、間欠泉の周りは予想以上に暑い。

もうすぐ年末だって言うのに、冬とは思えないくらいの暑さだ。てか、湯気の湿気で蒸し暑い。

吹き上がる間欠泉の影響で周囲の雪は溶け切っているし、この様子だとこの辺りじゃ雪が積もることはもうないかもしれないな。

まぁ、雪見酒をしたいなら家でも出来るし、この辺りの雪が積もらなくなっても特に問題はないか。

間欠泉の穴を見ようと水柱に近付いていくと、この辺りでは余り嗅いだ事の無い臭いが辺りに充満していることに気が付いた。

地面から水が噴出したときに一緒に出て来たのか、鼻が曲がりそうなくらいの異臭が立ち込めている。

余り嗅いでいて良いものでも無さそうだし、やっぱり塞いでしまったほうが良いんじゃなかろうか? そう考えながら辺りを探っていると一陣の風が吹き抜け、辺りに充満していた異臭を何処かへと運んでいってしまう。

 

「やぁやぁ、どうもお久し振りです。清く正しい幻想の伝統文屋の射命丸文です」

「……誰かと思えばあんたか」

「おやおや、随分と冷たい反応ですね。久し振りなんですし、もうちょっと違う反応でも良いじゃないですか」

「いや、随分と早い到着だなっと思っただけだ。やっぱりあの轟音は山の方にまで響いていたか」

「そりゃアレだけの大きな音が響けば誰だって気付きますよ。……もっとも、場所が博麗神社の近くと言う事で、ワタシと天魔様以外の天狗はこの辺りに近付かないでしょうけどね。お陰でスクープを独占できますよ!」

「……相変わらずたくましい奴だ」

 

霊夢や衣玖だけじゃなく、新聞のネタを独占できるから射命丸の奴もかなりテンションが上がっている。

新聞のネタの為に態々こんな所に来るなんて大した奴だと呆れながら、心の何処かで思わず感心してしまう。

 

「それでリュウさんはこんな所で何をしてるんですか? もしかして突如として現れた間欠泉の原因究明に着たんですか?」

「期待してるところ悪いが外れだ。霊夢の奴がこの温泉を家にまで汲むとか言い出してな、その下見に来ただけだ」

「なーんだ、残念。博麗神社周辺で温泉が出るなんておかしいから、異変か何かだと思ったんですけどねぇ」

「……やっぱり、この辺りで間欠泉が噴出すわけが無いのか」

「おやおや? 下見とか言いつつ、やっぱり原因を探りに着たんですか?」

「気になっているのは確かだが、下見は下見だ。それ以上の事はやらねぇよ」

 

若干鋭いところをついてくる天狗をあしらっていると、間欠泉の穴から突然霊魂が湧き出してきた。

妖夢と対峙していた所為で、霊魂くらいじゃ別に驚きはしないが、幻想郷で見かける浮遊霊とは何かが違う。

上手く説明する事は出来ないが、少なくとも外の世界から迷い込んできたって訳でもなさそうだ。

 

「おやアレは……ただ幽霊って訳でもなさそうですね」

「そうみたいだな」

 

アレが一体なんなのかは分からないが、俺は何が遭ってもいいように叢雲を取り出して構える。

すると、穴から出て来た霊魂は俺が剣を出したのに驚いたのか、何もせずに逃げ帰った。

その後姿を見て冥界から迷い出ただけなのかとも思ったら、今度は大量の霊魂が間欠泉の穴から湧き出してきた。

 

「ちょッ?! 本当になんですか、これ!?」

「そんなの、俺が聞きてぇよ!」

 

間欠泉の穴から大量に湧き出した霊魂に対して、俺は叢雲を振るい霊魂の一団を薙ぎ払う。

薙ぎ払われた霊魂たちはそのまま塵となって消滅するが、一振りでは全てを消滅させることが出来ず、続々と地中から湧き出してくる。

このまま奴等を薙ぎ払っていても埒が明かないし、地面に開いた穴を塞いでしまおうかと考えたが、あんなにはしゃいでいる二人の顔を曇らせるのは流石に躊躇われるな。

 

「如何しますか、リュウさん。私の風で吹き飛ばしますか?!」

「……しゃーない。此処は一時撤退するぞ」

「えぇッ?! この霊魂たちは放っておくんですか!?」

「薙ぎ払ったところで意味がなさそうだからな。一度退いて作戦を練る。……ほら、グダグダ言ってないでさっさと行くぞ!」

「ちょっと待って下さいよーッ!」

 

俺は射命丸を連れて一先ずこの場を後にし、脇目も刳らず博麗神社へと戻った。

神社の方にはまだ霊魂が出現していないようだが、間欠泉の位置を考えると奴等が此処に来るのも時間の問題だろう。

溢れ返った霊魂は始末すればいいだけだが、問題なのは何故アイツ等が突然湧き出してきたのかって事だ。

それを解決しない限りは幾ら退治しても意味はないんだが、原因が分からないんじゃ解決のしようがない。

如何したもんかと頭を悩ませながら家に上がると―――

 

「お帰りなさい、竜神さん。血相を変えてどうしたのかしら」

「今すぐ帰れ」

「あら酷い。態々今度の忘年会の打ち合わせに着てあげたのに」

 

―――俺の居ない間に八雲の奴が家に上がり込んでいやがった。

相変わらず神出鬼没なやつだが、今はこんな奴にかまっていられるほど暇じゃない。

それに打ち合わせって言ったって、どうせ何時何時に神社で開くから準備しておいて位しか言わないくせに、何を偉そうに……。

 

「あやややや……。相変わらずお二人は仲が悪いんですね」

「こんなババァと仲良くなんて出来るか」

「あら、私としては仲良くやっていきたいと思っているのよ?」

「胡散くせぇな……」

「疑りぶかいわねぇ。そんなに疑ってばかりいると眉間に皺がよるわよ」

「ほっとけ!」

 

俺が思わず大声を出すと、騒ぎを聞きつけたのか霊夢と何故か萃香がコッチにやってきた。

 

「ちょっと如何したのよリュウ。そんな大声を出して」

「どうせ紫にからかうわれたんでしょ。紫もリュウで遊ぶのも程ほどにしときなって」

「あら失礼ね。私はからかってなんていないわ。ただ弄り倒しているだけよ」

「大して変わらねぇだろうが……」

 

八雲の相手をするのは本当に疲れる。あの九尾はよくこんなのを主人として仰げるな。

九尾の狐に若干感心しながら、わざとらしく盛大な溜息を吐き出す。

こんなババァの相手をしている場合じゃないし、こんな奴に構ってないで霊夢に間欠泉で起こった事を話さないと。

そう思って顔を上げると、戸の隙間を縫って間欠泉から湧き出してきた霊魂が家の中に入ってきた。

 

「ちょっと、どっから出てきたのよコイツ!?」

「例の間欠泉からだよ。その事を話そうと思って急いで戻ってきたところだ」

「間欠泉? だとしたら、この霊は地底から湧き出してきたのね」

「地底って事はコイツ等、地獄にいる筈の怨霊か。……地獄かぁ~、皆元気にしてるかなぁ~」

「あや? お二人ともこの霊魂の事をご存知なのですか?」

「えぇ、伊達に妖怪の賢者ではありませんから。しかし、地獄にいる筈の怨霊が地上に出て来たのは少々不味いですわね」

 

八雲が何かを知っている様だが、こう話している間にも怨霊たちは家の中に入り込んでくる。

コイツ等がなんなのかは名前からして察しは付くが、人の家にズケズケと入り込んでくるのが気に喰わねぇ。

家の中で叢雲を取り出すわけにもいかないし、ここは力を軽く解放して怨霊どもを追い払うか。

そう思い、力を解放しようとしたが、その前に霊夢が霊撃で怨霊ども追い払ってしまった。

 

「霊夢……先に追い払うなよ」

「アンタが力を解放したら家が吹き飛ぶでしょうが。それなら私の霊撃の方がまだ安全よ」

「確かにそうだけど……。まぁ、こんな事でウダウダ言っても仕方がないか」

「痴話喧嘩……と言うほどでもないわね。話が纏まったのなら早速仕事を依頼したいのだけど」

「仕事を依頼ってあの怨霊を鎮めろって事? まぁ若干面倒だけど、その位だったら直ぐに取り掛かるわよ」

「別にそれはしなくていいわ。後で死神が連れて行くでしょうから。それよりも霊夢には何故怨霊が地上に出て来たのかを調べに行ってもらうわ」

「調べにいくって何処に行けばいいんだよ。あの間欠泉には特に何もなかったぞ」

「別にそんな所ではないわ。あの怨霊たちが本来居るべき場所……〝地獄〟へ行ってもらうわ」

 




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