竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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リュウを地底に行かせるかどうかで悩んでたけど、結局こうなった。


第百七十五話 暗い洞窟の明るい網

 

底が見えないほどに深く暗い大きな穴。俺と霊夢はその入り口に立っている。

神社の近くに出来た間欠泉。其処から現れた大量の霊魂は八雲の話だと地獄に送られた怨霊たちらしい。

それがなぜ間欠泉から現れたのか八雲にも見当がつかないそうだが、このまま奴等を野放しにしておく訳にもいかないし、何時もの様に俺と霊夢が異変解決に乗り出したってわけだ。

八雲の奴から地獄に行く為の方法を聞いて此処まで来たが、まさかこんな大穴が入り口だったなんてな。

幻想郷にこんな穴があるなんて知らなかったが、今からこんな所に潜らないといけないのかと思うと若干憂鬱な気持ちになる。

八雲からの依頼って時点でやる気が出ないっていうのに、こんなものを見たら帰りたくなってくるっての。

 

「はぁ……。めんどくせぇ」

「愚痴ってても仕方がないじゃない。さっさと潜って、さっさと解決しちゃいましょ」

「霊夢はやる気十分って感じだな」

「そりゃそうよ。早く解決しないと何時まで経っても温泉に入れないじゃない」

「……やる気出してる理由がそれかよ」

 

神社の為といわない辺りが霊夢らしいとは思うが、流石に呆れてしまう。

しかし、霊夢の言う通り何時までも此処に立っていても仕方がないし、さっさと潜って解決してしまおう。

そう思った俺は視線で霊夢に合図を送り、目の前にある大穴へと入っていく。

霊夢も俺の後をついて来るのを確認しながら、掌に火球を作って光源を作り出す。

掌の火球は煌々と辺りを照らし出すが、光が届かないのか、穴の底までは照らし出せなかった。

 

「本当に深い穴ね。地獄の入り口って言うのはこんな感じなのかしら?」

《本来地獄にいくには彼岸を通らなければならないわ。言わばその穴は裏口で、新地獄ではなく旧地獄に通じているわ》

「へぇ~そうなんだ。……って、紫? アンタどっから話しかけて来てるのよ」

《こっちよ、霊夢》

 

八雲の声がする方を見てみると、そこに八雲の姿はなく、霊夢の陰陽玉が浮んでいた。

今回の依頼で陰陽玉を持って来ているのは知ってたが、なんでそれから八雲の声が聞こえてくるんだ?

 

「あ、アンタ、私ん家の秘宝に何してんのよ?!」

《ちょっと改造しただけよ。遠隔通信ができる様になっただけだから気にしないで》

「気にしないでって……アンタねぇ」

「ていうか、なんでそんな機能付けたんだよ」

《私も地底の様子が気になったからよ。地底には地底のルールがあって、私たち地上の妖怪が干渉するのはよくないの》

「干渉はできなくても遠隔通信するのはありなんだな」

《別に直接干渉しているわけではないもの。何の問題もないわ》

「……あ、そう」

 

それは屁理屈じゃないのかとも思ったが、ウダウダ言っても仕方がないし、こいつのやることを一々気にしていたら身が持たない。

声が聞こえるだけで別に実害もないわけだし、このくらいの事なら見逃してやっても良いか。

 

《リュウさん、地底界の取材宜しくお願いしますね。渡したカメラで写真を取ってくるだけでいいので》

《あ、時間があったら星熊勇儀って鬼に会ってちょうだい。わたしが何時もの酒を欲しがってたって言えば通じるから》

「あ~はいはい」

「てか、紫だけじゃなくてあんた等も居たのね」

《こんなおいしいネタを見逃せるわけないじゃないですか!》

《わたしは暇潰しかな。あ、温泉工事はちゃんとやってるから安心して》

「それだったらいいわ」

「いや、よくはねぇだろ」

 

何時もよりも喧しい道中に若干の不安を覚えながら、俺と霊夢は何もない穴を降りていく。

敵の出ない道中は平和で良いんだが、陰陽玉から聞こえてくる声が鬱陶しくて堪らない。

普段の異変解決は霊夢と二人でやっているから、こう姦しいのはどうも慣れないな。

もう少し静かにしてくれないだろうかと思っていると、道の先で何か物体が動くのを見つける。

火球を道の先に放り投げ、その物体がなんなのか確認してみると、俺の予想の斜め上のものが照らし出された。

道の先に居たのは緑色の髪の少女なんだが、なんでか知らないけど桶の中に入っている。

いや、確かに桶は水とかを入れておくための物だけど、人(?)が入るための物じゃない。

彼女の趣味……だとしても理解できないが、地底に行く道中でいきなり変な物を見てしまった。

 

「……ねぇリュウ。アレ、なに?」

「俺に聞くな。俺に」

 

霊夢がそう聞いてくるのも凄く分かるが、正直俺にも良く分からん。

とりあえず本人に聞けば直ぐに分かるだろうけど、向こうも俺らの姿を認識したのか、凄く驚いた表情をしている。

今のところ敵意とかは感じられないし、純粋に地上からやってきた俺らに驚いているんだろう。

こういう場合、下手に動くと話がねじれて面倒な事になるんだが……さて、如何したもんかな。

 

「キスメ。そんなところで何してるの」

「あ、ヤマメ」

 

俺達が立ち止まっていると、奥の方からもう一人別の妖怪が姿を現した。

茶色を基調とした服を着た黄色い髪の女性。それだけを見れば地上の妖怪と大差ないんだが、地底に住んでるってことは地上の奴とは何かが違うのか?

 

《あれは……土蜘蛛ね。地上では姿が見えないと思ったら、こんなところにいたのね》

「土蜘蛛? 紫、アンタ何か知ってるの?」

《いいえ、何も。……ただ言えるのは、地底で暮らしている妖怪は地上には居られなくなった理由が在ると言う事よ》

「……地底の連中は封印された、もしくは地上から追い遣られた妖怪たちってことか」

《理解が早くて助かるわ》

 

見かけだけじゃ判断できないってことなんだろうが、如何見ても害のある妖怪には見えないな。

町や村を幾つも壊滅させたとか、自然災害を引き起こしたとかなら分からなくもないけど、彼女にそんな力があるようには見えない。

もっと別の理由があるのかもしれないが、彼女も俺達に敵意を向けてるわけじゃないから動き難い。

とりあえず何が遭ってもいいように、何時もの様に霊夢の前に立って警戒だけは怠らずに様子を窺っていると、俺の予想とは裏腹に黄色い髪の少女はにこやかな笑顔を見せる。

 

「そんなに警戒しなくても大丈夫だって。あたし等は何もしないからさ」

「………………」

「あたしの名前は黒谷ヤマメ。こっちの子はキスメって言うあたしの友達。……それで二人は?」

「……リュウだ。神社で居候している」

「私は博麗霊夢。博麗の巫女って言った方が伝わるかしら」

「は、博麗の巫女?! なんだってこんな地中に……。もしかして異変解決か何か?」

「まぁそんなところよ」

 

博麗の巫女の名を出しただけであの反応とは……。さすがと言うかなんと言うか。

 

「あたし等は何もしていないぞ。このくら~い地中で大人しく暮らしているし」

「まだ何も聞いてないでしょ。第一、あんた等みたいなのがどうにか出来る様な事じゃないでしょうし」

「それじゃ、あたし等を退治しに来たわけじゃないのね」

「私たちの前に立ちはだかるなら完膚なきまでに叩きのめしてあげるけど?」

「何もしないから命だけは助けて!」

 

霊夢に脅されて驚いたのか、土蜘蛛は両手を上に挙げて降伏の意を示してくる。

それに釣られたのか、桶の少女も両手を挙げて土蜘蛛と同じ様に降伏の意を示してきた。

博麗の巫女ってのはこんな地中にまで名が知れ渡っているんだな。

 

《どうするんだいお二人さん。相手は降参しているみたいだけど?》

「……な~んかやる気が削がれちゃったわね。こんな無抵抗な相手を倒しても目覚めが悪くなるだけじゃない」

《あら、随分と優しい事を言うのね。幻想郷中に轟く博麗の名が泣くわよ》

「うっさいわよ、紫。どうやろうと当代である私の勝手じゃない」

《ま、貴女がそう言うならそれでいいわ。ちゃんとお仕事さえしてくれれば文句はないもの》

「……アンタも母さんみたいな事を言うわね」

「ほっとけ霊夢。此処で言い合っても時間の無駄だ」

 

不機嫌そうな霊夢を諫めつつ、八雲も余計な事を言ってくれたもんだと呆れ果てる。

それだけ霊夢が不真面目だってことなんだろうけど、先代と同じ様なことを言わなくてもいいだろうに。……もっとも、先代と八雲の気持ちが同じかどうかは知らんがな。

 

「え~っと……つまり、あたし等はどうなっちゃうの?」

「ん? 別にお前等を倒す理由が無いからそんなに怯えなくていいぞ」

「あ、ホント? いや~助かった。お兄さんが話の分かる人で良かったよ」

「まぁそう言う訳だから、私たちは先に行くわ。邪魔するんじゃないわよ」

「先って……もしかして旧地獄へ行くつもり? それは止めといた方がいいんじゃないかな」

 

先へと進もうとする俺らを土蜘蛛は止めようとするが、必至になって止めようとしている訳でもない。

行って欲しくない理由がある訳でもなさそうだが、この先に何か思うところでもあるんだろうか?

 

「随分と変な言い方をするわね。この先に何が在るって言うのよ」

「この先には地上と地中を結ぶ橋が架かってるんだけど、そこの番人がちょっと……いや、かなり厄介な性格をしててね。凄く嫉妬深いんだ」

「嫉妬深い? それが一体なんだって言うのよ。別に大した事じゃないじゃない」

「〝普通〟の嫉妬ならいいんだけど、彼女のは普通じゃないからねぇ~」

 

そう言って一人納得する土蜘蛛だが、その番人に会った事のない俺達からすれば何の話かさっぱりだ。

土蜘蛛の隣にいる少女は分かったみたいだけど、嫉妬に普通もなにもないだろう。

 

「まぁ、どうしても行くっていうなら止めないけど、彼女には気をつけた方がいいよ」

「随分と引っ掛かる言い方をするわね。その番人っていうのはどんだけ面倒な奴なのよ」

「いや、本当に嫉妬深いとしか言いようのない性格だから。それに地底にいる妖怪って厄介なのが多いけど、彼女はその中でもトップクラスだからね」

「……そこまで言われる程の性格ってある意味凄いな」

「別になんだっていいわよ。それよりもさっさとこんな異変解決しましょ」

「それもそうだな。……じゃあな二人共、達者で」

「じゃ~ね~。……ほら、キスメも」

「……バイバイ」

 

手を振って見送る二人に別れを告げて、俺達は穴の奥へと進んで行く。

穴の先は未だに見えず、何処まで続いているのかあの二人に聞いておけばよかったと思ってしまう。

まぁ、進んでいればその内地上と地中を繋ぐ橋とやらが見えてくるだろうし、余り気にしていても仕方がないか。

 

《ところでリュウさん。一つお聞きしたいんですけど……》

「あん? なんだよ天狗」

《あの二人の写真って撮っていただけましたか?》

「……あ」

《あってなんですか、あって! これじゃリュウさんにカメラを預けた意味が無いじゃないですか!》

「んなこと言われてもなぁ~。普段はカメラなんて使わないんだから仕方がないだろ」

「て言うか、リュウにそう言う事を期待するほうが間違っているのよ」

《そうかもしれませんけど~》

 

なんか霊夢にさらっとひどい事を言われた気がするが、黙っていよう。写真を撮るのを忘れたのは事実だし。

半ば無理やり渡されたとは言え、約束をすっぽかすのも気分が悪いし、帰りにでも写真を撮らせて貰えるように頼んでみるか。

 




いまさらだけど、ウチの小説って1ボスと戦わないことが多いな。
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