竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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最近、暇な時間にモンハンをやってます。
上位の雷狼竜はソロでもいけるけど、獄狼竜はいける気がしねぇ。


第百七十六話 地殻の下の嫉妬心

 

洞窟の奥へと進んでいった先に在ったのは、木製の古い大きな橋だった。

これが土蜘蛛の言っていた地上と地底の境界にかかる橋なんだろうが、こんな所に橋を架ける意味があるのかと考えてしまう。

普通に洞窟から縦穴でも掘っていればいいと思うんだが、それじゃ駄目だったんだろうか?

 

「随分と古臭い橋ね。こんな洞窟の中にあってよく腐らなかったモンね」

「ちゃんと手入れすれば長持ちするだろうし、危なくなったら鬼が修繕してるんじゃないのか?」

《流石の(わたしら)もそこまではしてないって》

「ふ~ん……。ま、何でもいいけどね。さっさとこんな橋渡って、旧地獄にいきましょ」

 

そう言って先へと進む霊夢の後を追いかけて、俺も橋を渡っていく。

橋は何十人もの人が同時に行き交いできるくらいの大きさだが、長い事誰も行き交いしていないのか、かなり古びている。

恐らく地底に移住するときに使われた程度で、それ以降は殆ど使われる事がなかったんだろう。

この分だとまともな手入れもされていないだろうし、霊夢の言うようによく朽ちずに残っていたもんだと感心してしまう。

 

《あ~リュウさんリュウさん。写真の方を忘れないで下さいね》

「わーってるって」

 

意外と心配性だなと思いながら、土産代わりにこの橋の写真を撮る事にした。

幻想郷ではまず見られない光景だし、カメラを使ってみるには丁度いいだろう。

そう考えた俺は、手の中に天狗から渡されたカメラを出現させて構える。

後ろ側のレンズから覗き込むように橋を見て、上部にあるボタンを押そうとしたとき、橋の反対側から金髪の女性がやって来るのが見えた。

向こうもこっちに気がついたのか、俺達を見るなり驚いたような顔をするが、直ぐに表情を戻してこちらへとやって来る。

何やら睨まれている様な気もするが、洞窟の途中であった土蜘蛛のように、地上側から誰かがやって来るのは珍しいのだろう。

 

「そこの二人。此処で一体何をしているの」

「別にこんな橋に用なんてないわ。ただ、この先に用があるのよ」

「旧都に? ……ふ~ん、あそこでデートでもしようって訳ね。妬ましい」

「な、なんでそうなるのよ。別にデートしにきた訳じゃないわよ」

「そうだ。大体逢引きするなら、こんな行き難い場所じゃなくてもっと別の場所にするって」

「アンタはツッコム所が違う!」

 

何故か霊夢に怒鳴られてしまったが、よくある事なんで気にしないでおこう。

それよりも、こんな所に現われたと言う事は彼女が土蜘蛛の言っていた橋の番人とやらか。……俺の知っている番人とは大分違うが、俺達の前に姿を現したと言う事は自分の仕事をしに来たんだろ。

 

「まったく、アンタはホントにどっかずれてるわよね。今のは他に言う事あったでしょ」

「そうか? デートしに来たと思われてるからそれを否定しようと思ったんだが」

「じゃあ言い方に問題があったのよ。もう少し考えて発言しなさい」

「イチイチ考えて発言してたら何も言えなくなるだろ」

「だから、そう言う事をいってるんじゃないっての」

「あなた達本当に仲がよさそうね。人目も気にせずイチャイチャと……妬ましい」

「………………」

 

彼女は一体なんなんだ? 言葉の最後に〝妬ましい〟とか言っているけど、そんな妬むほどの事じゃないだろ。

もしかしたら、自分に仲のいい友人がいないから俺達を見て嫉妬しているのかもしれないが、妬まれるほどの事をしている覚えはないんだけどな。

 

「綺麗な黒い髪に顔立ちの整った綺麗な顔。全身から感じさせる自信に頼り甲斐のある彼氏……本当に何もかもが妬ましい」

「……ちょっとリュウ。なんなの、アレ」

「いや、俺に聞くな。俺だって分からん」

 

本当によく分からないが、俺達の前に現われた女性はやたらとこちらを妬んでくる。

初対面だから妬まれる様な事なんて何もしてないし、俺達は普段通りの格好できたから特別おかしなところなんて何もない筈なんだが……。

今一度自分たちの格好を見てみるが、特に変な所もなく、普段となんら変わりない。……だと言うのに、彼女の嫉妬心は治まる気配を見せない。

 

「あぁ、本当に妬ましいわ。こんなにも嫉妬したのは……先週以来ね」

「わりと最近じゃねぇか」

「いつ嫉妬したかなんて問題じゃないわ。人の揚げ足をとろうだなんて、妬ましい」

「……妬むような事じゃねぇだろ」

 

金髪の女性はやたらと俺達のことを妬んでくるが、此処まで来ると厄介を通り越して鬱陶しい。

あの土蜘蛛も〝普通〟の嫉妬じゃないとは言っていたけど、まさかここまでのモノとは思いもしなかった。

此処まで来ると嫉妬深いというよりも、嫉妬心が具現化したような奴と言ってもいいんじゃないか?

隣に居る霊夢も彼女の事を煩わしく思っているのか、かなりイライラしているし……。

 

「さっきからなんなのよアンタ。妬ましい妬ましいって、それしか言えないわけ?」

「別にそう言うわけじゃないわ。ただあなた達がわたしの嫉妬心を煽るからよ」

「アンタが異常なまでに嫉妬深いだけでしょうが」

「これが〝わたし〟だもの、どうしようもないわ」

「……ちょっとリュウ。コイツ如何にかしなさいよ」

「そうやってまた彼とイチャつこうとするなんて……妬ましい」

 

なんにでも妬める彼女の事を面倒に思いながら、隣に居る霊夢が臨戦体勢に入ったのを俺は見逃さなかった。

 

「……もういいわ。そんなに妬ましく思うなら、そう思えないように眠らせてあげる! 行くわよ、リュウ!」

「やれやれ、面倒なこった」

 

出来る事ならスルーして先に進みたいんだが、この調子だと手伝っておいた方が早く済みそうだ。

嫉妬くらいでイチイチ腹を立てても仕方が無いだろと思いながら、とりあえず叢雲を取り出して霊夢の前に立つ。

俺達が臨戦体勢に入ったのを見てか、金髪の女性はポケットから一枚のスペカを取り出す。

 

「嫉妬『緑色の眼をした見えない怪物』」

 

女性がスペカを宣言すると、名前の通り緑色をした丸い球が放たれるが、俺達に向かって飛んで来ることはなかった。まるで何かが動いた軌跡に沿って放たれているかのようだ。

その代わり、放たれた球は消滅する事無くその場に留まり続け、背後から回り込むように俺達へと向かって来る。

いままでにも追尾してくる弾幕は幾つか見てきたが、後ろから回り込むように飛んで来る弾幕は初めてだ。

随分と珍しいモノを見させてもらったが、女性から放たれている弾幕ではないため、本人が無防備になってしまっている。

 

「面白いスペカだけど、それじゃ隙だらけよ!」

 

彼女が無防備になっているところに霊夢が弾幕を放つが、その背後から緑色の弾幕が迫って来る。

俺はすぐさま霊夢の後ろに下がり、迫って来る緑の弾幕を一刀で斬り払う。

弾幕が斬られると言う事を想定していなかったのか、斬られた弾幕は爆発もなく緑の光となって消滅した。

その間に霊夢が攻勢をかけるが、懲りずにまた霊夢の背後を突こうと弾幕が迫って来る。

俺が傍に居る以上は、よほどの攻撃でもない限り無駄なんだが……地底に住んでいる彼女が知るわけないか。

少々面倒に思いながら緑色の弾幕を切り裂いていると、今の弾幕とは別の弾幕が飛んで来る。

それだけなら良かったのだが、別の弾幕は俺の方向からだけではなく、霊夢の方からも求んできている。

俺は目の前の弾幕を斬り払い、霊夢は自分の弾幕をぶつけて相殺すると、これまた奇怪な光景が眼に飛び込んできた。

さっきまで一人だったはずの女性が、何故か俺の目の前にも出現していて、後ろを振り返ってみれば、霊夢の正面にも同じ女性が立っている。

実は双子だった……なんて訳もないだろうし、恐らく分身か何かだろうけど……瓜二つだとどっちが本体か分からんな。

 

「「舌切雀『大きな葛籠と小さな葛籠』」」

 

二人してスペカ名を宣言してくるが、二人が放ってくる弾幕自体は大したことはない。

名前の通り大きな球の弾幕と、小さな球の弾幕を周囲に飛ばしているだけの物だから、回避することは然程も難しくはない。ただ問題なのは、どちらが本体なのかって事だ。

今日初めて会ったから容姿の特徴なんて分からないし、影で実態かどうかを調べようにも地底だから光源が少なくて影が見難い。

霊夢の方は目の前に居る相手に弾幕を放って調べようとしているが、空間転移でもしたのか、攻撃が当たる前に避けられてしまっている。

俺も前方の相手に向かって斬撃を放ち、彼女が本物かどうかを確かめてみる。

斬撃は彼女が展開した弾幕を切り裂いていき、難なく彼女に当たるものの、当たった瞬間に大量の弾幕をばら撒かれてしまう。

ばら撒かれ球は放った斬撃が斬り裂くが、本物かどうか判別する前に転移されてしまう。

転移して姿を消した彼女たちだが、程なくして橋の先の方に姿を現す。彼女たちはこちらを嘲笑うかのように橋の向こうで空に浮んでいる。

二人同時に現れたもんだから、どっちがどっちの前に現われた分からなくなっちまった。

……まぁ、攻撃が当たってたとしても真贋が分かるわけでもないし、別に問題ないといえば問題ないんだがな。

しかし、このまま相手の弾幕を避け続けるのも時間の無駄だから、さっさと片付けるとするか。

 

「行くぜ、霊夢」

「えぇ、さっさと終わらせましょう」

 

霊夢の言葉を合図に、俺は橋の向こうで浮んでいる彼女たちへと向かって駆け出す。

当然向こうも弾幕で応戦してくるが、最小限の動きで弾幕を回避して前へと突き進んでいく。

小さい球は隙間を縫うようにして躱し、大きい球は叢雲で切り払う。

そうして進んで行くと彼女たちは自分の弾幕が当たらない事に焦りを見せ、弾幕の量と速度を上げて応戦しようとする。

一気に増えた弾幕を前に俺は一度立ち止まり、渾身の力で叢雲を振り上げ、巻き起こった風で彼女たちの弾幕を押し返す。

巻き上げられた弾幕は緑色の光の壁の様に聳え立ち、彼女たちの姿を見失ってしまう。

しかしそれは向こうも同じ事。俺はこの隙に壁から回りこんで、左側から彼女たちへと強襲する。

壁を回りこんで俺に二人は驚きを顕わにするが、直ぐにもう一度弾幕を展開しようとする。

俺の前に放たれる緑の弾幕。それを避けようとしない俺に二人は笑みを見せるが、彼女たちの右側から霊夢が亜空穴を抜けて出て来た。

亜空穴から出てきた霊夢は、そのまま直ぐ近くにいる方を霊撃でもう一人の方にまで吹き飛ばした。

 

「どっちが本物かわからねぇなら」

「二人まとめて吹き飛ばす!」

 

彼女たちは突然現れた霊夢に驚き、弾幕を潜り抜けてきた俺への対応に遅れる。

慌てて俺達に向けて弾幕を展開しようとするが、こっちは既に十分に間合いを詰めている。その行動は一手遅い。

 

「気符『星脈弾』!」「霊符『陰陽玉』!」

 

全くの同時に放たれた俺と霊夢の霊玉弾。それは彼女たちを巻き込んでぶつかり合う。

二つの霊玉弾に巻き込まれ、その威力に耐えかねたのか。俺に近かった女性は妖力の露となって消滅する。

残された本体はそれぞれ別の方向に回転する霊玉弾に挟まれたまま、身動きが取れずにいる。

ぶつかり合う二つの霊玉弾は、彼女を挟み込んだまま次第に混ざり合い、一つの巨大な霊玉弾となり炸裂した。

地中深くの洞窟に轟音が鳴り響き、頭上から砂が降ってくるが……崩落するまでには至らなかった。

爆発の影響で巻き起こった粉塵が晴れ、彼女が俺達の前に姿を現すと、そのまま力なく地面に倒れこんだ。

 

「……ま、ざっとこんなもんか」

「ん~。なんかよく分からない現象が起こったけど、気が晴れたからよしとしますか」

《お二人とも、随分な言い様ですね……》

 

霊夢の陰陽玉から天狗の呆れた様な声が聞こえてくるが、別に大した事でもないから気にしないでおこう。

橋で出遭った障害も排除できたし、橋自体にコレと言って目立つような傷も無いし、これで心置きなく先へ進める。そう思って歩き出そうとしたとき―――

 

「……な、なんで、うちあわせもなしに、あんなことができるの……」

 

―――弱々しい声で今倒した妖怪が俺達に尋ねてくる。

 

「なんでも何も、霊夢なら俺の動きに合わせてくれると信じてただけだ」

「リュウならこう動くって思ったから、実際にそれに合わせただけよ」

「……そのしんらいが、ねたましい……」

 

妖怪は最後の最後に俺達の事を妬みながら気を失った。

此処まで来ると呆れを通り越して感心してしまいそうになるが、流石にそれは違うか。

最後まで難儀な妖怪だったと思いながら、俺と霊夢は彼女が言っていた旧都とやらを目指して歩き出した。

 

《……ところでリュウさん。写真の方は撮っていただけましたか?》

「…………あ」

 




なんで水曜に更新しているのかというと、通っていた職業訓練を修了したからです。今後の更新については俺の活動報告を読んでください。日曜に更新したやつです。
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