竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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久々に戦闘らしい戦闘を書いた気がする。


第百七十七話 語られる怪力乱心

 

橋を越え、地底を更に奥へと進んでいった俺達が辿り着いたのは、旧地獄にある都だった。

萃香の話によると、此処はかつて地獄の繁華街だったそうだが、地獄のスリム化により切り離されたそうだ。

その後、地底に移り住んだ鬼たちが忌み嫌われた能力を持つ妖怪を受け入れ、地底都市を巨大なものへと築き上げた結果、今では鬼達の楽園となっているとか。

この都市を創るに当たって地上の妖怪たちと色々と約束事を交わしたらしいんだが、地獄のスリム化ってのがイマイチよく分からん理由だよな。

地獄を広げていった結果、幾つか使わない部分が出て来たから切り離したんだろうけど、切り離すくらいなら最初から広げるなといいたい。

誰が此処まで広げたのか知らないが、無計画にも程があるだろ。まったく。

 

「……それにしても、地底にこんな都があるなんて思いもしなかったわ」

「地底にこんな空間があるだなんて普通は思わないだろ」

 

地底都市なのに雪が降るという不思議な光景を見ながら、俺と霊夢はあてもなく旧都を歩いていた。

此処の何処かに怨霊が湧き出す原因があると思うんだけど、初めてきた街だから何処に何があるのか分からん。

それに右を見ても、左を見ても居酒屋しか無いから本当に此処に原因があるのかすら疑わしい。

……まぁ、なにか根拠があって此処にきたわけじゃないし、外れだったらまた別の所を探しにいくさ。

 

「にしても、地獄に在るってのに随分と賑やかな所だな。記念に少し写真を撮ってこ」

《そう言いながら結局さっきも写真を撮らなかったんですよね》

「こ、今回はちゃんと撮るって!」

《はいはい。口を動かす前に手を動かしましょうねぇ》

「こんにゃろ……」

 

天狗にいいように煽られるが、実際に写真を撮り忘れているため何も言い返せない。

最初の時は仕方がないとしても、流石に今回も撮り忘れたとなると、帰ってから天狗に何を言われるか分かったもんじゃない。

俺はまたさっきみたいに誰かと遭遇してしまう前に、カメラを取り出して旧都の街並みを写真に撮っていく。

何処を撮っても似たような景色ばかりだが、人間の里じゃ見られないような光景も撮れたし、それでよしとしよう。

あともう何枚か撮ったら原因探しを本格的に始めよう。そう思いながら地獄の都を歩いていると―――

 

「ちょいと待ちな、ご両人。そんなに急いで何処へ行こうってんだ」

 

―――後ろから聞きなれぬ声の女性に声を掛けられた。

俺達は立ち止まり、後ろを振り返ってみてみると、そこには大きな赤い杯を片手に馬鹿みたいに大きな瓢箪を担いだ一本角の鬼がいた。

今のところ敵意は見せていないが、何を考えているのか分からんからな。警戒しておくに越した事はないだろう。

 

《お、勇儀じゃん。久し振り》

 

俺達が警戒している中、地上にいる萃香が懐かしそうに目の前の鬼に声を掛ける。

萃香も地底に暮らしていたそうだし、何よりも同族なんだから知り合いでもなんら不思議じゃないんだが、萃香の友人って時点であまり言い予感がしないな。

 

「その声は……萃香か? お前、一体何処から声を出したんだい?」

地底(そっち)には戻ってないよ。地上から声だけ届けてるのさ》

「相変わらず彼方此方をフラフラしてるのか。いい加減こっちに戻ってこいって」

《今は地上の方が楽しいからね。ま、気が向いたら地底(そっち)に戻るよ》

「……分かった。そのときが来るのを楽しみに待ってるよ」

 

勇儀と呼ばれた鬼は、陰陽玉ごしで萃香と楽しそうに談笑する。

それだけだったら別に良いんだが、萃香と話しながらも俺達……というか、俺の事をジッと観察している。

彼女と会うのはこれが初めての筈なんだが……果てし無く嫌な予感しかしねぇ。

 

「成る程ねぇ……。これは確かに萃香が言っていたように面白そうな奴だ」

《でしょでしょ。リュウはわたしに勝っただけじゃなくて、神様も殺せるほどの剛の者だからね。実力は文句なしさ》

「へぇ、アンタ神殺しか。アタシも長いこと生きてるけど、神殺しに会うのは初めてだ」

 

鬼は関心したように俺の事を見てくるが、その瞳は待ちきれないと言わんばかりに輝いている。

一体何が待ちきれないのかなんて、彼女が鬼である事を考えれば直ぐに分かってしまうけどな。

 

「……おい、萃香。お前、彼女に何を吹き込んだんだよ」

《え、別にそのまんまの事だけど? リュウがわたしに勝ったとか、たっちゃんに聞いた話をそのまま》

「傍迷惑この上ねぇなおい」

《別にこのくらい問題ないじゃん。全部事実なんだし》

「いや、確かにそうなんだけどな」

 

悪びれる様子のない萃香に頭を抱えてしまうが、今更咎めたところで過去は変わらない。

それよりも今は、どうやって彼女から逃げるかを考えたほうがいいかもしれん。

 

「ちょっとアンタ。私らは先を急いでんの。用が無いならもう行かせてもらうわよ」

「急ぐって何処に行くんだい? 折角地上から来たんだから、少しくらい観光していけばいいだろ」

「地上じゃ今、湧いた間欠泉と一緒に地獄の怨霊が出てきて大変なのよ。怨霊の回収は死神がやるだろうから別にいいとして、私たちは怨霊が出て来た原因をつき止めにきたの」

「間欠泉と一緒に怨霊が出て来たって? 地獄の怨霊を封じるのがアタシ等鬼の役目だけど、そんな話は聞いたことがないねぇ。……もしかして、地獄の窯でなにか遭ったのか?」

「地獄の窯って?」

「灼熱地獄跡の事さ。この旧地獄の中心にあるんだが、あそこは鬼じゃなくて別の奴が管理してる。アタシ等鬼の管轄外で、間欠泉と一緒に湧き出したとなるとあそこが一番怪しいだろう。詳しく調べたいなら旧地獄の中心にある『地霊殿』って館を目指しな」

「地霊殿ねぇ……」

 

気前よく色んな情報を教えてくれたが、萃香の例で考えると恐らく嘘じゃないだろう。

地上から着た俺達に嘘を付く理由もないし、態々地霊殿に誘い込んで罠を仕掛ける意味もない。……となれば、彼女の言っていたようにその灼熱地獄跡とやらを調べてみるべきか。

 

「色々と参考になった、ありがとう。それじゃ、俺達はもう行かせてもらう」

 

礼を述べて、逃げる様にこの場を去ろうとすると、背後から何かが飛んで来るような気配を感じた。

俺は即座に叢雲を取り出し、振り向き様に剣を盾にして飛んで来たモノを受け止める。

物体と剣がぶつかると鈍い音があたりに響き、勢いに押されて後ろに押し出されてしまう。

 

「リュウッ!」

「心配すんな。このくらい平気だ」

 

物体を受け止めて痺れた手を振るいながら、投げられた物体……巨大な瓢箪の持ち主を睨み付ける。

俺は射殺さんばかりに鬼を睨み付けるが、彼女は特に動じる事もなく、瓢箪に付いている紐を片手で引っ張って自分の元へと引き寄せた。

反対の手には今も杯を持っているところから見ると、あの瓢箪を投げたのも片腕だけの力なんだろう。

大の大人と同じ位のサイズの瓢箪を片手で投げるなんて、一体どんだけの怪力の持ち主なんだよ。

 

「……殴り殺すくらいの勢いで投げたけど、アレを受けて手が痺れる程度とはやるじゃないか」

「ちょっとアンタ! いきなりそんな物を投げるなんて何を考えてるのよ!」

「何って腕試しに決まってるじゃないか。かつては山で四天王を這ってたんだ。その四天王仲間の萃香を倒した男の実力……知りたいと思うのは当然だろ」

「やっぱりそう言う事か……」

 

アイツの眼の輝きを見て、なんとなくそうだろうとは思ってたけど……実際にそうだと、なんともいえない物悲しさがあるな。

 

「こちとら宴会を抜け出してまで会いに来たんだ。腕試しに付き合ってもらわないと割に合わないんだよ」

「アンタの事情なんか知るか! リュウ、こんな奴ほうっておいてさっさと行くわよ!」

「………………」

 

霊夢の言う通り、こんな奴放っておいて先に進んだほうが良いんだろうが、向こうは俺を逃がす気なんて全くないようだ。

それなら何時もの様に二人で戦えばいいんだけど、そんな事をすれば彼女を怒らせるだけか。鬼を怒らせる方が後処理が面倒になりそうだ。

 

「……はぁ、しょうがねぇな。悪い霊夢、ちょっと先に行っててくれ。俺はあの戦闘狂を黙らせてくるから」

「は、はあッ!? アンタまで何を言い出すのよ。それなら一緒に戦ったほうが早く片付くじゃない」

《それは止めといた方がいいよ霊夢。そんな事をしたら勇儀の奴、ものすんごく切れるから》

「同胞の萃香がこう言ってるんだ。向こうも見逃す気はないみたいだし、此処は俺が残ったほうがいい」

「………………」

 

俺に諭されて何もいえなくなったのか、霊夢は口を閉ざして考え込む。

霊夢は少しの間考えていたが、答えが出たのか、霊夢は俺に背を向けた。

 

「アンタがそこまで言うなら私は先に行くわ。でも、さっさと片付けてきなさいよ。でないと、私が全部終わらせちゃうから」

「そいつは困るな。元凶にまで辿り着けないとなると、此処まで何しにきたのかわかりゃしない」

「そう思うんならさっさと終わらせる事ね。私は先に行って待ってるわよ」

「嗚呼。直ぐに追いつく」

 

その言葉を聞いた霊夢は振り替えることもせず、地霊殿を目指して一人翔けていった。

俺は目の前に居る鬼を見据え、叢雲を握る手に力を込める。

 

「いやはや、話に聞いていた以上に仲がいいね。まさか其処まで仲が良いとは思わなかったよ」

「……悪いがこれ以上お前と話をする気はない。直ぐに終わらせてもらう」

 

そう言って強引に会話を打ち切り、一瞬にして間合いを詰めて鬼に斬り掛かる。

回避しようのないタイミングでの一閃だが、鬼は最初から回避するような素振りを見せなかった。

俺が繰り出した一撃を片腕で受け止め、そのまま力だけで強引に払い除けてみせた。

鬼に払い飛ばされてしまったが、直ぐに地面に着地して、もう一度斬り込んでいく。

立て続けに速攻を仕掛けるが、斬り込んでいく俺に合わせて鬼はあの巨大な瓢箪を振り下ろしてくる。

俺は即座に横に跳んで回避し、鬼の横を通り過ぎながら胴に斬り込んだ。

斬った確かな手応えはあったが……俺の予想以上に硬い。鬼ってのは種族は生まれた時から頑丈に出来ているのか、この手応えだとまだ倒し切れていないか。

 

「ツゥ~~ッ。今のは効いた。剣で斬られるなんざ久し振りだよ」

「……大して効いてないくせに大げさな奴だ」

「剣で斬られりゃ誰だって痛いもんさ。……まぁいい。それじゃ次はこっちから行かせて貰おうか」

 

鬼は持っていた瓢箪の縄を手放し、空いた手で握り拳を作って俺に殴りかかって来る。

その速度は俺と比べても遅く、避けるのは大して難しくない。

俺は鬼の攻撃を躱し、擦れ違い様に鬼の身体を剣で切り払う。

防がれることなく一撃を叩き込んだが、身体が頑丈に出来ている所為で怯ませる事ができない。

鬼は切り払ったことで出来た隙を付いて、がら空きになった腹に蹴りを繰り出してくる。

 

「が……ッ」

 

俺は鬼に蹴り飛ばされてしまうが、なんとか体勢を立て直して地面に着地する。

しかし、今度は着地時の隙を付いて鬼が殴り掛かって来た。

繰り出された拳は抉り込むように腹に刺さり、俺を空へと殴り飛ばす。

空高く殴り飛ばされてしまったが、腹部から伝わる痛みを堪えつつ、体勢を立て直して鬼に向かって斬撃を飛ばす。

鋭く真っ直ぐに飛んでいく斬撃だが、鬼はその一撃を払い除けるように拳一つで軽々と殴り砕いた。

幾ら側面から殴ったとは言え、あの一撃を軽々と殴り砕くとは……流石は萃香の同胞といったところか。

斬撃が殴り砕かれるのを目にしながら、そんな感想を持ちつつ、相手の力を冷静に分析する。

速さなら俺の方が上だが、力は今の状態の俺よりも上なのは間違いない。

恐らくは萃香よりも力が強いんだろうが、杯を手放さないところを見ると完全に遊んでやがる。

俺も随分と舐められたもんだが、向こうがその気なら俺も態々力を解放してやる必要もないか。

そう考えた俺は叢雲の剣先を少し下げて構え、鬼の事を真っ直ぐに見据えて、相手の出方を窺う。

鬼は訝しげな様子で俺の事を見てくるが、全く動こうとしない俺に痺れを切らせたのか、真っ直ぐに殴りこんでくる。

俺は繰り出される鬼の一撃を剣で払い除け、即座に刃を返して鬼を斬り付ける。

しかし、この程度で怯むような相手ではなく、斬り付けられてなお蹴りを繰り出す。

俺はその攻撃を払い除けながら、直ぐに刃を返して今度は斬り上げ、即座に剣を振り下ろす。

鬼も即座に反撃しようと拳を繰り出してくるが、今度は払い除けずに後ろに下がって間合いを離す。

離れた間合いを詰めようと、拳を振り上げて突っ込んでくるのにタイミングを合わせ、突き出された拳を躱して鬼の胴を薙ぎ、鬼を斬り飛ばした。

 

「こんの……ッ!」

 

鬼は斬り飛ばされても即座に体勢を立て直し、地面を踏み砕きながらもう一度俺に向かってくる。

拳を振り上げ、俺を叩き潰そうと振り下ろしてくるが、そのタイミングに合わせて力を込めた叢雲を地面に突き刺し、地面から剣気を立ち昇らせて鬼を上空へと吹き飛ばす。

剣気によって上空へと飛ばされた鬼だが、まだ意識を奪うまでには至っておらず、即座に反転して上空から蹴りを繰り出してくる。

俺は直ぐにその場から離れて後ろに下がるのと同時に、鬼が繰り出した蹴りが地面と激突し、地面を陥没させて大きなクレーターを作り上げた。

どんな力で蹴りを繰り出せばあんなクレーターが出来るのか。粉塵が立ち込めるクレーターを見ながら、俺は思わず呆れてしまった。

 

「今のも躱すか。流石は萃香が認めた男なだけはある」

「俺はアンタに呆れてるがな。どんな力で繰り出せばそんなクレーターが出来るんだ」

「なぁに、ほんのちょっと本気を出しただけさ」

「ほんのちょっとでそれか……」

 

さらっと言ってきた鬼の言葉に、俺は思わず頭を抱えてしまう。

萃香のやつも本気になれば妖怪の山を更地に出来るとか言っていたが、彼女を見ているとその言葉も強ち冗談じゃない様な気がしてくるな。

 

「ま、そんな事はどうでもいいだろ。それよりも続きを始めようか!」

「……さっきので倒れてりゃあ良かったのに、面倒な事だ」

 

俺の言葉など気にせず、鬼はクレーターから飛び出して懲りずに殴りかかって来る。

俺は即座に鬼の拳を払い除け、刃を返して斬り付けようとするが、振り下ろそうとした腕を鬼に掴まれてしまう。

 

「おい、こら離せ」

「そう怖い顔をするな。直ぐに離してやる…よッ」

 

鬼は不敵な笑みを見せると、そのまま片腕で俺の事を軽々と投げ飛ばしてきた。

俺は直ぐに空中で体勢を整えようとするが、鬼は自分で投げ飛ばした俺に追撃してくる。

繰り出してきた拳を叢雲で防ぐが、体勢が悪いうえに空中では踏ん張りが効かず、そのまま地面に殴り飛ばされる。

地面と激突しながらも、なんとかして体勢を立て直そうとするが、鬼の追撃はこれだけでは終わらず、すぐさま地面へと降りてきて拳を突き出してくる。

繰り出された拳を払い除けるが、体勢が悪い所為で斬りかかる事が出来ず、後ろに下がって間合いを離す。

しかし鬼は逃がさないとばかりに直ぐに間合い詰め、俺が体勢を整えるのを阻害してくる。

さっきの攻防で俺にペースを握らせるのは不味いと判断したのか、息つく暇もない程の猛攻を仕掛けてくる。

このまま俺を封殺する気なんだろうが、アイツとの約束もあるんだ。このまま黙ってやられるつもりもない。

 

「氷刃『氷牙(ヒョウガ)』」

 

手の内に創った青い球を握り潰すと、俺と鬼の間に割ってはいる様に一本の氷柱が出来上がった。

 

「うおっと、危ない」

 

鬼は氷柱を難なく避けてみせるが、俺の目的は氷牙(ヒョウガ)を鬼に当てる事じゃない。

氷柱を避ける事出来る一瞬の隙。俺はこの隙が欲しかったんだ。

 

「……わりぃが、これ以上お前と遊んでやるつもりはねぇ。これで終わりにさせてもらう」

 

鬼にそう言い放ちながら、氷柱の後ろに居る鬼の横を通り過ぎ、擦れ違い様に鬼を斬り上げる。

斬り上げられた鬼は地面へと落下してくるが、俺は即座に反転し、落下してくるタイミングに合わせて斬り込み、今度は鬼を十字に斬り抜けていく。

氷柱にぶつかる様に止まりながら直ぐに反転するが、既に鬼は体勢を立て直していた。

ダメージなど初めから気にしていないのか、鬼は俺に斬られた事など気にする素振りも見せず、俺を上空へと殴り飛ばした。

背後にあった氷柱は砕け散り、鬼は砕けた氷柱になど気にも留めず、追撃しようと飛び上がってくるが、それは俺にとっても好都合。

俺は叢雲に力を注ぎ込み、赤く輝く巨大な光の刃を作り出して振り被った。

 

「竜剣『ドラゴンブレード』」

 

名を宣言してから赤く輝く光の刃を鬼に目掛けて振り下ろす。

鬼は片腕だけの力で刃を押し返そうとするが、踏ん張りの利かない空中ではそれもままならず、片腕で刃を受け止められるほど竜剣(こいつ)は優しくはない。

 

「くっ。このアタシが力で負けるなんて事が……ッ」

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

 

裂帛の気合を込めて剣を振り下ろし、鬼を地面へと叩き伏せた。

地面には土埃が舞い上がり、鬼がどうしているのか窺い知る事は出来ないが……少なくとも逃げたと言う事はないだろう。

戦いの最中、敵に背を向けて逃げ出すような奴なら〝四天王〟なんて呼ばれる程の奴にはならんだろ。

土煙の中から俺の様子を窺っているだけかもしれないが、これ以上続ける気なら『カイザー』の力を解放して一気に叩き潰すか。

そんな事を考えながら地面に降り立ち、邪魔な土煙を風で吹き飛ばすと、鬼の奴は地面に仰向けになって倒れていた。

特に敵意も感じられない為、傍に近付いて鬼の様子を見てみると、鬼は満足そうな顔をしていた。

 

「いや~負けた負けた。誰かに負かされるのなんて久し振りだ」

「……負けたとか言う割には、最後まで杯は手放さなかったな」

「これはアタシが自分にかけた制限だ。それを理由に言い訳をしたりさいないさ」

「そうかい。なら、俺は先に行かせて貰うぞ」

「あぁ、構わないよ。……もっとも、回りの連中が通してくれるかは知らないけどね」

「……周りの連中?」

 

鬼に言われ、土煙の晴れた旧都を見てみると、今まで影しか見せていなかった鬼達の姿が在った。

どいつもこいつも顔を赤くしているところを見るに、騒ぎを聞きつけて、宴会を中断してやってきた酔っ払いどもか。

 

「あの星熊様を倒すとは……あの男、かなりの強者だ」

「よし! 次はオレがあの男に勝負を挑む!」

「止めとけ止めとけ。お前みたいな若造に如何こうできる相手じゃない。ここはワシが行く」

「抜け駆けするな爺! 次の相手はこの俺だ!」

 

俺の気も知らないで鬼どもは次は誰が挑むかで勝手に言い争いを始める。

こっちは急いでいるし、態々相手をしてやる理由も無いから別の道を探そうとするが、既に周りを包囲されていて地上からは行けそうにない。

空を飛んで逃げるって言う方法も在るが、鬼の団体に追い掛け回されるなんて御免だ。

早いとこ霊夢を追いかけたいって言うのに、まったく面倒な連中だ。

俺はこの苛立ちをぶつける様に地面を踏み砕き、ピーチクパーチク言っている鬼どもの注目を集める。

そして手の中に一枚のカードを取り出し、邪魔臭い鬼どもを睨み付ける。

 

「さっきからグダグダとうっせぇぞテメェ等。出来もしない事を言い合って無駄な時間を取らせんじゃねぇ」

「んだと……このガキ!」

「うるせぇぞ三下! ……俺に挑む気概のある奴だけ掛かって来い。纏めて相手をしてやる」

「上等だぁ!」

 

俺に挑発されて激昂した鬼どもが纏めて俺に挑みかかってきた。

俺は手の中に取り出していた『カイザー』のカードを握り潰し、自分の中で眠っていた竜の力を解放する。

ったく、急いでるってのに邪魔しやがって。一人一人相手にするのも面倒だから本気で潰させてもらうぞ!

 




先に言っておきます。次回から少しの間リュウの出番はありません。
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