紅い霧に覆われた夏も終わり、すっかり秋らしく朝晩の冷え込み始めた今日この頃。
本日の空模様は、澄み切った秋晴れだが、時折吹く風が寒さを感じさせる。
こんな日は、のんびりと釣りでも出来たら最高だろうな。
そんな事を思いつつ、俺は今日も母屋の縁側でお茶を啜るのだった。
「……しまった。今晩のおかずが無い」
「え、そうなの?」
「別に全く無い訳じゃないけど、このままだと物凄く質素なものになるわね」
「ふむ……」
のんびりと午後の一時を満喫していた所に台所に霊夢が言って来た一言。
霊夢がこんな嘘を言う訳ないし、おかずが無いのはきっと本当なんだろ。
別に質素なおかずでも困ることは無いけど、おかずが全くないと言うのも寂しいものがある。
「霊夢。俺が買いに行くから必要な物をメモしてくれ」
「そう? それじゃ、悪いけどお願いね」
「任せとけ」
俺は霊夢からお金と、必要な物が書かれたメモ紙を受け取り里に向かった。
はてさて、今回買うものはっと……砂糖に塩、みりんに醤油に味噌か。
……あれ? 食材は買わなくて良いのか?
………
……
…
里に着いた俺は、霊夢から渡されたメモ紙に書かれている物を買って行く。
初めて来た頃は、珍しい形の里だったからアチコチ見て回ったけど、今は慣れたもんだ。
何処に何の店があるのかも覚えたし、霊夢の付き添い無しで買い物も出来る様になったしな。
……最初の頃は、コレが何の店なのかも分からないのがあったからな。
妖怪専門の店とか、ぱっと見ただけじゃなんなのか分からないっての。
「まいどあり~」
「ん~。……さて、コレで頼まれたモノは全部かな?」
メモに書かれていたモノは全て買い終えたけど、霊夢はコレで何を作る気なんだ?
確かにこれ等が有れば、炒め物や煮物を作れるけど……一回の調理で全部使うのか?
それに霊夢の事だから、意表をついてオムライスと言う可能性も……。
「……ま、なんでも良いか。さっさと帰ろう」
俺は重い荷物を背負いなおし、神社に帰る為に里の入り口を目指し歩き始めた。
入り口に向かって歩いていると、道の脇でちょっとした人盛りが出来ているのが眼に入る。
話し合いや喧嘩と言った雰囲気じゃないけど、アレはなんの集りだ?
俺の位置からでは、何をしているのか見えないけど……集っているのは殆ど子供みたいだ。
20人以上の子供達が一箇所に固まって一体何をしているんだ?
なんの集りかますます気に為り出すと、子供達の中にどこかで見た事のある青白い髪の女性がいた。
「アレは……上白沢さん?」
あの髪と服装からして多分そうだと思うけど……一体なにをしているんだ?
それに、上白沢さんの他にもう一人別の女性がいるな。
魔理沙と同じ金髪だけど、長さは首にかかる程度でヘアバンドをしてる。
服装は良く分からないけど、両手の指全部に指輪をして、その指輪から……糸が出てるのか?
「む? 其処に居るのはリュウか。何をしているんだ?」
じっと見ていた俺の視線に気が付いたのか、上白沢さんはこっちを振り向いて声を掛けてきた。
「俺は買い出しですけど……上白沢さんは何を?」
「私はただの引率だ」
「引率?」
「嗚呼。わたしは寺子屋で教師をしているからな」
上白沢さんに声を掛けられた俺は、子供達の邪魔に為らない様に彼女の近くによった。
子供達の視線の先には、小さな劇場とその中で動く人形達がいた。
一体なんの劇をしているのか分からないが、劇場で動き人形達は本当に生きているかの様だった。
「……アレ、彼女一人で操ってるんですか?」
「嗚呼」
「そりゃ凄いな」
俺は、一人で全ての人形を操っている彼女の技術力に関心した。
彼女の手には指輪しかなく、それだけ見ると殆ど何をしているのか分からない。
だけど、舞台の上で動いている人形達はほとんど人間と同じ動作をしている。
何を如何動かせばそんな事が出来るのか、そっち方面の知識の無い俺には理解出来そうにもない。
……ホント、どうやって動かしてるんだろうな。
「……はい、今回の劇はこれでおしまい」
「「「「えぇ~ッ!」」」」
「やだ~! もっと見たい!!」
「別のお話もしてよお姉ちゃん!」
「悪いけど、私にも予定があるのよ」
「そんな~……」
「コラお前達! あまりアリスに我が侭を言うな!!」
「「「「は~い……」」」」
上白沢さんが一括すると、子供達は直ぐに大人しくなった。
流石に先生をしているだけあって、こう言う時の扱いにはなれているんだな。
「全く。…すまないな、アリス。無理を言ってしまって」
「別に構わないわ。……ところで、貴方だれ?」
「ん、俺?」
「貴方以外に誰が居るのよ」
確かに俺しか居ないだろうけど……正直、話し掛けられるとは思わなかった。
しかし、話しを振っておいて如何でもいいような気がするのは如何言う事だ?
寧ろ、彼女よりも周りにいる子供達の方が興味津々って感じだぞ。
……まぁ、俺は普段から人里に来ないからな。余所者が珍しいんだろ。
大体は博麗神社に居るし、何処か出かけるとしても神社の周辺か紅魔館くらいなもんだ。
……そう考えると、俺の交友関係って物凄く狭いよな。
「それで、貴方は一体誰なのよ」
「俺の名前はリュウ。上白沢さんの…………知り合い?」
「まあ、知り合いと言えば知り合いだな」
「……慧音も変なのと知り合うわね」
「む。変なのとは如何言う意味だよ」
「そのまんまの意味よ」
んな事言われてもな……思い当たる節が多々あるんだぞ。
只でさえ種族が竜になるんだ、変なのと呼ばれても否定は出来ない。
それに、俺の変身出来る竜の中にも変種が居るから、間違いではないんだよな。
「う~む……」
「なんで考え込むのよ」
「いや、まぁ……色々と思うところがあって」
「…?」
「リュウ、そんな所で考え込んでいると周りに迷惑だぞ」
「確かに。それに買い出しの途中だった」
「なら早く行くと良い」
「そうさせて貰います……それじゃまた」
俺は上白沢さん達に別れを告げて、急いで博麗神社に向かった。
別に急いで買って来てくれとは言われて無いけど、あんまりノンビリしてる訳にも行かないし。
……にしても人形か、あの世界で警護として創った『オンクー』と『アーター』の二体を思い出すな。
彼女の使っていたのとは大分違うけど、一応はアレも一種の人形だからな。
人形と言うよりは機械に近い存在だけど、また創りたくなってくる。
でも、アレってどうやって創るんだったけか? 最後に創ったのが数百年前の事だから覚えてねぇや。
アリスSide
私の人形劇に行き成り現われたあの男……本当になんなのかしらね。
慧音の知り合いだって話だけど、里の人間には見えなかったわ。
それに気配も……人間と言うよりは妖怪みたいな感じだった。
「……ねぇ、慧音。アレ、本当になんなの?」
「それは私も聞きたいが、別に悪い奴ではないと思うぞ」
「それは分かるんだけど……」
「別に気にする事はないだろう。それよりも、今回の礼だ。受け取ってくれ」
「……確かに頂いたわ」
私は慧音から謝礼を受け取って、気持ちを切り替えて帰り支度を始めた。
確かにちょっと気に為る所はあるけど、私が気にして居ても仕方が無い。
それに本当に害のある奴なら、博麗の巫女か妖怪の賢者辺りが動き出すわね。
下手に関わって火傷なんてしたくないし、アイツには関わらない様にしましょう。
アリスSide out
この作品でのアリスと慧音の登場頻度は割りと高い。
魔理沙もちょくちょく登場するんですけど、この二人も結構使いやすくて登場回数が多いんですよね。