何時もより短いですが、文量が安定しないのは何時もの事なので気にしないで下さい。……これでも編集したんだけどなぁ~。
秋の昼下がり、私とリュウはちゃぶ台を囲んでお茶を飲んでいる。
神社の仕事も大体終わり、私達は特別なにかをすることも無くダラケきっていた。
ちゃぶ台にあるお茶請けには、里で評判の醤油煎餅。
私はそれを一枚手に取り、煎餅を食べながら、お茶を飲んで喉を潤す。
「今日も冷えるな。……もうすぐ冬かな?」
「雪が振り出すにはちょっと早いわよ」
「そうなのか?」
「例年道理ならね」
私はリュウにそう言いつつ、煎餅をもう一枚手に取ってそのまま食べる。
リュウはそれに納得した様に一度頷いてから、手元に置いてある湯飲みを取りお茶を飲む。
最近は寒さも厳しくなってきて、縁側に座って飲むよりも居間で飲む事が多くなった。
そろそろ
まだ使うほどではないにしろ、朝晩の冷え込みはキツイものがある。
それに今年はリュウの分の袢纏も用意しておかないと。
そんな事を考えつつ、私はお茶を飲もうと湯飲みに手を伸ばすけど、既に湯飲みの中は既に空っぽ。
私は溜息を一つ吐いてから席を立ち上がり、台所に行ってやかんに水をいれる。
その後かまどに薪を何本か入れて、居間でのんびりしているリュウに声を掛けた。
「リュウ。悪いんだけど、かまどに火を付けてくれない?」
「了解。……
リュウが台所を覗き込みながら魔法を唱えると、かまどの薪が独りでに燃え始める。
「こんなんで良いか?」
「えぇ、十分よ。ありがとう」
アイツに一言お礼を告げてから、かまどの上にやかんを置いてお湯を沸かす。
後はやかんの水がお湯になるの待っていれば良いんだけど、ここで待っていても暇でしかない。
私はやかんを火に掛けたまま放置して居間に戻ると、何故かリュウが私の事をジッと見てきた。
薪を取り出した時にゴミでも付いたのかと思い、衣服をチェックしてみるけど……特にそれらしいものも無い。
特に汚れがある訳でもないのに、どう言う訳かリュウは私の事をジッと見続けてくる。
「……なによ」
アイツの視線に耐えかねた私は、なんとも素っ気無い言葉を投げかけた。
もう少し言い方があったと思うけど、ジッと見られると言うのは辛いものがある。
……いや、辛いと言うよりも恥かしいんだ。
出来るだけ表に出さないようにしてるけど、あの告白の所為でこう言う時に如何しても気恥ずかしさが出てしまう。
だからかな、偶に素っ気無い言葉や態度をしてしまうのは……。
自分でも直した方が良いと思うんだけど、未だにコイツの事を如何思っているのか自覚できないから、このままでも良いんじゃないかなって思っている私がいる。
早い内に答えを出したいのに、今まで人を好きになった事が無いから中々判断が出来ないのよね。
「それでなんなのよ?」
「いやな、霊夢の髪も伸びたな~って思って」
「私の髪が?」
リュウに言われて、私はなんとなく自分の髪に触れてみる。
前髪は目に掛かりそうな位で、後ろ髪は肩に掛かるくらいの長さはある。
……確かに伸びたと言われれば伸びたのかもしれない。
ここ最近は散髪に行っていないから、リュウが来た時から見れば間違いなく伸びた。
私はあまり気にしてなかったけど、コイツには気になるみたい。
「なに? 私の髪が気になるの?」
「少しな。……なぁ、霊夢。ちょっとコッチに来てくれないか?」
「…? 別に良いけど」
私は誘われるがままにリュウの傍に近付いて座り込むと、リュウは徐に手を伸ばし私の髪を触り始めた。
「ちょ、ちょっと?!」
「……うん。やっぱり綺麗な髪だな」
いきなり触られて驚く私を他所に、リュウは何処と無く嬉しそうに言って、私の髪から手を離そうとはせず髪の感触を楽しむかのように、ただ撫で続けてくる。
掻き毟る様に荒っぽくする訳でもなく、腫れ物に触るみたい撫でる訳でもなく、ただ優しく私の髪を撫でてくれた。
私には何が嬉しいのか分からないけど、どう言う訳かはっきり止めてとも言い出せなかった。
〝止めなさいよ〟と言えばリュウも手を離すだろうけど、如何してもその言葉が出て来ない。
何か特別な撫で方をしてる訳でもないのに、この手を離さないで欲しいと思ってしまう。
なんでそんな事を思うのか解らないけど、出来る事ならこのまま……。
「れい…」
「……………」
「れいむ」
「……………」
「霊夢!」
「ッ?! な、なによ。急に大きな声を出して」
「いや、お湯が沸騰してるぞ」
「……えっ?」
そう言われると、確かにやかんの水が沸騰してヒューヒューと音を立てている。
驚いた私は慌ててリュウから離れ、かまどの火からやかんを退かした。
やかんの取っ手は、火に熱せられた事で熱くなっていたけど、全く我慢できないと言うほどでも無い。
私は近くに置いていた急須のふたを取り、新しい茶葉を入れてやかんのお湯を急須の中に注いだ。
急須にお湯を注ぎつつ、私はなんとなくさっきまでの事を思い返してみる。
ただリュウに髪を撫でられていただけなのに、水が沸騰しているのに気付かないほど夢中になっていた。
何時もならこんな事ある訳無いのに、私が誰かにしてもらった事で夢中になるのなんて初めて。
髪を撫でていた……本当にそれだけなのに、如何してあそこまで夢中になっていたんだろう。
他に特別な事なんて何も無くただ優しく撫でてくれただけだけなのに……。
「……………」
私はお湯を注ぐのをやめ、なんとなく自分で自分の髪を撫でてみる。
リュウがしてくれたみたいに優しく撫でてみるけど、さっきみたいに夢中にはならなかった。
どんなに優しく触れてみても、ただ自分の髪を触っているだけでしかない。
なにが嬉しいのかも分からないし、なんで夢中になっていたのかも分からない。
髪に触れるだけなんて、特別珍しい事でもないのに如何して……。
色々と考えてみるけど、答えらしい答えが思いつかない。
だから私は自分の髪を弄るのを止め、かまどの後始末をしてから居間に戻る事にした。
居間に戻った私は、ちゃぶ台の前へと行ってリュウの対面の場所に座る。
「……はぁ。最近、変な事で悩む事が多い気がするわ」
「ん? 変な事ってなんだ?」
「アンタには関係ない事よ」
「…?」
ぶっきら棒に私は言い捨てるけど、リュウは釈然としない顔で首を傾げてくる。
私はそれを無視して、ちゃぶ台にある自分の湯飲みにお茶を注ぐ。
自分のに注ぎ終わった後、空になっていたリュウの湯飲みにも注いであげた。
「ありがと」
「ついでよ、ついで」
「それでもだ。ありがとな、霊夢」
さっきまで釈然としていたリュウだけど、私がお茶を注ぐと嬉しそうに笑う。
「~~~~ッ」
私はその顔を何故か直視出来ず、ちゃぶ台にある煎餅を手を伸ばし食べ始める。
バリバリと音と立てながら齧っていると、リュウも同じ様に煎餅に手を伸ばした。
居間にはこれと言った会話もなく、煎餅を齧る音とお茶を啜る音だけが響いた。
この作品の重要なキーワード、その名は〝竜×霊〟。
にじファン時代から読んでくれている方はこの意味が分かる筈。