竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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新年明けましておめでとう御座います。本年も宜しくお願いします。

さて新年の挨拶もそこそこに今回から星蓮船編を初めていきたいと思います。唐突だなと思うかもしれませんが、今の内に出しておかないとコイツ等の出番がなくなるんで。
ちなみに今回は凄く短いです。


第百九十話 不審な船

 

日差しが少しずつ温かくなり雪も溶け始めた今日この頃、俺と霊夢は人里と神社を結ぶ道の途中で敵に襲われていた。

敵の数は大よそ十体。剣を持った奴が六体に弓を構えた奴が四体ってところか。この程度なら大したことは無いが、まだ雪が残っている今の時期に人間と同じサイズの二足歩行トカゲと出くわすってのも変な話だな。

霊夢と買い出しに出ただけなのに、なんでこんな事になるんだか。……まぁ原因はこのトカゲ人間に襲われていた少女が俺達の元に走ってきたからだろうけどな。

 

「だーッ! もう、鬱陶しい! 一体なんなのよコイツ等は!!」

「わ、わちき何も悪くないよ、アイツ等がいきなり襲って来たんだよ」

「んなこと聞いてるんじゃないわよ!!」

「其処までにしておけ二人共。来るぞ」

 

剣を持ったトカゲ人間が斬りかかって来るが、六体が同時に襲い掛かってくる様な事はなく、少しずつタイミングをずらしている。

トカゲ人間が入れ替わる時の隙を埋めるかのように、弓を持ったやつが矢を放ってコッチの反撃を阻害してくる。

見た目トカゲの癖に頭が回るのか、凄く鬱陶しい攻撃をしてくるがただそれだけだ。剣に毒を塗っているわけでもなければ、厄介な魔法を使ってくるわけでもなく、ただただ鬱陶しいだけ。

この程度の相手に時間を掛けるのも馬鹿らしいし、とっとと蹴散らしてしまおう。

 

「頼むぞ霊夢」

「分かってるけど、アンタも外すんじゃないわよ」

「俺が外すわけないだろ」

「それもそう……ねッ!」

 

霊夢が手早く結界を張り、トカゲ人間たちを吹き飛ばしている間に俺は左手に光の剣を作り逆手に持つ。

吹き飛ばされたトカゲ人間たちは再び斬りかかろうとしてくるが、奴等に霊夢が張った結界を破るほどの力はなく、皹一つ入れることが出来ずにいる。

結界に張り付き、獣のように足掻き続けるトカゲ人間に向かって円形の斬撃を飛ばし、結界ごと奴等を全て両断してみせた。

両断されたトカゲ人間は絶命してその場に崩れ落ち、最初から存在していなかったかのように消滅した。

 

「まったく。弱いくせに群れて掛かってくるんじゃないわよ」

「強い奴に群れて襲われるのも厄介なんだけどな……」

「私とアンタなら楽勝でしょ」

「それは頼もしいな」

 

霊夢の勇ましさに苦笑いを浮かべながら、謎の化け物が里の近くにまで姿を現したことを危惧していた。

恐らくこのトカゲ人間たちもあの骸骨騎士の同類なんだろうが、こんな人里の近くにまで姿を現したってのはちょっと問題だな。

それに奴等は日に日に数を増している様な気がするし、このまま数が増えていったら他所にまで手が回らなくなりそうだ。

妖怪の山や紅魔館なんかは俺達が助けに行かなくても大丈夫だと思うが、アイツ等を放置しておくと妖怪同士の小競り合いを誘発しそうだ。流石にそれは勘弁して欲しいし、放っといたら何するか分からないから倒していくしかないんだが、この辺りにまで出るとなると俺と霊夢だけじゃ人手不足になりそうだ。

人里には先代がいるし、この手の話なら守矢の連中が喜んで手を貸してくれそうだけど、アイツ等つねに里に居る訳じゃないからな。協力を頼むなら里に常駐してくれる奴じゃないと。

 

「……コレはなんとかしないと不味いか」

「ん? 一体何が不味いのよ」

「いや、人手不足を解消するには如何すれば良いのかと」

「……本当に何の話よ」

 

霊夢は何の話か分からず呆れているが、流石に今のは言葉足らずだったか。とは言っても、俺が心配し過ぎているだけな気もするし、霊夢に打ち明けるほどの事でもないかな。

 

「あ、あの~……わちきもう行っていい?」

「「あ、まだ居たのか」」

 

トカゲ人間との戦いで気が回らなかったが、俺達を戦いに巻き込んだ張本人がいることをすっかり忘れていた。

まぁ、見た目的に人間じゃなくて妖怪だろうけどな。眼と口がついた大きな傘を持ってるし。

 

「い、居たのかってその言い方はあんまりだと思う!」

「余りにも存在感が薄かったもんだから、つい」

「リュウの一撃でくたばってると思った」

「まだ生きてるからね! ……確かに攻撃が頭を掠ったけど」

「あ、ホントだ。頭頂部だけ禿げてる」

「え、ウソッ!?」

「あぁ、嘘だ」

「……う、うわーんッ! わちきで遊ぶなーッ!!」

 

自分が弄られていると気付いた妖怪は、手にした傘を駄々っ子の様に振り回して怒る。

傘に当たると痛そうだから避けるけど……コイツ、物凄く弄り甲斐のあるやつだ。八雲の奴が霊夢を弄るときってこんな気分なんだろうか。

なんだか目覚めてはいけない物に目覚めそうだが、隣に居る霊夢の視線が厳しくなって来たから自重しよう。

 

「それでアンタ、なんであの連中に襲われてたのよ」

「なんでって……わちきが何時もの様に人を驚かせようとしたら―――」

「その相手がアイツ等だったと? うわ、凄くしょうもない理由」

「そ、そんな事いわないでよ! わちきにとっては驚かせられるか如何かは重要な事なんだから!」

「そこじゃないわよ、そこじゃ。相手が誰かも確かめないで悪戯しようだなんて、妖精と大差ないじゃない」

「妖精じゃないもん! わちきコレでも妖怪だもん!」

「……その割には大した力もなさそうよね」

「わちきが気にしている事をズケズケと言うなんて……。この人でなし、悪魔!」

「アンタ、誰に向かってモノを言ってるか分かってるんでしょうね」

「え、いや、その…………ご、ごめんなさーいッ!」

 

霊夢に脅された妖怪は涙目になりながら一目散にこの場から逃げ出した。

今の霊夢は相当機嫌が悪いみたいだが、人を驚かせようとしていた妖怪が人に脅されるって如何なんだろうな。

 

「まったく、随分と根性のない妖怪だったわね」

「そうだな。……ところで、随分と不機嫌みたいだが何かあったか?」

「そりゃアンタとの買い出しをこんな形で台無しされたんだもの。誰だって不機嫌になるわよ」

「なんだ、そんな理由かよ」

「何よその言い方。私に取っては大事な事なのよ!」

「分かった分かった。買い出しくらい幾らでも付き合ってやるから機嫌を直せって」

「……しょうがないわね」

 

若干不貞腐れているみたいだが、霊夢の機嫌も一応は直ってくれたみたいだ。

霊夢の機嫌が直ったのを見計らって、買出しした荷物を回収してそろそろ家に帰ろうとした時、急に何かに日の日差しを遮られてしまう。

突然出来た影の中、一体何事だろうと空を見上げると頭上には木製の大きな船が浮んでいた。

 

「「……は?」」

 

二人して間抜けな声を出してしまうが、空に木製の船が浮んでいれば誰だってこんな声を出してしまうに決まってる。

只でさえ船を使う事がない幻想郷だ。普通に暮らしていても見ない様な物なのに、それが空に浮んでいるだなんて想像できるわけないだろ。……いや、よくみたら動いているみたいだし、浮んでいるんじゃなくて空を飛んでいるのか。余計に珍しいじゃねぇか。

 

「……リュウ、なにあれ」

「いや、俺に聞くなよ。俺だって初めて見たぞ」

「アンタが前居た世界にはなかったの?」

「砂の上を走る船はあったけど、流石に空を飛ぶ船はなかったな」

「砂を走る船ってのも十分に珍しい様な気がするけど」

「あの世界じゃそうでもないけどな。高価なのは間違いないけど」

「ふ~ん……」

 

二人して空を飛ぶ船を見上げながら話をしているが、見れば見るほど怪しく思えてくる。

今年に入ってから物騒な連中も増えてきたし、アレに骸骨騎士が沢山乗船しているのなら放置する訳にも行かない。あの面倒な骸骨が増えるとか、頭痛のタネにしかならんっての。

 

「……しゃーない、追いかけて調査するか」

「買ってきた荷物は如何するのよ」

「急いで神社に戻って衣玖に預けるしかないだろ。幸いにも此処から飛んでいけば五分も掛からずに着く」

「そうするしかないか。まったく、折角のデートだったのに今日は厄日だわ」

 

心底残念そうにしながら言い捨てる霊夢に俺は苦笑いを浮かべるしか出来なかった。

普段なら別の日に埋め合わせを約束するんだが、今の幻想郷を考えるとまた今日みたいに横槍が入って台無しになるような気がする。

一度外の世界に行ったから俺の転移魔法で何時でも行けるんだけど、流石にこの幻想郷を放って遊びに行くのも気が引けるか。

幻想郷が落ち着いたら埋め合わせをしようと思いつつ、俺達は荷物を置く為に急ぎ神社へと帰った。

 




原作では霊夢たちが宝船を追いかける話になってますが、リュウは宝船の噂じゃ動かないのでこういう形に成りました。地霊殿の話しほど長くはならないと思います。
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