ちなみに視点は衣玖さんでの視点です。
「……まぁこのくらいでいいでしょう」
今日も人が来ない博麗神社の境内を掃除していたわたくしは、綺麗になった神社の境内を見て一息つく。
広いとはいえない境内ではありますが、今回は一人で掃除をしていた為、それなりに疲れが出てしまいました。
リュウ様は幻想郷中を跋扈している魔物たちの元凶を突き止めるために駆け回り、霊夢さんは香霖堂に注文していた仕事道具を取りに出かけていて今は居ない。
お二人が連日のように幻想郷中を駆け回っているのは知っていますが、一人この神社に残されるのはやはり寂しいものですね。
留守を預かるというのも大事な仕事だというのは分かっていますが、もっとリュウ様のお役に立ちたいと思ってしまいます。
わたくしは戦闘が余り得意ではありませんので、霊夢さんの様にリュウ様と共に戦場を駆けることが出来ない。
わたくしにもっと力があればと思ってしまいますが、無い物強請りをしても仕方がないですね。それよりもあの方が何時帰られても良いように家の事をしておかなければ。
「よし、休憩終わり。さて次は……洗濯物も終わって、境内の掃除も終わったとなりますと―――」
次は何の仕事をしようかと一人考えていると、風に乗って山道の方から何者かの足音が聞こえてきました。
足音の数は一つですがこの神社に来る方なんて限られています。律儀に山道の方からやって来るとなると慧音さんか先代の方でしょうか。
魔理沙さんなら空を飛んできますし、先代はよほどの事が無い限り神社にはやって来ませんから、恐らくは慧音さんでしょう。
仕事の依頼でしたら少々困りますが、あの人を無碍に帰すわけにもいきませんし、話を聞くだけ聞いておくとしましょうか。
そう考えたわたくしは、手早く掃除道具を片付けてから身だしなみを整え、本殿の前に立ち来客を出迎えます。
山道を登りきり、紅い鳥居の下を潜って来客やってはきましたが、わたくしの予想は大きく外し、やってきたのは初めてお見かけするネズミの妖怪でした。
「あ~すまない。少し尋ねたい事があるんだがこの神社の主はいるかい?」
「主は今私用で出かけております。ご用件でしたらわたくしがお聞きいたしますが」
「出来れば主に直接会って話をしたい。すまないが此処で待たせてもらえないだろうか」
「ふむ、そうですね……」
ネズミの妖怪は待たせて欲しいと頼んできますが、この方達を母屋に上げて良いのか悩みます。
見た感じでは悪い方々には見えませんが、見知らぬものを家に上げるというのも流石に如何かと。
しかし、主が帰るまで境内で待たせるというのもお客様にする行為ではありませんし、悩ましいところです。
「……失礼ですが、貴女方のお名前と此処に来た目的を聞かせていただけませんでしょうか」
「っと、わたしとした事がまだ名乗っていなかったか、すまない。わたしの名前はナズーリンと言う。以後お見知りおきを」
「コレはご丁寧に。わたくしの名前は永江衣玖。この神社の―――」
自己紹介をしている最中で、わたくしは自分がこの神社に取って自分がどういう立場なのか分からなくなった。
霊夢さんとは家族という訳ではありませんし、この神社の神に仕える巫女という訳でも在りません。地上で暮らしているとはいえ、わたくしは飽く迄も竜宮の使い。流石に巫女と名乗る事はできない。
それにわたくしはリュウ様に仕えている身ですから、主の従者と名乗るのが一番なのでしょうが、それだとこの神社の居候の従者と言う事になりますね。
それはそれで色々とややこしいですし、この場は無難に乗り切っておくとしましょう。……リュウ様が早くケジメを付けて下さればこのような事態にならないと言うのに、まったく。
「ん? どうかしたのか、永江さん」
「あ、いえ、ご心配なく。……それでは改めまして自己紹介を。わたくしの名前は永江衣玖。この神社の奉公人です」
「神社に奉公に来るとは随分と珍しいな。普通そういうのはもっと大きな屋敷に行くものだろう」
「えぇまあ、わたくしにも色々とありましたので。それで貴女方は何をしに此処へ?」
「うちのご主人の落し物を探しに来たんだ。流石にいきなりやって来て無断で敷地の中を探すのもちょっとね」
「なるほど、そういう事でしたら客間へご案内いたします。主が帰られるまでそちらでお待ち下さい」
「すまない、感謝する」
「いえ。……それではこちらへどうぞ」
わたくしはネズミの妖怪……もとい、ナズーリンさんを母屋に案内して、客間で待ってもらう事にしました。
この妖怪を家に上げてしまって本当に良かったのか悩みますが、落し物を探しに来たと言うのは嘘ではないでしょう。
幻想郷を跋扈している魔物たちの仲間にも見えませんし、リュウ様と霊夢さんに敵対している妖怪でなければ特に問題も無いはずですよね。
「それでは主が戻られるまで此方の部屋でお待ち下さい」
「すまない」
ナズーリンさんを客間へと案内したあと、その足で台所へと向かいお客様に出すお茶を淹れにいく。
リュウ様がいないので釜戸に火を入れるのが少々不便ですが、火を燈すだけならわたくしの雷撃でも可能と言えば可能です。
釜戸に火を入れて、お湯が湧くまでの間にお茶菓子を用意しなければならないのですが、肝心要のお茶菓子が何処にも見当たらない。
最近お二人とも連日のように家を空けていましたから、お茶菓子を買っておくのをすっかり忘れていました。
今から急いで買いに行くのもアリですが、流石にヤカンに火を掛けたままお客様を一人残してわたくしまで家を空ける事なんて出来ません。
……こうなっては仕方ありません。リュウ様と一緒に食べようと思っていたお饅頭をお出ししましょう。今のままでは何時食べられるか分かりませんし、隠しておいて腐らせるよりはずっといいです。
若干の心残りはありますが、急な来客にも対応できなければあの方の従者を名乗る事など出来ません。
わたくしは自分にそう言い聞かせながら、用意したお茶とお菓子を持ってナズーリンさんが待つ客間へと向かいます。
「失礼します。お茶とお菓子をお持ちしました」
「そんな申し訳ない。こっちが急に押し掛けたのに」
「いえ、お構いなく。粗茶ではありますがどうぞ」
「……すまない、ありがたく頂戴する」
「ところでナズーリンさん。貴女のご主人が落とした物と言うのはどの様な物なのですか?」
「あぁ。ご主人が落としたのは宝塔と呼ばれる仏塔だよ。塔と言っても掌に乗るくらいの小さいものだけどね」
「塔……ですか?」
「そうだよ。二十cmくらいの大きさで円筒形の塔身に平面方形の屋根をもつ一重の塔」
ナズーリンさんの説明を聞きましてもいま一つピンッと来ませんが、その位の大きさの置物を以前リュウ様が拾っていたようないなかったような……。
「……確証はありませんが、その様な置物なら確かに此処に在りますよ」
「ほ、本当かい?! それで今宝塔はどこに!?」
「確か……リュウ様が船から落ちてきたのを拾ってきたと言って見せていただいて、後で売りに行くと倉庫の中に片付けていたと思います」
アレが彼女の探している宝塔なのかは分かりませんが、珍しい形の置物でしたし、他に思いつきません。
あとで倉庫から持ち出して彼女に確認してもらおうかと思いましたが、何故かナズーリンさんの顔が青ざめています。お出ししたお饅頭が腐っていた筈はありませんし、一体どうしたのでしょうか?
「色々と言いたい事は在るが一つ聞かせて欲しい。永江さんの主というのは…もしかして……」
「はい、リュウ様ですが。それがなにか?」
「………………」
主の名を口にした途端、ナズーリンさんは今度は絶句してしまいました。
その様子から彼女もリュウ様を一悶着あったのは容易に想像ができますが、主の名前を聞いただけでその様な反応をされるのは些かムッときますし、少し悲しいです。
確かにあの方は闘いとなれば無慈悲に敵を討ち取っていきますが、普段はお優しい方なのです。その事さえ知っていればあの方の印象も変わると思うのですが……残念です。
「ま、まさかこの神社が彼の家だったとは……。確かに傍らに巫女も居たから神社に住んでいても不思議じゃないが……」
「その様な反応をされると言う事は以前あの方と戦ったのですね。従者として主の敵対者を歓迎するわけにはいきませんし、貴女の返答次第では覚悟を決めていただきます」
「待ってくれ、確かに彼とは一度戦ったがわたしに敵対する意志は無い! ただ、わたしのご主人が彼に殺されかけたから余り会いたくなかっただけだ!」
「あの方が弾幕ごっこではなく命を奪おうとするのは珍しいですね。貴女の主はリュウ様をよほど怒らせたのでしょう」
「怒らせたと言うか、呆れさせたと言うか……。兎に角わたしの話しを聞いてくれ」
「……いいでしょう。話してみてください」
何時でも攻撃出来るように準備をしつつ、ナズーリンさんの言い訳……もとい話を聞く。
彼女が語る内容はリュウ様が仰っていた「面倒な僧侶の一派」の話と殆ど一緒でした。
恩人を助ける為に航行していたときにリュウ様たちがやって来た事や、魔界についてから自分たちがリュウ様たちに相対した事など、ナズーリンさんたちの視点からではありますが、彼女は自分たちの行為を正当化するわけでもなく淡々と語りました。
こう言う時は自分たちの行動を正当化するように語るものですが、彼女はそう言う事はせず自分達の視点から見たモノをわたくしに話しました。
「ご主人が自分の命を張ってまで聖の封印を阻止しようとしたんだが、君の主はご主人の行動に呆れたのか剣を降ろしてわたし達を見逃してくれたのさ。それ以来彼とは会っていないよ」
「なるほど、それは間違いなく呆れたのでしょうね。恩人とは言え、神の弟子が其処まで命を張るのかと」
「わたし達は平等だからね。種族だとか立場だとかそう言う柵に囚われていないのさ。それにわたし達から言わせて貰えば分からないのは彼らの方だよ。彼らは異種族であるはずなのに肩を並べて戦っている。わたし達の考えと一体何が違うんだ」
「あの二人は〝平等〟なのではなく〝対等〟なのです。上か下か等と言う考えが無いからこそ、肩を並べて戦えるんです」
「平等ではなく対等な関係か……。なるほど、確かにわたし達の考えとは違うものだ」
対等な関係。それが今のリュウ様と霊夢さんを表現するのに一番相応しい言葉。
力の優劣や種族間の高下が無いからこそあの二人はどんな戦場でも肩を並べて戦える。平等と言うのは全ての人の差別をなくすと言う事。あの二人を表す言葉としては相応しくありません。
「そうなると益々良く分からない御仁だな。一体何を考えているのやら」
「何がでしょうか?」
「いや、今度人里の近くにわたし達の寺を構えることになっているんだが、誘ってくれた妹紅にわたし達の事を紹介したのが彼だって話だから。聖を封印しようとしたのに居場所を提供するなんて、一体何を企んでいるんだって皆と話していたのを思い出してさ」
なにやら要らぬ警戒心を生んでしまっているようですが、恩人が封印されそうになったとなればその相手を警戒してしまうのも仕方のない事でしょうね。
「別に其処まで警戒しなくても大丈夫ですよ。あの方の事ですから、きっと里に魔物が侵入したときに働いてもらおう位にしか考えてませんから」
「み、実も蓋もない事を言うね。自分の主をそんな風に言っていいのかい?」
「霊夢さんほどではありませんが、わたくしも付き合い長いので。ナズーリンさんは自分の主人に言ったりしないのですか?」
「それは……偶にあるかな。ウチのご主人すんごくドジだから。今回の宝塔だってご主人が落としたりするからこんな面倒な事に」
「あらあら、それは大変ですね」
「大変なんてものじゃないよ。毘沙門天様に命じられてご主人に付いて行ってるけど、ホントに気苦労が耐えないんだ」
「ですが慕っておられるのでしょう? 文句を言いながらも顔は笑ってしますよ」
「……心の底から嫌っていたら数百年もの間、彼女に付き従ったりしないさ」
「さようでございますか。それは良い主に巡り会えましたね」
「いや、彼女を良い主と認めるのはちょっと癪かな。何かあるとすぐわたしに頼るし、たまには自分で頑張ってもらいたいものだ」
「ふふふふ……」
ナズーリンさんは悪態を付いて認めないといいますが、彼女の表情から見てただの照れ隠しなのは明白です。ただ普段のドジが多すぎて素直に認められないのでしょう。
その事を指摘してあげても良いのですが、微かですが玄関のほうで戸が開く音が聞こえてきました。
客間の障子を開けて外を見てみますと、何時の間にか太陽が大分高い位置にまで昇っていました。
ナズーリンさんとのお話に夢中で気がつきませんでしたが、もうお昼頃になっていたようです。
この時期ならもっと日が差して暖かくなる筈ですなのに、今年は太陽も変みたいですね。
天照様はリュウ様のご友人ですし、あの方に何事も無ければよいのですが……わたくしにはそれを知る術は在りません。
「ん? どうかしたのかい?」
「あ、いえ、誰かがお戻りになられたみたいなので」
ナズーリンさんに誰かが戻ってきたことをお伝えしていると―――
「だ~か~ら~ッ! 妾はそんなみょうちきりんな神は知らんと言っておろうが!」
「お前神々との交友関係が広いだろ。何か手掛かりになりそうなことは知らないのかよ」
「知らんものは知らん! 第一、救済と言う名の殺戮をする神がおるなら、お主が当の昔に滅ぼしておるじゃろが! それでもそんな神が存在するというのなら、それは妾の知らぬ神じゃ!」
「そうかよ。……はぁ仕方が無い。面倒だが紅魔館の図書館で調べるとするか」
―――龍神様と一緒にリュウ様がお帰りになられました。
何やら言い合いをしておられるようですが、あのお二人が本気で喧嘩する事は無いでしょうから、わたくしが気にする必要もないでしょう。
ナズーリンさんには申し訳ないですが、わたくしはリュウ様の出迎えに行きます。
「お帰りなさいませ、リュウさん」
「あぁ、ただいま衣玖。龍神の奴が騒がしくてすまんな」
「妾の所為だとでも言うのか! 虫の居所が悪いときにお主がしつこく聞いて来るのが悪いんじゃろが!!」
「……随分と荒れていますが、何か遭ったのですか?」
「いや、なんでも高天原に遊びに行ったら追い返されたらしくてな。さっきからずっとこの調子だ」
「はあ……」
龍神様が不機嫌な理由が分かりましたが、なんとなくリュウ様に八つ当たりしているようにしか見えません。
追い返されたくらいで此処まで不機嫌になられると言う事は、高天原の神々によほど手酷く追い返されたのでしょう。
「ところで衣玖。玄関に見知らぬ靴が置いてあったが誰か来てるのか?」
「あ、はい。ナズーリンさんが宝塔を探しに」
「宝刀? あのネズミには前にも言ったがそんな刀は持ってないぞ」
「リュウ様、刀の方の宝刀ではなく塔の方の宝塔です。二十センチくらいの掌サイズの置物だとか」
「掌に乗る塔のような置物……。あ~それなら拾ったわ。ボロ船から落ちてきたのを偶然」
「それは本当か!?」
「うおッ?! お前、何時の間に!?」
「持っているなら今すぐ返してくれ! アレはご主人の大切な物なんだよ!!」
「ちょっと落ち着け。アレなら今倉庫に置いてあるから持ってくる」
「あぁ、宜しく頼む」
ナズーリンさんに気圧されたリュウ様は面倒くさそうに頭を掻きながらしながら、お一人で倉庫へと向かわれました。
早く取り戻したいのか、ナズーリンさんは終始落ち着かない様子でソワソワしています。
わたくしと龍神様はその様子を見ていましたが、程なくしてリュウ様が件の宝塔を手に戻ってきました。
「あんたが言っていた宝塔ってのはこれの事か?」
「そう、それだよ! あ~良かった、ずっと見つからなくて困っていたんだ」
「こんなみょうちきりんな物をねぇ……」
「みょうちきりんと言うが、それは毘沙門天の宝塔じゃぞ。リュウよ、お主よくそれを拾ったな」
「だから船から落ちてきたんだって。香霖堂で高く売れるかなぁ~っと思って保管しといたんだが」
「……毘沙門天の仏具を売ろうとするでない。しかし、その貴重な物を船から落としたというのは一体何処の間抜けじゃ?」
「さぁな。興味が無いんで詳しく聞く気は無いが……ネズミなら何か知ってるんじゃないか」
リュウ様と龍神様の視線がナズーリンさんに集中しますが、当の本人は何も語ろうとはしません。
ただ、お二人の視線が集中して凄く居心地が悪いのか、彼女は滝の様な汗を流しています。
「あ、わたし急いでコレをご主人に届けないといけないんだ。すまないがコレにて失礼させてもらう。永江さん、お茶ご馳走様でした」
「いえ、道中お気をつけてお帰り下さい」
「嗚呼。それではこれで失礼させてもらう」
お二人の視線に耐えかねたナズーリンさんは手短に別れを告げると、脱兎の如き勢いで母屋を後にされました。
そんなに急いで帰らなくてもいいのにと思いますが、最強の竜神と幻想郷の最高神に睨まれれば逃げ出したくなっても仕方が無いのかもしれませんね。
「……どうやら逃げたみたいだな。全く肝の小さいネズミだ」
「肝の大きいネズミなぞ滅多に居ないと思うがのぉ……まぁよい。それよりもリュウ、久し振りに将棋でも指さぬか?」
「なんでだよ。俺はこれから紅魔館の図書館に行こうと思ってたんだが」
「そんなもん明日でもいいじゃろうが。お主が異変解決の為に毎日出かけておるのは知っているが、偶には家でのんびりとしたらどうじゃ? 衣玖も寂しがっておるぞ」
「り、龍神様ッ!?」
龍神様の突然の発言に思わず大きな声を挙げてしまう。
従者が主に寂しいから家に居て欲しいなどと言える筈も無いのに、どうしてこの方は勝手に言ってしまうのでしょう。
それに毎日の様に出かけて寂しいのは霊夢さんも一緒ですし、わたくしだけがリュウ様に甘える訳には……。
頭の中で必至に言い訳を考えていると、偶然にもリュウ様を目線が合ってしまう。
わたくしは気恥ずかしさから思わず視線を逸らしてしまいますが、後になってなんだか凄く勿体無い事をした様な気になってくる。
せっかく龍神様がくれた機会なのだし、この機会を生かして一日位お休みなられたら如何ですかと言うべきだったかもしれません。でも、ただの従者でしかないわたくしがそんな事を言うのは流石に差し出がましい様な気も……。
「ったく、わ~ったよ。今日は家でのんびりしてるよ。ただし宴会はやらねぇからな」
「分かっておる分かっておる。……でも、晩酌は別じゃろ?」
「それも却下だ」
「なんじゃとーッ!?」
「テメェの晩酌になんか付き合ってたら宴会と大して変わらねぇだろうが」
「ぐぬぬ……」
「そう言う訳だから衣玖、昼食の用意を頼む。そろそろ霊夢も帰って来るだろうから四人前な」
「あ、はい! 今すぐご用意いたします!」
「別に慌てなくていいぞ。こっちは龍神と将棋でも指してのんびりと待ってるから」
「はい、それでは失礼します」
一礼してからお二人に背を向け、わたくしは早足で台所へと向かう。
霊夢さんの分を含めた四人前の食事を用意しなければなりませんから、材料を切ったりなどの準備に少々時間が掛かってしまう。
頭の中で昼食の献立を考えながらも、今日はリュウ様が家に居てくださる事が嬉しくて溜まらない。
お二人が出かけている時の博麗神社は寂しい物でしたし、一人で帰りを待ち続けるというのも悲しかった。
朝から出かけて夜まで帰って来ないことが多かったですが、今日だけはリュウ様が家に居てくださる。
この様な機会を作ってくれた龍神様に心の中で感謝しながら、今日の昼食は腕によりをかけて美味しいご飯を振舞いましょう。
本当はナズに宝塔を渡すのはもうちょい後にしようと思っていたけど、今の内にやっておかないとタイミングを逃しそうだったので前倒しにしました。
最近は戦闘回を書いている事が多かったから、衣玖さんの視点で書いてちょっと和んだ。