竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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今回からは普段の単発ではなく、第二章終盤のように物語が続いていきます。なので変な所で終わったりするかもしれませんが、ご了承下さい。


第二百三話 招かれざる客

 

 

裏で暗躍していた蛸の化け物を叩いてから数日が経ったが、幻想郷に現れている化け物の数は減っていなかった。

蛸が居なくなった当初は奴等の数は目に見えて減っていたのだが、此処最近になってまた増加傾向になり、まるでイタチゴッコの様に同じような日々を繰り返している。

やっぱりあの時八雲の奴に蛸を渡すんじゃなかったと後悔するが、今更八雲に蛸の引渡しを要求したところでアイツが生きている保障なんて何処にもない。仮に生きていたとしても喋れる状態でないのは明白だ。

唯一の手掛かりともいえる蛸を失ったのは余りにも痛いが、その事をウダウダと言っていても始まらない。

もっと抜本的な解決策を講じるべきと家で霊夢と話し合っているが、そんなものが簡単に思いつくなら苦労なんてしないよな。

 

「さて、一体どうしたもんかしらね。このまま敵の数が増えていったらジリ貧なのはこっちよ」

「奴等の発生方法が分かれば、それを阻害するように結界を張るって言う手もあるが」

「それが分かれば苦労もしないわよ。大体、アイツ等を召喚していたと思われていた蛸が居なくなっても数が増えてきているって事は、あの蛸は関係なかったってことじゃないの?」

「だが、蛸が居なくなった翌日は奴等の数も減っていたし、奴の口ぶりからして無関係って事は無いだろ。恐らく、奴等を召喚する方法を変えたんだろ」

「方法を変えるって一体どうやってよ。第一誰が変えるのよ」

「……あの蛸が言っていた神とか?」

「結局はそこに繋がっちゃうわけね」

 

またしても同じ所で行き詰ってしまい、二人して深い溜息を吐く。

奴等がまた増え始めてから抜本的な解決をと霊夢と話し合っているが、何度話し合っても最終的に蛸が言っていた神とやらで行き詰る。

もしかしたら他に原因があるのではとも考えたが、現状では他に犯人に結びつくような手掛かりもなく、古明地からも前に聞いた以上の話は聞くことが出来なかった。

閻魔の奴なら何か知っているんじゃないかと思い、嫌々ながら彼岸に出向いて話を聞こうともしたが……流石に門前払いを喰らった。アレだけの事をしたんだから当然と言えば当然か。

天界の連中が何か知っているとは思えないから放置しているが、やっぱりあそこの連中にも話を聞くだけ聞いておくべきなのかな。

完全に手詰まり状態なため、どうしたもんかと頭を悩ませていると、山の方で何やら騒ぎ声が聞こえてきた。

その声は徐々に近くなっていき、かなり殺伐としている。

妖怪同士の小競り合い……はないな。この神社の近くでそんな事をすればどんな目に遭うか、知らん奴は居ない筈だ。里の猟師が迷い込んだとも考えにくいし、一体誰がこの近くで暴れているんだ?

随分と身の程知らずみたいだなと呆れながら警戒していると、声の正体が藪を突っ切って俺達の前に姿を現す。

 

「ハァハァ……。こ、此処までくれば大丈夫かな……って、貴方たちはッ!?」

「あ? 誰だテメェ」

 

藪を突っ切って俺達の前に現れたのは輝夜の所にいる妖怪ウサギの亜種……とでも言えばいいんだろうか?

兎の耳が生えた人間ってのは間違いないんだが、輝夜の所に居る連中とは大分毛色が違う。髪の色は紫っぽいし、服装もうどんの奴とよく似ている。

地上の妖怪ウサギはうどんの格好を真似ている所なんて見た事無いし、もしかしてコイツ……。

 

「ちょっとアンタ、いきなり人の家にやって来てなんなのよ。さっきから騒々しいのよ」

「………………」

「黙ってないで何か言いなさいよ」

「………………」

「だんまりか。なら一つ確認させてもらうが、お前は月の兎か?」

「ッ!? ど、どうして分かった」

「お前の服装が知り合いにそっくりだからな。地上の兎はアイツの服装を真似たりしない」

「言われて見れば、確かにうどんげの服と同じね。所々汚れちゃってるけど」

 

兎の服装を見て納得する霊夢とは反対に、兎は苦虫を噛み潰した様な顔をする。

自分の身元がばれると何か不都合なのかもしれんが、そんな格好じゃばれても仕方が無いだろうに。

 

「……まさかそんな理由でバレるとは思いもしなかったな」

「いや、だってその格好かなり目立つぞ。他のウサギ達と全然違う服装だからかなり浮く」

「そ、そうなの?」

「言われてみれば確かにそうね。遠くからでもうどんげの姿が分かるし」

「月では別に普通の格好なんだけどなぁ……」

「月ではそうかもしれないが、此処は幻想郷だ。向こうの常識が通じると思うな」

「………………」

 

兎は俺達の話を聞いて思う所があるのか、自分の服装をジッと見詰める。

こっちとしては招いてもいないんだしさっさと帰ってもらいたいんだが、態々地上に降りてきたってことはそれなりに事情を抱えているんだろ。

それに兎が出て来た藪の中からは何人かの殺気を感じるし、何やら面倒事を地上に呼び込んでくれたみたいだ。

 

「……リュウ」

「分かってるよ」

 

正直面倒ではあるが此処は仕方がないと割り切るしかないか。

俺は席を立ち、藪の方へと近付いてみるが……覗き見をしている連中に動く気配は無い。

殺気を放っているから隠れる気は無いみたいだが、向こうから仕掛けるつもりも無いらしい。

仕掛けてくるつもりが無いなら放置しても良いんだが、これだけの殺気を放つ奴を野放しにする事も出来ない。

俺は叢雲を取り出し、先手必勝ということで先にコッチから仕掛けようとしたが、俺が剣を取り出した瞬間、覗き見をしていた連中は蜘蛛の子を散らすように一斉に逃げ出した。

あれだけあった殺気も完全に消えてなくなり、奴等が何処にいったのか手掛かりもなくなる。

 

「……逃げたか」

「一体なんだったのかしら今の? 嫌になる位の殺気を出しておきながら、何もせずに逃げるだなんて」

「さぁな。恐らくコイツを追って来たんだろうが、逃げられちまった以上真相は分からん」

「それもそうね。……で、この厄介事を持ち込んだ兎はどうするの?」

「永琳のところに連れて行く。月での厄介事ならアイツの所に連れていくのが一番手っ取り早い」

「八意様のところまで案内してくれるの!?」

「案内というか……強制連行だな。お前が如何しようともアイツの元へ連れて行く」

「うぅ……。やっぱり地上の民は野蛮」

「なんとでも言えよ。それじゃさっさと行くぞ。あまり手荒な事はしたくないから大人しく付いて来い」

 

兎から何かしらの反発があるかと思っていたが、思いの外大人しく俺の後についてくる。

如何やら元々永琳の奴に用があったらしく、コイツからしたら渡りに船だったらしい。

アイツの元に何をしにいくのか知らないけど、月の揉め事を地上に持ち込むのは止めて欲しいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

家の留守を衣玖に任せた俺達は、月からやってきた兎を引き連れて永琳の元を尋ねた。

永遠亭は迷いの竹林に在るためか、奴等からの襲撃を受けたような様子もなく、平時と何ら変わりなかった。

屋敷にいるウサギに永琳との面会を求めたが、最近の彼女は「月の様子がおかしい」と言って屋敷の奥に篭っているらしい。

俺達は何時もと変わらない月に見えていたんだが、実際にはそうでもないらしく、連れて来た月の兎がその言葉を聞いて反応した所からみて間違いないだろう。

事情を知っていそうな奴を連れて来たと言って再度面会を求めると、確認を取りにいったウサギが「八意様が直接話を聞きたいそうです」と言って奥へと案内してくれる。

永遠亭には何度か遊びに来た事はあるが、屋敷の奥の方に行く機会は殆どなかったな。

 

「まさか屋敷の奥に案内してくれるなんて珍しいわね。よっぽど手が離せない状況なのかしら」

「知り合いと言っていたわりに屋敷の奥に行った事はないのね」

「特に行く理由も無いからな。奥には家人の私室なんかが在るそうだが茶を飲んだり、将棋を指すだけなら態々奥に案内してもらう必要も無いだろ」

 

確か奥の方は薬の保管庫があったり、輝夜の私室があったりするそうだが、屋敷の連中もあまり行って欲しく無さそうにしていたか。

それなのに客間ではなく屋敷の奥へと招くって事は、相当厄介な事が起こってそうだな。地上に現れた連中の処理とか色々とあるのに、本当に面倒くさいな。

そんな事を思いながらウサギに付いて行くと、案内されたのは屋敷の裏庭に出来た観測所の様なところだった。

天井や壁が無いため完璧に野外に作られているが、レンズの先を空に向けている大きな望遠鏡がある。

永琳はその望遠鏡で空を見上げているが、今の時刻は昼を過ぎたあたり。月が見えるわけ無いんだが……あの望遠鏡を覗けば見えるのか?

 

「永琳様。お客様をお連れしました」

「ご苦労様。貴女はもう下がっていいわよ」

 

望遠鏡を覗いたままウサギに指示を出すと、ウサギはその指示に従ってこの場を後にする。

案内してくれたウサギが去った後、永琳は漸く此方に向き直るがその視線は俺達にではなく、連れて来た月の兎に向けられていた。

 

「貴女……以前あった玉兎ね。まさかもう一度会う日が来るとは思いもしなかったわ」

「なんだ、知り合いだったのか?」

「前に少しだけお話をしただけよ」

「そ、その節はお世話になりました。わたし『レイセン』っていいます。豊姫様が付けてくれました」

 

まだ自分の事を覚えていた事に驚いているのか、単純に永琳が怖いのか、連れて来た兎はかなり緊張した面持ちになっている。

ついさっきまで平然としていたと思うんだが、月の賢者と対面するのは違うってことか。

 

「鈴仙? ウチにも同じ名前の子がいるけど……あの子達も未練がましいわね」

「えっ?」

「いいえ、なんでもないわ。此方の話よ。……それで一体何の用かしら? 大戦でも勃発した?」

 

若干おどけた様に言う永琳とは対照的にレイセンと名乗った兎は俯き黙り込んでしまう。

本当に戦争でも起こったのかと思い、俺達も二人の同行を見守っているが兎は黙して何も語らない。

永琳も真剣な表情で兎が口を開くのを待っていると、兎は漸く意を決したのか、自分の手を強く握り締めて重苦しそうに口を開いた。

 

「……確かに戦争は起こりましたがそれは終結しました。ですが、もう月の都はありません」

「もう月の都が無い? まさか落とされたとでも言うの?」

「いえ、落とされてはいません。……その代わり、神と名乗る者に乗っ取られました」

 

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