竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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ちょっとした手直しで前回の最後の方の文を今回の冒頭に持って来ています。色々と考えた末にこうした方がいいだろうという事でそうしました。


第二百七話 崩壊する都

俺は鋼鉄の扉を切り裂き、階段を駆け上がって地上へと辿り着く。

出口の先には警報を聞きつけた兵士たちがぞくぞくを集ってきているが、街中の時の様に子供の姿は見えない。

全員が成人している相手ならば何の気兼ねもなく斬り捨てていける。

月の科学力がどれだけ凄かろうと、兵士が何万にいようとも関係ない。邪魔する奴は全て斬り捨てるだけだ。

叢雲を握り直し、続々と集る敵を睨みつけ、最も近くに居る敵を切り伏せる。

それを合図に戦いの火蓋は切られ、周りの敵も俺に向かって殺到する。

十数人が同時に襲い掛かってくるが、後からやってきた霊夢の弾幕によって蹴散らされる。

遅れてやってきた霊夢に兵士の意識が逸れた隙に、太刀筋を見せずに剣を振るい周囲の敵を切り払う。

切り払われた敵は吹っ飛び、壁に激突したり中庭に飛ばされたりして動かなくなる。

まだ地下牢の出入り口だって言うのに敵は次々とやって来て、まさに入れ食い状態というやつか。

敵の入れ食いなんて全く嬉しくないが、愚痴っていても仕方が無い。

 

「やれやれ、今回の件が片付いたら天照の奴に何か奢ってもらわないと割に合わないな」

「あ、それ良いわね。折角だから高天原の特級酒でも貰いましょうよ」

「酒か……それも悪くないが、何を頼むかはコレが片付いてからだな」

「分かってるわよっと!」

 

近付いてきた敵を霊夢の弾幕で蹴散らし、崩れたところをついて俺が斬り込み道を切り開く。

戦いの混乱に乗じて依姫と兎が俺達とは別の方向に走っていくのを視界の隅で捕らえる。

上手くこの場から離れることが出来たみたいだが、本当にアイツ等だけで大丈夫なのか不安だな。

敵に捕まって人質にでもなると面倒が増えるだけなんだが、流石にこの状況でアイツ等の面倒までは見れん。

アイツ等はアイツ等でなんとか頑張るだろう。心の中でそう思いながら続々とやって来る敵を斬り捨て、俺達も先を急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

迫り来る敵を斬り捨て、霊夢の勘を信じて突き進んでいくと、奥に行くにつれて敵が追いかけてこなくなる。

依姫たちに気が付いたと言う訳でもなく、俺達を倒そうと敵は殺到してきているんだが、階級によって制限でもあるのか奥へ進もうとはせず足踏みをしている様な感じだ。

あぁ言うのを見ると規約に縛られてるのは面倒だと思うが、敵が追いかけてこないのは楽でいい。

向こうからしたら神聖な場所に土足で踏み込んでと腹立てているんだろうが、月の常識なんて俺達は知らないし、神に洗脳されたコイツ等の常識に縛られる気も無い。

だが、敵の数が減ってきているとは言え背後から撃たれても困るし、念のために天井を切り刻んで瓦礫を落とし道を塞いでおく。これで後ろの連中は追いかけて来れないだろう。

 

「随分と派手にやるわね。後で修理代請求されなきゃいいけど」

「そんなもん来ても突っ撥ねる。この状況下で建物を壊さずに戦えって方が無茶だ」

「それもそうね。……っと、リュウ行き過ぎ」

 

そう言って霊夢が立ち止まったのはデカく重厚そうな扉の前。

普通の部屋の扉にしてはサイズが大きすぎるし、謁見の間の扉にしては場所が奥過ぎる。

王の私室にしては大分おかしな場所にあるが、この部屋が元々何の部屋であるかは気にしなくてもいいだろう。

扉は押しても引いても開きそうにないが、叢雲に掛かればこの程度の扉なんて何の障害にもならない。

目の前の邪魔な扉を切り裂き、部屋の中に侵入するとまず眼に飛び込んで来たのは巨大な装置だった。

数百人が一度には入れそうな部屋に設置されている巨大な機械の塊。あまり機械には詳しくないが、アレが良からぬ物である事はなんとなく察しが付く。

大広間を使ってまでも設置された装置の両端には丸いガラスの器があり、その中には天照と黒い長髪の男性と思われる奴が捕らえられていた。

二人共力を吸われて気を失っているのか、俺達が部屋の中に入ってきてもピクリとも動かない。死んでいる訳じゃないみたいだが、ここまで無反応だと流石に心配になってくるな。

それにしても、男の方は何処となく輝夜の面影を感じるな。月の住人は全員が親戚らしいから、面影がある奴が居ても不思議じゃないんだが……よく似ている。

気絶している男性に輝夜の面影を感じながら、周囲を警戒しながら装置へと近付いていくが此処を守る警備の姿はなかった。

警備が居ないなら防衛装置でも設置しているのかと思いきや、そんな物も特になく、拍子抜けするくらいアッサリと装置に近づく事ができた。

 

「……これだけ大仰な装置を作っておきながら警備も居ないなんて笊にも程があるだろ」

「月は完全に乗っ取られてるんだし、敵が居ないなら警備をおく意味も無いでしょ」

「確かにそうかもしれないが、コレはこれで問題あるだろ」

《……その声はもしかしてリュウですか?》

「起きたのか天照。久し振りだが、そんなところに引き篭もってどうした? 素戔男尊に何かされたのか」

《あの子のヤンチャは今に始まった事ではありませんが今回は違います。それよりも如何して貴方が月に……》

「細かい話は後よ。今はこの機械から二人を出してあげないと」

「それもそうだな」

 

叢雲を構え、二人を捕らえていガラスの器を壊そうとした瞬間、何の前触れもなく腕が動かなくなった。

いや、腕だけではなく身体の殆どが動かす事が出来ず、辛うじて口だけは利けるような状態。

それは霊夢も同じなのか、隣に居る霊夢もピクリとも動けずにいる。

 

「困りますね、使命の子よ。後で話し合いの席を設けるといったのに、勝手に牢を抜け出して暴れ回った挙句、その装置まで破壊しようとするだなんて」

「……その声は、あの時のジジィか」

 

首を動かす事が出来ないから目視する事はできないが、声で分かる。あの時の老人が今俺達の背後にいる。

人影がなかったとは言え、敵の地の真ん中で警戒を解くような真似はしていない。なのにあの老人は俺達の後ろを取る事が出来た。誰かが入って来る様な気配はなかったし、これじゃまるで龍神の化身体みたいだな。

 

「口が悪いですが久し振りの再会ですし、その位は目を瞑りましょう。ですが、相手に背を見せたまま話すのは流石に見過ごせませんのでこちらを向いてもらいましょうか」

 

老人がそう言うと、身体は俺の意思に反して勝手に後ろを振り返ってしまう。

抵抗しようにも抗う事が出来ず、自分の身体なのにそうでないような変な不快感を覚える。

この不快感を拭い去るためにも身体を動かそうと足掻くが、何かに縛り付けられているみたいに動かす事が出来ない。

 

「無駄ですよ。あの時の様に簡単に解けないようにする為に覚えた技術なのですから、簡単に動かれても困る」

「あの時? 一体何の話をしているんだ、テメェは」

「覚えていないのですか? 私が誰で、自分が何のために存在しているのかも?」

「お生憎さま、俺は数百年前の事故で記憶を失くしているんだ。だからテメェの事なんてこれっぽっちも覚えてねぇよ」

「記憶を失くした? …………フハ、フハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ! そうですか、記憶を失くしたのですか!! 何千……いや、何万年も前から恐れ続けてきた相手が何も覚えていないとッ!! いやはや、こんな事ならもっと早く計画を進めていれば良かった。そうすればこの星を簡単に救うことが出来たのに。しかし記憶を失っても私の元へとやって来るとは、もはや本能としか言いようが無い」

 

老人は俺が記憶を失くしている事を知るや否や狂ったように笑う。

その笑いは俺を嘲笑っているわけではなく、ただ自分を皮肉っているような感じだった。

 

「ちょっとアンタ、何一人で莫迦みたいに笑ってるのよ。てか、ウチのリュウとどんな関係よ」

「リュウ? なるほど、今の名前もリュウと言うのですか。何代にも亘りその名を使い続けているとは、もはや感心してしまいますね」

「ちょっとコラッ! 私の質問に答えなさいよッ!!」

「あぁ、申し訳ない幻想の巫女よ。私の名は『デスエバン』。貴女たち全ての存在を救う神です」

「誰もアンタの名前なんて聞いてないっての! 少しはコッチの話を聞きなさいッ!!」

「全ての存在を救う……それこそが私の為すべき使命。この苦難に満ちた世界に真の安らぎを与えんが為に私がいる。無為に死んでいく命も、無駄に生き続ける命も等しく救い、全ての物に安寧を与えましょう!!」

「だ~か~ら~……ッ! 私の話しを聞けっていってるでしょうがッ!!」

 

デスエバンと名乗った老人は自らの使命に陶酔し、霊夢の話を全く聞きやしない。

全く会話がかみ合わない事に流石の霊夢も腹を立て始めているが、身体の自由が奪われているため弾幕を撃つ事も出来ずにいる。

その所為で老人は益々調子に乗り、全く興味の無い話を声高々に話し続ける。

演説する事に夢中になっている隙に呪縛を解こうと試みるが、今の姿では力尽くで解く事は出来そうに無い。

何らかの呪文による拘束なら如何にか出来そうな物だが、アイツはさっき拘束する為に覚えた〝技術〟だと言っていた。

その言葉を勘繰ってみれば、これは呪術による拘束ではなく、何らかの技術を使った物理的な拘束ってことだ。

一体なにを使っているのかは分からないが、もう少し様子を見てみるか。

 

「……全ての生き物に安寧を与えるか。それだけなら聞こえはいいけど、その為なら何をしても許されるってのか?」

「ちょっとリュウ、いきなり何を言い出すのよ」

「一昨年の年末に現れた八十禍津日神(やそまがつひのかみ)、今幻想郷中を荒らし回っている骸骨の騎士たちに月で起こった化け物との戦争。その全てがお前の差し金なんだろ」

「なッ!? アレ等全てがこいつの差し金!?」

「ハルクとか言う蛸の化け物、アイツは骸骨騎士たちの事を神の使者と呼んでいた。八雲の口ぶりから察するに八十禍津日神を幻想郷に呼んだのもアイツだろう。目的は人間たちからの信頼を勝ち取るためか」

「信頼を勝ち取るためって何でそんな事が分かるのよ」

「あのな、霊夢。八十禍津日神を倒した後、天照の演説で里の人達は俺達の事どんな眼で見る様になった?」

「そりゃ幻想郷を救ったから英雄視されて、以前よりも信頼されるように……あ」

「そう言う事だ。里で流れてた噂も自分たちが信頼を得るための布石だったんだろう。不審を与える様な噂を流しておけば俺達に頼ることはしないと考えたんだろう一度信頼を勝ち得てからの方が人々に近付きやすくなるし、洗脳もしやすかったんだろ」

「でもそれが出来なかったから幻想郷は一度諦めて、月を化け物で溢れ返させて戦争を起こさせた」

「後は何食わぬ顔で戦争を終わらせれば月の住人の信頼を一気に勝ち取る事が出来る。幻想郷で骸骨騎士たちが暴れているのは俺達でも解決できない事態と人々に思わせて、自分たちが解決するためなんだろう。……さて俺の推測は大体こんなもんだが、何か間違っている所があるなら教えてくれねぇか?」

「………………」

 

俺の話を黙って聞き続けたデスエバンだが、その話を真っ向から否定してくる様な事はしなかった。

激昂しながら否定してくるのかと思っていたが、そんな見苦しい真似もせず、喧しい演説を止めて黙り込んでいる。

暫しの間重苦しい沈黙が続いたが、突然デスエバンが両手を叩き拍手をする。

 

「……素晴しい、良くそこまで分かりましたね」

「それじゃ今までの事件は全部……」

「えぇ、私の指示です。ただ一つだけ訂正を加えるとすれば、今幻想郷で起こした事件は私が解決するためのものではなく、貴方を地上に留めて置く為の措置です。貴方に動き回られると厄介ですし、あの世界に留めて置けば他の地域で何が起こっても貴方は手出しできないでしょうからね」

「アンタ……コレだけの事を引き起こしておいて只で済むなんて思ってんじゃないでしょうね。神様なら何をしても許されるわけじゃないのよ!」

「これはまた異な事を……。幻想の巫女よ、神である私が一体誰に許しを請うというのですか? 神が人間に許しを請う必要など無いでしょう。(わたし)の心など人間如きに理解出来るはずが無い」

《……神であっても貴方の考えは理解出来ない。既に世界は神々の手を離れ歩き始めているというのに、貴方は押し付けがましい救いを人々にもたらそうとしている。同じ神としてこれ以上の所業は許せそうに無い》

「良い事言っているが少し違うぞ天照。アイツにとって〝神〟は自分自身の事だけを指すんだ。それ以外の奴はアイツにとって救う対象でしかない」

「流石は我が宿敵。記憶を失っても私の事を理解出来るとは」

「……理解なんてしたくないんだけどな」

 

うんざりしている俺とは対照的に、奴は俺を賞賛するかのように拍手を贈ってくる。

その拍手に釣られるように俺の腕が何かに引っ張られるてか微かに動く。

 

「久し振りに楽しい話が出来ましたがそれもこれまで。そろそろ向こうの三人も捕らえられている頃でしょうしね」

「……やっぱアイツ等の所にも人が向かってたか。当然と言えば当然だが」

「この楽しい時間がもう二度とこないと思うと残念でなりませんが、私も次の予定が入っていますのでコレにて失礼させて頂きます。もう会うことも無いでしょう」

「それは有り難い事だが、テメェは殺しておかないと俺の気がすまねぇんだよ」

「それはそうでしょうが、今の貴方に私を倒す術は無い。拘束された身で一体何が出来ると」

「確かに動きを封じられていたらどうしようもないが、だったら拘束を解けばいいだけだろ」

 

俺は風を操って掌から叢雲を抜き取り、そのまま風を操って俺と奴の間に叢雲を走らせる。

デスエバンは慌てた様子で叢雲の動きを止めるが、既に俺の拘束は解かれ自由を取り戻した。

俺は宙で止まっている叢雲を掴んで刀身に纏わり着いている物を強引に切り、デスエバンの元へと一気に走る。

奴も抵抗しようと俺に向かって手を翳してくるが、何かしてくるよりも早く間合いを詰め、デスエバンの身体を両断した。

太刀筋に沿って線が走り、奴の身体が上下に別れて崩れ落ちる。

まだ拘束されている霊夢は倒れる奴に引っ張られてバランスを崩すが、倒れこむ前に霊夢の身体を抱きとめ纏わり付いていた物を切り裂いた。

 

「うわっと。ありがとう、リュウ。でも、よく呪縛が解けたわね」

「アイツが俺達を拘束していたのは呪術の類じゃなくて、糸とかによる物理的な拘束だったんだろ。アイツはアリスの人形の蓬莱とも接触してたからな、その時に技術を盗んだんだろ」

「本当に狡猾な爺ね。これで倒せたなら良かったんだけど、アンタの表情から察するにまだ死んでないんでしょ」

「あぁ。恐らくアレは分霊か龍神の様な化身体の類だろうからな」

《流石は我が宿敵。本当に私の事をよく理解している》

「……デスエバンか。何処に居る、姿を見せろ」

《言ったでしょう、次の予定が入っていると。これからは月ではなくあの青い星を救わなければならない。これ以上貴方に構っている時間は無いのですよ》

 

何処からともなくデスエバンの声が聞こえてくる中、突如としてこの城が……月全体が激しく揺れ始める。

まるで地の底から何かが這い上がってくるような、そんな風に思わせる揺れだ。

 

《それでは御機嫌よう、我が宿敵。出来れば此処で消えてくれると嬉しいんですけどねぇ》

 

その言葉を最後にデスエバンの声が聞こえなくなった次の瞬間、床を突き破って紅い体色の化け物が姿を表した。

紅い化け物は俺達の姿を視認した途端、唸り声を挙げて襲い掛かってくる。

俺は咄嗟にその化け物を斬り捨てるが、化け物が空けた孔からは続々と多種多様な化け物達が這い出てくる。

 

「……これは」

「流石に不味いわね……」

 

化け物は絶え間なく溢れ出てくるのに対し、こっちはアレだけの化け物を殲滅するための準備をしていない。

霊夢は札を奴等に取られて霊力だけで戦わないといけないし、疲労困憊の天照と月夜見と思われる男性がいる上に豊姫を救出に向かった依姫たちとの合流が未だだ。

化け物どもを殲滅しながら二人を守り、アイツ等と合流するなんて無茶もいいところだ。

アンフィニになればコイツ等を殲滅するのは容易いが、あの状態で戦えば恐らく霊夢以外の奴は俺の攻撃の余波を受けて消滅する。

それ以外の竜の力で全てを殲滅するのは厳しいし、此処は逃げるしかないか。

 

「チッ。癪だが退くぞ霊夢」

「分かってるわよ!」

 

霊夢が化け物どもが這い出てくる孔を結界で封じた隙に、俺は機械に囚われている二人を救出する。

二人を脇に抱えて霊夢と共に部屋を脱出した途端、ガラスが壊れる様な音が聞こえてきた。

後ろを振り返ってみると霊夢が封じた筈の孔から化け物どもが這い出てくる光景が眼に入った。

 

「即席とは言え、私の作った結界を簡単に壊さないで欲しいわね」

「愚痴ってる場合じゃないぞ霊夢。早くあの三人と合流しないと不味い」

「分かってるけど、悔しいものは悔しいの!」

 

霊夢の叫びに呆れながら城の中を全速力で走っていると、正面から月の兵士達と鉢合わせる。

今奴等とまともに戦っていられる状況でもないため、近くの窓から外に出て戦闘を回避する。

月の兵士達はそれでも俺達の事を追いかけようとするが、後ろから来る化け物達には見向きもしない。

こっちもアイツ等に構わず先を急いでいると、後ろから何かが噛み砕かれるような生々しい音が聞こえてきた。

耳を塞ぎたくなるようなその音に霊夢も顔を顰めるが、今は後ろは振り返らずに前だけを見て進んでくれた。

色んなモノが破壊される音が聞こえてくる中、廊下で兵士達に取り囲まれている依姫たちの姿を見つける。

多数の敵に取り囲まれて身動きが取れなくなっているらしく、かなりの窮地に陥っているようだが、こっちからすれば逃げ回っているよりかは対処がしやすい。

俺達は窓を突き破ってアイツ等の下へと向かい、月の兵士達を無視しながら間に割ってはいる。

そして即座に霊夢が結界を張るのに合わせ、俺も足元に魔法陣を展開して転移の準備に入る。

 

「お前達か。月夜見様たちを助ける事が出来たみたいだが、これは一体どういう状況だ?」

「悪いが細かい説明は後だ。とにかく今は月から脱出する」

「お待ちなさい! まだ月には大勢の民と玉兎たちが―――」

「諦めろ、もう手遅れだ」

 

抗議してくる豊姫の声を遮り、俺は転移魔法を発動させ月から脱出した。

転移の間際に見えた光景は、化け物どもに襲われているにも拘らず安らかな顔をする月の民達の姿だった。

 

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