竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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最終回 竜が生きる世界

デスエバンを倒した事で化け物共もいなくなり、幻想郷は漸く落ち着きを取り戻した。

地上で繰り広げられた戦いで大地は酷く傷付き、多くの自然が失われ怪我人も続出したが、永遠亭の尽力もあって幸いにも死者は出なかった。

せっかく電撃作戦を仕掛けたのに沢山の死者が出たら意味が無いからな。永琳が幻想郷に居てくれて良かった。

傷付いた大地は力を使えば直すことは出来るけど、失われた自然に関しては時間を掛けて直していくしかない。

幽香の奴が力を貸してくれれば一年くらいで元に戻りそうな気もするが、アイツが素直に首を縦に振るとは思えないし、こればっかりは時間をかけてやるしかないか。……いっその事天照の奴に頼んでその手の神の力を借りるってのもありか。力を貸さなくてもこっちの方が脅せば言う事を聞かせられるだろうし。

 

「お~い、リュウ~。なぁ~に一人で黄昏てるんだよ。コッチに来て一緒に飲もうぜ」

「うっさい黙れ酔っ払い。てか、お前ら飲み過ぎだ」

「いいじゃねぇかよ別に。今日は無礼講だろ?」

「今日はって……〝今日も〟の間違いだろ」

 

呆れて溜息を吐く俺を他所に、魔理沙を初めとする何時もの面々が神社の境内で宴会を楽しんでいる。

普段ならこんな宴会に参加する筈のない先代だけでなく、天照の本体までもが神社にやってきて飲めや歌えや大盛り上がり。……天照がいて、八坂の奴が若干肩身が狭そうにしているが気にしないでおこう。

今回の宴会の名目は幻想郷を守り抜いた事を祝してとの事だが、コイツ等それを理由に騒ぎたいだけ気がしてならない。

幻想郷が如何にかなるどころか、世界が滅ぶかもしれなかったんだから祝勝会を開きたい気持ちも分かる。分かるんだが……五日連続で開かれれば嫌にもなるぞ。

前にも三日おきに宴会が開かれることがあったけど、今はあの時よりも酷い状態だな。

 

「はぁ……」

「おや、溜息など吐いてどうかしたしたか?」

「月夜見。アンタも着てたのか」

「えぇ、誘われましたので」

 

この酷い状況に一人頭を抱えていると、何時の間にか宴会に参加していた月夜見が傍にやって来た。

その手には酒瓶が握られているが、他のやつの様に酔っ払っているようには見えない。

天照の奴も酒には強い方だったし、その弟である月夜見も酒に強くても何の不思議も無いか。

 

「……で、なんの用だ月夜見。俺は見ての通りこの状況にウンザリしてるんだが」

「別に貴方を飲みに誘いに来たわけではありませんよ。ただ、まだ礼を言っていない事を思い出したもので」

「礼だと? デスエバンを滅ぼした事なら別に感謝しなくても良いぞ。アレは俺の都合で滅ぼしただけだ」

「貴方らしい答えですね。ですが、亡き同胞の仇を討ち、月を取り戻してくれた事を感謝させて下さい」

「……あんまり嬉しくねぇ感謝だな」

 

呆れながら言うものの、月夜見は意にも返さずにこやかに笑って聞き流す。

これはこれで面倒くさい奴だと思いながら、この話をさっさと終わらせる為に月夜見が持って来た酒瓶を受け取って、一気に飲み干した。

 

「お見事。さすがですね」

「一体何が流石なのかは聞かないでおく。……それより、お前等はコレから如何するつもりだ」

「どう……しましょうかね。月は邪神の所為ですっかり穢れてしまったし、あの地にはもう同胞達は居ない。月に戻り、都を再建したところで空しいだけでしょうね」

「輝夜たちは地上に残るだろうから、再建する為に戻ろうにもたった四人じゃ如何する事も出来ないか」

「えぇ。あの子達はこの地を生きる場所と定めている。その事についてとやかく言うつもりは有りませんが、流石に私達だけでは如何する事も……」

 

先行きの見えない今の状況に不安を感じているのか、月夜見は宴会の席に似つかわしくない憂いだ表情をしている。人の事は言えないが、そう言うのは宴会の席でするもんじゃないだろ。

 

「まぁ、お前等が如何生きようとも勝手にすればいい。月に戻ろうとも、永遠亭に住もうとも好きにしろ。俺はお前等が問題を起こさない限り関与しない」

「随分と突き放すのですね。少しは相談に乗ってくれてもいいでしょうに」

「なんで俺がお前等の相談に乗ってやらないといけないんだよ。アホらしい。……第一、相談する相手が違うだろうに。そう言うのは永琳の奴にでも相談してくれ」

「八意にですか……。彼女にはもう相談しましたが、返ってきた返事は〝此処で暮らすのなら歓迎する〟と」

「だったら後は気持ちの問題だろ。帰ったらまたお前等で相談してくれ。さっきも言ったが、お前等が問題を起こさない限り俺はお前等に関与はしない」

「手厳しいですね。……ですが、そうする他ないのでしょう」

「分かってるなら最初から俺に相談なんかするなよ」

 

俺は余りの面倒くささから盛大な溜息を吐く。

最初からこうなる事は分かっていたくせに態々俺に相談を持ちかけるとか訳の分からんやつだ。俺だったら自分の思いもつかないような解決策を見出してくれるとでも期待していたのだろうか?

まぁなんであろうとも俺に期待なんかされても困る。コイツ等がどうなろうとも俺には如何でも良い事なんだからな。

これ以上なんか相談されても困るし、この場は俺の方から退散しておくか。

 

「おや、何処へ行かれるのですか?」

「何処だっていいだろ。俺は久し振りにのんびりしてたいんだ」

「この宴は貴方がたの勝利を祝うものでもあるんですよ。その主役が居なくなるというのはどうかと」

「知った事じゃねぇな。俺はそう言うのに興味が無いんだよ」

 

引き止めようとする月夜見を邪険に扱いながら、俺はシャドウウォークを使って誰にも気付かれずにその場から移動する。

俺が居なくなった事に気付いた霊夢と衣玖から後で文句を言われるかもしれないが、そうなった時はそうなった時だ。気付かれるまではのんびりとさせてもらおう。

俺は誰にも気付かれることなく本殿の屋根に登り、そこから幻想郷中を見渡す。

戦いの爪跡が生々しく残り、かつての風景からは程遠い物となってしまったが、境内で騒いでいる連中を見ればこの位のこと如何ってことは無いように思えてくるから不思議だ。

余り楽観しできるような状況ではない筈なのに、境内で騒いでいる連中はそんな事気にもしていないと言わんばかりに、今を思いっきり楽しんでいる。

人も妖怪も神も今だけは関係なく、飲めや騒げやと大盛り上がり。この乱痴気騒ぎの後片付けを一体誰がするのか考えると頭が痛くなるが、今を大いに楽しんでいるアイツ等を見ていると凄く些細な事に思えてくる。

見上げた空は蒼く、白い雲が点々と浮んでいて風も穏やかで気持ちのいい天気だ。……あの戦いが嘘だったんじゃないかと思えるくらいに。

でも、幻想郷に現れた化け物たちも、月での出来事も、デスエバンとの戦いも全てが現実だった。

デスエバンを滅ぼしたところで俺の記憶が戻ってくるわけでもないし、故郷に帰れる訳でもないが……別に大した問題じゃないだろう。

記憶が戻っても俺の気持ちは変わらないし、今はこの地が俺の故郷だ。その事さえはっきりとしていれば如何にでもなる。

あの戦いで過去との因縁に決着を着けても何かを得たわけじゃない。だけど、故郷を守ることが出来た。ならその事だけは誇ろう。滅ぼす事しかできない俺でも何かを守ることは出来たのだから。

 

「……いい天気だし、少し寝るか」

 

俺は欠伸を一つ掻いて瓦の屋根の上で横になる。

境内で行われている宴会は相変わらず騒がしいけど、この騒がしさも幻想郷の一部なのだと思えば如何ってことは無い。

宴会の喧騒に耳を傾けながら、俺の意識は次第に眠りの中へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

「………りゅう。ちょっとリュウってば。こんな所で寝てるんじゃないわよ」

「……んあ?」

 

昼寝をしていた俺は呼びかけてくる霊夢の声と、身体を揺さぶられる感覚で目を覚ました。

アレからどれだけ眠っていたのかは分からないが、目に飛び込んできた太陽の位置から考えてそれほど長くは眠れなかったようだ。

もう少しだけ眠らせて欲しい気もするが、霊夢に見つかってしまった以上暢気に眠っている訳にもいかない。

若干後ろ髪を引かれるものを感じながら、俺は身体を起こして背筋を伸ばし目を覚ます。

 

「くぁ~あ。……あ~ぁ寝た。霊夢、おはよう」

「おはようじゃないでしょまったく。急に姿を消したと思ったらこんな所で何してるのよ」

「いや、余りにもいい陽気だったからな。久し振りにのんびりと昼寝をと」

「昼寝って、あの騒ぎの中でよく寝照られたわね」

「それだけ疲れてたってことだよ」

「アンタが疲れてるところなんて見た事無いんだけど」

「今回の戦いはそれだけ激しかったって事だよ」

「……ま、それは分からないでもないけどね」

 

若干呆れたように言いながら、霊夢は俺の隣りに腰を下ろす。

霊夢の横顔を見てみるとほんのりと紅くなってはいるが、泥酔しているようには見えず、ほろ酔いといった感じだろうか。

下に目を向けるとまだ宴会は続いているみたいだが、余り飲まないように自制していたのだろう。アイツ等と一緒に飲んでいてよく我慢できたもんだと感心するな。

 

「……こうしているとなんだかあの戦いが嘘みたいね。つい数日前に激しい戦いがあったとは思えない」

「そうだな」

「でも、私たち勝ったのよね? 私たちあの邪神から幻想郷を……この世界を守れたのよね」

「あぁその通りだ。俺達はアイツに勝ったんだ」

「そっか。……ふふ、なんだか変な感じね。普段通りに異変を解決しただけの筈なのに、まさか世界を救っちゃうだなんて。きっと歴代の巫女でもこれだけの大異変に関わった巫女はいないでしょうね」

「随分と大きくでたな。もしかしたら霊夢が知らないだけで世界を救った巫女がいるかもしれないぞ」

「そんなまさか……って言いたいけど、もしかしたら本当に居そうだから怖いわ」

「自分のご先祖様を怖がるなよ」

 

自分の家系の凄さを改めて思い知ったのか、若干顔が引き攣っている霊夢を見て思わず笑ってしまう。

笑われた本人は面白くないのか頬を膨らませるが、そんな顔をされても可愛らしいだけなので怖くともなんとも無い。

 

「……なんか釈然としないけどまぁいいわ。どうせいつもの事だしね」

「お、突っ掛かってこないのか。霊夢も成長したんだなぁ~。昔だったらもう一言二言あったのに」

「茶化さないでよ。ところでリュウ、これから如何するつもり?」

「これからって?」

「宴会よ、宴会。アイツ等はまだまだ続けるみたいだし、何処か行くなら付き合うわよ」

「あ~……そういうのは特に考えてないな。とりあえずここでのんびりしてる」

「相変わらずねぇ。……ま、それならそれで付き合うわよ」

 

そう言いながら霊夢は微笑んでくる。どうやら何だかんだ理由をつけて俺の隣りに居たいらしい。

霊夢がとなりに居てくれるのは俺としては歓迎だが、こうしてみると霊夢は本当に変わったんだと思い知らされる。初めて会った頃は俺に微笑んでくれることなんてまず無かったからな。

 

「……そういや霊夢。俺達が一緒に暮らすようになってどのくらい経つっけ」

「私達が一緒に暮らすようになってから? そうねぇ……出逢ったのが紅霧異変の前だから、かれこれ五年くらいは経つのかしら」

「そっか、もう五年も経つのか……」

 

霊夢に言われて気づいたが俺達もだいぶ長いこと一緒に暮らしているんだな。

もっと昔から一緒に暮らしている様な気がしてたけど、言葉にしてみればたった一言で表せてしまうのか。

霊夢と初めて会った頃の俺は身体から抜け出たばかりで、まだフワフワとしていて安定していなかったけか。

出会ってから一緒に暮らすようになって、時には喧嘩もしたりしたけどまた一緒に笑い合って、気が付けばお互いに隣に居るのが当たり前になっていた。

今まで色んな異変を霊夢と共に解決してきたけど、それはコレからも変わらずに霊夢と共に過ごしていくんだと思う。だけど……そろそろケジメを付けても良いかもな。

 

「なぁ霊夢。ちょっと聞いて欲しい話があるんだが」

「ん? なによ、突然改まって」

「霊夢―――」

「あ、はい」

「―――俺と結婚してくれないか?」

「…………えっ?」

 

霊夢に結婚を申し込むと、何故か彼女はその場で固まってしまう。

目の前で手を振ってみるが反応は無く、完全に思考が停止してしまっているようだ。

別に変な事を言ったつもりは無いんだが、言うタイミングでも間違えただろうか? でも結婚を申し込むタイミングって何時なんだよ。

軽く肩を揺すっても霊夢の意識は戻ってこないため、仕方が無く霊夢の目の前で手を叩く事にした。

 

―パンッ!ー

「……はっ! 私は今まで何を」

「漸く戻ってきたか。軽く意識が飛んでたみたいだが大丈夫か?」

「あ、うん。それは大丈夫だけど……あ、アンタ、今の話本気なんでしょうね。嘘だとか冗談なんかじゃないわよね」

「本気に決まってるだろ。幾らなんでも嘘や冗談でこんな事言ったりしないって。疑り深いな」

「だ、だって信じられないんだもの! 今までリュウがその手の事を話題に出す事なんて一度も無かったし、コッチの好意に全然気付かない朴念仁だし、リュウの方から求婚してくるだなんて考えた事なかったんだもの!」

「ひっでぇ言われ様だな。確かにこの手の話題はしたこと無かったけど、幾ら俺でも好きでも無い奴と何年も一緒に暮らしたりしないぞ」

「で、でも万が一って事もあるわ。話題に出しておきながらやっぱり冗談でしたなんて言ったら、幾らリュウでも容赦しな―――」

「霊夢。そう言うのはもう良いから、お前の気持ちを聞かせてくれないか?」

 

軽く混乱している霊夢の言葉を遮って、俺は出来るだけ優しい声で霊夢の返事を促す。

俺の声を聞いて霊夢も漸く現実を直視してくれたのか、顔を真っ赤にしながらも落ち着きを取り戻した。

 

「ぁ…ぅ…………わ、私もずっと前からリュウの事が好き、だったから……その……ふ、不束者ですが末永く宜しくお願いします」

「あぁ、必ず一緒に幸せになろうな」

「……うんッ」

 

涙を零しながらも霊夢は笑顔で頷いてくれた。

俺がそっと霊夢の顔に触れると彼女も何をされるのか察したのか、顔を赤くしながらも眼を瞑って受け入れてくれる。

俺はそんな霊夢に顔を近づけてキスをしようとするが、ふと誰かの視線を感じ取ってしまう。

霊夢も同じ物を感じたのか二人して横を見てみると、そこには宴会をしていた筈の連中が俺達の様子を覗き見していやがった。

 

「……お前等、そこでいったいなにをしているんだ」

「ん? あぁ、妾たちの事は気にするな。存分に続きを楽しめ」

「いや、そう言うことじゃなくてねたっちゃん。アンタ達、一体何時から見ていたのよ」

「流石に全員が最初から見ていたわけじゃないわよ。私は竜神さんが霊夢に結婚を申し込む辺りからね」

「「………………」」

 

悪びれる事もなく言ってくる八雲に俺達は言葉を失う。

気付かなかった俺達も俺達だが、そんなところから覗いているコイツもコイツだ。恐らく此処に人を集めたのも八雲の奴だろうが、こんな時くらい見て見ぬフリをしてくれたっていいだろうに。

 

「霊夢さん、リュウ様。ご婚約おめでとう御座います。わたくし、わたくし……ッ」

「何時かはこうなるかと思っていたが、まさかリュウの方から告白するとはな。ま、おめっとさん」

「相手が人間ではないのは気になりますが、彼が相手なら問題は無いでしょう。霊夢、幸せになりなさい」

「まさかこの様な日に立ち会うことが出来るとは思いもしませんでした。お二人の友として心からの祝福を」

「あ、すみません。写真を取りたいのでお二人とももうちょい寄ってくれませんか。出来ればキスなんかしてくれると最高なんですけど」

「アンタ等ねぇ……。ちょっと全員そこに直りなさい! 粛清してやる!!」

「あ、やべ。霊夢が切れた。全員退散!!」

「待ちなさいよッ!!」

 

逃げ出す魔理沙たちを追いかけようと霊夢は立ち上がるが、俺は彼女の手を引いて抱き寄せる。

突然の出来事で霊夢が抗議の声を上げる前に、抱き寄せたまま顔を近づけて霊夢の唇をふさいだ。

少しの間口付けを交わした後、酸欠になる前に霊夢の口を離してやった。

 

「……ふぅ。これで満足か、お前等」

「「「「お、おぉ……ッ」」」」

 

覗き見していた連中に見せ付けるようにキスをすると、外野からは感嘆の声が聞こえてくる。

しかし霊夢からの反応は全く無く、また気絶でもしたのだろうかと顔を覗き込むと―――

 

「……い、いきなり何するのよ、この馬鹿ッ!!!」

「ぬがッ!?」

 

―――突然霊夢に殴られてしまった。しかも顎を。

 

「いってぇ~……。何すんだよ、いきなり」

「それはコッチの台詞よ! なんでアイツ等が見ている前で口付けをしてくるのよ! 皆が居なくなってからでもいいじゃない!」

「なんだ? だったらアイツ等が帰った後だったら良かったのか?」

「そうだけど、そうじゃないでしょうが!!」

「なんだよ訳の分からん奴だな。別に初めてのキスじゃないんだからそんなに怒るなよ。決戦前夜の時はお前の方からしてきただろ」

「キャアーッ! 今この場でその話をしないでーッ!! …………もういいわ。他の連中を黙らせる前にまずはアンタから黙らせる!!!」

「なんでそうなるんだよッ!?」

「問答無用ッ!!」

 

激怒して弾幕を展開してくる霊夢を見て、俺は大慌てでその場から逃げ出す。

上空へと飛んで退避するが、当然の様に霊夢が弾幕を展開したまま追いかけてくる。

放たれる大量の弾幕を回避しながら、コッチからは攻撃せずに逃げの一手で時間を稼ぐ。

時間が経てば霊夢の怒りも静まるだろうし、落ち着くまではアイツの弾幕から逃げ続けるとしよう。

最近は殺伐としていたことが多かったから、偶にはこういう遊びに興じるのも悪くない。

なんで霊夢が怒ったのか分からないし、霊夢の恥かしがり屋なところは全然直る気配がなかったりと、お互いにこう言う所だけは進歩が無いが、お互いに足りない所を補って歩いていけばいい。

この先もずっと一緒に暮らしていくんだ。前に霊夢が言っていたみたいに喜びも悲しみも分かち合って生きていこう。

 

「待ちなさいリュウッ!!」

「っと、今は霊夢から逃げるのが先決か」

 

後ろから飛んで来る霊夢の弾幕を避けながら、俺は澄み切った青空の中を飛んでいく。

一体何処まで逃げれば良いのか見当も付かないけどその内なんとかなるだろう。

背後から激怒した霊夢が追いかけてきているにも拘らず、我ながら楽観的だなと思わず笑ってしまう。

例え喧嘩してしまったとしても、また分かり合うことが出来るって知っているから。

 

「……霊夢」

「なによ、言い訳なら聞かないわよ」

「いや、お前に会えてよかったと思ってな」

「なッ!? あ、アンタ全然反省して無いでしょ!!」

「いやめっちゃしてる。海よりも深く反省してる」

「物凄く嘘くさいわよ! アンタ、私の事おちょくってるでしょ!!」

「……流石にバレたか」

「バレいでか!!」

 

おちょくられて更に怒ったのか、放ってくる弾幕の量を増やしてきた。

流石にこれは不味いと反省するが、後ろを振り返ってみた霊夢の顔が綻んでいるのを俺は見逃さなかった。

喜んでいてくれているのは別に良いんだが、照れ隠しに弾幕の量を増やすのはやめてもらいたいもんだ。

俺はやれやれと溜息と吐きながら幻想郷の空を駆け抜けていく。あの日霊夢と出逢えた事を感謝しながら……。

 




『竜が辿り着いた幻想郷』。今回を持ちまして最終回となります。終わりよければ全てよしとまではいきませんが、個人的にこれが一番〝竜幻〟らしい終わり方だと思います。

ハーメルンでの初投稿が2012年の七月ですが、にじファンで投稿していた時代を考えると3年近くこの小説を書き続けてきた訳ですが、いや~随分と長く書いたもんだ。
書き始めた当初はこんなにも長い小説を書く予定じゃなかったんですけど、思い付いた事を書いていったら何時の間にかこんなにも長い小説になってしまった。
にじファンから追いかけて読み続けてくれた方も、ハーメルンから読んでくれた方も長い間本当にありがとうございます!!

次回作については未定ですが、それよりも先に竜幻の後日談を短編で一話投稿しようかと考えています。内容としては二人の結婚式を予定しています。
投稿が何時になるかははっきりとは言えませんが、四月中には絶対に上げますので見かけたらソッチも読んでみてください。
では、またご縁がありましたらお会いしましょう。ではでは~。
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