竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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この回はにじファン時代には存在しなかった回です。
読み返して色々と思うところがあったので、急遽書き上げました。
ちなみに視点は霊夢視点です。


第二十二話 答えの出ない悩み

 

師走も過ぎて、正月も終わった今日この頃、私はリュウを連れて里に買い出しに出かけた。

一人で暮している時は偶にしか行かなかったけど、居候が一人増えたお陰で割りと頻繁に買い出しに行くようになった。

妖怪退治や異変解決の報酬である程度は食い繋げるけど、流石に人数が増えると今まで通りの生活は送れそうに無い。

ウチの神社は金銭面での収入が殆ど無いから、今まで買い出しに行く事自体あんまり無かったけど、最近はリュウの収入のお陰で多少は買い物をする余裕も出てきてる。

 

「しかし、正月とやらはやる事が無くて暇だったなぁ~。毎年あんな感じなのか?」

「まぁね。参拝客なんて滅多に来ないし、寒空の下で山道なんて歩きたくないんでしょう」

「忙しくないのは助かるが、人が来ないってのも寂しいもんだな」

「別にそんな事無いわよ。毎日の様に誰か来て騒がしくなるよりはずっと良いもの」

「……そう言うものなのか?」

「そう言うものよ」

 

私の言葉にリュウは納得できないみたいだけど、言い包めるのも面倒だからこのまま無視しよう。

リュウは変なところで頭が固いから、コイツが納得できるまで話し合っていたら日が暮れちゃうわ。

寒空の下で長々と話し合いなんてしたくないし、さっさと必要な物を買って神社に帰りましょう。

 

「ほら、さっさと買い物を済ませるわよ」

「分かってるけど、一体何を買う心算なんだ? 未だに聞かされた無いんだが」

「在庫の切れた生活必要雑貨一式。買った物は全部アンタに持ってもらうからその心算で」

「……少しくらい持ってくれても良いじゃねぇか」

「却下で。アンタは居候なんだから、黙って働きなさい」

「霊夢、それは横暴って言うんだぞ」

「はいはい、文句言ってないでさっさと歩く」

「な、納得いかねぇ……」

 

リュウは苦虫を噛み潰した様な顔でこっちを見てくるけど、私はそんなのは無視してどんどん里の中心部へと歩いて行く。

先に行く私を見て説得できないと諦めたのか、リュウは大きな溜息を一つ吐いてから私の後を追いかけてきた。

 

 

 

 

 

………

……

 

里の色んな店で必要な物を買い込んでいたら、何時の間にか荷物がかなりの量になっていた。

買った物は全てリュウに持たせているけど、量が量なだけに端から見るとかなり不恰好な姿にみえる。

まぁ、必要雑貨以外にも食材なんかも買い込んだし、荷物が多くなるのは必然だったのかもしれない。

一人の時は此処まで買い込まなかったけど、やっぱり人数が増えると必要な数が増えるから困り者ね。

私一人じゃこの量は運びきれなかったし、荷物持ちとしてリュウを連れて来たのは正解だったわ。

 

「おい霊夢」

「ん? なによ」

「頼むから少しくらい荷物を持ってくれ」

「全力でお断りするわ」

「この野郎……」

 

断った私をリュウは恨めしそうに睨んでくるけど、不恰好な見た目と相まって其処まで怖くは無い。

今のリュウの姿を見ていると、本当にあの大妖怪(ゆかり)が警戒するほどの存在には見えないわね。

実際に変身したところも見たし、内包している力も感じ取る事はできるんだけど、性格がアレだからかイマイチ危機感を抱かせないのよ。

コイツの性格だから仕方が無いって割り切れるけど、こんなのが幻想郷を脅かすほどの存在とは思えないわね。

 

「……………」

「ん? なんだよ」

「べっつに~」

「…? 変な霊夢」

 

リュウの事を色々と考えていた所為か、私は自分でも気が付かないうちにリュウの事を訝しむ様に見ていた。

とりあえず適当にはぐらかしてみたけど、リュウも無理に聞き出そうとはしてこなかった。

これ幸いにと私は前を向きなおして、薄っすらと雪が積もっている道をのんびりと歩き始めた。

地面の雪に足を取られて若干歩きにくいけど、気をつけて歩きさえすればなんて事は無い。

そう思いながら足元に注意して歩いていると―――

 

「ぬおッ!?」

 

―――後ろから情けない声と一緒に、誰かが盛大に転んだような豪快な音が聞こえてきた。

誰が転んだのか想像はつくけど、念のために後ろを振り返ってみると、リュウが前のめりに倒れている姿が見れた。

恐らく雪に足を取られて転んだんでしょうけど、なんて言うか……随分と情けない姿ね。

変身してるところを見てなきゃ、コレが竜族だなんて信じられないでしょうね。

そう考えると今のリュウに呆れればいいのか、それとも哀れみを掛ければいいのか分からず、思わず溜息を吐いてしまう。

 

「はぁ……。ちょっとリュウ、荷物は大丈夫なんでしょうね」

「俺の心配よりも荷物の方が先か」

「アンタは頑丈なんだから、この程度じゃ如何って事は無いでしょ。…ほら、何時までも寝てないで、さっさと起き上がりなさいよ」

 

ぶっきら棒に言いながらも、私は寝転んでいるリュウに手を差し出した。

リュウは何処か不満そうにしながらも、私の手を取ってそのまま起き上がってみせた。

何気ない触れ合いだって言うのに、こんなちょっとした事で私は少しだけ変な気持ちに為ってしまう。

この気持ちがなんなのか良く分からないけど、決して嫌な気持ちじゃないと言う事だけは分かる。

 

「ったく、やっぱり冬ってのは好きに為れないな。寒いし転ぶし冷たいし」

「転ぶと冷たいはアンタの不注意でしょ。まぁ、寒いって言うのは同意するけど」

「と言う訳で霊夢、今日の晩飯は鍋を希望する」

「二人で鍋なんて具材が余るだけだから却下。あと一人くらい居れば別だけど……アンタ呼びにいく?」

「この寒空の下、紅魔館にまで飛びに行くのはちょっとなぁ……」

「そう思うのなら諦めなさい。今日の夕食は……そうね、筑前煮でも作ろうかしら」

「筑前煮って言うと……色んな食材をまとめて煮るアレか」

「間違っちゃいないけど、その言い方は止めなさい」

 

サラッととんでもない事を言うリュウに、私は呆れながらそうツッコミを入れた。

実際にそう言う煮物だから、コイツの言っている事もある意味間違いじゃないんだけど、流石にその言い方はどうかと思うわ。

 

「まぁ、霊夢の料理は美味いし、俺としてはそれだけで良いんだけどな」

「……褒められている筈なんだけど、如何してか素直に喜べない私がいるわ」

「そこは素直に喜んでいいと思うが?」

「大体はアンタ言い方が悪いのが原因よ。もう少し考えて発言しなさい」

「俺は思ったことをそのまま口にしてるだけだ」

「……ある意味、それが一番タチ悪いわよ」

 

リュウのこの性格に流石の私も頭を抱えてしまいそうになる。

下手に嘘を吐いたり、上辺だけを語る奴よりもずっと信用できるんだけど、唐突に言ってくるコイツの何気ない言葉に何時もドギマギさせられてしまう。

未だにあの時の返事を返せていないって言うのに、私の気も知らないで口説き文句を言ってくるから本当に困る。

早いところ自分の気持ちを見定めたいんだけど、最近では今のままの関係でも良い様な気がしてるのよね。

誰かに迷惑を掛けるわけでも無いし、リュウも答えを聞かせて欲しいと催促してくる事も無いし、この距離感のままで居るって言うのもありなのかもしれない。

 

「……いや、それはただ逃げるだけか」

「ん? 今なにか言ったか?」

「何でもないわよ。それよりもさっさと帰るわよ」

「あ、嗚呼」

 

私はリュウを促してから歩き始めると、アイツは何処か納得が行かないのか首を傾げていた。

きっと私の態度を疑問視してるんでしょうけど、コレばかりはリュウに話すわけには行かない。

どうせ話したところで碌な答えも返って来ないでしょうし、コレは自分で考えて答えを出すしかない。

頭の中では分かっているのだけど、幾ら考えても答えが出てこないから逃げの選択肢が浮んでしまう。

現状維持ってのは一番楽な方法なんだけど、こんなの私らしくも無いし、問題を先送りにしているに過ぎない。

私はリュウの事を如何思っているのか、ただそれだけの問題だって言うのに、どうしてこんなに悩まないといけないのかしらね。

 

「はぁ……。大した問題じゃないのに、如何して分からないんだろ」

「さっきから何の話をしているんだ? 珍しく溜息も吐いて」

「アンタの存在が良く分からないって話よ」

「なんでそんな事で悩んでるんだ? 第一、俺にも自分の事が良く分からないってのに、霊夢に分かる訳が無いだろ」

「そう言う話じゃないわよ。まぁ、最初から答えなんて期待して無いけど」

「…? 本当に良く分からん事で悩むな」

「全部アンタの所為なんだけどね」

「えっ?」

 

何気ない一言で驚いて立ち止まるリュウを他所に、私は歩みを止めずに答えの出ない悩みを考える。

この手の話に詳しい奴が居たら良かったけど、私の周りって碌な奴が居ないからこの手の話は出来ないのよね。

まぁ、仮に居たとしても変におちょくられるのは癪に障るし、絶対に打ち明けたりはしなかったでしょうけど。

何時まで掛かるのか自分でも分からないけど、当分はこのまま一人で考え続けるしかないか。

そうやって一応の区切りをつけてみるけど、結局答えを出していない事に気付き、思わず溜息を吐いてしまうのだった……。

 




言い忘れてましたが、この小説は全四章で構成されています。
何気にコレはBOFⅣと同じ構成だったり……。
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