竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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時間が少しとんで今回から妖々夢編に突入します。


第二十三話 春雪異変

何時の間にか年が明け新年となり、暦の上では五月となり春となっていた。

時期としては桜の花が散り、そろそろ深緑の葉が生い茂る頃だ。

この辺りから夏に向けて気温も上がり、そろそろ梅雨入りするんじゃないかって……時期なんだが―――

 

「……寒いな」

「そうね。幾らなんでもコレはありえないわ」

 

―――幻想郷は五月に為ったと言うのに、何故か未だに冬の様な天気が続いていた。

外は緑が生い茂るどころか、雪が降り続いていて、新芽が出ているのかも怪しい。

寒さは冬の頃から変化はなく、相変わらず朝晩の冷え込みは厳しいものがある。

余りにも厳しい寒さの余り、俺と霊夢は袢纏(はんてん)を着て、毎日の様にコタツで暖を取る生活をしている。

 

「なぁ、霊夢。これって異変だよな」

「えぇ。間違いなく異変ね」

 

向き合うようにコタツに入っている俺と霊夢は、この冬が異変である事を確認しあう。

 

「「……………」」

 

お互いに何も言わずに頷き合うと、それぞれの部屋に向かい道具を取りに行く。

俺が取り出したのは、前もって作っておいたスペルカード数枚にボロボロの剣。

後は袢纏(はんてん)を脱いで、霊夢に貰った紺色の長袖の服を着込む。

準備を終えたら、その足で玄関へと向かと既に霊夢が準備を終えて俺の事を待っていた。

俺は愛用の靴を履き、霊夢と共に家を出て、幻想郷の空を翔けて行く。

……俺と霊夢の目的はただ一つ、奪われた幻想郷の春を取り戻す事だ。

 

 

 

 

………

……

 

「……とは言え、春を奪うってどうやったんだろうな?」

「そんなの知らないわよ。とりあえず、そこ等にいる妖怪を退治していくだけよ」

「またそれかい」

「うっさいわね。解決出来ればそれで良いのよ」

 

勢いよく家を飛び出したのは良いものの、俺達はあても無く幻想郷の空を飛んでいた。

空からは深々と雪が降り、眼下に広がるのは一面の銀景色。

何処を見ても雪が降り積もっていて、今が本当に五月なのか疑問に思えてくる。

 

「それにしても、いい加減この雪景色も見飽きたわね」

「だよな~。そろそろ緑の葉が見たいものだ」

 

俺と霊夢は他愛のない話しをしながら春を奪った犯人探しをしていた。

どうやって春を奪ったのか皆目見当も付かないが、季節が移り変わらない以上なんらかの方法で春を奪った、もしくは春を止めているんだろう。

何処かにきっとその犯人がいる筈とは言え、この寒い冬の中でも精力的に活動する妖怪も中々いない。

犯人の眼星がある訳じゃないから、まずは手掛かりから捜しているのと同じ状況だ。

周囲を注意深く見ながら何かないかと探していると、俺達の目の前に青と白を基調にした服を着た白っぽい髪の女性が現われた。

 

「……誰よアンタ」

「ワタシ? ワタシは『レティ・ホワイトロック』。ただの冬の妖怪よ」

「ふ~ん」

 

目の前に現われた彼女は、自分の事を冬の妖怪と言った。

如何して〝冬の〟なのか分からないが、確かに彼女からは冷気の様な冷たさを感じる。

それが彼女の能力か知らないが、少なくとも今回の異変に付いて何か知っていそうだ。

そう考えると俺は自然と鞘から剣を抜き、霊夢も札を取り出して臨戦態勢を整えた。

 

「え~っと、如何して貴方達は武器を構えだしたのかしら?」

「冬の妖怪なら、この終わらない冬の事を知ってると思ったからよ」

「……貴方達、もしかしてこの冬を終わらせる心算なの?」

「寒いからな」

「そんなの駄目よ! 折角この素晴しい冬が長く続いてるのに、終わらせるなんて勿体無い!!」

「「そんなの知った事じゃないって/わよ」」

 

俺と霊夢は同じ言葉を言って、彼女の意見を拒否した。

拒否されたのがショックなのか、顔を下に向け俯いてしまった。

 

「……そう。なら、ワタシが冬の幸せを教えてあげる!」

 

彼女は顔を上げて宣言すると、自分の前方に白い霧の様なものを出してきた。

俺は霊夢を守る様に前に立ち、剣を握り締めて相手の弾を弾き飛ばせる様に構える。

 

あの白い霧そのものが弾幕と言う事はなさそうだが、無意味に出しているとも考えられない。

自分の弾を隠す為に出したとしたら、既に弾が放たれていても良いはず。

そんな事を考えていると、白い霧は晴れ、其処から無数の弾幕が放たれた。

霧の向こうから放たれたのは予想通りだが、弾幕の密度は予想に反して其処まで厚くは無い。

俺は余り動かず、直撃コースの弾だけを斬り裂いていき、残った弾を斬撃に似せた弾で打ち消す。

俺が放った弾は真っ直ぐ速く飛び、コッチに向かって来ていた斬り裂き、狙い通り彼女の弾を打ち消した。

 

弾が消えたのと同時に、俺は前に出て彼女との間合いを詰める。

彼女は俺の行動に驚くものの、直ぐに別の弾幕を張り迎撃しようとしてくる。

今度の弾は全て俺目掛けて飛んでくるが、この程度なら躱すのは容易い。

俺は少しだけ横に逸れる事で避け、弾を掠りながらも彼女との間合いを更に詰めていく。

間合いを十分に詰めたところで、俺は近距離から斬撃を叩き込み、彼女を少しだけ後方に吹き飛ばした。

 

「キャアッ?!」

 

俺は後方に飛ばされた彼女に向かって、追撃として斬撃に似せた弾を放つ。

弾は真っ直ぐ飛んでいくが、弾の射線上から移動してしまい当たる事はなかった。

……分かっていた事だが、やはり距離があると速度があっても単発じゃ避けられるか。

竜変身(トランス)すれば連射も出来るけど、彼女程度の実力なら使うまでも無い。

そう考えた俺は、もう一度剣を構え直して再び間合いを詰めようと駆け出した。

だが、俺が間合いを詰めるよりも先に、彼女はポケットから一枚のカードを取り出した。

 

「寒符『リンガリングコールド』!」

 

彼女がスペカを宣言すると、周辺の冷気が増したような気がする。

幾ら長袖を着ていても、寒さが増すのだけは勘弁してもらいたい。

もっとも、彼女にそんな事を言っても仕方が無いのは重々承知なんだがな……。

 

「さて、まずは一枚目の攻略と行くか」

 

俺はそう呟いてから前に出て、彼女との間合いを詰めて行く。

それに対して彼女は、一つの大きめ弾を中心に複数の弾を連ねた弾幕を放って来た。

弾幕の速度自体は遅いものの、左右に連なった弾の少し特殊な動きをしている。

だが、言って仕舞えばただそれだけの弾幕だ。

前に戦ったレミリアやフランドールのスペカに比べれば、かなり楽な弾幕に入る。

俺は迫って来る弾幕を掻い潜り、再び間合いを詰めて斬り掛かった。

だが、今度は後ろに吹き飛ばしたりはしない。

彼女は俺が剣を振った後を付いて、至近距離で弾幕を放ってくる。

俺はその弾幕を躱しつつ、また斬り掛かりつつ後ろに下がる。

後ろに下がったものの、すぐに斬撃に似せた弾を彼女に向かって飛ばす。

その弾が命中したのを目視したら、更にもう一撃叩き込んだ。

四連撃を叩き込むと、辺り一帯に出ていた冷気が少しだけ和らいだ気がした。

 

「いたた……。貴方の弾幕はなんなの? 物凄く痛いんだけど……」

 

彼女は痛みで顔を顰めながらも、不思議そうに尋ねてきた。

答えようか迷ったが、知られたからと言って困る様な事でもないか。

 

「…〝今の〟俺は、弾を連射するのが苦手でな。その分威力を高めたんだ」

「威力を高めたってレベルじゃないと思う……」

 

俺の返答に彼女は何処と無く嫌そうな顔をする。

嫌がられても困るんだが、特に反論する事もできず俺は苦笑いで答えるしかなかった。

 

「……痛い思いをしたくないなら、此処で負けても良いんじゃないのか?」

「それも良いかもしれないけど、一枚攻略された程度じゃ引けないわ」

「そうかい」

 

さっさと戦いを終わらせたく思い提案してみたが、彼女は俺の提案をやんわりと断った。

彼女の返答はなんとなく予想が出来ていたから特に落胆する事は無かった。

……とは言え、あまり長々と戦う気は無いし、次で決めさせて貰うか。

俺は心の中でそう決めていると、彼女は二枚目のカードを取り出した。

 

「冬符『フラワーウィザラウェイ』」

 

彼女が二枚目を宣言すると、またこの一帯の寒さが増した。

俺はズボンのポケットから一枚のカードを取り出し、彼女との間合いを詰める。

二枚目のスペカは、大量の雪玉を出現させ、それを周囲に放って来るものだ。

弾幕の密度は厚いが……決して躱せない程の厚さじゃない。

俺は弾の軌道を読み、弾に掠りながらも少しずつ前に進んで行く。

彼女に近付けば近付くほど、弾幕は厚くなって行くが……臆せず前に進む。

ある程度の距離まで近付くと、俺は取り出しておいたカードを宣言する。

 

「炎撃『烈火拳』!」

 

カードを宣言すると、剣の刀身に炎が燈り、近くにある弾幕を溶かした。

剣に炎が燈るのを見た彼女は、慌てて避けようとするが……間合いは既に十分に詰めている。

俺は周りに残っている弾幕を溶かしつつ、彼女の喉元に剣を突き立てた。

 

「……それでまだやるか?」

 

炎を纏った刀身が煌々と燃え盛る中、俺は剣を突き立てたまま彼女を問い質す。

燃え盛る炎の熱にやられたのか、彼女は大量の汗を掻きながらも口を開いた。

 

「ま、まいりました……」

 

彼女が素直に負けを認め、両手を上げたのを見計らって、刀身に纏わせていた炎を消して鞘に納めた。

 

 

 

………

……

 

戦いの決着が着いた後、俺は霊夢と共に彼女にこの異変の事を尋ねた。

 

「それじゃ、この冬が終わらないのはアンタの所為じゃないのね」

「えぇ、そうよ。何時までも冬が続いて欲しいとは思うけど、流石に此処まで大それた事は出来ないわ」

「じゃあ、誰がこんな事をしたって言うのよ」

「流石にそれは知らないわよ……」

 

彼女は冬に力を増す妖怪らしいが、この異変を起した犯人ではないそうだ。

幾ら冬の間しか活動出来ないとは言え、季節が変わるのは自然の摂理と割り切っているとか。

だから、幻想郷から春を奪うような真似はしていないとの事だ。

 

「ワタシは、ただ冬が長続きして喜んでいただけなのよ」

「それはさっきも聞いたわよ。……全く、誰がこんな異変を引き起こしたのよ」

「俺としては、如何やって春を奪ったのかが気になるな」

「それは多分、誰かがあの子を誘拐したんじゃないかしら?」

「「……あの子?」」

 

俺と霊夢は、同時に彼女の言うあの子とは誰か尋ねた。

 

「『リリーホワイト』。春を告げる妖精で、あの子が居ないと幻想郷に春がやって来ないわ」

「じゃあ、誰かがその妖精を攫ったから、今も冬が続いているって事?」

「えぇ」

 

半信半疑と言った霊夢の質問に彼女は頷いて答えた。

春を告げる妖精がどんな子が知らないけど、少なくとも犯人が春を独占しているは分かった。

しかし、何故そんな事を仕出かしたのかが分からないな。……ずっと花見をしていたくなったのか?

 

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