竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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第二十四話 凶兆の黒猫

 

何時までも続く冬に耐えかね、幻想郷から無くなった春を捜しに出た俺と霊夢。

道中で出会った雪の妖怪の話を聞いて、春を告げる妖精を探しているのだけど、何処に居るのか見当も付かない。

空高く飛んで幻想郷を見下ろして探しているけど、何処もかしこも雪景色になっていた。

本当に春を独り占めしている奴が居るのだろうか? 辺りを見る限りだとそんな風には見えないがな。

 

「何か見付かったリュウ?」

「いや何も……って、アレは何だ?」

 

周囲を探していた俺が見つけたのは一本の大きな木。

その木も他と同様に雪が積もっているのだが、上の方だけ何故か雪が積もっていなかった。

風で飛ばされたのか、雪の重みに耐えかねてずり落ちたのかも知れないけど、何故かその木の事が気になった。

俺は雪が積もっていない箇所に近付き、何か手がかりでも無いかと捜してみる。

……すると、木の枝の間に桜の花びらの様なモノが挟まっているのを見つけた。

俺はなんとなくそれを拾い上げ、マジマジと観察してみる。

 

「桜の花びら……って訳でも無さそうだな」

「ちょっとリュウ。一体何を見つけたのよ」

 

俺が花びらを観察していると、何時の間にか霊夢が傍にやって来た。

 

「いや、こんなもん見つけてさ」

「ん? ちょと貸して」

「はいはい」

 

俺は手に持っていた花びらを霊夢に渡しすと、彼女もそれをマジマジと観察し始めた。

色々な角度から花びらを観察するけど、どの角度から見ても花びらは花びらだと思う。

霊夢は少しの間花びらを観察していたが、もう十分に見たのかソレを俺に返してきた。

 

「はい、ありがとね」

「それは良いけど……コレが何か分かったのか?」

「う~ん……イマイチ確証が無いから、なんとも言えないのよね~」

「珍しくはっきりしない返事だな」

「もうちょっと集れば何か分かると思うけど、それだけじゃね」

「なら、これをもっと集めてみるか。何かの手掛かりになるかもしれないし」

「そうね」

 

俺達は頷き合って、桜の花びらを捜す事に決めた。

同じ様なものが無いかと辺りを見回していると、突如突風が吹いた。

突風は積もっていた雪を吹き飛ばすが、それと同時に桜の花びらも運んできた。

俺はそれを逃さず掴み取ると、風が吹いた方角を見る。

 

「……今のって、アッチの方から飛んで来たのか?」

「そうみたいね。……よし、行くわよリュウ!」

「決断はやッ!?」

 

何の迷いも無く即決した霊夢は、風が吹いた方角に向かってドンドン進んで行く。

俺は彼女を見失う前に、花びらをポケットに入れて急いで後を追いかけた。

 

 

 

………

……

 

何時もの様に、悪戯で弾幕を放ってくる妖精を撃退していると、俺達は何時の間にか村に辿り着いていた。

最初はこんな所にも村があるのかと思ったが、よく観察してみると家には人の気配はなく静まり返っている。

これと言って人が生活している様子もない事から、恐らくは廃村なんだろうと判断することが出来た。

 

「こんな所に廃村なんて在ったんだな」

「私も初めて知ったわ」

 

どうやら霊夢も此処に来るのは初めてらしく、少し驚いた様子だった。

俺達は地面に降り立って、村の様子を改めて観察してみる。

家々は使われていないからか、所々朽ち掛けているが原型は留めている。

この村から人が居なくなってから、さほど時間が経っていないのか、それともまだ誰かが使っているのか?

 

「其処の二人! この村でなにをしているのよ!!」

「「ん?」」

 

突然、誰かに声を掛けられた俺達が後ろを振り向くと、其処には赤い服に緑の帽子を被った、茶色い髪の猫耳の少女がいた。

幻想郷に来て一年が経とうとしてるけど、久々に獣人を見た気がするな。

あの子は猫みたいだし、仲間にに居た虎人(フーレン)の一族かなにかだろうか?

……あれ? 虎に猫って含まれてたっけか?

 

「アレは……猫又かしら」

「猫又? 獣人じゃないのか?」

「違うわよ。あんなんでも妖怪の一種よ」

「へぇ~」

 

霊夢が言うにはあの子は妖怪らしいが、あの世界の住人の大半が妖怪になるのか?

妖怪と獣人の境界をはっきりさせないとなんとも言えないか……。

 

「ここは私達の里よ。人間は出て行って」

「はい、質問。人間じゃない奴は如何すれば良いんだ?」

「えっとそれは……」

 

俺が意地の悪い質問をすると、猫又の少女は難しそうな顔をして悩みだした。

恐らくこう言い返されるとは考えてなかったんだろうが、此処に人間以外の奴が来ないとも限らないし、このくらいの事は考えておくべきだと思う。

随分と頭を悩ませていると、猫又の少女は何かが吹っ切れたように唐突に怒り出した。

 

「と、兎に角! さっさとマヨヒガから出て行け!!」

 

それだけ言うと、猫又の少女は俺達に向かって弾幕を放って来る。

俺は剣を抜いて迎撃しようとしたが、それよりも先に霊夢が前に出た。

 

「今回は私がやるから、リュウは下がってて」

「……怪我するなよ」

「大丈夫よ」

 

霊夢の返事を聞いた俺は、言われた通りに後方に下がった。

本当は前に出て戦いたかったが、俺ばっかり前に出てると霊夢に文句を言われるな。

俺が後ろに下がると、霊夢は猫又の少女の弾幕を躱し、自分の弾幕を叩き込んで行く。

今回の霊夢の弾幕は、自動で相手を追尾するモノのようだ。

だから、相手が自分の射線上に居なくても攻撃していく事が出来る。

猫又の少女は、霊夢の弾幕を躰そうとアチコチ動くが、追尾弾を避け切る事は出来ずにいる。

次々に迫る追尾弾を避け切れず、霊夢の弾幕はドンドン命中していった。

次第に追い詰められていった少女は、服のポケットから一枚のカードを取り出す。

 

「仙符『鳳凰展駆』!」

 

猫又の少女はすぐさま取り出した一枚目のスペカを宣言した。

スペカを宣言すると、少女は目にも止まらぬ速さでアチコチ動き始め、その軌跡に沿って赤とオレンジの弾幕を大量に放ってくる。

少女の動きが素早い上に、弾幕の密度自体もそれなりの厚さがある。

あるのだが……霊夢の追尾弾の前には大して意味が無かった。

どれだけ動いて、弾幕の射線から外れても追尾弾を回避出来ない以上、霊夢の弾は命中し続ける。

少女は自身の移動速度を上げてるものの、霊夢の弾を回避する事は出来なかった。

そのまま霊夢の弾幕を受けた少女は、何時の間にか一枚目のスペカを攻略されていた。

 

「くっ…まだまだ!!」

「霊符『夢想封印 集』」

「……えっ?」

 

霊夢は何時の間にかスペカを取り出していて、それをこのタイミングで宣言した。

スペカを宣言すると、霊夢の周りに複数の光弾が出現し、全ての弾が少女に向かって放たれた。

猫又の少女は慌てて回避しようとするが、追尾してくる光弾になす術が無かった。

そのまま少女は、有無言わさず封印されてしまい、その場で気絶した……。

 

「よっし、終わり!」

「うわ~……」

 

霊夢は晴れやかな顔だけど、俺は……なんて言うか言葉が無かった。

あの少女にもっと頑張れと言えば良いのか、それとも霊夢にやり過ぎだと言えば良いのか……。

確かに先を急いでいる身としては、手早くケリを着けた方が良いのかもしれないが、これはちょっとな……。

 

「ん? 如何したのよリュウ。変な顔をしちゃって」

「……いや、なんでもない」

「…?」

 

何も言わない俺に対して、霊夢は不思議そうな顔をした。

俺もはっきり言えば良かったのかもしれないが、如何言えば良いのか分からなかった。

 

「まぁ良いわ。それよりもリュウ、ちょっと手伝って欲しいんだけど」

「手伝うってなにを?」

「家捜しよ家捜し。そうね……とりあえず、持ち運びの出来る日用品が欲しいわね」

「……はい?」

 

霊夢は楽しげに頼んでくるけど、俺にはイマイチ理解出来なかった。

確かに博麗神社は参拝客が全く来ないからお賽銭なんかは全く無い。

それでも、妖怪退治の報酬で生活は出来ているし、俺が拾った道具を売って多少は収入がある。

だと言うのに、なんで今そんな事をしないといけないんだ?

 

「ちょっとリュウ。早く手伝ってよ」

「いや、その前に……なんで家捜しするのか説明してくれ」

「だって此処『マヨヒガ』でしょ? 此処の道具を持って帰ると幸福になるって噂があるから、それを実践してみようと思ったのよ」

「それでか……」

 

俺は霊夢の説明を聞いて、漸く納得する事が出来た。

しかし、廃村とは言え家捜しをするのは…………今更だったな。

よくよく思い返してみると、俺も街や村の家に勝手に入って家の中を漁ってたな。

それに比べればこの程度……と言うか、俺の方が酷い事をしてるか。

 

「ほらリュウ! ボサっとしてないでさっさと捜す!」

「はいはいっと」

 

霊夢に急かされた俺は、近くの家に入り中を物色する事にした。

家の中には何故か猫が大量に居たが……あまり気にしないでおくか。

 

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