竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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今回は霊夢視点です


第二十五話 七色の人形遣い

 

マヨヒガでお宝をゲットした私たちは、また桜の花びらを追って飛びまわっていた。

雪が幻想郷中に舞い散る中、妖精が落したり空から舞い落ちてくる謎の欠片。

本来の桜は雪が降り積もる中では咲く筈の無い花で、逆を言えば、この花が咲いていれる場所は春になっていると言う事になる。

だから、この花びらを追っていけば何時かは春の大本に、もっと言えばこの異変の犯人の下に辿り着ける筈。

……とは言え、この幻想郷中が雪に包まれていると為ると、地上部分に住んでいる妖怪の仕業とは考え難いわね。

もし犯人が他の地域に住んでいる奴だとすると、天界や龍神の住む世界と後は……冥界くらいかしら?

龍神がこんな事するはずもないし、天界の連中は……良く分からないから放置。

私の勘通りなら犯人は冥界の連中って事に為るから、結局は空の上に行かなくちゃいけないのね。

 

「はぁ、めんどいわね」

 

犯人の眼星は付いたけど、私は溜息を一つ吐いて小さな声で呟いた。

冥界は本来死者が行く場所で、私たちの様な生きている者が足を踏み入れて良い場所じゃない。

生者の行くべき領域じゃないとしても、この異変解決の為には如何しても冥界に行く必要が出て来た。

……そう頭では分かっているのだけど、やっぱり面倒な事には変わりは無い。

 

「ん? なにが面倒なんだ?」

 

私が一人、頭を悩ませていると、隣を飛んでいるリュウが不思議そうに尋ねてきた。

 

「別に大した事じゃないわ。ただ犯人の居場所の目星が付いただけよ」

「いや、十分大した事だろ」

「面倒なのは其処じゃないの」

「…?」

 

説明するのも面倒になった私は適当にはぐらかすと、リュウは不思議そうな顔をして首を傾げる。

だからと言って、リュウは深く追求してくることも無く、何も言わずに私の横を飛び続ける。

私の中で纏まったことを全部説明しても良いのだけど、このまま付いて来れば分かるでしょう。

そう考えた私は、コレ以上リュウに何も言わず冥界を目指して先を急ぐ事にした。

 

 

 

 

………

……

 

暫く二人で飛んでいると、前方にエプロンドレスを着た数体の人形を連れている奴を見つけた。

雪が降り積もり中、人形を引き連れている奴なんて幾ら幻想郷でも一人しか居ない。

普段はインドア派で家に篭もってる事が多いくせに、こんな寒空の下で一体何をしているのやら。

なんとなく目に付いた私は、前方で人形と共に飛んでいる人形遣いのアリスに声を掛ける事にした。

 

「ちょっとアリス。そんなところで何をしてるのよ」

「ん? 霊夢?」

 

私が声を掛けると、アリスは今私たちの存在に気付いたような反応をする。

アリスが私たちの方を見ると、それに釣られて周りに居る人形たちも一斉にコッチを見てくる。

数体とは言え同時にコッチを向いてくると、一人なのか大勢なのか良く分からないわね。

一人でも大家族って感じがするけど、話も出来ずただ付き従うだけの人形の何が良いのかしら。

心の中でそんな事を思っていると、アリスは人形達を連れて私たちの方に近付いてきた。

 

「久し振りね、霊夢。こんな所で何をしてるかしら?」

「それはコッチの台詞。アンタこそ何をしてるのよ」

「私は只の散歩よ。そう言う貴女は……異変解決ってところかしら」

「分かってるなら聞くんじゃないわよ」

 

分かり切った事に訪ねてくるアリスに思わず呆れるが、当の本人は特に気にしても居ない様子だった。

私とアリスはちょっとした知り合い……みたいなものだから、私が空を飛んでいれば大体の察しが付く筈。

それなのに態々聞いてくるなんて、若年性の痴呆にでも掛かってるのかしら。

 

「……やっぱ変な人形だな。劇に使ってたのとは別物か?」

 

私とアリスは他愛の無い話をしていると、リュウが物珍しそうな目付きをしているのに気がついた。

一体何が珍しいのかと思い、彼の視線を追ってみると……アリスの人形の一体に辿り着く。

リュウの行動範囲を考えると、アリスと出会う事なんて無いだろうし、彼女の人形が珍しいのかもしれない。

そう心の中で結論付けた私は、なんとなくリュウの頭を小突きついた。

 

「ちょっとリュウ。なに人形を凝視してるのよ」

「いや、人形の割には随分と変わってるな~っと思って」

 

リュウは、私に小突かれたところをさすりながら、不思議そうに人形を見ている。

私の予想通り、リュウにはアリスの人形が珍しいみたい。

……でも、私からすると何か如何変わっているのかさっぱり分からないわね。

 

「あら? 貴方は私の上海の違いが分かるのね」

「違いが分かるって言うか、俺の知ってる人形とは随分違うと思っただけだ」

「貴方の知ってる人形?」

 

リュウの良く分からない発言に、意外にもアリスが食いついて来た。

私も表面上は普段通りの顔をしてるつもりだけど、リュウの言う人形にはちょっとだけ興味がある。

リュウの昔話は何度か聞いたけど、人形の話が出てきたなんて覚えはあんまり無い。

何か面白いネタかもしれないし、私の知らないリュウの話にはちょっと興味がそそられるわね。

 

「普通の人形じゃないのは分かるんだが、俺の知っている『オンクー』や『アーター』とも違うから変わってるな~って思ったんだよ」

「その『オンクー』と『アーター』って言うのは?」

「俺が昔創った犬の人形……と言うか使い魔だな。人の言葉を話せて、自立行動が出来るんだ」

「ちょっと待って。その二体は完全に自立しているの?」

「そう……だったと思うぞ。それが何か?」

「……何かじゃないわよ! それじゃなに、貴方は私の目標を当の昔に到達したっていうの?!」

 

一体なにが気に入らないのか知らないけど、アリスが突然リュウに怒り出した。

でも、憤怒してると言うよりかは、リュウの言葉が信じられなくて怒っている様にも見える。

本当になんで怒ってるのか知らないけど、とりあえずもう少し傍観することにしましょう。

今のアリスを下手に突っついて私にも飛び火するのは嫌だしね。

 

「え~っと、何を怒ってるのか分からないけど、此処は一旦落ち着こう」

「…そうね。此処で怒っても仕方がないわ。……でも、色々と聞かせて貰うわよ」

「お、お手柔らかに……」

 

アリスを宥めるのに成功したリュウは、彼女に自分の知っている事を話し始めた。

私はなんとなくって感じで聞いているけど、アリスはメモまで取り出して真剣な表情で聞き入っている。

余りにも真剣な表情のアリスに、私は思わず引いてしまうけど、リュウは苦笑いを浮かべながらも説明した。

リュウの説明では、その二体は数百年前に自分の身辺警護の為に創った使い魔だとか。

姿は両方とも大型の犬で、白いほうが『オンクー』で青い方が『アーター』と言うらしい。

自分の力を使い生み出した生物の機械の中間の存在らしいから、正確に言うとアリスの人形とはまた別の存在になるとか。

でも、アリスからすれば人形でなくとも聞いておきたい話だったみたい。

 

「……貴方の話を聞くと、製法としてはゴーレムのソレに近いみたいだけど、完成度はゴーレムのそれとは段違いね」

「褒めてくれるのは嬉しいけど、創ったのが数百年前だからもう一度創るのは無理だぞ。また創る理由も無いしな」

「私としてはソッチの方が嬉しいわ。……そうでなかったら、私が頑張る意味が無いもの」

 

吐き出すように呟いたアリスは、明後日の方向を見ながら自分に言い聞かせる様に呟いた。

私は努力が実を結ぶなんて信じて無いから、頑張る意味が本当にあるのか聞きたいわね。

努力しようがしまいが、最終的に出される結果が同じなら努力する意味なんて無いじゃない。

私は心の中でそう呟きながらアリスの事を皮肉ってみた。

 

「そういや、アリスの目標って?」

「人形の完全自立化。今の状態では、私が命令すれば自立してるように動くけど……完成には程遠いわね」

「でも、このまま頑張れば何時か辿り着けるだろ? なら頑張れよ、俺は応援するぞ」

「……既に辿り着いてる貴方に応援されるとイラっとくるわね」

「あ、アハハハ……」

 

アリスの辛辣な発言を聞いて、リュウは少し焦った様な表情になる。

でも、こう言う時のリュウは本当に焦っていない事を私は知っている。

もう一年近く一緒に暮らしているんだ、その位は分かるようになっても不思議じゃない。

 

「そういや、俺も聞きたい事があるんだけど良いか?」

「色々と聞かせて貰ってるし、おかしな事で無ければ良いわよ」

「アリスって複数の人形を同時に操ってるけど、アレって如何やってるんだ? やっぱり糸か?」

「基本的にはそうよ」

「なんで指一本であそこまで動かせるんだ?」

「それは企業秘密」

「むぅ……そう言われると余計に気になる」

 

リュウは困った様な表情をしながらも、聞こえて来る声音は何処か楽しそうだった。

アリスもアリスで顔が綻び、本当に珍しく楽しそうにリュウと喋っている。

人形の事を話せる事が嬉しいのか、単純にリュウとする他愛の無い話が楽しいのか分からない。

……でも、楽しそうに話してる二人を見ていると、如何してか堪らなく嫌な気持ちに為ってくる。

別に二人の会話に入れないのが嫌と言う訳じゃない。

ただ、リュウがアリスと親しげに話しているのを見ていると、何故だか分からないけど苛立ってくる。

なんでこんな気持ちになるのか知らないけど、二人が楽しげにしてるのが気に入らない。

 

「……………」

 

さっきのリュウのアリスへの励ましだってそう。

一緒に暮らしている私を心配はしてくれても、励ましてくれた事なんて今まで殆ど無い。

殆ど初対面のアリスは励ますのに、如何して私にはそう言う言葉を掛けてくれないの?

直接言葉には出さず、心の中で思っていると、私の中でドンドン苛立ちが募って行くのが分かる。

この気持ちの正体がなんなのか分からないけど、この苛立ちを止める事は出来そうになかった。

 

「…ん? 如何した霊夢、なんか機嫌悪いみたいだけど?」

「なんでもないから気にしないで」

 

漸くリュウが話し掛けてきたのに、私の口から出たのは素っ気無い言葉と態度。

別に彼が悪い訳じゃないって分かってるのに、この苛立ちの所為で如何してもそんな言葉遣いになってしまう。

もっと他の態度を取れば良いのに、頭で考えるよりも先に口が動いてしまっている。

 

「本当に如何したのよ、いきなり機嫌が悪くなって」

「アンタには関係ない」

「……あっそ。まぁ、私も聞きたい訳じゃないから良いけど」

「……………」

 

アリスが気に掛けているのに、やっぱり私は素っ気無い態度で返事をした。

流石にこの態度はないと頭では分かっていても、如何しても口の方が先に動いてしまう。

なんでこんな態度しか出来ないのかと、答えが出ないと分かっていも心の中で自問自答を繰り返す。

本当に今の私は如何かしている。アリスと出会うまではこんな気持ちには為らなかったのに……。

私の苛立ちを他所に、アリスはまたリュウと話し始めようとする。

 

「それでリュウ、さっきの話の続きだけど……」

「……あ~悪いアリス。俺達、異変解決の為に先を急ぐから今回はこの辺で」

 

だけど、リュウは先を急ぐからと断って、私の手をそっと握って来た。

 

「ちょ、ちょっとリュウ?!」

 

私はあまりにも突然の出来事に慌てふためくけど、リュウは私の手を離そうとはしなかった。

力付くで手を離すことは可能だけど、如何してもそうしようとは思えない。

私は段々と顔を赤くしていくのと自覚するけど、嬉しくてリュウの手をそっと握り返した。

 

「……異変解決くらい霊夢一人でなんとかなると思うけど?」

「それでも手伝いたいんだ」

「はぁ、仕方が無いわね。なら、続きは今度会った時にでも」

「ああ。それじゃまたな、アリス」

 

アリスに別れを告げたリュウは、私の手を引っ張って何処かへと飛び始める。

私はされるがままの状態で、リュウの手を握ったまま彼の後ろを飛ぶ。

少し飛んでから後ろを振り返ると、アリスの姿が段々と小さくなっているのが見える。

今の私たちは、彼女から見ると一体どんな風に見えるんだろう? もしかしたら恋人とかに見えるのかな?

なんとなくそんな事を考えると何故か顔が更に熱くなって来た。

私は考えを払うように頭を振るけど、熱くなった顔はそう簡単には元に戻りそうにもなかった。

 

「ん? 如何した霊夢? 顔、真っ赤だぞ」

 

赤くなった顔を戻そうとしていると、後ろを振り向いてきたリュウが不思議そうに聞いてきた。

今の真っ赤な顔を見られてしまった私は、恥かしさや何かで頭の中が一杯に為ってしまう。

偶に狙ってるんじゃないのかと思うけど、今は恥かしさの余りに考えが上手く纏まらない。

如何すれば良いのか分からなくなった私は、思わず後先を考えずに感情の赴くままに言葉を発した。

 

「……うっさいバカ! 大体って言うか、殆ど全部アンタの所為よ!!」

「なんで?!」

「そのくらい察しなさいよ、バカ!!」

「無茶を言うな!」

 

私は無茶苦茶な事を言って、ついついリュウを困らせてしまう。

自分でも随分と無茶な事を言っている自覚はあるけど、如何しても止めれそうにない。

何時の間にか、私たちは何時かの口喧嘩の様な言い合いをしていたけど、気が付くとさっきまであった苛立ちは無く、繋いだこの手を離す事もなかった……。

 





オマケ

私は、少しずつ遠く離れて行く二人の後ろ姿を眺めていた。
ただの思いつきで始めた今回の散歩。何か面白いモノでも有ればと思っていたけれど……予想外のモノに出会えた気がするわ。

「…まさか、あの霊夢があんな態度を取るなんてね」

私の知っている博麗 霊夢は、誰に対しても平等に接する事の出来る人間。
厳しくも無く優しくも無いから、変なのに好かれ易いのは知っていた。
恐らくリュウもその類だと思っていたんだけど……実際の所は逆だったわけか。

「……でも、あの二人の様子を見ていると、この先が進展があるのか怪しいものね」

私は、此処からでも聞こえて来る声量で喧嘩をする二人を見て、ついそんな感想を持ってしまった。

終わり
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