竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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今回は霊夢視点です


第二十八話 幽冥楼閣の亡霊少女

 

突如現われた剣士をリュウに任せ、私はただ階段の上へと突き進んだ。

階段を上りきった先には、大きな門を構えた屋敷が建っており、門を潜った先には数えるのもバカらしくなる位の満開の桜が咲き誇っていた。

コレだけの桜が咲き誇っているのなら、さぞや此処でする花見は楽しいでしょうね。

私は直接口には出さず、心の中でそんな事を思いながら、門を潜って屋敷の中へと入って行く。

桜の花びらが舞い散る中、ただ前に進んで行くと……樹齢数百年はありそうな巨大な木と、桃色の髪にフリルの付いた和装を来た亡霊を見つけた。

巨木の枝には、桜の花が八分咲きと言った感じで咲いていて、亡霊はその木を儚げな表情で見つめている。

私がもう少し近付いてみると、亡霊はゆっくりと私のほうを向いてきた。

 

「あら、貴女は誰かしら? 此処に招いた覚えはないのだけど?」

「こっちも招かれた覚えはないけど、ちょっとした野暮用で来たのよ」

「野暮用?」

 

私がそう言うと、亡霊は不思議そうに首をかしげた。

 

「単刀直入に言うわよ。…アンタ達が奪った春を返して」

 

私は少し高圧的な態度で、目の前に居る亡霊に詰め寄る。

だけど、亡霊は何食わぬ顔で首を横に振って、返却を拒否してきた。

 

「それは出来ないわ。もう少しでこの西行妖(さいぎょうあやかし)が満開になるもの」

「西行妖ってなによ」

「私の家にある妖怪桜の事よ。……私は、あの木を満開にして封印を解きたいのよ」

 

亡霊は首を後ろに向け、背後にある巨大な桜の木を見詰める。

私もそれに釣られて木を見てみると、確かに亡霊の言う通り、あの木には何らかの封印が施されていた。

一体なんの封印かは分からないけど、恐らく大昔に施された封印だと思う。

……そんなものを解いて、この亡霊は一体何がしたいのよ。

 

「その木の封印を解いたら、一体何が起こるのよ」

「この木が満開になるわ」

「……それだけ?」

「後は、木の下で眠るモノが眼を覚ますんじゃないかしら?」

「そんな事の為だけに、幻想郷から春を奪うんじゃないわよ!」

 

亡霊のあまりな理由に、私は声を荒げてはっきりと文句を言う。

しかし、亡霊はそんな事知ったことではないと言わんばかりに無視を決め込む。

 

「もう少しでこの木は満開に為る。……貴女が持つなけなしの春でも、少しは足しになるかしら?」

「只でさえ幻想郷から春が消えてるのに、コレ以上奪われたら堪ったもんじゃないわ!」

 

私は持って来た大量の札を空中に展開して、コレから始まるであろう戦いの準備を始める。

彼女も私が準備を始めたのに合わせて、手に持っていた扇子を広げ、何処からとも無く様々な色の蝶を呼び集める。

 

「私はいい加減、アイツと一緒に花見がしたいのよ!」

「頑張ってくれたあの子の為にも、此処で負ける訳には行かないの」

「「だから……花の下に還る/で眠るがいいわ、春の亡霊/紅白の蝶!」」

 

お互いに言い終わるのと同時に、私は展開した札を亡霊に向かって放ち、亡霊は集めた蝶を解き放った。

放たれた札と、解き放たれた蝶はぶつかり合い、お互いの弾幕を相殺しあう。

私は彼方此方移動しながら札を放つが、蝶の壁が厚く中々相手にコッチの弾幕が届かない。

向こうの蝶は、数こそ多いものの、飛んでくる速度はそれほど速くは無い。

だから、あの蝶の群れに囲まれさえしなければ、そう簡単に落とされたる事はないはず。

 

私は札を放つ間に、ホーミングアミュレットを大量に取り出し、それを一斉に投げ付ける。

投げたアミュレットは、大量に居る蝶の群れの中を縫うように進み、次々と亡霊に命中していく。

でも、このアミュレットを投げるの集中し過ぎると、飛び回っている蝶に周囲を取り囲まれるなんて事に為りかねないから、定期的に近くに居る蝶を迎撃している必要がある。

周りの蝶に注意しつつ、アミュレットで攻撃していくと、亡霊は服の袖から一枚のカードを取りだした。

 

「亡舞『生者必滅の理―毒蝶―』」

 

亡霊がスペカを宣言すると、周りに飛んでいる蝶たちの動きが変わった。

今までは無秩序に周囲を飛んでいるだけだったけど、スペカを宣言したら円を描く様に飛び回り始めた。

それと同時に、亡霊も大型の弾を何発も私に向かって放ってくる。

周りの蝶の動きは、相変わらず遅いけど大型の弾を躱すのに障害に為ってる。

大型の弾は蝶たちを無視して飛んでくるから、躱し続けていると徐々に大型の弾に追い詰めれてしまう。

それでもなんとか躱して、札で蝶を打ち消したり、アミュレットで亡霊に攻撃し続けたけど……それにも限界がある。

どれだけ蝶の間を縫い、大玉を躱そうとも、全ての蝶を打ち消せない以上、何時かは周りを囲まれてしまう。

私の周囲には既に大量の蝶が取り囲み、大玉が今にも命中しそうな程に接近している。

今から弾幕を放っても、この数を一掃出来るだけの弾を準備する事は出来ない。

このままでは落とされる……そう判断した私は、懐からスペルカードを取り出した。

 

「霊符『夢想封印・集』!」

 

私がスペカを宣言すると、複数の光弾が私の周囲にいる蝶と大玉を打ち消し、そのまま亡霊へと向かって行った。

亡霊は蝶たちを壁に使って、私の夢想封印を防ごうとするが……光弾はその壁も打ち消した。

守りを失った亡霊は、そのままなす術も無く複数の光弾に飲み込まれる。

光弾をまともに受けた事で、周りに飛んでいた蝶たちが消滅し、辺りには静寂が戻った。

 

「痛いわね。もう少し手加減出来ないの?」

 

光弾が消え去り、再び姿を現した亡霊の第一声は、なんとも暢気なものだった。

私はその口調に若干の苛立ちを感じつつ、再び札を周りに展開する。

 

「うっさいわね、コッチもそれなりに必至なのよ」

「……階段の所に居る彼に、良い所を見せたいからかしら?」

「なッ?!」

 

亡霊が放ったとんでもない一言に驚いて、周囲に展開していた札を解除しそうになった。

私は慌てて気を引き締め、崩れかかっている札をもう一度展開し直した。

 

「あらあら、慌てちゃって。…もしかして、図星だったかしら」

 

亡霊は持っていた扇子を口元に当てて、クスクスと優雅に笑い出す。

笑われたのが恥かしいのか、痛いところをつかれたからか、私は自分の顔が熱くなっていくのを感じた。

 

「あ、アンタには関係ないでしょ!!」

「……顔が真っ赤よ?」

「う、五月蝿い! 兎に角、アンタは此処で潰す!!」

 

私はコレ以上からかわれる前に札を放ち、あの亡霊を黙らせる事にした。

亡霊は扇子を口元から離し、再び蝶を操り、私の札を相殺していく。

次々に札と蝶が相殺しあう中、私はホーミングアミュレットを放ち、亡霊にダメージを狙いに行く。

だけど、流石にそう何度も喰らってくれる筈も無く、亡霊は優雅に回避した後、蝶を放ちアミュレットを相殺した。

 

アミュレットを壊されたのを見て、私は悔しさのあまり奥歯を噛み締めた。

その後も何度かアミュレットを放つものの、さっきと同じ方法で回避され、次々と相殺されて行く。

けど、向こう操る蝶も私の札に相殺され、撃ち零した奴は難なく回避していった。

お互いに決定打を欠いた状態で弾幕を撃ち合っていると、亡霊がカードを取り出し先に動いた。

 

「幽曲『リポジトリ・オブ・ヒロカワ―幻霊―』」

 

亡霊がスペカを宣言すると、またしても蝶たちの動きが変わった。

周囲に飛び交うと言う点では同じだけど、今度は無数の蝶が列を成して私に襲い掛かってくる。

襲って来る蝶に札を放ち、なんとか相殺しようとするが、列で襲い掛かってくる蝶の群れは、なにも一つや二つではない。

私に襲い掛かってくる蝶の群れは、凡そ十はあり、周囲にはコッチの動きを封じるかのように、別の群れが飛び交っている。

 

これでは、幾ら札を放って蝶を相殺しようとも、相手の勢いに飲み込まれる恐れが出てくる。

このスペカを終わらせる為にも、アミュレットを放って攻撃するしかないけど、ちょこまか動かれて掠らせる事しか出来ない。

残った手は、私のスペカで相殺する事。……でも、相殺し切れずに残っていたら、後々厄介な事になる。

弾幕を放ちつつ、次の手を如何するのか考えていると、突然私の頭上に影が出来た。

 

「乱舞『せんぎり』!」

 

頭上から耳に馴染んだ声が聞こえてくると、私と亡霊の間に飛び交っていた蝶たちに、無数の斬撃が浴びせられた。

目の前には斬撃の壁が出来上がり、その壁が消え去ると……私たちの間に居た蝶の姿は何処にもなかった。

突然の出来事に、何が起こったのか分からず呆然としていると、竜人の姿になったリュウが、私を守る様に姿を現した。

 

「すまない霊夢、少し遅れた」

 

リュウは私の方を見ては来なかったけど、さっきした約束を守れなかった事を詫びた。

私はそんな事気にしてないって言おうとしたけど、リュウの身体に付いている無数の傷が眼に入った。

もう塞がっているのか、傷跡から血は流していなかったけど、彼の全身には痛々しい傷が幾つも出来ている。

その傷を見た私は、何を言おうとしていたのかも忘れ、リュウの傷に心配をした。

 

「ちょっと、その怪我如何したのよ?!」

「ん? これか? あの半人前の最後の攻撃をまともに受けただけだ」

「……大丈夫なの?」

「出血は大した事無いが、体力は殆ど残っていない。あと数撃喰らったら『ナイト』が解けるな」

 

リュウは何でもない様に言ってくるが、傷を見ているとやはり心配に為ってくる。

私が前に出ようとも考えたけど、彼の弾幕の性質と私の今の装備を考慮すると、此処は私が後ろに居たほうが何かと都合が良い。

今になって別の装備にすれば良かったと後悔するが、今更言い出しても始まらない。

私は悔しさをグッと堪えて、リュウの近くに札を展開させた。

 

「……霊夢?」

「アンタは後ろを振り向かないで、前だけを見てなさい。……アンタの後ろは私が守るから」

「……それは心強いな」

 

リュウは確りと前を向いてそう呟くけど、私は嬉しそうに笑う彼の横顔を見た。

だけど、直ぐに笑顔を引っ込めたリュウは、一度深呼吸をしてから両手に力を集め、その力を飛ばすための準備を始める。

私の方も既に準備は出来ているけど、亡霊の方はリュウを凝視しているだけだった。

 

「ん? 俺の顔に何か付いているか亡霊」

「……えぇ。赤い線の様な模様が頬に」

「コレは前からだ、一々気にするな」

 

リュウは如何でも良さそうにそう切り捨てた。

けれども、亡霊はそんな事お構い無しにリュウを凝視し続ける。

 

「…一つ聞きたいのだけど、貴方、一体何?」

「何と言われても、この幻想郷に迷い込んだ竜としか言い様が無いな」

「御免なさい、質問を変えるわ。……貴方、本当に死ぬ事が出来るの?」

 

リュウの事を凝視してきた亡霊は、なんとも不可思議な質問をしてきた。

コイツが何者なのか聞くならまだ分かるけど、死ぬ事が出来るのかなんて質問してくるとは思わなかった。

私は何を聞いてくるのかと呆れ、リュウは腕を組み、如何返答するか悩みだした。

 

「……この身体になって死んだ事がないんだ。そんな事分かるわけがない」

「そうね、確かにその通りだわ。……なら、私が試してあげる」

 

そう言って亡霊は服の袖から一枚のスペルカードを取り出す。

さっきの発言を考えると、今度のカードは今までよりも強力な物のはず。

此処は気を引き締めて掛からないと、あの亡霊に本当に殺されかねない。

 

「桜符『完全なる黒染の桜―開花―』」

 

スペカを宣言すると、亡霊の背後には扇の形をした絵が出現し、それと同時に大量の大玉を周囲に放ってきた。

リュウは手刀から飛ばした斬撃で、目の前に迫って来た大玉を斬り裂き、消滅させていく。

私はリュウが創った隙間から亡霊目掛けて札を飛ばすが、弾がなくなった後に出現した蝶たちとぶつかり相殺し合う。

蝶だけではなく、桜の花びらの様な小さな弾が大量に出現し、コッチの攻撃とぶつかり合う。

大量の桜の花びらと蝶が舞い踊る中、私とリュウは札と斬撃を放ち、亡霊に攻撃を試み続ける。

 

周りに展開されている蝶や花びらは、リュウの斬撃で掻き消してくれるけど、中々亡霊に当てる事が出来ない。

代わりに、私のホーミングアミュレットは命中するものの、威力が低く、倒しきるには時間が掛かりそうだ。

その間にも、亡霊の弾幕はその厚さを徐々に増し続けている。

私は撃ち洩らした弾を避けながらも、この弾幕の攻略の糸口を捜していた。

 

確かにアミュレットを当て続ければ、何時かは勝つことが出来る。

でも、何時まで続くのかも分からない弾幕を回避し続けるのは、中々辛いものがあるのも確かだ。

スペカで乗り切ろうにも、集じゃ弾を全て掻き消す事は出来ないし、散だと亡霊を倒しきれるのか分からない。

 

残る手は……リュウが持って来たスペカくらいか。

変身しているのが『カイザー』じゃないから、一体どんな攻撃になるのか分からないけど……この状況を打開するにはリュウに賭けるしかない。

そう判断した私は、目の前で蝶と花びらを斬り裂いているリュウに声を掛けた。

 

「リュウ! いける!?」

「嗚呼!」

「なら、私に構わずやっちゃって!」

「了解ッ!」

 

たったそれだけのやり取りにも関わらず、リュウは私の意図を理解してくれた。

リュウはすぐさま一枚のカードを取り出し、声高々に宣言した。

 

「ラストスペル『メタ=ストライク』!!」

 

カードを宣言すると、リュウは私の目の前で黒い球体に包まれてしまう。

目の前に現われたそれは、舞い散る花びらも飛び交う蝶も物ともせず、空中に鎮座し続ける。

そして、球体の上部に何らかの魔法陣が描かれると、球体が縦に割れ、中から右手に両刃の大剣を、左手には身体と一体に為っている盾を持つ、竜を模した金色の甲冑を着た巨大な騎士が出現した。

 

球体から姿を現した騎士を見た亡霊は、その姿に驚きを顕わにし、弾幕の密度上げ始めた。

弾幕の勢いが増す中、騎士はそんな事は構わず、右手に持つ大剣を肩に担ぐように構える。

密度を上げた弾幕に襲れるけど、騎士は恐れる事無く右手の大剣を、亡霊目掛けて真っ直ぐ振り下ろした。

 

「ッ!?」

 

亡霊は間一髪の所で剣を回避したけど、騎士の攻撃はまだ終わりじゃなかった。

大剣を振り下ろした事で衝撃波……と言うよりも、風の津波が発生し、周囲に在る物をなぎ倒し始めた。

風の津波に飲み込まれたモノは、その勢いの前に薙ぎ倒され、強風で発生したカマイタチで微塵に切り刻まれていく。

ギリギリの所で回避した亡霊も風に飲み込まれ、カマイタチに切り刻まれ、何処かに吹き飛んで行った。

……暫くして風が収まると、残っていたのは無残に切り刻まれた桜の木々と、西行妖とか言う妖怪桜、それと金色の竜騎士の後ろにいて難を逃れた私だけだった。

 

《……少々やり過ぎたか?》

「まぁ良いんじゃない? 別に私たちに家でもないし、亡霊なら家が無くても平気でしょ」

《そう言うものか?》

「そう言うもんよ。それよりも、さっさと元の姿に戻りなさいよ。話し辛いじゃない」

《嗚呼》

 

騎士は頷くと、一瞬にして消滅し……何時ものリュウが表れた。

あの姿のままだと、ずっと上を見上げて話さないといけないから首が痛くなる。

そんな事を心の中で思いつつ、リュウの事を見てみると、腕から若干血の流していた。

 

「ちょっと、如何したのよその怪我?!」

 

私が驚いた声を出して怪我の事を聞くと、リュウも腕を見て眼を丸くする。

 

「……なんで出来たんだ、この怪我?」

「私が知るわけ無いでしょ! ……血は大して流れてないけど、大丈夫なの?」

「平気平気。この程度なら回復魔法で直ぐに治るって」

 

リュウは私に笑い掛けながら、直ぐに回復魔法を掛け始めた。

魔法を掛けると、直ぐに血は止まっていくのが分かる。

私はその様子にホッと胸を撫で下ろし、安堵の溜息を吐いた。

リュウの怪我が治ったら、直ぐに神社に帰ろうと考え始めていると、突如目の前にある巨木がざわめき始めた。

 

―身のうさを思ひしらでややみなまし、そむくならひのなき世なりせば―

 

何処からとも無くそんな言葉が聞こえたと思ったら、突如として亡霊の蝶たち襲い掛かって来る。

余りにも突然の出来事に、私もリュウも反応するのが遅れてしまった。

私は咄嗟の判断で、懐からスペカを取り出し、それを宣言する。

 

「夢符『夢想封印・散』!」

 

スペカを宣言すると、私たちの周りに光弾が出現したけど……ただそれだけだった。

近付いてくる蝶たちは打ち消せるけど、光弾はその場から動こうとはしない。

私はコレを放っている奴が居る筈だと思い、辺りを見渡すけど……さっきの亡霊の姿は何処にも見当たらなかった。

 

「霊夢、なんなんだよコレ?!」

「多分耐久型のスペルよ。……このタイミングで使われるとは、思ってもみなかったけどね」

 

慌てふためくリュウに、私は冷静な口調で自分の考えを告げた。

でも、冷静なのは表面だけで、私も胸中ではかなり慌てていた。

確かにあの亡霊は、あのスペカがラストなんて一言も言ってはいなかった。

だけど、このタイミングで発動してくるなんて、幾らなんでも予想できる訳が無いじゃない!

私の『夢想封印』もあと少しで効果が切れる。そうなったら、この弾幕を生き残れるか怪しくなってくる。

 

「リュウ、剣はまだ無事?!」

「悪い壊れた!」

「あ~もう! 間が悪い!!」

 

私は思いっきり悪態を付くけど、そんな事をしても状況が変わるわけじゃない。

徐々に薄くなって行く光弾を余所目に、なんとか為らないかと考えるけど……何も浮んでこない。

そのまま時間だけが過ぎていって、とうとう夢想封印の効力が切れた。

それと同時に、今まで打ち消されていた蝶たちが一斉に私たちに襲い掛かってくる。

 

私もリュウも、なんとか蝶たちを躱し続けるけど、向こうの勢いに押されてしまう。

飛び交う蝶の群れを躱し、放たれた大玉の間を縫い、照射されたレーザーも避けるけど、それでも厳しいものがある。

このままだと、蝶の群れに飲み込まれ、本当に命が危ない……そう思い始めたときだった。

 

リュウが大量の蝶に周りに囲まれて、孤立無援の状態に陥ってしまった。

私はなんとか助けようと、残っている札を放ってみたものの、私の方に飛んでくる蝶たちが邪魔をして札がリュウの所にまで届かない。

それでも、なんとかしようと札を放つけど……やっぱり届く事はなかった。

リュウはそのまま蝶たちに取り囲まれ、私の位置からじゃ姿を確認する事が出来なくなってしまう。

私は自分に迫って来る蝶を躱し、なんとかして助けようと思いリュウの元に向かう。

あと少しでアイツの元に辿り着けると思ったその時―――、

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

 

―――蝶の中からリュウの雄叫びが聞こえ、中から赤いオーラが立ち上った。

そのオーラに私は蝶と一緒に吹き飛ばされ、地面に頭をぶつけてしまう。

この時に打ち所が悪かったのか、視界が少しずつ暗くなり、意識も徐々に薄れていく。

それでもリュウの無事を確認しようとすると、霞みかかった私の眼に巨大な白い竜の姿が映る。

その姿を最後に、私は意識が途切れ……そのまま意識を失った……。

 

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