竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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今回の話は二つの話を無理やりくっ付けたものなので、キャラの視点移動が激しいです。ご注意下さい。


第二十九話 境界の妖怪

 

リュウSide

 

……長い冬が過ぎ、幻想郷にも漸く春が戻って来た。

幻想郷の彼方此方で、桜の花が舞い踊り、時折吹き抜ける風も暖かさが戻ってきた。

博麗神社にも満開の桜が見事に咲き誇り、境内では沢山の妖怪が集り花見を楽しんでいる。

 

「……漸く冬が終わったと思ったら、今度は妖怪で頭を悩ませる事になるなんて……」

「あの冬よりはマシだと思うぞ」

「私が言いたいのはそう言う事じゃないの」

 

花見に参加している俺と霊夢は、大きな集団とは少し離れ、本殿にある賽銭箱の近くでお酒を飲んだり、料理を食べたりしている。

妖怪たちが勝手に騒いでいる中、俺達はただの傍観者に徹していた。

そんな中、俺はなんとなく空を見上げ、あの冥界での戦いを思い返す事にした。

 

……冥界で亡霊のラストスペルに飲み込まれた俺は、群がる蝶の群れの中で気を失っていた。

気絶している間に何が遭ったの、次ぎに目を覚ますと桜が倒れていた庭園は、俺が気絶する前よりも荒涼とした風景に変わっていた。

そこかしこに倒れていた木は、軒並み消滅し、地面には幾つモノクレーターが出来ていた。

何故こんな事になったのか分からないけど、漠然とこの景色を作り上げたは俺だと理解出来た。

……その事は、俺達と戦っていた亡霊の怯えた眼を見れば、一目瞭然だった。

俺は亡霊に春を返すように言った後、後ろで気絶していた霊夢を抱き抱えて神社へと帰る事にした。

 

それから数日後には、約束通り幻想郷には春が戻り、更に数日が経って今日の花見に至る訳だ。

いきなり魔理沙がやって来て、〝花見するから準備しておけ〟と言い出した時は何事かと思ったよ。

最初は三人で花見をするのかと思ったら、何処から聞き付けたのか、妖怪たちがぞろぞろとやって来て驚いたもんだ。

魔理沙が彼方此方で誘ってきたと言う可能性もあるけど、この人数はちょっと多い気がする。

 

「「……はぁ」」

「如何したんだ二人とも? 宴の席に溜息は似合わないぜ」

「「ほっといてくれ/よ」」

「…?」

 

魔理沙には悪いけど、今は花見をしたい気分じゃないんだよな。

霊夢はなんで溜息を吐いたのか知らないけど、冥界で起こった事を考えるとちょっとな……。

 

「何を悩んでるのか知らないけど、今は楽しんだ者勝ちだろ」

「そう言う気分じゃないから溜息吐いてんだろ」

「そうよ、少しは察しなさいよ」

「ちぇー、なんだよ二人して。そんなに悩みたいなら好きなだけ悩んでろってんだ」

 

魔理沙は不貞腐れたように言い捨てると、また宴会の席に戻っていった。

気を使ってくれているのは有り難いんだが、今だけはそっとしておいて欲しい。

コッチはコッチで色々と遭ったから、素直に楽しめる余裕もないんだよ。

……とは言え、宴会の席で面白く無さそうな顔をしているのもアレか。

そう考えた俺は席を立ち、本殿を通って自室で考え事をする事にした……。

 

リュウSide out

 

 

 

 

霊夢Side

 

私の隣にいたリュウは、突然立ち上がり本殿の奥へと引っ込んでしまった。

本当だったら私も母屋の方に行きたいけど、リュウとは入れ替わりで厄介なのが来たみたい。

 

「は~い、霊夢。ちょっと良いかしら?」

「……何の用よ紫。あんまり下らない用事だったら怒るわよ」

「酷い言い様ね、ただ聞きたい事があるだけなのに」

 

聞きたいだけとは言うけど、一体なんのようで声を掛けてきたのやら。

正直、コイツとはあんまり関わりたくないのよね。色々とめんどくさいし。

……まあ、私が無視をしても、紫が一方的に話し掛けて来るのは目に見えてるんだし、出来るだけ長引かないようにしよう。

 

「…それで? 用事ってなんなの?」

「あの異世界の竜の事よ。……彼、冥界で何をしたの?」

「はあ?」

 

何を聞いてくるのかと思えば、冥界でリュウがした事? そんな事を聞いて何をしよってのよ。

冗談半分で聞いてきたのかと思ったら、紫は何時に無く真剣な表情をしている。

普段は飄々としてるくせに、一体如何したというのやら……。

 

「霊夢、答えて頂戴」

「……別に何もしてないと思うわよ。確かにアイツからは、あの屋敷の庭を崩壊させたって聞いたけど……リュウの力を考えれば、その程度なら問題ないじゃない」

「確かにその程度ならね。……でも、問題なのは其処じゃないわ」

「…? 悪いけど、私はその位の事しか聞いてないわよ」

「……そう。だったら、直接本人に聞くしかないわね」

 

紫はそう言い残すと、そのままスキマの中へと消えていった。

相変わらず良く分からない奴だと思う反面、紫の珍しく真剣な表情も気に為った。

普段から何を考えてるのか分からない奴だけど、あんな表情の紫は今まで見た事が無い。

 

「……………」

 

なんとなく嫌な予感がした私は、リュウを追いかけて私も母屋に向かった。

本殿を抜けて、母屋からアイツの部屋に行くと……リュウは一人部屋の天井を見ていた。

私が部屋に気が付いたリュウは、上体を起こしコッチに顔を向けてくる。

 

「如何した霊夢? なんか慌ててる様に見えるけど?」

「……はぁ~~~」

 

普段と変わらないリュウの姿に、私は安心したのか疲れたのか良く分からない溜息を吐き、その場に座り込んだ。

 

「ん? 本当に如何したんだ?」

「…なんでもない、気にしないで」

「…?」

 

その場に座っていった言葉に、リュウは不思議そうな顔をする。

私はどんな顔をすれば良いのか分からず、とりあえず笑って誤魔化す事に。

……だけど、私の中には変な不安だけが何時までも拭えないでいた。

 

霊夢Side out

 

 

 

 

 

 

 

リュウSide

 

夜桜が見ごろになった頃、俺は一人部屋に寝転がりボーっとしていた。

部屋の外からは、境内で宴会をしている妖怪たちの騒ぎ声が聞こえてくる。

その声に喧しさを覚えつつ、何をする訳でもなく一人呆けていた。

 

「リュウ、そろそろご飯を食べない?」

「ん~」

「……………」

 

霊夢の言葉にも適当な返事を返し、その場から動こうとは思わなかった。

俺のそんな態度に呆れたのか、霊夢は溜息を一つ吐いて、そのまま何処かに行ってしまった。

彼女が居なくなっても、俺は其処から動かず、寝転がったまま天井を見て呆け続けている。

 

……次第に天井を見詰めるのにも飽き、このまま寝てしまおうと瞼を閉じる。

瞼を閉じていると、次第に宴会の喧騒が聞こえなくなってくる。

このまま静かに寝てしまえれば良い……そんな事を考えていると、誰かに見らている様な気配を感じる。

俺は、霊夢か誰かが俺の寝顔でも見ているのかと思い、そっと瞼を開くと……俺はさっきまでの部屋ではなく、この世の元は思えない異様な空間に居た。

なんでこんな所に居るのか、そもそも此処が何処なのかも分からない。

俺は突然の出来事に、ただ呆然とする事しか出来なかった。

 

「漸く眼が覚めたみたいね。おはよう、それともこんばんは? まぁ、どちらでも構わないわ。とりあえずお久し振りね、異世界の竜さん」

 

そう言って俺に声を掛けてきたのは、幻想郷に来たばかりの頃に出会った紫の服を着た女性。

彼女を見たとき、最初は俺と同じ様に此処に迷い込んだのかと思ったが、女性の落ち着きを見るとそうじゃない気がする。

……正直、あまり関わりたくない人ではあるが、此処で頼れるのは彼女しか居ないみたいだし、仕方が無いか。

 

「…単刀直入に聞くけど、此処はいったい何処なんだ?」

「いきなりね。…まぁ、当然でしょうけど」

「こっちは行き成りこんな所に放り込まれて、色々と混乱してるんだが」

「なら、その混乱を一発で解消してあげるわ。……此処はスキマ空間、境界の狭間に存在する私の領域」

「境界の狭間? てか、私の領域って……」

 

俺が意味を聞く前に彼女が一方的に喋り始めた。

 

「万物には例外なく境界があるわ。私はそれを操り、色々な事を引き起こす事が出来る……この空間もその一つ。幻想郷と外の世界の境界にあり、博麗大結界にも影響を及ぼさない場所。いわば、現実と幻の狭間にある空間よ」

「は、はぁ…」

 

…俺の頭が悪いのか、彼女が何を言っているのかイマイチ理解出来ない。

未だに理解の追いつかない俺を他所に、彼女の語りはまだ続いた。

 

「そして貴方が此処に放り込まれた理由は、冥界で見せた白い竜の事が聞きたいからよ」

「…白い竜?」

「幽々子との戦いで見せた竜。アレの出現で白玉楼にいた幽霊の大半が消失し、あの子自慢の庭が崩壊……屋敷もほぼ全壊したわ」

「……………」

 

彼女の話を聞いて、なんとなく俺が冥界でした事を確信する事が出来た。

恐らく、白い竜の姿になってあの屋敷で暴れ回ったんだろ。

何をしたのかまでは分からないけど、それだけの事が分かれば十分だ。

 

「それで本題に戻るけど……アレは一体なに?」

「なにって聞かれてもな」

「あの力は〝竜〟と言う括りで見るには強大すぎる。…下手をすれば神々をも滅ぼせる程の力よ。それ程の力を持っているのに、何も知らないじゃ済まさないわ」

 

彼女は殺意にも似たものを発しつつ、睨みを利かせ、直接口には出さずに〝話せ〟と強要してくる。

俺にだって、この状況で話さないのが自殺行為だって位は分かる。

……分かってはいるのだけど、俺にもあの力の事は詳しく知らないんだ。

 

「あの力が何かなんて、そんなの俺が聞きたいくらいだよ」

「……そう。だったら身体に直接聞くしかないわね」

 

彼女がそう言うと、この空間全体が突如としてざわつき始める。

一体何が始まるのかと驚いていると、周りの音が消えて、自分の心臓の鼓動が大きく脈打つ音が聞こえてきた。

鼓動は段々と早くなっていき、それと同時に目の前が徐々に真っ白になっていく。

 

「な…にを…した……」

 

俺はこの身体の変調の原因と思われる彼女を問い質す。

 

「別に大したことはしてないわ。ただ、貴方の中にある〝竜の境界〟を弄っただけよ」

「…?」

「本当なら、直接あの竜を出せれば良いのだけど……下手に弄ると私の身も危ないのよ。だから、貴方の境界を弄ってあの竜が前に出や易い状況を作った。今の変調は、貴方の中に居る他の竜達が暴れてる証拠ね」

 

彼女はしれっと言うが、実際にはトンでもない事を仕出かしてくれた訳か。

竜の境界ってのは良く分からないけど、中で眠っている竜たちが暴れているってのは、なんとなく理解出来た。

要するに、俺の中に居る竜たちが外に出たがっているって事だろ。

『火』・『水』・『風』・『地』・『変異』の五つは、元々俺とは別の竜たちだ。

今までは俺に取り込まれていたけど、その部分を弄られれば中で暴れだすのは当然って訳か……。

 

「さぁ、早くその力を抑え付ける力を出さないと……本当に如何なるか分からないわよ?」

「く…そ……」

 

彼女の掌で踊らされている様で癪だけど、此処は変身するしかない。

そう判断した俺は力を解き放ち、あの五体の竜よりも上位種の『カイザー』に変身した。

赤いオーラに包まれ、何時もの竜人形態になったが……身体の変調は治らなかった。

それどころか、身体が俺の意思に反して勝手に動き出す。

 

「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

「……あらあら。すっかり化物(ケモノ)になっちゃったわね」

 

『カイザー』は明確な敵意を持つ彼女を敵と認識し、予備動作なしに彼女の元へと向かった。

狙いはあの人の頭部と首と心臓部。人外とは言え、急所と言えるこの三点を拳で砕きに行く。

彼女の元に辿り着き、拳が急所の三点に叩き込まれようとしたその時―――

 

「ッ?!」

 

―――彼女は俺の目の前で何処かに潜って行くかのようにして、忽然と姿を消していった。

眼にも止まらぬ速さで移動した……と言う訳でも無さそうだ。

やり方は分からないが、恐らくは転移か何かの類を移動したんだろ。

術式を展開した形跡は無かったから、前もって用意しておいたと考えるのが妥当か。

 

「結界『夢と現の呪』」

 

背後で声が聞こえ急ぎ振り向くと、二種類の弾幕が別々の所から放たれていた。

彼女は二種類の弾幕の先に居るが……今の俺は遊びをしている余裕はない。

向こうも殺す気で来ているだろうが、この程度の攻撃じゃ『カイザー』は殺せない。

 

「ガアァァァァァァァッ!!」

 

『カイザー』は弾幕のルールを無視して、彼女の元に向かい、また命を取りに行く。

弾幕を躱すなんて事をしないから、周りに飛び交う弾に当たるものの、大したダメージにはならない。

再び間合いを詰めた『カイザー』は、拳ではなく手刀で首を跳ね飛ばしに行く。

最短コースで叩き込まれる筈だが、彼女はまた空間に潜るようにして忽然と姿を消した。

 

移動方法は全く検討も付かないが、俺に用があるのなら彼女はまた此処に戻って来る。

何時もなら、それを逆手に取って攻撃を当てる方法を考えるけど……今の状態だと無理だろうな。

今の『カイザー』は暴走状態に陥っていて、力任せに暴れているだけだ。

そんな奴が何か作戦を考えて戦えるわけが無い。……このままだと、討たれるもの時間の問題か。

 

「考え事してる暇なんてないわよ。…結界『光と闇の網目』」

 

姿を消していた彼女は、今度は遠く離れた前方に姿を現し、二枚目のスペカを宣言した。

だけど『カイザー』は、宣言したスペカに警戒もせず、ただ真っ直ぐに彼女に向かって行く。

猪みたいに真っ直ぐ突撃すると、俺の身体を青と赤の光線が貫いた。

 

光線に貫かれた所から出血し、全身に痛みが走るが、『カイザー』が止まる事は無かった。

色んな角度から光線が照射され、自分の身体が二種類の光に貫かれようとも、そんな事を物ともせず真っ直ぐ突き進んで行く。

あと少しで彼女に手が届くと言う所で、突如横から何者かに突き飛ばされてしまう。

何に突き飛ばされたのか確認しようとしたが、それよりも先に二種類の光線に次々と射貫かれた。

 

「……助かったわ、藍。今のは少し危なかったわ」

「いえ、私は紫様の式ですので」

 

体の自由が利かない俺の耳に届いた第三者の声。

それが一体誰なのか確認しようとしたが、やはり身体の方が動きそうにない。

身体の彼方此方を光線で貫かれているのだから、当然と言えば当然ではあるのだが……。

 

「さて、聞こえているからしら。もう分かったと思うけど、その力では私には届かない。死にたくないのなら、早くあの力を使って頂戴。……私だって、何時までもこんな危険な戦いはしたくないの」

「……………」

「如何しても使いたくないって言うのなら……このスキマに永遠に封印するしかないわね。まぁ、ソッチの方があの子の為になりそうだし、私としてはどちらでも構わないわ」

 

全身に走る痛みに苦しみながらも、俺の耳に彼女の言葉が届いた。

今の彼女がどんな顔をしてるのか分からないけど、その言葉が俺の耳に届いた時に感じたのは……明確な怒りだった。

 

此処に封印される? 勝手に呼び出しておいて、随分と自分勝手だな。

確かにあの力を軽視出来ないのは、俺が一番良く知っている。

……でも、だからって、そんな勝手な言い分を許せるわけ無いだろ。

身体から解き放たれ、虚空を彷徨っていた俺にとっては、あの神社が……霊夢の傍が唯一の居場所なんだ。それを勝手な言い分で追い出されて堪るかッ!!

 

「……グオォォォォォォ■■■■■■■■■■■■■ーッ!!」

 

俺の怒りに『カイザー』が呼応したのか、身体の自由が利き、俺は声にならない雄叫びを挙げた。

雄叫びを挙げると俺は黒い球体に包まれ、内部で竜人の姿から完全な竜の姿へと変貌する。

琥珀色の鱗を持つ竜に姿を変えた俺は、包まれていた球体を突き破り、遥か上を目指して飛んでいく。

あの二人の姿が見えなくなったところで、俺は両腕から四対の空色の羽を展開して、姿勢を制御し、下に居る二人に狙いを付ける。

 

「……………」

 

下に居る彼女達に狙いをつけた俺は空を見上げ、口から青い強力な光線を幾つも放つ。

放たれた光は向きを変え、下に居る二人に降り注いで行く……筈だった。

 

「境符『四重結界』」

 

此処に居ないはずの者の声が聞こえたと思ったら、俺の足元に四重の結界が張られていた。

その結界が光だすと、突然途方も無い痛みが俺の全身を駆け巡る。

俺はその結界から抜け出そうともがくが、既に『カイザー』の体力は限界に来ていた。

結界が放つ光に『カイザー』の体力は全て削られ、変身が解けてしまい何時もの人の姿に戻った。

俺が人の姿に戻っても結界の光は消えず、駆け巡る痛みと身体の変調は今も変わらず続いている。

段々と意識も遠のき始めていく中、俺は大きく脈打つ心臓の音を聞いた……。

 

リュウSide out

 

 

 

紫Side

 

「……さて、漸く大人しくなったわね」

 

私は四重の結界の中で気を失っている、異世界から来た竜を見下ろしている。

ついさっきまで暴走していた彼を漸く大人しくさせる事が出来た。

少々無茶をしたけれど……これで次ぎの工程に移れそうね。

 

「紫様」

「あ、藍。無事だったのね」

「はい。…一瞬、死を覚悟しましたがなんとか」

 

私の式は、物凄く疲れた顔をしながらそう呟いた。

私はスキマを使って、遥か上に行った彼の元に直接向かったけど、藍は彼の攻撃を堪えて此処までやって来た。

そのお陰でウチの子の服はボロボロ。……これは後で衣装代を請求しないと駄目ね。

 

「それで紫様、この後は如何する御積りで?」

「予定通り彼の力を封印するわ。生半可な術式では無理だから、少々大掛かりなモノになるわよ」

「了解しました」

 

私がそう言うと、藍は直ぐに封印の為の準備を始めた。

結界の中で気を失っている彼に近付き、彼の上着を脱がそうとした瞬間、彼を飲み込みかの様に赤いオーラが立ち上った。

直ぐ傍にいた藍は、立ち上るオーラに吹き飛ばされ結界の外へと弾き飛ばされてしまう。

 

「藍、大丈夫?!」

「な、なんとか……」

 

吹き飛ばされた藍は、直ぐに体勢を立て直し無事なことを告げる。

それとは逆に、彼を封印する為に張った私の結界に幾つモノ皹が走り、少しずつ崩壊を始めた。

私は直ぐに結界を張りなおすけど、新しく張ったのも直ぐに崩壊を始める。

 

「……ぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁぁあああああああああッ!!」

 

オーラの中から彼の叫び声の様なものが聞こえてくると、オーラは弾け飛び、私の結界を完璧に崩壊させた。

結界が崩壊した事でエネルギーが逆流し、術者である私の体に鋭い痛みが走った。

……でも、今はそんな事を気にしている余裕がない。今、私の目の前に居るのは白い巨大な竜が存在しているのだから。

体格としては先程のカイザーを同じくらいはあるものの、翼と一体に為っていた腕が五本爪の腕に変わっていたり、背中から生えた突起から空色に輝く光を出していたりと違う点もある。

だけど、その存在感と威圧感は先程の比ではなく少しでも気を抜くと飲み込まれてしまいそうになる。

背中に在る突起から空色に光を翼の様に広げるその姿は雄々しく、皇帝を超える存在である事を如実に物語っていた。

 

「……紫様、もしかしてコレが」

「えぇ、この竜が『冥明結界』を崩壊一歩手前にまで追い詰めたのよ」

 

直接目にするのは初めてだけど、あの竜から感じ取れる力はあの時のモノと全く同じ。

かの竜から感じ取れる力は私たち妖怪のものとも、神々の様な神聖なものとも違う何者にも染まらない純粋な力。

神々を打倒しうる力を持っているのは分かっていたけど、実際に見てみるとまさかこれ程の力を持った化け物とは思わなかった。

現世と冥界を別つ『冥明結界』を、どうやってあそこまで追い込んだのか分からないけど、この竜と一戦交えるにはそれ相応の覚悟をしないと。

……出来る事なら、彼に自発的に変身して貰った方が楽だったのだけど……そう上手くいかないのが世の常ね。

 

「…覚悟は良い、藍」

「はい。……ですが、万が一の時は紫様だけでも逃げて下さい。貴女が居なくなれば、幻想郷は大変な事に為るのですから」

「逃げるときは貴女も一緒に連れて行くわ。……もっとも、彼が逃がしてくれるか分からないけど」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッ!!!」

 

眠るように静かだった彼は、私たちの会話で眼を覚ましたのか、耳を塞ぎたくなるほどの雄叫びを挙げる。

その雄叫びを合図に、私と藍は弾幕を展開し、かの竜との戦いを始めた。

この空間で戦って、外にどれ程の影響を及ぼすのか分からないけど、彼は此処で止めてみせる。

彼に、私の大切な幻想郷を崩壊させやしないわ!!

 

紫Side out

 

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