竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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今回は霊夢視点での話しになります


第三話 動かない古道具屋

 

足りなくなった食材を買いに来た私は、リュウを連れて人里の入り口にまで辿り着いた。

何時もなら空を飛んでいくんだけど、飛ぶ手段のないコイツに合わせて徒歩で来たからちょっと疲れた。

普段はあまり気にしないんだけど、神社から里まで通じる山道って獣道みたいになっていて、結構歩きにくいのよね。

別に整備する心算も無いけど、あんなにも不便な道に為っているだなんて思いもしなかったわ。

 

「へぇ~、此処が幻想郷(このせかい)の里かぁ~。結構変わった建物が多いな」

 

若干疲れ気味の私を他所に、連れてきたリュウは里の中を見ながら感慨そうに言う。

リュウは里の建物が珍しいのか、入り口に着いた時から辺りをキョロキョロと見渡している。

今まで旅をしていたのだし、この程度の事で驚かないで欲しいわ。

 

「ちょっと、いい加減落ち着きなさいよ」

「あ、悪い。余りにも珍しかったからつい」

「ついって、アンタ今まで旅してきたんじゃないの?」

「してたけど、此処みたいな家や人の服装は見た事無いから」

「ふ~ん」

 

如何やら、コイツが居た世界にはこの里に近い形の集落は無かったみたい。

前に聞いた話は、飽く迄もリュウの人となりを聞くだけのものだから、どんな場所を旅してたのかは聞いてなかったな。

まぁ、今すぐ聞き出さなくちゃいけない訳でもないし、気が向いたらで良いか。

 

「ほら、さっさと買い物を済ませるわよ」

「へ~い」

 

一応返事はするものの、リュウは相変わらず辺りを見渡している。

幻想郷に住んでいる私には何が珍しいのか分からないけど、コイツに取っては違うみたいね。

でも、物凄く恥かしいから今すぐ止めて欲しい。……口で言っても分からないなら、実力行使で分からせれば良いか。

 

「…なぁ霊夢。今、殺気みたいなのを感じたんだが」

「気のせいでしょ」

「そ、そうか?」

「そんな事より早く行くわよ」

「あ、あぁ」

 

今一つ釈然としてないようだけど、リュウは漸く落ち着いて私の後を付いて来た。

それにしても、リュウの奴意外と勘が良いのね。

まぁ、人里で暴れる必要が無くなったから良いんだけどね。

 

リュウに里を案内しつつ必要な物を買っていると、突然リュウがとある道具屋の前で立ち止まった。

特に急ぎの用もないし、コイツが何に興味を示したのか気になり、私も隣に立ち視線の先を追ってみる。

リュウの視線の先を追っていって有ったのは、籠に入れられた何の変哲もない竹竿だった。

 

「……その竿に何かあるの?」

「いや、只の竹竿だけど」

「それなら、何で熱心に見てるのよ」

「…あの竹竿が欲しいなぁ~って」

「却下」

「即答された?!」

 

全く、行き成り立ち止まるから何事かと思えば……釣竿が欲しいなんてね。

意外な趣味と言えばそうだけど、今回は食料を買いに来ただけで竿を買いに来たんじゃないのよ。……それに値段も高いし。

只の釣竿の筈なのに、4500円って一体如何言う事よ。高が竹竿じゃない。

仮に使っている竹が良いとしても、こんな竿なら500円かそこ等で十分よ。

 

「……霊夢、如何しても駄目か?」

「駄目よ。…ほら、何時までも立ち止まってないで行くわよ」

「うぅ…無念だ……」

 

無念と言いつつもリュウは、私の後について来る。

お財布を握っているのが私でコイツは居候だからか、はっきり却下してしまえば強く出たりしないみたい。

リュウに物欲が強いのか知らないけど、今後の為にもお財布は確り握っておかないとね。……それにしても―――

 

「……釣り、したかったな~」

 

―――物凄く落ち込んでるわね。

別にあの釣竿が欲しかった訳じゃないみたいだけど、どれだけ釣りが好きなのやら。

……ずっとこんな調子だと、なんか悪い事したみたいで申し訳なくなって来るわね。

安かったら買ってあげても良かったけど、あの値段は如何考えてもぼったくりでしょ。…リュウには悪いけど、今回は我慢して貰うわ。

その後私は、落ち込んでいるリュウを引き連れて手早く買い物を済ませた。

 

 

 

 

 

 

………

……

 

リュウを人里に案内してから一週間が経った。

落ち込んでいたリュウだったけど、翌日にはケロッとした様子で雑用をこなしていた。

一日で機嫌が治ってくれたのは良かったんだけど、本人に聞いたら笑いながら『居候だし、霊夢に無理は言えないって』と言っていた。

幾ら竜とは言え、ちゃんと遠慮と言うものをしってるみたいで助かるわ。

 

「それじゃ、ちょっと出掛けて来るから留守番よろしく」

「いってらっしゃい」

 

私はリュウを神社に一人残し、魔法の森にある香霖堂へと向かった。

香霖堂と言うのは、知り合いの半妖―森近 霖之助―が経営している珍品道具屋の事。

珍品道具屋と言うよりも、古道具屋と言った方が正しい気もするけど。

あの店に取り扱っている物の大半が拾って来た物で、霖之助さんは変わり者だし。

……まぁ、道具作りの腕は確かだから別に良いか。

それに幻想入りした道具を取り扱う唯一の店で、ツケが利くから大助かりだしね。

 

「…やっぱり、飛んでいくと早く着けるわね」

 

神社を出て三十分もしない内に香霖堂に到着した。

店の中は色んな物が置いてあってゴチャゴチャしてるけど、もう少し整理する気は無いのかしら。

……どの道、魔理沙が持って(ぬすんで)行くからキチンと整理する必要も無いのか。

 

「いらっしゃい霊夢。約一週間振りだね」

 

店の奥から、眼鏡を掛けた白髪の青年が顔を出した。

彼がこの店の店主の霖之助さんだ。

若い様に見えるけど、本人曰く私の何倍も生きているんだとか。

 

「久し振り、霖之助さん。今日はお札と針を注文しに来たわ」

「……またツケかい?」

「当然」

「いい加減、溜まったツケを払って欲しいんだけど」

「気が向いたら払うわ」

「やれやれ。…用意して来るから、少し待って居てくれ」

 

それだけ言い残すと霖之助さんは店の奥に引っ込んでいった。

この間は特にする事も無く、お茶を飲もうにも準備するのが手間だから置いてある物を見ていよう。

何か使えそうな物が有ったら貰って行く事にしよう。……当然ツケで。

 

使えそうな物と言っても、この店の置いてある殆どの物が外の世界の道具だから、イマイチ何に使うのか分からないのよね。

霖之助さんが居れば、如何言う用途の道具が聞けるけど……今は無理か。

 

それにしても、前に来た時よりもゴチャゴチャしている様な気がするんだけど……私の気のせい?

元々色んな道具を置いてあるからそう感じてたんだけど、久々に来たから余計にそう感じるわね。

大小さまざまな物を無造作に置いてあるから、何処に何があるのか良く分からない……って、また変な物が紛れてるわね。

 

「お待たせ、霊夢。ご注文の品が出来上がったよ」

「ねぇ、霖之助さん。この紅く光る石は何?」

「あぁ、それはフェアリドロップと言う金属の一種だよ」

「金属って……これが?」

「ああ」

 

霖之助さんはそう説明してくれるけど、名前と見た目からしても金属には見えないわね。

どちらかと言うと、宝石の原石と言われた方が信じれそう。

 

「……もしかして、それが欲しいのかい?」

「別に良いわ。買った所で漬物石にしか使い道無さそうだし」

「確かにそうかもしれないね」

「その代わり、これを貰っていくわ」

「釣竿?」

 

私が指指したのは、店の中を物色中に見つけた釣竿。

まぁ、私の知っているのとは少し違って、持ち手の近くに取っ手が付いた丸い器具がある奴だけど。

見た感じからして釣竿だと思ったけど、どうやら間違いじゃなかったみたいね。

 

「君が釣りだなんて、珍しいね」

「私じゃなくて、今ウチに居候してる奴が欲しそうにしてたのよ」

「博麗神社に居候って……もしかして、その人は外来人かい?」

 

この惑星以外の外から来たから、アイツも外来人になるんでしょうけど……実際は如何なのかしら?

アイツの場合色々と特殊だから、外来人の一言で纏めるのも躊躇するのよね。

まぁ、幻想郷の外の世界から来たって意味じゃ同じだし、特に問題はない……かな?

 

「う~ん……そんなところかな」

「…? 随分と曖昧な返答だね」

「色々とあるのよ」

「そうかい。…それじゃ、その釣竿を包むから渡してくれ」

「はいはい」

 

私は釣竿と、ついでに針と糸を霖之助さんに渡した。

この竿の値段は、里で見た竹の奴の半分以下の値段で買うことが出来た。

……やっぱりあの竿はぼったくりよね。如何考えてもあの値段は可笑しい。

支払いは何時も通りツケにしてもらった私は、商品を受け取り店を後にした。

 

品物を手に神社への帰り道を飛んでいると、正面から白黒の魔法使いが箒に跨ってこっちに来るのが見える。

あんな格好をしてるのは魔理沙一人だけど……何をそんなに慌てているのやら。

 

「ちょっと魔理沙。そんなに慌てて如何したのよ」

「よ、よう、霊夢か。わりぃけどわたしは忙しいんだ。だから先を急がせて貰うぜ!」

「あ、ちょっと!」

 

何を慌てているのか知らないけど、魔理沙は止まる事無く大慌てて行ってしまった。

アイツがあんなに慌てているのは珍しいけど、神社の方からやって来たのが気に為るわね。

神社にリュウが居るし、変な事には為ってないと思うけど……なんかやな予感がするわ。

リュウは恐らく無事だろうけど、神社がどうなってるのか不安ね。

今は一刻も早く神社に帰る事にしましょう。

 

 

………

……

 

急ぎ帰った私の眼に飛び込んで来たのは、何かに吹き飛ばされた様に荒れ果てた境内と、それを直そうと必至に作業しているリュウの姿だった。

幸いにも神社本体は無事だったけど、境内の方は滅茶苦茶になっている。

なんでこうなったのか知らないけど、恐らく当事者である筈のリュウに聞けば分かるわね。

 

「…リュウ、ちょっと良い」

「お、お帰り霊夢。……もしかしなくても、怒ってるよな」

「とりあえず、何が遭ったのか話なさい」

「魔理沙って言う奴と戦って、マスタースパークなる魔法を放たれました」

「……そう」

 

あの時は、魔理沙が慌てている理由が分からなかったけど、これではっきりしたわ。

アイツ、遊びに来たと思ったら何をぶっ放してるのよ!

如何言う経緯があるのか知らないけど、少しは限度を考えなさいよ!!

 

「魔理沙め、今度会ったら只じゃおかないわ。それとリュウ!」

「はい! なんでしょうか!?」

「アンタは荒れた境内の片付け。それが終わるまで晩御飯は抜きよ!!」

「そんな殺生な?!」

「……なんか文句ある?」

「いえ、ありません……」

 

全く、留守番を任せたらコレか。

リュウが自分から喧嘩を売ったのかは兎も角、何を如何したらこうなるのよ。

……はぁ。これじゃ、買って来た釣竿はお預けね。

 

 

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