竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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第三十話を読んでリュウと霊夢が結ばれると思った方、その考えは甘いと言わせてもらおう。
にじファン時代から読んでくれている方は、俺の言っている意味が分かる筈。


第三十二話 霊夢の誤算

リュウSide

 

宴会の後片付けや、霊夢の怪我の治療なんかでドタバタしていたから聞きそびれたが、俺はアイツに一つ確認しないといけない事が在った。

あの隙間空間で霊夢に〝ずっと傍に居る〟と言われた訳だが、アレって告白されたって事で良いのだろうか?

記憶の大半が無いから確かな事は言えないけど、覚えている範囲だと誰かから告白された事なんて一度も無い。

仲間内でその手の話は聞いた事あるけど、アレは俺に対してじゃなくて他の仲間に対しての思いだから、俺が好きだと言われた訳じゃないんだよな。

俺が消えた後の向こうはどうなったのか分からないが、今問題なのは俺と霊夢の関係がなんなのかと言う事だ。

あの霊夢が告白してきたとは思えないが、こう言うのははっきりさせとかないと気になって仕方が無いからな、一応本人に確認を取ってみるか。

 

そう思い至った俺は、神社の母屋にある霊夢の部屋の前へと向かった。

回復魔法で怪我を治したとは言え、あの戦いでかなりのダメージを受けていたから、今日ばかりは大事を取って部屋で休んでもらっている。

本人は人目を気にせずにのんびり出来ると喜んでいたが、俺からしたら普段と何も変わっていない様な気がして為らない。

……もっとも、こんな事を霊夢に言ったら確実に怒られるから言わないでおくけどな。

 

「お~い、霊夢~。ちょっと良いか~」

「ん? 何か用、リュウ」

「ちょっと聞いておきたい事があってな」

「ふ~ん……まぁいいわ、入って」

「お邪魔しま~す」

 

霊夢に入室の許可を貰った俺は、部屋の障子を開いて中へと入った。

部屋の中で霊夢は何時もの様にだらけていたが、俺が入室するのに合わせて服の乱れを直してからキチンと正座した。

俺も霊夢に習って彼女の前で正座をし、彼女の事を真っ直ぐに見詰めながら例の事を尋ねた。

 

「……霊夢、お前に如何しても聞いておかないといけない事がある」

「な、何よ急に……。珍しく真剣な顔なんかしちゃって」

「コレは真面目に答えて欲しいんだが……あの時の約束ってのは告白と捉えて良いのか?」

「……へっ?」

「今までそう言う経験をした事無いから良く分からないんだよ。……んで、アレは告白だったのか?」

「いや、あの…その……」

 

俺は霊夢の顔を見据えて真剣に尋ねるが、彼女は何故か顔を紅くして言い辛そうに言い淀んでいる。

コッチとしては只の確認の心算だったんだが、そんなに言い辛い事だったのだろうか?

もしそうならちょっと悪い事をしたが、この事をはっきりさせとかないと関係がギクシャクしそうで嫌なんだよな。

告白ってのが俺の勘違いでも構わないから、本当の事をちゃんと教えて欲しい。

そう思いつつ、霊夢の言葉をただジッと待ち続けていると、漸く彼女の重い口が開いた。

 

「あ、アレは……ただの注意よ!」

「注意?」

「アンタ、何も言わずに居なくなる時あるでしょ。用事があるときに限ってそうだから、勝手に居なくなるなって事を言いたかったわけよ」

「……そう言われると思い当たる節は幾つかあるけど、一応は霊夢に一言いってから神社を出てるぞ」

「私が覚えてなかったらそれは言って無いのと同じよ。だから今後は、ちゃんと何処に行くのか言ってから出かけなさい」

「了解っと。……しかし、やっぱりアレは勘違いだったのか。まぁ、霊夢が告白するとは思えなかったけどな」

「そ、そうよ。少しそれっぽい事を言ったからって勘違いするんじゃないの」

「あははははは。すまん」

 

恥かしい勘違いをしてしまい、笑って誤魔化してみるが……何故か霊夢の顔が引き攣っている様な気がする。

また勘違いだったりしたら困るし、今回は追及しないでおくけどなんで顔を引き攣らせてるんだ?

 

「用が済んだらさっさと出てく。乙女の部屋に長居なんてするもんじゃないわよ」

「さいですか。……んじゃ、晩飯の食材を買いに人里に行ってくるけど、何かリクエストはあるか?」

「別に何だって良いわよ。どうせアンタの腕前じゃ碌な料理が作れないんでしょうからね」

「間違いじゃないけど、其処まではっきりと言われると悲しくなってくるな。……それじゃ行ってきますっと」

「はいはい、いってらっしゃい」

 

霊夢に適当に見送られた俺は、そのまま彼女の部屋から出て人里へと向かう事にした。

結局アレは告白じゃなかったわけだが、その事を少しだけ残念に思っている自分がいる。

恐らく間違いなんだろうと思っていたけど、心の何処かでは告白であって欲しいと思う自分が居たのかもしれないな。

まぁ、霊夢にも色々と立場があるんだろうし、俺みたいな化け物に告白するわけがないか。

 

リュウSide out

 

 

 

 

 

霊夢Side

 

「……行ったみたいね。あ~…なんで意地なんか張っちゃったんだろ、私」

 

リュウが部屋から出て行った跡の私は、酷い自己嫌悪に苛まれていた。

なんでこうなったのか原因は分かっている、ただたんに恥かしくてリュウに嘘を吐いたから。

本当はあの時告白した心算でいたけど、改めて聞かれると結構恥かしい上に、アイツも真剣な表情で聞いてくるから頭が混乱しちゃって……。

その結果、思わず口にしてしまったのがさっきの嘘。

確かにアイツは勝手にいなくなる時があるけど、ちゃんと私に一言いってから出かける方が圧倒的に多い。

だから態々注意する必要なんて無いのに、他になんて言えば良いのか思いつかなくて……。

 

「ホントになにやってんだろ。これじゃ、折角の告白が意味無いじゃないの」

「まったくじゃ。この調子では間違いなく苦労するじゃろうな」

「言われなくたって分かってるわよ……って、龍神!? アンタ、何時の間に私の部屋に入ったのよ!?」

「お主に言い忘れていた事があってな。それを伝えにこっそり忍び込んだと言う訳じゃ」

 

何時の間にか私の部屋にやってきた龍神は、何でも無い様な風に言うけど驚くなと言うほうが無理がある。

今朝も突然現われたと思ったら、空間に溶けるような感じで居なくなったし、龍たちの化身ってのはある種の幽霊みたいなものなのかしら。

 

「それで言い忘れた事ってなによ。またへんな事じゃないでしょうね」

「なに、アヤツについての事なんじゃがな。……お主、ものすんご~~~~く苦労する事に為るぞ」

「……如何言う意味よそれ」

「言葉のとおりの意味じゃよ。色恋沙汰に鈍いと言うか、興味があるのかすら分からんからのぉ」

「興味がないって流石にそれは無いでしょ。アイツだって男なんだし」

「妾はアヤツと旧い仲なんじゃが、今までその様な話を聞いたことは一度も無い。味方よりも敵の方が多かったと言うのもあるが、アヤツは女性と二人っきりに為っても手を出した事はなかった。これでは興味が無いと思われても仕方が無いじゃろ」

「さらりと嫌な事を言うわね。……でも、思い返してみれば思い当たる節が多々あるかも」

 

リュウと一緒に暮らすようになって一年近く経つわけだけど、アイツが私の仕草に戸惑っていると事なんて見た事が無いわ。

あまりそう言うところを見せた事もないけど、少しくらいは何かしらの反応があっても良さそうなものよね。

寧ろ私の方がアイツの言葉に戸惑っていた訳だけど、アイツは悲しくなるくらいに無反応だった気がする。

龍神の言葉を鵜呑みにする気は無いけど、色々と振り返ってみると嘘を言っているとは思えないわね。

 

「お主の立場的な問題もあるし、ここは一つ諦めるというのもアリかと思うぞ」

「………………」

「何も男はアヤツだけではないのだ。結ばれるかどうかも分からぬ恋に生きるくらいなら、新たな恋を探してみると言うのも一つの手じゃろ」

「……簡単に諦めるくらいなら危険を冒してまで助けに行ったりしないわよ。だから、絶対に諦めるなんて事はしない」

「そうか……お主の決意は固いのだな」

 

私が龍神の諭す様な言葉も突っ撥ねると、彼女はその返事を聞いて何処か嬉しそうに頷いた。

この二人の間に何があったのか私には分からないけど、龍神の様子を見ているとそれなりに深い仲だったのは容易に想像ができる。

思わず私とリュウの仲を裂きに来たのかと邪推しちゃうけど、彼女の嬉しそうな表情を見る限りだとそれは無いように思える。

一体何がしたいのかその真意までは測れないけど、自分の想いに気付いたからには幾ら龍神が相手でも引き下がる心算は無いわ。

 

「…ところでさ、龍神。リュウと旧い仲だって言うんなら、アイツの好みとか知らない?」

「アヤツの好みか? う~む…………何かあったかのぉ?」

「リュウとは昔からの付き合いがあるんでしょ? 女性のこう言う所が好きみたいなこと聞いた事無いの」

「さっきも言ったが、アヤツは色恋沙汰にはかなり鈍い。そんな奴に女性の好みがあるとは思えんぞ」

「それじゃ、どうやってリュウを振り向かせれば良いのよ。私もこの手の事は経験ないから良く分からないって言うのに」

「とりあえずお主が素直に為れば万事解決すると思うぞ。幾ら鈍いといっても、正面から告白すればアヤツも首を縦に振るじゃろうし」

「素直になるって……そんな恥かしい事できるわけないじゃない! てか、素直になれるならさっきみたいな嘘は吐かないわよ!!」

「それもそうじゃな。となると……後はまぁ頑張れ。それしか言えん」

「……励ましにもなら無い言葉を有り難う」

 

何の役にも立たない言葉を思いっきり皮肉ってやると、ぐうの音も出ないのか龍神からは苦笑いしか返ってこなかった。

まぁ、コイツに文句を言っても仕方がない事だし、素直になれない私にも問題がある。

龍神の言う通り素直に為れれば良いんだけど、それが出来ないからこそ困っているんじゃない。

今まで誰に対しても平等に接してきたからか、誰か一人を特別扱いする事に抵抗があると言うか、アイツの前で素直に為るのが物凄く恥かしくてたまらない。

アイツだっていきなり私が甘えたりしたら困るだろうし、もう暫くはこのままの関係でも大丈夫な筈。

……でも、何時でも傍に居られるって言うのに、何時までも二の足を踏んでいるって言うのも私らしくないわよね。

やっぱり時期やタイミングを見て、今度こそちゃんと告白をしよう。

ちゃんとアイツに想いを告げれば良いだけの事なんだし、遠まわしに言ったりしないではっきり言ってしまおう。……それが何時に為るのかは私にも分からないけど。

 

「アイツから聞きに来たくらいだから、脈が全くないと言うわけじゃないはず。今度はちゃんと言えば良いのよ、ちゃんと言えば」

「…ふむ。色々と悩んでおるようじゃし、悩み多き乙女に妾が助言を与えよう」

「別に良いわよ。役に立つのかどうかも分からないし」

「竜と旧友の妾の言葉が信じられんと言うのか!?」

「別に其処まで言う心算は無いけど、あの鈍いリュウに対して役に立つのか分からないじゃないの」

「そんな事は妾にも分かっておる。じゃから、小難しい事を言ったりはせん。妾からお主に言える助言はたった一つ……絶対に引かぬと言う事じゃ」

「ん? それってどういう意味よ?」

「アヤツから告白するなどまず有り得んからな、竜が振り向いてくれるを待つのは愚の骨頂と言う事じゃ」

「……あ~、なんとなく言おうとしてる事が分かったかもしれない」

 

リュウが私の想いに気付いてくれるとは思えないし、アイツが告白してくれるのを待つくらいなら、素直に自分から行けと言いたいんでしょう。

でも、そんな事出来るとは思われていないからか、さっさと告白しろと言わないで引くなって言ったのね。

アイツが振り向いてくれるのを待つのではなく、私からそれとなく行動をしろって事でしょうね。

……かなり言い方は回りくどいけど、一応まともそうな助言でちょっと驚いたわ。

 

「妾の言いたい事が伝わったのなら、後は自力で頑張れ。妾はもう帰るぞ」

「帰るのは良いけど、今度来るときはちゃんと正面から来なさいよ。突然現われるのは心臓に悪いんだから」

「当代の巫女の心臓がこの程度で止まる訳なかろう。……では、後は頑張れよ~」

 

最後の最後で龍神は勝手な事を言って、朝の時と同じ様に空間に溶ける様にしていなくなった。

一番最後に喧嘩を売られた様な気もするけど、色々と助言を貰ったりしたし、今回はそれでチャラにしてあげる。

それよりも今考えないといけない事は、今度リュウにどんなアプローチを掛ければ良いのかって事かしら。

いきなり態度を変えても怪しまれるだけだろうし、それとなくアイツと接点を持つ様にすれば良いのかな?

でもそれだと今までと大差ないし、もうちょっと大胆な行動に出たほうが良い様な気もする。

……まぁ、大胆な行動なんて言ってもそれが出来ればこんな苦労はしてないのよね。

 

「はぁ~……。本当に私の恋路って前途多難だわ」

 

分かり切っていた事に溜息を吐きながらも、私は龍神の助言を頼りにどう行動するか考える事にした。

とりあえず、今までしなかったことをしてあげながら、アイツの好感度を上げるのが良さそうね。

今すぐ告白しないといけないって訳でも無いし、気長に頑張っていくとしますか。

 

霊夢Side out

 




オマケ

人里で今晩のおかずを買ってきたリュウが母屋に帰ると、居間で瞑目したまま正座している霊夢の姿を見つけた。
霊夢が居間に居る事自体は珍しくも無いが、彼女の様子が少し変で、何処と無くそわそわしていて落ち着きがないように見える。

「……霊夢、なにしてんだ?」

不思議に思ったリュウが声を掛けると、霊夢はビックリした様子で目を見開くが、直ぐに何事も無かったかように振舞いだした。

「お、お帰りなさい、リュウ。買い物大変だったでしょ」
「別にそんな事はないけど……どうかしたのか? なんか様子が変だぞ」
「わ、私は普段通りにしてるわよ。そんな事よりも、さっき耳掻きをしてたんだけど、良かったらアンタにもしてあげようか?」

そう言ってくる霊夢の手には確かに耳かきが握られている。
恐らく彼女の言っている事は本当なのだろうが―――

「いや、別に良いよ。このあいだやったばっかりだし。それよりも晩飯を作るから、ちゃぶ台の上を片付けておいてくれよ」

―――リュウは特に興味を示す事はなかった。
それどころか、霊夢にちゃぶ台の上を片付けるように頼むと、リュウは台所に引っ込んで夕食の支度を始めた。
居間に取り残された霊夢は暫し呆然としていたあと、ちゃぶ台に伏して落ち込んだ様子で盛大な溜息を吐いた。

                      終わり
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