竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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今回も突貫作業で仕上げた。なので粗いです。


第三十九話 姉と妹

 

梅雨が明けて、夏が本格的に始まろうとしていたある日、俺は紅魔館に遊びに来ていた。

…いや正確に言うなら、釣りでもしようかと湖に来たところを、フランドールが退屈しているという理由で咲夜に拉致されと言うのが正しい。

まだあの時の事を根に持っているのか、咲夜は俺に対する風当たりが結構強かったりする。

もう過ぎた事なんだし、いい加減忘れて欲しいんだが……まだ当分はこんな感じなんだろうな。

 

「隙あり~ッ!」

「うおっと」

 

ちょっと考え事をしていた所為か、フランドールに隙を見せてしまったが、彼女の攻撃が大振りだったから楽々と避ける事ができた。

ちなみに、今俺たちが遊んでいるのはチャンバラごっこだ。

お互いに真剣を用いての遊びだから、これを本当に〝ごっこ〟と呼んで良いのか甚だ疑問ではある。

まぁ、普段からやっている弾幕ごっこも結構微妙なところだし、この位なら別に問題はないのかな?

 

「むぅ~……簡単に避けないでよ~」

「いや、当たったら痛いじゃすまないだろ」

「リュウだから当たっても平気だよ」

「……文句を言いたいが、自分でもそんな気がするから嫌だ」

 

本当だったら怪我をするとか、命が危ないとかそんな事を言うべきだと思うが、色々と逸脱しているから当たっても平気なんじゃないかって、自分でも思えてしまうのが怖い。

…とは言っても、俺だって痛い思いはしなく無いし、ボロボロの状態で神社に帰ると霊夢が心配するから、出来るだけ怪我をしないに越した事は無いんだよな。

 

「まぁいっか。とりあえず次こそ一本とるぞ~!」

「元気なのは良いが、そう簡単に俺から一本取れると思うなよ」

 

俺が剣を構えて軽く挑発すると、フランドールは勢いよく踏み込み、炎の魔剣(レーヴァテイン)を振り下ろして来た。

小柄な体型に合わず繰り出される上段からの大振りな一撃。

剣を振り下ろす勢いも十分にあるし、フランドールの力を考えれば此処は回避するべきところだが、俺はあえてこの一撃を受け止める事にした。

霊夢から新しい剣を貰いはしたが、この剣でフランドールと戦いのは今回が初めて。

この剣がどの程度まで耐えられるのか知るためにも、この一撃を回避するわけにもいかない。

 

「でぇりゃ~ッ!」

「なんのッ!」

 

フランドールが剣を振り下ろすのに合わせて、俺も剣を振り上げて彼女の一撃を受け止める。

以前使っていた無名なら、この一撃で叩き折られてもおかしくないが、今度の剣は折れるどころか刃が欠ける事も無かった。

普通の剣とは何かが違う……そう思っていたけど、まさか此処まで頑丈とは思いもしなかったな。

この剣ならかなり無茶をさせても最後まで付き合ってくれそうだ。

そう確信した俺は、剣を傾けて刃の上を滑らせるようにして彼女の剣を受け流し、直ぐに刃を返してフランドール目掛けて剣を振るう。

袈裟を斬るような形で剣を振り下ろすが、フランドールは素早く後退することで俺の一撃を回避した。

 

後退したフランドールは直ぐに体勢を立て直そうとするが、俺はソレよりも早く間合いを詰めて彼女の頸を刈りに行く。

フランドールは上体を後ろに逸らして回避するが、俺は素早く刃を返して逆袈裟を狙って剣を振り下ろす。

普通の人間相手だったら回避困難な状態だが、吸血鬼であるフランドールにはそんな事は関係ないらしく、上体を後ろに逸らした体勢のまま後ろに飛んで俺の逆袈裟を回避してみせた。

フランドールは、後ろに大きく飛んだ事で間合いを大きく離し、一旦仕切り直しにしようとしたかったんだろうが……今の俺にとってそんな事は些細な問題でしかない。

俺は前方にいるフランドールを見据えたまま、切っ先を後ろに向けた状態で腰の辺りで構え、床を踏み砕いて初速から最高速度に達して一気に斬り込む。

俺の猛進に驚いた彼女は慌てた様子で炎の魔剣を振り下ろそうとするが、俺を切り伏せるのにその動作は余りにも遅すぎる。

俺はフランドールが剣を振り下ろすよりも早く駆け抜け、横を通り抜けながら彼女の胴を斬り抜いた。

 

「かは……ッ」

 

斬られたフランドールは肺の中の空気を吐き出し、斬られた勢いに負けて上空へと吹き飛ばされる。

彼女の手に握られていた炎の魔剣は既に形を成しておらず、変な形の棒が握られているだけだった。

俺は自分の剣を床に突き刺して、上空から力なく落下してくるフランドールを受け止めてあげた。

 

「起きてるか、フランドール」

「…あ、リュウ。……そっか、わたし負けたんだ」

「そう言う事だ。まぁ、剣で俺に勝つのは簡単な事じゃないからな、あんまり気を落とすな」

「それでも悔しいものは悔しいの。…ねぇリュウ、もう一回勝負しようよ!」

「え、えぇ~。またやるのかよ……」

「だって負けっぱなしは悔しいもん! だからお願い、もう一回勝負してよ」

「……ったく、仕方が無いな。もう一回だけだぞ」

「ほんと!? ありがとうリュウ!」

 

本当に嬉しそうな顔でフランドールがお礼を言うと、俺の腕から降りて少し距離をとり炎の魔剣をまた構えた。

俺も床に突き刺しておいた剣を引き抜き、間合いを取ったまま剣を構えて相手を見据えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

「―――っで、その結果がそれと言う訳ね」

「うるせぇ」

 

フランドールと遊んでいた俺だが、今は一時中断してレミリアのお茶の相手をしている。

なんでそうなったのかと言うと、俺もフランドールも本気で暴れすぎたのが主な原因だ。

チャンバラ二戦目を始めたのは良いが、戦っている最中で段々とフランドールが本気に為っていって、俺も負けじと全力を出しちまった所為でお互いにボロボロに為ってしまった。

怪我をさせないように注意していたから大事にはなってないが、彼女の服は悲惨な事になっちまってな。

だからフランドールは咲夜の手を借りて着替えの最中で、俺は彼女の着替えが終わるまでの間レミリアの相手をすることになった。

ちなみに俺の着替えは無いそうだ。まぁ、女性しか居ない紅魔館で男物の服があるのも如何かと思うしな。

 

「全く、フランも貴方も少しは手加減して遊んで欲しいものね。屋敷を修復するのもタダじゃないのよ」

「建物の心配なんかして戦える相手じゃないからな。多少壊れるのは勘弁してくれ」

「まぁ、竜に変身されて屋敷が崩壊するよりはマシだけど」

「だったら良いじゃねぇかよ……」

 

俺は悪態を付きながらお茶請けに出されている菓子に手を付け、そのまま黙って口の中に放り込む。

レミリアは俺に態度に気を悪くすることも無く、少し呆れた様子でティーカップの紅茶を飲む。

 

「……そう言えば、一つ貴方に言っておかなくちゃいけない事があった」

「ん? 今度はなんだよ」

「礼を言うわ、リュウ。フランの遊び相手に為ってくれて、本当に感謝してる」

「……………」

 

レミリアは真剣な表情で礼を言ってくるが、彼女の思い掛けない言葉に俺は面食らってしまった。

それほど親しい間柄ではないが、なんとなくレミリアは我が侭と言うか、偉そうにしている方が似合っていると思っていた。

そんな相手からいきなり礼を言われれば誰だって驚くだろ。

 

「あら、随分と酷い反応ね。私だって一応の礼儀くらいは弁えているわ」

「だとしても、お前さんは人に礼を言うような奴じゃないだろ。それくらいは俺にも分かる」

「私にとって、それだけフランが大事と言う事よ。その位察しなさい」

「……そうやって上から目線で物を言う方がレミリアらしくて良いや」

「言ってくれるじゃないの。貴方はその態度を改めるようにした方が良いわよ」

「これが〝俺〟だからな。そう簡単には直らないだろ」

「やれやれ、本当に困った奴ね」

 

レミリアは呆れた様子で溜息を吐くが、直らない以前に直す気が無いので余り気にしないでおく。

 

「それでなんだって急に礼を言って来たんだ? 普段ならそんな事絶対に言わないだろ」

「貴方が遊んでくれるようになってから、あの子の精神状態が安定してきたのよ」

「精神状態って、別に其処まで酷くはなかったと思うぞ」

「貴方はあの子の過去を知らないからそう言えるのよ。昔のあの子は情緒不安定だったんだから」

「でも、俺と遊ぶようになってからは落ち着いてきたんだろ」

「えぇ。貴方が普通の人間と同じだったら、ただ遊んで(こわして)るだけだったでしょうに。そう言う意味では貴方が常識外れで居てくれて助かってるわ」

「……今の状態だったら普通の人間と大差ない筈なんだけどなぁ~」

「普通の人間は床を踏み砕いて、初速から最高速度なんて出さないわよ」

「お前アレをずっと見てたのかよ」

「あら、一体何の話かしら?」

 

レミリアは俺の質問を誤魔化しながら、ティーカップを手に取り優雅に紅茶を飲む。

その様子を見て俺は、妹が心配なら一緒に遊んでやれば良いのにと思った。

まぁ、そんな事を言ってもはぐらかされるだけだろうし、俺の心の中に留めておくがな。

そんな事を考えながら、茶請けの菓子を摘まんでいると―――

 

「リュウ~、着替えが終わったからまた遊ぼ~」

 

―――新しい服に着替えたフランドールが、咲夜を連れて俺達の元へとやって来た。

 

「遊ぶのは良いけど、今日はもうチャンバラはやらんぞ」

「えぇ~。折角必勝の策を考えたのに~」

「必勝って……どんなの思い付いたんだよ」

「えっとね、四人に分身して囲んで殴れば勝てるって咲夜が」

「おいコラそこのメイド。お前は子供に一体何を教えているんだ」

「……お嬢様、紅茶のお代わりをお持ちいたしました」

「ありがとう、咲夜」

「無視するなこの駄メイド!」

 

無視されて思わず暴言を吐いた瞬間、突如出現した銀のナイフが俺の頬を掠めた。

投げられたナイフはそのまま後ろの壁に突き刺さるが、掠めた箇所から何かの液体が頬を伝うのを感じる。

相変わらず何時投げたのか知覚できなかったが、これ以上下手に刺激するのは止めておこう。

これ以上なにか言えばまた全身串刺しなんて事になりかねんからな。

 

「………………」

「ん? どうしたフランドール。俺の顔をジッと見詰めて」

「いや、リュウの血って美味しいのかなぁ~って思って」

「……多分、物凄く不味いと思うから止めておいた方が良いとおもうぞ」

「なんだ、つまんないの~。…それじゃリュウ、今度はトランプでもしようよ!」

「分かった分かった。…序でだからレミリアも参加してくれ。こう言うのは人数が多い方がいい」

 

我関せずと言った様子のレミリアに話を振ると、一瞬驚いたような表情を見せるが、直ぐに何時もの偉そうな態度に戻った。

 

「……仕方が無いわね、今日だけ特別よ。咲夜、貴女も一緒に参加しなさい」

「お嬢様のご命令とあらば喜んで」

「例えお姉様が相手でも、わたしは絶対に負けないからね!」

「言うじゃないのフラン。…でも、私も簡単に負けてあげる心算は無いわよ」

 

偉そうなレミリアの態度は兎も角、端から見れば姉と妹の微笑ましい一コマにも見える。

内心ではフランドールと遊べる事を喜んでいると思うが、威厳を保つ為なのかその事を表に出そうとしない。

色々と面倒くさい関係だが、これが二人の距離感ならそれも仕方が無いのかもしれないな。

 

「あ、先に言っておくが能力の使用は禁止だぞ。特に其処のメイド」

「……チッ」

「……露骨に舌打ちしやがったぞコイツ」

 




偶にはこんな紅魔組みも良いじゃない。byベヘモス
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