竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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第四十三話 宴会前日その二

 

俺との戦いで気を失った妖夢は、正午近くになってからようやく目を覚ました。

トドメの一撃は確かに強力だったかもしれないが、幾らなんでもコレは寝すぎだだろうに……。

博麗神社に来たのが八時ごろだから、最低でも三時間くらい寝ていた事になる。

なんでこんなに寝ていたのか気に為った俺は、妖夢に前日に何をしていたのか尋ねてみた。

 

「別に大したことはしてませんよ。……強いて言うなら、此処最近の宴会の疲れが出たのかもしれませんね」

「……そんな妖夢に嫌なお知らせだ。明日の夕方にも宴会やるってさ」

「またですか!?」

「文句は俺じゃなくて集めてる奴に言ってくれ」

 

俺の知らせを聞いた妖夢は、心の底から出て来たような盛大な溜息を吐いた。

此処最近の宴会に嫌気が差していたのが、俺以外にも居たのに喜びながら、彼女に心の底から同情した。

まぁ、霊夢が動いているから、この宴会騒ぎも明日で最後に為るだろう。

妖夢にその事を話しつつ、もうお昼時なので彼女の昼食をご馳走する事にした。

 

「……で、焼き魚定食ですか」

「魚は焼くだけで良いし、汁物は朝のが残っているからな」

「晩御飯は如何するんです?」

「妖夢が帰ったら釣りに行く心算だから、それで適当に作るさ」

「……昼と夜で魚ですか」

「何を言う、朝昼晩の三食だ!!」

「威張る事じゃないですよね、ソレ?!」

 

威張る心算はないが、食事は基本的に霊夢が作ってるし、俺もそんなにレパートリーがある訳じゃないから、如何しても簡単なモノになりがちなんだよ。

今回みたいに霊夢がいない事を考えて、もうちょっとレパートリーを増やしたほうが良いのかな?

そんな事を考えつつ、俺達は漫才の様なやりとりをしながら、少々賑やかに二人で昼食を食べた。

 

 

 

 

 

………

……

 

昼食を食べ終えた後、妖夢はお腹を落ち着かせて直ぐに帰って行った。

コレ以上居ると、お昼の仕事に差し支えるとか言っていたが……そんな事を言うくらいなら、毎日のように神社に来なければ良いと思うんだがな。

妖夢は宴会の疲れが出たと言っていたけど、疲れの原因はこの剣術勝負なんじゃないのか?

本人に直接言っても否定されそうだが、俺の考えは概ね当たっているような気がする。

 

妖夢が帰ったのを見送った俺は、使った食器を片付けた後、予定していた通り釣りに出かける事にした。

今回の釣りポイントは、『霧の湖』と『妖怪の山』の間に流れる川。

湖だと中々魚がかからない上に、釣れる魚が大型魚ばかりだから二人で食べるには少々多すぎる。

山の方で釣りをしたいけど、あまり近付きすぎると山の妖怪たちに襲撃される恐れがある。

妖怪に負ける気はないんだが、無闇に山の連中に喧嘩を売りに行く心算もない。

これ等の理由から、今回は二つの中間に存在する川で釣りをする事にした。

 

「さ~って、今回は何が釣れるのやら」

 

川に着いた俺は、釣竿の準備を整えさっそく釣り針を川に投げ入れた。

二人で食べる分の魚が居れば十分だし、必要以上に釣れたら川に還す事にしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

アレから時間が流れて、空の色は鮮やかな茜色に染まっている。

そろそろ良い頃合だし、今日はここら辺で神社に帰ろうかと思い片付けを始めたその時、紅魔館の方から〝ドッカーンッ!〟と言った感じに何かが炸裂する音が聞こえてきた。

物音を聞いた最初は、フランドールが癇癪を起こして暴れ始めたのかと思ったが、聞こえてきたのが屋敷の外からだった為、直ぐに違うと判断した。

もしかしたら、魔理沙が門に『マスタースパーク』でも叩き込んだのかもしれない。

一番正解に近いと思う予想が頭に浮んだけど、あの魔法にしてはなんとなく炸裂音が違う様な気がする。

 

「……ま、行ってみれば分かるか」

 

何となく気に為った俺は、大きな音がした紅魔館の門へと向かう事にした。

距離は此処からそれほど離れていないから、十分くらいで門に辿り着く事が出来る。

好奇心の赴くままに門に近付くと……誰かにやられてたのか、門の前で倒れている門番を発見した。

倒れているのは彼女だけで、紅魔館の門が無事なところを見ると、どうやら魔理沙のマスパを受けたわけじゃないみたいだ。

他に大きな損傷もないし、侵入者は見事なまでに門番だけを倒して行ったらしい。

 

「……何か面白い事でもあるかと思ったが、この程度かツマラン」

「いきなりやって来てそれはないんじゃないですか?!」

「あ、生きてた」

「最初から生きてますよ!!」

 

俺の辛辣な一言が耳に入った門番は、いきなり身体を起こしてツッコミを入れて来た。

こうしてツッコミを入れる気力があるところを見ると、見た目よりも丈夫に出来ているみたいだ。

 

「それで如何したんだ門番? また魔理沙にやられたのか?」

「今回は魔理沙じゃなくて、霊夢にやられました。……あと、私の名前は紅 美鈴です」

「はいはい。……それにしても、霊夢が紅魔館を襲撃なんて珍しい事もあるもんだな」

「そんな暢気に言ってないで彼女を止めてくださいよ。霊夢を止められるのは、リュウだけなんですから」

 

門番から変な頼み事をされるが……門の番人としてそれで良いのだろうか?

あと、〝霊夢を止められるのは俺だけ〟なんじゃなくて、〝俺を止められるのは霊夢だけ〟が正しい。まぁ、高が門番がそんな事を知る訳ないか。

 

「……そろそろ晩飯の時間だし、様子見がてらお邪魔するか」

「では、中へどうぞ~」

 

霊夢にやられてやる気がなくなったのか、門番は何の警戒もせず俺を通してくれた。

門番としてそれで良いのかと思いつつ、俺は門を潜り、紅魔館の庭に入る。

 

庭は何時もの様にキチンと手入れされているが、時折り札や銀のナイフが上から降ってきて、少々物騒な環境になっている。

振ってくるナイフを避けつつ、屋敷の上部分を見上げてみると、大きな時計台の所で霊夢と咲夜が弾幕ごっこをしている光景が眼に入った。

如何やら飛んでくる札とナイフは、二人が放った弾幕が弾かれたときに出来た流れ弾のようだ。

流れ弾の札は力なく舞うだけだからマシだけど、ナイフの方は結構な速度で飛んでくるから、かなり危ないな。

……いや、妖怪や妖精からしたら霊夢の札の方が危ないのか? 別にどっちでも良いんだけど。

 

「さっさとあの二人を止めるか」

 

俺は鞘から剣を抜き、時計台のところで戦っている二人の元へと飛んでいく。

二人は俺が傍に来たのに気が付かないほど熱中していて、俺の事などお構い無しに弾幕を放っている。

 

「幻葬『夜霧の幻影殺人鬼』」

「神霊『夢想封印』!」

 

二人は相手にトドメを差すべく、ほぼ同時にスペカを宣言した。

このままケリが付くのを見ていても良いんだけど、ただ見てるだけじゃ俺が此処に来た意味がない。

二人の邪魔をするようでかなり気が引けるが、此処は喧嘩両成敗って事で納得してもらおう。

 

「剣技『桜花閃々』」

 

スペカはないけど一応を宣言した俺は、戦っている二人の間をすり抜け、床に斬撃を叩き込みつつ一気に走り抜ける。

俺が二人の間を走り抜けた直後、斬撃を叩き込んだ地面から桜色の剣気が立ち上り、二人が放った弾幕を吹き飛ばした。

 

「ちょっと今邪魔したの誰……ってリュウ? アンタ、何してんのよ?」

「それはコッチの台詞だって」

 

俺の存在にやっと気が付いた霊夢は、札を取り出したまま小さく首を傾げて尋ねてくる。

咲夜は普段と変わらない様子だったが、何時でも戦闘を再開出来る様に、ナイフを手放そうとはしなかった。

とりあえず、警戒を続ける咲夜は置いておいて、霊夢を説得するのが先かな。

 

「霊夢、そろそろ晩飯の時間だから帰るぞ」

「確かにそんな時間ね。でも、私はレミリアに用があるから先に帰って良いわよ」

「いや、レミリアは犯人じゃないから」

「なんでそんな事が言えるのよ」

 

霊夢は俺の言葉が信じられないのか、怪しむような視線でコッチを見てくる。

確かに宴会に来る連中なら、怪しいのはレミリアかあの亡霊姫くらいだ。

霊夢があの吸血鬼を怪しむのも分かるけど、ちょっとそれだと考えが足りないかな。

 

「本当にレミリアが犯人なら、とっく俺が文句を言ってるに決まってるだろ」

「………それもそうね」

「それに俺は、あの時〝犯人に心当たりはない〟って言ったんだぞ? 俺の知り合いが犯人ってのは考えにくいだろ」

「むぅ。其処まで言われると説得力があるわね」

 

俺の説明に納得してくれた霊夢は、一度頷いて漸く札を懐にしまってくれた。

それを見た咲夜も、完全ではないにしろ警戒を緩めてくれた。

俺も剣を鞘に仕舞って、何時でも帰れるように準備をしておく。

 

「それじゃ咲夜。私たちもう帰るわ」

「いきなり押し掛けて来たくせに、随分な言いようね」

「ソレに付いて悪かったわね。……それじゃ行くわよリュウ」

「……霊夢、実は謝る気ないでしょ」

「ええ、もちろん」

 

どう見ても喧嘩を売っている様にしか見えない発言に、咲夜は霊夢に向かって幾つものナイフを投げつけてくる。

俺は慌てて霊夢の手を取り、咲夜から逃げるように急いで飛び去っていく。

飛んでいる最中も、後ろから銀のナイフがコッチに飛んできて、何時当たるのかと内心ではビクビクしていた。

 

「なんであのタイミングで喧嘩を売るんだよ」

「いや、なんとなく?」

「……そんな理由で喧嘩を売らないでくれ。友達なくすぞ」

「私はアンタがいればそれで十分よ」

「でも、仲間が居たほうがなにかと楽しいだろ」

「……そうじゃないでしょ、このニブチン」

「…?」

 

なにやら良く分からない理由で、霊夢に呆れられた気がするけど……今は気にしないでおこう。

今は一刻もはやくこの場から逃げないと、咲夜にまた串刺しにされかねない。

そんな思いから俺は、霊夢の手を離さないように注意しつつ一心不乱に紅魔館を後にした。

 

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